※本記事は、株式会社オプティムの有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オプティムってどんな会社?
AIやIoTを活用した産業向けAXサービスと、スマート農業を推進するアグリテック事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2000年6月に設立され、2014年10月に東京証券取引所マザーズに株式を上場しました。2019年にはみちのく銀行と合弁会社を設立するなどスマート農業への展開を本格化し、直近ではアグリテック分野の大幅な成長を受け、報告セグメントをAX事業とアグリテック事業の2区分に変更し事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結で417名、単体で398名です。筆頭株主は創業者の菅谷俊二氏で、第2位は事業会社であるNTT東日本、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。NTT東日本とは2008年に第三者割当増資を実施して以来の資本関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 菅谷俊二 | 55.79% |
| NTT東日本 | 5.87% |
| みずほ信託銀行(信託口) | 4.74% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は菅谷俊二氏が務めています。取締役6名中2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菅谷俊二 | 代表取締役社長 | 2000年6月同社設立、同社代表取締役社長就任。より現職。 |
| 谷口玄太 | 取締役技術担当 | 2006年4月同社入社、2020年6月同社技術担当取締役就任。より現職。 |
| 休坂健志 | 取締役営業担当 | 2009年4月同社入社、2020年6月同社営業担当取締役就任。より現職。 |
| 林昭宏 | 取締役管理担当 | 2010年4月同社入社、2011年6月同社管理担当取締役就任。より現職。 |
社外取締役は、江川力平(元NTTエレクトロニクス)、竹﨑雄一郎(元Fairy Devices執行役員CSO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「AX事業」および「アグリテック事業」を展開しています。
■AX事業
AIを活用して業務の自動化や最適化を進めるサービスを提供しており、企業のIT管理部門向け端末管理サービスや、建設、医療、オフィスなど産業別に特化したAXサービス、顧客向けポータルサイト構築サービスなどを幅広く展開しています。
収益源は、提供するソフトウェアやプラットフォームのライセンス販売を中心とした継続課金(ストック型収益)や、開発に関する請負・準委任契約などです。運営は主にオプティムが行っています。
■アグリテック事業
農作物の栽培から販売までの全工程を支援するスマート農業サービスを提供するプラットフォームや、ドローンを活用した農薬散布サービス、スマート米の生産・流通・販売を展開しています。
収益源は、プラットフォームの利用料やドローンを用いた農薬散布等のサービス提供に伴う手数料、および栽培した農産物の販売代金などです。運営はオプティムのほか、子会社のオプティムアグリ・みちのくやオプティム・ファームが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移では、売上高が毎年順調に増加しており、継続的な事業成長を実現しています。経常利益も概ね増加傾向にあり、利益率は16%から18%台の安定した高い水準を維持しています。当期利益も10億円前後で推移し、強固な収益基盤を構築しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 93億円 | 102億円 | 106億円 | 117億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 16億円 | 18億円 | 19億円 | 20億円 |
| 利益率(%) | 17.9% | 17.6% | 18.0% | 17.6% | 16.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 10億円 | 10億円 | 12億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
主力のAX事業におけるライセンス収入の増加やアグリテック事業の大幅な成長が牽引し、売上高は前期比で増加しています。売上総利益も増加しましたが、研究開発費などの成長投資を先行させた結果、営業利益率は微減となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 106億円 | 117億円 |
| 売上総利益 | 52億円 | 54億円 |
| 売上総利益率(%) | 49.4% | 45.9% |
| 営業利益 | 20億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 18.5% | 16.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8億円(構成比24%)、研究開発費が7億円(同21%)を占めています。売上原価では、経費が44億円(構成比71%)、労務費が18億円(同29%)を占めています。
■(3) セグメント収益
AX事業は安定したストック収益により高い利益率を維持し、全社の収益を牽引しています。アグリテック事業は開発投資フェーズにあるため赤字となっていますが、売上高は前期比で大幅に伸長しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| AX事業 | 89億円 | 91億円 | 47億円 | 50億円 | 54.9% |
| アグリテック事業 | 17億円 | 26億円 | -4億円 | -5億円 | -17.4% |
| 調整額 | - | - | -23億円 | -26億円 | - |
| 連結(合計) | 106億円 | 117億円 | 20億円 | 20億円 | 16.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 21億円 | 16億円 |
| 投資CF | -20億円 | -13億円 |
| 財務CF | -3億円 | 10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も74.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「ネットを空気に変える」というコンセプトを掲げ、インターネットを空気のように意識することなく使いこなせる存在に変えていくことをミッションとしています。すべての人々が等しくインターネットの創造性と利便性を享受できるよう、AIやIoT技術を用いた普遍的なテクノロジーやサービスの創出を目指しています。
■(2) 企業文化
常に新たな分野において積極的な研究開発を推進し、知的財産の構築を通じて新市場の創出とイノベーションの実現を図っています。技術を起点としたイノベーション創出を経営の重要な基盤として位置づけており、各産業の業務要件に対応するだけでなく、産業全体の社会的価値を高める経営を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高の増加を最重要視しています。主力のAX事業において安定的な収益基盤となるストック売上の着実な積み上げを図るとともに、アグリテック事業においては事業規模の積極的な拡大による売上増加を通じて早期の黒字化を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
AX事業では、従来の端末管理機能にSaaS管理やID管理を統合したサービスの拡販を進め、顧客単価の向上と売上拡大を推進します。アグリテック事業では、ドローン農薬散布サービスを起点とした地域展開や作物展開の多様化により、運用データとノウハウを蓄積して環境変化に強い事業基盤を構築します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社会や顧客への価値提供の源泉である人材の活躍を支援することを重視しています。年齢や性別などの属性を問わず優秀な人材を積極的に採用し、社内研修や勉強会を通じた自己研鑽の支援を行っています。また、在宅勤務や時短勤務、育児休業制度の整備に加え、人事・給与制度の改善を通じた環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 33.4歳 | 5.7年 | 6,229,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 84.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 169.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競争環境と市場動向の変化
AX事業において、競合他社による機能拡充や価格競争の発生、クラウド事業者等の代替手段の拡大が進んでいます。また、アグリテック事業でも気象等の外部要因や競争激化による影響があり、想定通りの市場浸透や収益化が進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 事業投資および研究開発の不確実性
中長期的な成長に向けたM&Aや新規事業への事業投資、研究開発投資を積極的に行っています。しかし、買収後の事業統合が想定通りに進まない場合や、技術的課題等により研究開発の成果が十分に事業化・収益化されない場合、投下資金の回収が遅れ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) システム障害および情報セキュリティ
サービスの基盤をインターネット通信網に依存しているため、自然災害や急激なアクセス増によるサーバーのダウン、外部からの不正アクセスやコンピューターウイルスの混入などが発生した場合、サービス提供が停止し、社会的信用の失墜とともに業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 顧客およびパートナーへの依存
AX事業の主力サービスにおいては、OEM提供先や販売パートナー経由の売上が大きな割合を占めています。特定のOEM提供先への売上依存度が高いため、相手方の営業施策の変更等により自社製品の取り扱いが停止された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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