東京きらぼしフィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京きらぼしフィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。東京都および神奈川県を地盤とするきらぼし銀行やデジタルバンクのUI銀行等を傘下に持つ地域金融グループです。銀行業務を中心にリースや証券などの金融サービスを展開しています。2025年3月期の連結業績は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加等により、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社東京きらぼしフィナンシャルグループ の有価証券報告書(第11期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京きらぼしフィナンシャルグループってどんな会社?


銀行業務を中心に、リース、証券、コンサルティング等の幅広い金融サービスを提供する地域金融グループです。

(1) 会社概要


2014年10月、東京都民銀行と八千代銀行の経営統合により設立され上場しました。2016年に新銀行東京と経営統合し、2018年には子会社3行が合併してきらぼし銀行が発足、現商号へ変更しました。2022年にはデジタルバンクのUI銀行を開業するなど、グループ再編とデジタル化を推進しています。

グループ連結の従業員数は2,780名、単体では89名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は東京都、第3位は大手信託銀行となっており、自治体や金融機関が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.82%
東京都 9.62%
三井住友信託銀行 9.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名、計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は渡邊壽信氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
渡邊壽信 代表取締役社長グループCEO 1985年東京都民銀行入行。東京きらぼしフィナンシャルグループ代表取締役社長、きらぼし銀行頭取等を経て、2022年6月より現職。
常久秀紀 代表取締役副社長 1987年三菱銀行入行。新銀行東京代表取締役社長執行役員、きらぼし銀行専務取締役、東京きらぼしフィナンシャルグループ取締役等を経て、2021年6月より現職。
野邊田覚 代表取締役専務執行役員 1984年日本興業銀行入行。東京都民銀行専務取締役、きらぼし銀行代表取締役専務執行役員等を経て、2023年6月より現職。
三浦毅 取締役常務執行役員 1985年東京都民銀行入行。きらぼし銀行取締役専務執行役員、東京きらぼしフィナンシャルグループ取締役等を経て、2023年6月より現職。
吉野岳志 取締役常務執行役員 1992年東京都民銀行入行。きらぼし銀行執行役員、東京きらぼしフィナンシャルグループ取締役執行役員等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、髙橋ゆき(ベアーズ取締役副社長)、西尾昇治(元東京商工会議所常務理事)、野村修也(中央大学法科大学院教授・弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


東京都及び神奈川県北東部を主要エリアとし、対面店舗網を持つきらぼし銀行と、デジタルバンクのUI銀行が、預金、貸出、為替、信託等の業務を行っています。中小企業や個人顧客に対し、対面・非対面の融合による金融サービスを提供しています。

収益は、顧客からの貸出金利息、有価証券利息配当金、各種手数料(役務取引等収益)等から得ています。運営は主に株式会社きらぼし銀行と株式会社UI銀行が行っています。

(2) リース業


OA機器から産業機械、自動車など多様な物件を取り扱い、企業の設備投資ニーズに応じたリース業務を行っています。

収益は、顧客との契約に基づくリース料収入等から得ています。運営は主に東京きらぼしリース株式会社が行っています。

(3) その他


証券業、コンサルティングサービス、広告企画制作、フィンテック(資金移動業)、クレジットカード業務、信用保証業務など、幅広い分野で業務を行っています。

収益は、証券委託手数料、コンサルティング料、広告制作費、決済手数料、信用保証料等から得ています。運営はきらぼしライフデザイン証券株式会社、株式会社きらぼしコンサルティング、株式会社ビー・ブレーブ、きらぼしテック株式会社などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。これは、貸出金利息の増加や有価証券利息配当金の増加等による経常収益の増加に加え、物件費の増加等による経常費用の増加が主な要因です。過去5年間で見ても、経常収益、経常利益、当期純利益はいずれも増加傾向で推移しており、堅調な業績の伸びを示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 934 1,083 1,253 1,383 1,609
経常利益(億円) 82 249 308 330 417
当期純利益(億円) 42 182 212 257 314

