KADOKAWA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KADOKAWA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。出版、アニメ、ゲーム、Webサービス、教育等を手掛ける総合エンターテインメント企業です。当連結会計年度は、ゲーム事業の大ヒット等により過去最高売上を更新した一方、サイバー攻撃の影響や特別損失の計上等により、最終利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社KADOKAWA の有価証券報告書(第11期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. KADOKAWAってどんな会社?


出版、映像、ゲーム、Webサービス、教育事業等を展開し、多彩なIPを創出・展開する企業です。

(1) 会社概要


2014年にKADOKAWA(現 KADOKAWA KEY-PROCESS)とドワンゴが経営統合し設立されました。2019年にKADOKAWAへ商号変更し、出版・IP創出からWebサービスまで幅広い事業を承継しました。2022年に東証プライム市場へ移行し、2023年には指名委員会等設置会社へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結6,967名、単体2,343名です。筆頭株主はKOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNGで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位のソニーグループとは資本業務提携契約を締結し、関係を強化しています。

氏名 持株比率
KOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNG(常任代理人シティバンク、エヌ・エイ東京支店) 10.43%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.10%
ソニーグループ 10.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性4名の計18名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表執行役社長CEOは夏野剛氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
夏野 剛 取締役 代表執行役社長CEO NTTドコモ執行役員、ドワンゴ代表取締役社長などを経て、2021年KADOKAWA代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。
山下 直久 取締役 代表執行役 角川書店入社後、富士見書房社長、角川書店代表取締役専務などを歴任。2021年KADOKAWA代表取締役に就任。2023年6月より現職。
村川 忍 取締役 執行役 角川書店入社後、KADOKAWA執行役員、ビルディング・ブックセンター社長などを歴任。2022年KADOKAWA取締役執行役員に就任。2023年6月より現職。


社外取締役は、鵜浦博夫(元日本電信電話社長)、ジャーマン・ルース マリー(ジャーマン・インターナショナル社長)、杉山忠昭(元花王執行役員)、笹本裕(元Twitter Japan代表取締役)、芝昭彦(パートナー弁護士)、宇澤亜弓(公認会計士)、マクドナルドデービット(DJMAC代表)、岡島悦子(プロノバ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「出版・IP創出事業」「アニメ・実写映像事業」「ゲーム事業」「Webサービス事業」「教育・EdTech事業」および「その他」事業を展開しています。

出版・IP創出事業


書籍、雑誌、電子書籍等の出版・販売やWeb広告の販売、権利許諾等を行っています。年間5,500タイトル以上の新作を創出し、豊富な作品アーカイブをメディアミックス展開の源泉としています。読者や他社プラットフォーム等にコンテンツを提供しています。

収益は、書籍・電子書籍の販売代金、広告掲載料、ライセンス料等から得ています。運営は主にKADOKAWA、ブックウォーカー、KADOKAWA Game Linkage等の国内グループ会社や、YEN PRESS, LLC等の海外子会社が行っています。

アニメ・実写映像事業


アニメ及び実写映像の企画・製作・配給、配信権等の権利許諾、パッケージソフトの販売等を行っています。国内外のファンや配信プラットフォーム、興行会社等に向けて映像作品を提供しています。

収益は、配給収入、放映権・配信権の許諾料、パッケージソフトの販売代金等から得ています。運営は主にKADOKAWA、ムービーウォーカー、角川大映スタジオ、動画工房、ENGI等が行っています。

ゲーム事業


ゲームソフトウエア及びネットワークゲームの企画・開発・販売、権利許諾等を行っています。PCや家庭用ゲーム機向け等のゲームタイトルを世界中のユーザーに提供しています。

収益は、ゲームソフトの販売代金、ダウンロード販売や課金収入、ライセンス料等から得ています。運営は主にKADOKAWA、フロム・ソフトウェア、スパイク・チュンソフト、アクワイア等が行っています。

Webサービス事業


動画コミュニティサービス「ニコニコ」の運営、各種イベントの企画・運営、モバイルコンテンツの配信等を行っています。ユーザー参加型のコンテンツやプラットフォームを提供しています。

収益は、有料会員からの会費(プレミアム会員費等)、ポイント販売、広告収入、イベントチケット収入等から得ています。運営は主にドワンゴが行っています。

教育・EdTech事業


クリエイティブ分野の専門校運営や、インターネットによる通信制高校等向けの教育コンテンツ・システム提供を行っています。生徒や教育機関に向けて、実践的なスキル習得やオンライン学習環境を提供しています。

