※本記事は、株式会社KADOKAWAの有価証券報告書(第12期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. KADOKAWAってどんな会社?
多彩なIPの創出と独自のメディアミックス戦略で、日本のエンターテインメントを世界へ発信する企業です。
■(1) 会社概要
同社は、2014年10月にKADOKAWA・DWANGOとして設立され、同月に上場しました。2015年10月にカドカワへ商号変更した後、2019年7月に連結子会社の全事業を吸収分割で承継し、現在のKADOKAWAに商号変更しました。近年は海外拠点の拡充やM&Aを通じてグローバル展開を推進しています。
現在、グループ全体で7,332名、単体で2,471名の従業員を抱える体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資本業務提携先である事業会社のソニーグループとなっており、第2位および第3位には外資系金融機関や外国法人の証券預託機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ソニーグループ | 11.01% |
| GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL | 10.97% |
| KOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNG | 8.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表執行役社長CEOは夏野剛氏が務めています。取締役12名のうち7名が社外取締役であり、過半数を占める体制となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 夏野剛 | 取締役代表執行役社長CEO | 東京ガスを経てNTTドコモ執行役員等を歴任。ドワンゴ代表取締役社長等を務め、2023年6月より現職。 |
| 山下直久 | 取締役代表執行役CHRO等 | 角川書店に入社し、富士見書房や角川学芸出版等の代表取締役社長を歴任。2023年6月より現職。 |
| 村川忍 | 取締役執行役COO | 角川書店に入社し、ビルディング・ブックセンター等の代表取締役社長を歴任。2023年6月より現職。 |
| 加瀬典子 | 取締役執行役CCO | アスキーに入社し、角川アスキー総合研究所の代表取締役社長等を歴任。2025年10月より現職。 |
| 川上量生 | 取締役 | ドワンゴ代表取締役社長等を経て、同社代表取締役会長や社長を歴任。2019年2月より現職。 |
社外取締役は、鵜浦博夫(元NTT社長)、ジャーマン・ルース マリー(ジャーマン・インターナショナル社長)、杉山忠昭(元花王法務・コンプライアンス部門統括)、笹本裕(DAZN Japan Investment最高経営責任者)、宇澤亜弓(公認会計士宇澤事務所代表者)、岡島悦子(プロノバ社長)、草野耕一(草野耕一法律事務所代表者)です。
2. 事業内容
同社グループは、「出版・IP創出事業」「アニメ・実写映像事業」「ゲーム事業」「Webサービス事業」「教育・EdTech事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 出版・IP創出事業
書籍や雑誌、電子書籍等の出版・販売をはじめ、ウェブ広告の販売や権利許諾などを展開しています。年間6,000タイトルを超える新規IPを創出しており、豊富な作品アーカイブがメディアミックス展開の源泉となっています。
顧客からの書籍等の購入代金や、ウェブメディアにおける広告掲載料を主な収益源としています。同事業は主に、KADOKAWAやビルディング・ブックセンターのほか、ドワンゴや複数の海外子会社によって運営されています。
■(2) アニメ・実写映像事業
アニメおよび実写映像作品の企画、製作、配給に加え、映像配信権等の権利許諾やパッケージソフトの販売を行っています。自社スタジオを活用した制作力と、国内外への作品流通を強みとしています。
製作委員会方式での制作管理手数料や、興行会社からの配給収入、映像作品のライセンス供与によるロイヤリティなどを主な収益源としています。事業の運営は主にKADOKAWAや動画工房、ENGIなどのグループ各社が担っています。
■(3) ゲーム事業
パソコンや家庭用ゲーム機向けソフトウエア、およびスマートフォン向けネットワークゲームの企画・開発・販売を展開しています。自社アニメ原作のメディアミックスに加え、世界的なヒットタイトルを創出する開発力を有しています。
顧客へのゲームパッケージ販売やダウンロード販売の代金、他社からの受託開発業務の報酬などを主な収益源としています。事業はKADOKAWAをはじめ、フロム・ソフトウェアやスパイク・チュンソフトなどが運営しています。
■(4) Webサービス事業
動画コミュニティサービス「ニコニコ」の運営を中心に、各種イベントの企画・運営、モバイルコンテンツの配信事業などを展開しています。発掘したクリエイターとファンを繋げるクリエイターエコノミーの最大化を図っています。
動画サービスにおける有料会員からのサブスクリプション会費や、イベント開催時のチケット販売、関連グッズの売上などを主な収益源としています。同事業の運営は、主に子会社であるドワンゴが担っています。
■(5) 教育・EdTech事業
クリエイティブ分野に特化した専門校の運営や、インターネットを活用した通信制高校・オンライン大学等に向けた教育コンテンツとシステムの提供を行っています。最先端のコンテンツで継続的な生徒数の拡大を目指しています。
専門校等の受講者から受け取る講義料や、教育機関へのシステムおよびコンテンツの提供に伴う利用料などを主な収益源としています。事業の運営は、主に子会社のドワンゴおよびバンタンが行っています。
■(6) その他
キャラクターグッズ等の企画・販売を行う事業や、角川武蔵野ミュージアム等の商業施設を展開する「ところざわサクラタウン」などの施設運営、および東南アジアを中心とした海外での大型イベントの制作・運営を行っています。
顧客からのグッズ購入代金や施設利用料、イベントのチケット収入などを収益源としています。事業はKADOKAWAや角川メディアハウスのほか、SOZOなどの子会社によって運営されています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績を見ると、売上高は着実に拡大を続け、直近では2,800億円規模に到達しています。一方で、経常利益は2023年3月期をピークに減少傾向にあり、当期は最終赤字を計上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,212億円 | 2,554億円 | 2,581億円 | 2,779億円 | 2,829億円 |
