ヤマシンフィルタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマシンフィルタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のヤマシンフィルタは、建設機械用フィルタ事業およびエアフィルタ事業を展開するフィルタ専門メーカーです。2025年3月期は、主力事業での補給品販売の増加や価格改定などが奏功し、売上高は前期比11.5%増、経常利益は88.6%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、ヤマシンフィルタ株式会社 の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマシンフィルタってどんな会社?


ヤマシンフィルタは、建設機械の油圧回路に不可欠なフィルタ製品を主力とする専門メーカーです。独自のナノファイバー技術を活用し、建機分野からエアフィルタ等の新領域へ展開を広げています。

(1) 会社概要


1956年に山信工業として設立され、1989年にはフィリピンに生産拠点を設立するなど早期から海外展開を進めました。2014年に東証二部に上場し、2016年に一部指定を経て、2022年にプライム市場へ移行しました。2019年にはエアフィルタ事業を第2の柱として追加し、事業ポートフォリオの多角化を図っています。

同グループは連結751名、単体174名の従業員を擁しています。筆頭株主はあさまホールディングス、第2位および第3位は信託銀行の信託口となっており、資産管理会社および機関投資家が上位を占める構成です。

氏名 持株比率
あさまホールディングス 33.88%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.08%
日本カストディ銀行(信託口) 5.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長執行役員は山崎敦彦氏です。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
山崎敦彦 代表取締役社長執行役員 1980年小松製作所入社。1982年同社入社。1990年より社長を務め、2020年より現職。アクシー取締役会長を兼任。
山崎裕明 取締役副社長執行役員 2011年入社。セブ工場代表、営業本部長、執行役員営業統括などを歴任。2023年より現職。
井岡周久 取締役専務執行役員 野村證券を経て複数社のCFO等を歴任。2012年同社入社、財務経理部長。管理本部長を経て2020年より現職。
山崎敬明 取締役 2015年入社。セブ工場取締役、生産本部、SCM本部長、アクシー社長などを経て2023年より現職。


社外取締役は、伊串久美子(元日本ヒューレット・パッカード)、森田秀朗(元オリックス常務執行役)、板野泰之(元野村総合研究所代表取締役)、粟谷しのぶ(弁護士)、楊珮玲(元エデルマン・ジャパン執行役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建機用フィルタ事業」および「エアフィルタ事業」を展開しています。

建機用フィルタ事業


建設機械や産業機械の駆動に不可欠な油圧回路、燃料、潤滑油などのろ過に用いられるフィルタ製品を開発・製造・販売しています。特に油圧ショベル等の建設機械向けが主力であり、回路内の不純物を除去することで機械の正常な稼働と長寿命化を支えています。

主な収益源は、建設機械メーカー等に対する新車装着用のライン部品および交換用フィルタ(補給品)の製品販売代金です。運営は主にヤマシンフィルタ、YAMASHIN CEBU FILTER MANUFACTURING CORP.、YAMASHIN VIETNAM CO., LTDが行っています。

エアフィルタ事業


ビルや建物、各種工場、鉄道車両などに使用される空調用フィルタ製品を扱っています。プレフィルタから、半導体工場や病院などで求められる高性能なHEPAフィルタ、防虫フィルタまで幅広いラインナップを持ち、空気中の塵埃除去や清浄度維持に貢献しています。

主な収益源は、販売代理店やエンドユーザー等に対するエアフィルタ製品の販売代金です。運営は主に子会社である株式会社アクシーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、直近の2025年3月期には200億円を突破しました。利益面では、2021年3月期に経常損失を計上しましたが、その後は回復基調にあります。特に2025年3月期は利益率が大きく改善し、当期純利益も大幅に増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 146億円 188億円 186億円 180億円 201億円
経常利益 -1.4億円 13.2億円 9.2億円 14.2億円 26.7億円
利益率(%) -0.9% 7.0% 4.9% 7.9% 13.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 6.4億円 2.4億円 2.0億円 4.9億円 20.4億円

(2) 損益計算書


売上高の伸長に伴い、売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費は微増にとどまったため、営業利益は前期比で大きく伸び、営業利益率は7.8%から13.1%へと大幅に改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 180億円 201億円
売上総利益 76億円 89億円
売上総利益率(%) 41.9% 44.4%
営業利益 14億円 26億円
営業利益率(%) 7.8% 13.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が15億円(構成比24%)、販売運賃が6億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の建機用フィルタ事業は、補給品の販売増加などにより大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。一方、エアフィルタ事業は交換需要の減少等により売上高は微減、利益も減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建機用フィルタ事業 154億円 175億円 13億円 26億円 14.6%
エアフィルタ事業 26億円 26億円 0.9億円 0.8億円 2.9%
連結(合計) 180億円 201億円 14億円 26億円 13.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金の範囲内で借入金の返済や投資を行っており、健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 26億円 28億円
投資CF -5億円 -5億円
財務CF -15億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「仕濾過事」(ろかじにつかふる)を経営理念に掲げています。これは、創業者の「フィルタビジネスを通じて社会に貢献する」という意思が込められた言葉です。この不変のDNAに基づき、「環境」「空気」「健康」をテーマに持続可能な社会の実現に向けた課題解決に取り組み、企業価値の最大化を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「三現主義」を重視し、現場・現物・現実に基づいた監査や改善活動を行っています。また、経営理念の実践として、お客様、仲間、家族に感謝し感謝される、働きがいのある職場づくりを目指しています。多様な人材が能力を発揮できるダイバーシティ・マネジメントや、残業ゼロへの取り組みなど、働きやすい環境整備にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、総合的な企業価値指標である「MAVY」の持続的拡大を経営の基本としています。2028年3月期の定量目標として、財務面では「MAVY's 2%以上」「ROIC10%以上」「WACC7.3%以下」、非財務面では「FTSE4.0」「CDP Aスコア取得」、株主還元では「DOE10%以上」「配当性向80%以上」を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


建機用フィルタ事業では、多様なアプローチによるシェア拡大、高付加価値製品の導入、アフターマーケット活動の進化に取り組み、事業規模の拡大と収益性改善を目指します。特にナノファイバー技術による先端素材を活用し、環境負荷低減に貢献する製品展開を強化します。

また、ナノファイバー技術を建機用のみならずエアフィルタ事業や新規事業分野へ展開し、より付加価値の高いビジネスを創出することで、長期的・持続的な成長を実現する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、国籍、年齢、性別等の違いにとらわれず互いを尊重するダイバーシティ・マネジメントを経営の基本としています。残業ゼロへの取り組みやリモートワーク導入など職場環境の整備を進め、多様な社員の活躍を促すとともに、人的資本への投資を通じてウェル・ビーイングな社会の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.9歳 8.7年 7,394,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.1%
男女賃金差異(正規雇用) 76.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 81.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(33.6%)、中途採用者管理職比率(78.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定市場への依存


同グループの売上高の約8割は建機用フィルタ事業が占めています。そのため、景気停滞等による建設機械メーカーの業績悪化や、技術革新により油圧動力が代替されるなどの構造変化が生じた場合、建機用フィルタの売上が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合との競争激化


主要市場である油圧ショベル市場、特に新興国市場においては、今後模倣品や廉価品の台頭が予想されます。競合他社の製品販売が伸長した場合、同グループの売上高が減少し、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 為替レートの変動


同グループは日本、フィリピン、ベトナム等の生産拠点や各国の販売拠点を有しており、外貨建資産・負債を保有しています。原材料調達や販売等の営業活動において、為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。