収益は、受講料、教育コンテンツ提供料、システム利用料等から得ています。運営は主にドワンゴ、バンタンが行っています。

その他


キャラクターグッズの企画・販売(MD事業)、商業施設「ところざわサクラタウン」等の施設運営、システム設計・構築等を行っています。

収益は、グッズ販売代金、施設利用料、システム開発受託料等から得ています。運営は主にKADOKAWA、角川メディアハウス、KADOKAWA Connected等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は過去最高を更新しました。利益面では、2023年3月期をピークに変動が見られ、直近では増収ながら減益となっています。当期利益については、直近で減少傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,099億円 2,212億円 2,554億円 2,581億円 2,779億円
経常利益 144億円 202億円 267億円 202億円 177億円
利益率(%) 6.8% 9.1% 10.4% 7.8% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 42億円 64億円 8億円 69億円 39億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、利益率はわずかに上昇しました。一方、営業利益は減少しており、利益率も低下しています。これは販売費及び一般管理費の増加などが影響していると考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,581億円 2,779億円
売上総利益 866億円 991億円
売上総利益率(%) 33.6% 35.6%
営業利益 185億円 167億円
営業利益率(%) 7.1% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が169億円(構成比21%)、広告宣伝費が109億円(同13%)を占めています。売上原価においては、これらの費目以外の製造・制作コスト等が計上されています。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上高は概ね堅調ですが、Webサービス事業は減収となりました。利益面では、ゲーム事業と教育・EdTech事業が大幅な増益を達成した一方、出版・IP創出事業やWebサービス事業は減益となり、特にWebサービス事業は赤字に転落しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
出版・IP創出事業 1,398億円 1,487億円 104億円 84億円 5.6%
アニメ・実写映像事業 450億円 500億円 46億円 47億円 9.5%
ゲーム事業 252億円 334億円 80億円 95億円 28.6%
Webサービス事業 211億円 177億円 4億円 -10億円 -5.6%
教育・EdTech事業 134億円 151億円 17億円 24億円 15.8%
その他 136億円 130億円 -44億円 -42億円 -32.3%
連結(合計) 2,581億円 2,779億円 185億円 167億円 6.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金に加え、財務活動でも資金調達を行い、将来への投資を行っている「積極型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 83億円 138億円
投資CF 35億円 -84億円
財務CF -658億円 441億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「世界の才能と、感動をつなぐ、クリエイティブプラットフォーマーへ」をコーポレートミッションとして掲げています。多彩なIPを創出し、テクノロジーを活用して世界展開する「グローバル・メディアミックス with Technology」を基本戦略としています。

(2) 企業文化


「クリエイティビティ」「モチベーション」「テクノロジー」をキーワードに、従業員一人ひとりが創造性を最大限発揮できる環境を重視しています。多様な個性を認め合い、イノベーション創出に挑戦する風土の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画において、2028年3月期に以下の目標達成を掲げています。また、中長期的にはROE12%以上を目指しています。

* 売上高3,400億円(うち、海外売上高700億円)
* 営業利益340億円

(4) 成長戦略と重点施策


「グローバル・メディアミックス with Technology」を基本方針とし、IP創出数の拡大やメディアミックス、海外展開の強化を通じてIPのLTV(生涯価値)最大化を目指しています。

* 出版・IP創出:年間7,000タイトル超のIP創出、グローバル作品流通の拡大
* アニメ・実写映像:制作能力強化、グローバル展開に向けた作品開発
* ゲーム:開発ライン拡大、メディアミックスによる収益力向上
* 教育・EdTech:コンテンツの高度化、新規コース開設による成長

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「クリエイティビティ」「モチベーション」「テクノロジー」を軸にイノベーションを推進するため、従業員が創造性を発揮できる環境整備に取り組んでいます。ワークプレイスチョイス制度や福利厚生の拡充により、多様な人材の成長と活躍を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 4.2年 8,850,000円


※平均年間給与は、当社、又は出向元である子会社での給与額であり、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 25.3%
男性労働者の育児休業取得率 36.8%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 72.9%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 81.3%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 69.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ女性従業員比率(42.6%)、女性管理職の比率(20.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動に伴うリスク


気候変動による電力や原材料のコスト増、異常気象の激甚化などが事業活動に影響を及ぼす可能性があります。同社は温室効果ガス削減や省エネルギー化に取り組み、持続可能な社会の実現に向けた責任を果たすよう努めています。

(2) 法令違反・コンプライアンス上のリスク


事業運営において法令違反やコンプライアンス違反が発生した場合、社会的信用の低下や業績への影響が懸念されます。実際に、下請法違反による勧告を受けた経緯があり、研修実施や調査を通じて再発防止とコンプライアンス強化に取り組んでいます。

(3) 業務環境におけるリスク(システム障害・情報漏洩)


ITインフラへの依存度が高まる中、システム障害やサイバー攻撃による情報漏洩のリスクがあります。2024年にはランサムウェア攻撃による大規模なシステム障害と情報漏洩が発生しており、セキュリティ体制の再構築と監視強化を進めています。

(4) 出版流通におけるリスク


再販売価格維持契約制度の廃止や、返品条件付販売制度における返品率の変動が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、電子書籍事業の拡大や、製造・物流の改革による返品率の低減、需要予測の精度向上などに努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。