| 経常利益 | 202億円 | 267億円 | 202億円 | 177億円 | 117億円 |
| 利益率(%) | 9.1% | 10.4% | 7.8% | 6.4% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 64億円 | 8億円 | 69億円 | 39億円 | -94億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益構成を比較すると、売上高は微増となったものの、売上総利益率は若干低下しています。販売費及び一般管理費が増加した影響等により、営業利益および営業利益率は前年度から大きく低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,779億円 | 2,829億円 |
| 売上総利益 | 991億円 | 968億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.7% | 34.2% |
| 営業利益 | 167億円 | 81億円 |
| 営業利益率(%) | 6.0% | 2.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が199億円(構成比22.4%)、広告宣伝費が111億円(同12.5%)、支払手数料が101億円(同11.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
売上高のセグメント別動向を見ると、出版・IP創出事業や教育・EdTech事業、Webサービス事業が堅調に推移し増収に貢献しました。一方で、前期に大型ヒット作があったアニメ・実写映像事業やゲーム事業は減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 出版・IP創出事業 | 1,487億円 | 1,536億円 |
| アニメ・実写映像事業 | 500億円 | 472億円 |
| ゲーム事業 | 334億円 | 296億円 |
| Webサービス事業 | 177億円 | 202億円 |
| 教育・EdTech事業 | 151億円 | 172億円 |
| その他 | 130億円 | 150億円 |
| 連結(合計) | 2,779億円 | 2,829億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金を、設備投資や海外拠点の拡張等の投資活動に充当しつつ、長期借入金の返済などの財務活動による支出を行っており、事業活動のバランスが取れた健全なキャッシュ・フローの状況といえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 138億円 | 34億円 |
| 投資CF | -84億円 | -210億円 |
| 財務CF | 441億円 | -224億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界の才能と、感動をつなぐ、クリエイティブプラットフォーマーへ」をコーポレートミッションとして掲げています。多彩なポートフォリオから成るIPを安定的に創出し、最新テクノロジーを取り入れて世界に展開することで、個人やコミュニティの充実と文化の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
従業員が多様な個性を認め合ってクリエイティビティを最大限に発揮できる環境を重視しています。「クリエイティビティ」「モチベーション」「テクノロジー」を軸としたイノベーション推進を方針に掲げ、経営環境の変化にすばやく適応し、事業成長を実現できる柔軟かつ健全な組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2032年3月期までの新たな中期経営計画において、中長期的な成長と企業価値向上に向けた数値目標を設定しています。
- 売上高:4,000億円
- 営業利益:380億円
- ROE:9.4%
- EPS(1株当たり当期純利益):180円
■(4) 成長戦略と重点施策
「グローバル・メディアミックス with Technology」を引き続き基本方針とし、事業間連携によるIPのライフタイムバリュー最大化を推進します。事業構造改革による収益体質への転換や、アニメ制作スタジオ・バーチャルプロダクションへの戦略的投資、海外拠点のネットワーク拡張を重点的に進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グローバル・メディアミックス戦略を推進する基盤として、「働きやすい環境づくり」「キャリアの自律的な選択」「グローバル人材」の3本柱を人材戦略に掲げています。各種休暇制度の拡充や社内異動制度の推進、語学スキルの向上支援を通じて、従業員のモチベーション向上と多様な人材の継続的な成長を促進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 4.8年 | 8,715,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 28.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 62.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、在宅勤務率(70.2%)、産育休・介護休フォロー手当支給率(96.7%)、資格取得制度利用率(10.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業務環境およびサイバーセキュリティにおけるリスク
デジタルトランスフォーメーションや働き方改革の推進によりIT環境への依存度が高まる中、システムインフラの不良や故障、あるいはサイバー攻撃によるデータの改ざんや情報漏洩が発生し、業務の長期中断により収益に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 出版流通および業界慣行に関連するリスク
書籍や雑誌の販売における再販売価格維持制度が廃止された場合、出版流通市場に大きな影響が生じる可能性があります。また、返品を条件とする販売制度により返金負債を計上していますが、市場の需要変動によって実際の返品額が見積もりを上回るリスクがあります。
■(3) IP創出・メディアミックス展開におけるリスク
アニメやゲームなどのIP創出において、制作スケジュールの遅延による市場投入時期の逸失や、製作コストの増加による収益悪化のリスクがあります。また、制作作業を外部委託する際、納入前に外注先が倒産し、代替発注等により想定以上の費用が発生する可能性があります。



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