※本記事は、株式会社東京きらぼしフィナンシャルグループの有価証券報告書(第12期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京きらぼしフィナンシャルグループってどんな会社?
同社グループは、東京圏を地盤とし、傘下の銀行等を通じて中小企業や個人向けの総合金融サービスを提供しています。
■(1) 会社概要
2014年、東京都民銀行と八千代銀行の経営統合により持株会社として設立され、上場しました。2016年に新銀行東京を完全子会社化し、2018年に3行が合併してきらぼし銀行が発足するとともに、現在の社名に変更しました。2022年にはデジタルバンクであるUI銀行を開業しています。
従業員数は連結で2,744名、単体で95名体制です。大株主については、筆頭株主ならびに第3位株主は資産管理業務などを行う信託銀行で、第2位株主は東京都となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.95% |
| 東京都 | 9.62% |
| 三井住友信託銀行 | 9.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長グループCEOは渡邊壽信氏が務めています。社外取締役は13名中3名(比率23.1%)となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡邊壽信 | 代表取締役社長グループCEO | 1985年東京都民銀行入行。融資統括部長などを歴任後、2018年きらぼし銀行頭取に就任。2022年より現職。 |
| 常久秀紀 | 代表取締役副社長 | 1987年三菱銀行入行。新銀行東京代表取締役社長執行役員を経て、2021年より現職。 |
| 野邊田覚 | 代表取締役専務執行役員 | 1984年日本興業銀行入行。東京都民銀行専務取締役などを経て、2023年より現職。 |
| 吉野岳志 | 取締役常務執行役員 | 1992年東京都民銀行入行。営業統括部長などを経て、2024年より現職。 |
| 三浦毅 | 取締役常務執行役員 | 1985年東京都民銀行入行。経営企画部長などを歴任後、2023年より現職。 |
| 加賀見彰之 | 取締役執行役員 | 1991年日本興業銀行入行。みずほ銀行金融法人部長などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、髙橋ゆき(元ベアーズ取締役副社長)、野村修也(元中央大学法科大学院教授)、小林治彦(元東京商工会議所常務理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
東京都や神奈川県北東部を主要な営業エリアとし、法人および個人顧客向けに預金、貸出、為替、有価証券投資などの金融サービスを提供しています。また、デジタルバンクのUI銀行を通じてスマートフォンアプリ経由での金融サービスも展開しています。
主な収益源は、顧客への貸出に伴う金利収入や、投資信託などの販売・仲介に伴う手数料収入です。運営は主にきらぼし銀行とUI銀行が行い、対面と非対面を融合したサービス提供を進めています。
■リース業
法人顧客を中心として、OA機器から産業機械、自動車などに至るまで多様な物件のリースサービスを提供しています。企業の設備投資ニーズに対応し、事業活動をサポートしています。
顧客に対するリース物件の貸与に伴うリース料収入が主な収益源となっています。運営は東京きらぼしリースが行っています。
■その他
証券業や企業経営に関するコンサルティング、広告企画制作、フィンテック分野のサービスなど、金融周辺の幅広い領域で事業を展開しています。
証券仲介手数料やコンサルティング報酬、システムの利用料などが主な収益源です。運営はきらぼしライフデザイン証券やきらぼしコンサルティング、きらぼしテックなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間の業績を見ると、経常利益は308億円から605億円へと順調に拡大しており、増益基調が続いています。一方、当期利益については直近で減少が見られます。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 308億円 | 330億円 | 417億円 | 605億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 35億円 | 43億円 | 95億円 | 59億円 |
■(2) 損益計算書
営業利益を比較すると、前期の97億円から当期は63億円へと減少しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 97億円 | 63億円 |
販売費及び一般管理費のうち、給与・手当が15億円、事務委託費が3億円となっています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上にあたる経常収益を見ると、主力の銀行業が大きく牽引しており、当期も前期比で成長しています。リース業やその他の事業についても堅調に推移しており、金融周辺領域でのサービス拡充が収益に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 1305億円 | 1621億円 |
| リース業 | 144億円 | 158億円 |
| その他 | 166億円 | 214億円 |
| 連結(合計) | 1615億円 | 1994億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
末期型(事業拡大に伴う資産増加)
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2374億円 | -1378億円 |
| 投資CF | 659億円 | -110億円 |
| 財務CF | -55億円 | -53億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「首都圏における中小企業と個人のお客さまのための金融グループとして、総合金融サービスを通じて、地域社会の発展に貢献します。」という経営理念を掲げています。また、パーパスとして「TOKYOに、つくそう。」を制定し、金融の常識を超えて顧客の課題解決にコミットし、持続的な発展を目指しています。
■(2) 企業文化
全役職員が共通して持つべき意識・価値観として「社会貢献、組織の発展、自己実現、自らの幸せを実現させること」を定めた「きらぼしフィロソフィー」を掲げています。これを実践する人材を「きらぼしびと」と定義し、「“高い志”を持つひと」「どうしたら出来るのかを常に考えるひと」「結果にコミットし果敢に挑戦し続けるひと」という3つの行動指針を定めています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度からスタートした3カ年の中期経営計画では、「更なる効率化」「収益力の強化・収益構造の見直し」「自己資本の充実」を柱としてグループの経営体力強化と競争力向上を目指しています。
* 配当性向:20%程度を目安
■(4) 成長戦略と重点施策
デジタルとリアル、金融と非金融を融合させた総合サービスの提供を成長戦略の軸としています。UI銀行やきらぼしテックを中核に据えたBaaS等のデジタルプラットフォーム機能の強化を進めるほか、富裕層やシニア層向けコンサルティングの充実、ストラクチャードファイナンス等の多様な資金供給による法人取引のメイン化などに取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「職員一人ひとりが自らの価値を高め、企業価値の向上に貢献する」という方針のもと、人材を最も重要な資本と位置づけています。研修制度の充実や外部派遣制度による自発性の喚起を通じて、専門人材やデジタル人材の育成を推進し、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.8歳 | 12.6年 | 8,848,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 56.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、専門人材(1,113名)、デジタル人材(483名)、人材育成投資額(5.0億円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自己資本比率の変動リスク
銀行持株会社として一定水準以上の自己資本比率を維持することが求められています。不良債権処理の増加に伴う与信関係費用の大幅な増加や、保有有価証券の価格下落、繰延税金資産の大幅な減額などにより自己資本比率が低下した場合、業務の停止などの行政処分を受けるリスクがあり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) サイバー攻撃やシステム障害のリスク
業務処理や顧客サービス提供において多数のシステムを使用しており、サイバー攻撃による不正アクセスや情報の外部漏洩、システムの停止などが発生した場合、損害賠償や行政処分の対象となるリスクがあります。これに伴い、社会的信用の低下や業務の停滞が生じ、業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 信用リスクと不良債権の増加
貸出金等の回収可能性は、経済情勢や不動産価格、金利の変動、取引先企業の経営状況悪化などによって予測不能な影響を受けます。これにより、貸倒引当金の積み増しが必要となったり、不良債権が増加したりすることで与信関係費用が膨らみ、グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。