(2) 損益計算書

当期は、貸出金利息の増加等により経常収益が増加しました。一方、物件費の増加等により経常費用も増加しましたが、収益の伸びが費用を上回ったため、経常利益は増益となりました。当期純利益も、経常利益の増加に伴い増益を達成しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 1,383 1,609
経常費用 1,054 1,192
経常利益 330 417
当期純利益 257 314

(3) 役務取引等収益の内訳

当期は、役務取引等収益合計が前期比で増加しました。特に、証券関連業務が最も大きな割合を占め、前期比で増加しました。次いで信託報酬も増加しており、非金利収益の拡大に貢献しています。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 17 188
証券関連業務 11 12
信託報酬 4 6

(4) キャッシュ・フローと財務指標

銀行業においては、貸出金の増加に伴い営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなることは一般的であり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。当期は、貸出金の純増等を主因に営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローはプラスに転じ、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 288 △237
投資活動によるキャッシュ・フロー △63 66
財務活動によるキャッシュ・フロー △4 △6

当期はROEが8.5%となり、前期の7.4%から上昇しており、収益効率の向上が見られます。純資産は増加傾向で推移しており、財務基盤の安定性も維持されています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「首都圏における中小企業と個人のお客さまのための金融グループとして、総合金融サービスを通じて、地域社会の発展に貢献します。」という経営理念を掲げています。また、パーパスとして「TOKYOに、つくそう。」を定め、金融の常識を超えて顧客や地域の課題解決にコミットし、持続的な発展に尽くすことを目指しています。

(2) 企業文化


役職員全員が共通して持つべき価値観として「きらぼしフィロソフィー」(社会貢献、組織の発展、自己実現、自らの幸せを実現させること)を策定しています。これを実践する人材を「きらぼしびと」と定義し、「高い志を持つひと」「どうしたら出来るのかを常に考えるひと」「結果にコミットし、果敢に挑戦し続けるひと」という3つの行動指針を掲げています。

(3) 経営計画・目標


2024年度からスタートした3カ年の中期経営計画に基づき、「収益力の強化と収益構造の見直し」「更なる効率化」「自己資本の充実」に取り組んでいます。グループ各社の収益力向上や店舗戦略の見直し、優先株式償還を見据えた内部留保の蓄積などを重点項目としています。

(4) 成長戦略と重点施策


デジタル戦略として、デジタルバンク「UI銀行」やフィンテック「きらぼしテック」を中核に、金融・非金融サービスの融合を推進しています。また、個人戦略ではシニア層への対応や富裕層向けサービスの強化、法人戦略ではスタートアップ支援や事業承継支援、海外展開支援など、多様なソリューション機能の強化に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」を最も重要な経営資本と捉え、「きらぼしびと」の育成に向けて、キャリアデザインに基づく外部派遣や高度な専門人材を育成する研修制度の充実を図っています。職員一人ひとりが自らの価値を高め、企業価値向上に貢献することを目指し、専門性の高いプロフェッショナリティを磨き、成果を出すための投資や制度づくりに積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.4歳 12.7年 8,778,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 57.5%
男女賃金差異(正規雇用) 70.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 53.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、専門人材(991名)、うちデジタル人材(400名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク


国内外の景気動向や不動産価格、金利等の変動、取引先の経営状況悪化等により、不良債権が増加するリスクがあります。また、担保価値の下落や保証人の信用状態悪化により、与信関係費用が増加する可能性があります。

(2) 市場リスク


有価証券の価格下落や金利変動、為替相場の変動により、保有資産の評価損や売却損が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に株式や投資信託、外貨建て資産等は市場環境の影響を受けやすくなっています。

(3) サイバー攻撃に関するリスク


高度化・巧妙化するサイバー攻撃により、情報システムの停止、誤作動、情報漏洩等が発生するリスクがあります。これに伴う損害賠償や行政処分、社会的信用の低下等が、業務運営や業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。