ヤマシンフィルタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマシンフィルタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマシンフィルタは東京証券取引所プライム市場に上場し、建機用フィルタとエアフィルタの開発・製造・販売を主力事業とする企業です。2026年3月期の業績は、建機用フィルタの新車需要増加により、売上高は前期比増の209億円となった一方、販管費の増加等により当期純利益は17億円の微減となり、増収減益でした。


※本記事は、ヤマシンフィルタの有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマシンフィルタってどんな会社?


同社はフィルタの専門メーカーとして、建設機械や産業分野向けに高品質な製品をグローバルに提供しています。

(1) 会社概要


同社は1956年に山信工業として設立されました。1989年にフィリピンのセブ島へ現地法人を設立して海外展開を本格化し、2005年に現在のヤマシンフィルタへ社名変更しました。2014年には東京証券取引所に上場を果たしています。近年は2019年にアクシーを完全子会社化し、エアフィルタ事業を拡大しています。

現在の同社グループは、連結で757名、単体で184名の従業員を擁する体制です。筆頭株主はあさまホールディングスで、第2位および第3位は資産管理業務などを行う信託銀行です。

氏名 持株比率
あさまホールディングス 34.55%
日本カストディ銀行(信託口) 7.39%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長執行役員は山崎敦彦氏が務めており、社外取締役比率は55.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
山崎敦彦 代表取締役社長執行役員 小松製作所を経て1982年同社入社。1990年に代表取締役社長に就任し、2020年より現職。
山崎裕明 取締役副社長執行役員 2011年同社入社。海外子会社の役員や営業本部長などを歴任し、2023年より現職。
井岡周久 取締役専務執行役員 野村證券などを経て2012年に同社入社。財務経理部長や管理本部長を務め、2020年より現職。
山崎敬明 取締役 2015年同社入社。海外子会社への出向や生産管理部長を経て2023年より現職。アクシー社長を兼任。


社外取締役は、伊串久美子(元霞ヶ関総合研究所代表取締役社長)、森田秀朗(元オリックス・ゴルフ・マネジメント取締役社長)、板野泰之(元野村総合研究所代表取締役専務執行役員)、粟谷しのぶ(弁護士)、楊珮玲(元エデルマン・ジャパン執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建機用フィルタ事業」および「エアフィルタ事業」の2つの事業を展開しています。

建機用フィルタ事業


建設機械や産業機械向けに不可欠な油圧フィルタや燃料用フィルタ、さらに精密部品の製造工程などで使われるプロセス用フィルタの開発・製造・販売を行っています。

主な収益源は、国内外の建設機械メーカーや産業機械メーカー等からの製品販売代金です。運営は同社のほか、フィリピンやベトナムなどの製造子会社、および米国、欧州、アジアの販売子会社が連携して行っています。

エアフィルタ事業


ビルや商業施設、食品・薬品の製造工場、病院の手術室など、幅広い分野の空調や空気清浄に用いられるエアフィルタの開発・製造・販売を行っています。

主な収益源は、販売代理店や顧客からの製品販売代金です。本事業の運営は、主に製造と国内販売を担う子会社のアクシーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は堅調に推移しており、直近では200億円を突破して過去最高を更新しています。利益面も一時的な落ち込みを経て回復傾向にあり、10%を超える安定した利益率水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 188億円 186億円 180億円 201億円 209億円
経常利益 13億円 9億円 14億円 27億円 25億円
利益率(%) 7.0% 4.9% 7.9% 13.3% 12.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.5億円 6億円 8億円 17億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も拡大していますが、新規事業の立ち上げによる先行投資などで販売費および一般管理費が増加したため、営業利益は横ばいから微減の傾向となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 201億円 209億円
売上総利益 89億円 92億円
売上総利益率(%) 44.4% 43.9%
営業利益 26億円 26億円
営業利益率(%) 13.1% 12.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比24%)、賞与引当金繰入額が4億円(同6%)を占めています。売上原価は118億円で、売上高に対する原価率は約56%となっています。

(3) セグメント収益


主力の建機用フィルタ事業は新車需要の増加等により増収となっています。一方でエアフィルタ事業は、基幹システムの入れ替えに伴う影響などで減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建機用フィルタ事業 175億円 187億円
エアフィルタ事業 26億円 23億円
連結(合計) 201億円 209億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動はマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 28億円 24億円
投資CF -5億円 -8億円
財務CF -13億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「仕濾過事」(ろかじにつかふる)を経営理念として掲げています。これは、フィルタビジネスを通じて社会に貢献するという創業者の意思を込めたものであり、「環境」「空気」「健康」をテーマに持続可能な社会の実現と企業価値の最大化を図ることを目指しています。

(2) 企業文化


多様な価値観を持つ人的資本への投資を通じ、すべての従業員が国籍、年齢、性別などの違いにとらわれず、お互いを尊重するダイバーシティマネジメントを経営の基本方針としています。残業を原則行わない業務体制やリモートワークを導入し、ウェルビーイングな組織風土の構築に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は「YAMASHIN FILTER VISION 2030」において、総合的な企業価値指標「MAVY」の持続的拡大を基本とし、以下の財務目標を掲げています。

* 2030年3月期の時価総額3,000億円
* MAVY's 2%以上
* ROIC 10%以上
* WACC 7.3%以下

(4) 成長戦略と重点施策


建機用フィルタ事業において、多様なアプローチによるシェア拡大や高付加価値製品の導入を進め、収益性の改善を図ります。さらに、ナノファイバー素材の可能性を最大限に活かし、機能テキスタイル、ライフサイエンス、産業資材の3分野へ向けた機能素材事業を新たな柱として育成する成長戦略を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の多様化とグローバル展開を背景に、環境変化に対応できる次世代リーダーの採用と計画的育成を重視しています。また、従業員の生活基盤安定を図るための賃金改定や、柔軟な働き方を支援する制度を整備し、エンゲージメントの向上と人材の定着化を人材戦略の中核と位置付けています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.5歳 8.7年 7,323,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.4%
男女賃金差異(正規雇用) 75.1%
男女賃金差異(パート・有期) 88.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結での女性比率(51.3%)、連結での女性管理職比率(21.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建機市場への高い依存度


同社の売上高の大半は建機用フィルタ事業が占めています。そのため、景気低迷や公共投資の減少による建設機械メーカーの業績悪化、あるいは建機の構造革新や油圧動力に代わる新たな技術革新が起きた場合、製品の需要が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新興国市場での競合と模倣品


主要市場である油圧ショベル市場は、中長期的には新興国での拡大が予測されています。しかし、新興国市場において競合他社による模倣品や廉価品の販売が想定以上に伸長した場合、同社の純正部品の販売が減少し、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 資材価格高騰とサプライチェーンの混乱


製品原価に占める部品・資材の割合が高く、素材市況の変動による調達コスト増加のリスクがあります。また、部品の品薄や物流環境の変化に伴う海上輸送費の高騰、輸送リードタイムの長期化が発生した場合、生産効率の低下や利益圧迫につながる恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。