オプティム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オプティム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するオプティムは、AI・IoT・Big Dataプラットフォームのマーケットリーダーとして、モバイル端末管理や農業・医療・建設などの産業DXを推進しています。直近の業績は、主力サービスの拡大により3期連続で過去最高売上高を更新し、増収増益となっています。


※本記事は、株式会社オプティム の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オプティムってどんな会社?


「ネットを空気に変える」をミッションに掲げ、AI・IoT技術を駆使して産業DXを推進するIT企業です。

(1) 会社概要


2000年に設立された同社は、2014年に東証マザーズへ上場し、2015年に東証一部へ市場変更しました。2016年にはAI・IoT活用の基盤となる「OPTiM Cloud IoT OS」の提供を開始しています。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

同グループの従業員数は連結403名、単体391名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の菅谷俊二氏で、第2位は通信大手の東日本電信電話です。創業者が過半数の株式を保有するオーナー企業でありながら、大手通信会社とも資本関係を持つ安定した経営基盤が特徴です。

氏名 持株比率
菅谷 俊二 56.27%
東日本電信電話 5.81%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 5.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は菅谷俊二氏が務めています。取締役6名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
菅谷 俊二 代表取締役社長 2000年6月同社設立、同社代表取締役社長就任。設立以来、トップとして経営を牽引し現職。
谷口 玄太 取締役技術担当 2006年4月同社入社。2020年6月より同社技術担当取締役として技術部門を統括し現職。
休坂 健志 取締役営業担当 2009年4月同社入社。2020年6月より同社営業担当取締役として営業部門を統括し現職。
林 昭宏 取締役管理担当 株式会社商工ファンド等を経て、2010年4月同社入社。2011年6月より同社管理担当取締役として管理部門を統括し現職。


社外取締役は、江川力平(元NTTエレクトロニクス)、竹﨑雄一郎(元テレパシージャパンCFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、ライセンス販売・保守サポートサービス(オプティマル)事業の単一セグメントですが、サービスの内容により「X-Tech(クロステック)サービス」「モバイルマネジメントサービス」「その他サービス」等に区分して展開しています。

X-Tech(クロステック)サービス


AI・IoTプラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」を基盤とし、農業、医療、建設などの各産業向けにDXサービスを提供しています。具体的には、ドローンを用いた農薬散布サービス、手術支援ロボットのネットワークシステム、スマホでの3次元測量アプリなどを展開し、各業界の課題解決を行っています。

収益は主に、サービスの利用料やライセンス料を顧客である企業、自治体、農業従事者、医療機関などから受け取るモデルです。運営は主にオプティムが行っていますが、農業分野では株式会社オプティムアグリ・みちのく等の子会社も事業を展開しています。

モバイルマネジメントサービス


スマートフォンやタブレット、PCなどの端末管理・セキュリティ対策をクラウド上で一括して行う「OPTiM Biz(旧Optimal Biz)」を提供しています。企業や組織が従業員に貸与する端末の資産管理やセキュリティ設定を効率化するサービスで、国内市場で長期間トップシェアを維持しています。

収益は、端末を利用する企業や組織から、管理対象となる端末数に応じた月額または年額のライセンス料を受け取るストック型のビジネスモデルです。運営は主にオプティムが行っています。

その他サービス


画面共有による遠隔サポートサービス「Optimal Remote」や、AIを用いた報告書作成アプリ「OPTiM Taglet」などのリモートマネジメントサービス、および一般消費者向けの「タブホ(電子雑誌読み放題サービス)」などを提供しています。

収益は、法人顧客からのライセンス料や、個人顧客からの月額利用料などです。運営は主にオプティムが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、積極的な研究開発投資を行いながらも黒字を維持しており、経常利益、当期純利益ともに安定的に推移しています。利益率は高水準を保っており、効率的な収益構造がうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 75億円 83億円 93億円 102億円 106億円
経常利益 20億円 15億円 16億円 18億円 19億円
利益率(%) 26.6% 17.9% 17.6% 18.0% 17.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 10億円 10億円 12億円 12億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に増加しています。売上総利益率は約50%前後と高い水準を維持しています。営業利益率も約18%以上をキープしており、本業での高い収益性を確保しながら事業拡大を進めていることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 102億円 106億円
売上総利益 50億円 52億円
売上総利益率(%) 49.3% 49.4%
営業利益 19億円 20億円
営業利益率(%) 18.9% 18.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8.3億円(構成比25.2%)、研究開発費が6.1億円(同18.5%)を占めています。売上原価に関しては、サービス提供に伴うコストが中心となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、サービス別の販売実績を開示しています。主力の「IoTプラットフォームサービス」が売上の大部分を占め、着実に成長しています。「リモートマネジメントサービス」や「サポートサービス」は減少傾向にありますが、「その他サービス」は増加しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
IoTプラットフォームサービス 91億円 95億円
リモートマネジメントサービス 8億円 6億円
サポートサービス 0.9億円 0.7億円
その他サービス 3億円 4億円
連結(合計) 102億円 106億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

オプティムのキャッシュ・フローの状況は、営業活動で資金を獲得し、投資活動と財務活動で資金を使用する構造となっています。

営業活動では、主に税金等調整前当期純利益や減価償却費により資金が増加しましたが、売上債権の増加により一部減少しました。投資活動では、無形固定資産や投資有価証券の取得により、前年同期よりも多くの資金を使用しました。財務活動では、短期借入金の返済により資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 20億円 21億円
投資CF -15億円 -20億円
財務CF 0.0億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ネットを空気に変える」というコンセプトを掲げています。インターネットがいまだに利用にあたりITリテラシーを必要とする現状を変え、空気のように意識することなく使いこなせる存在にすることをミッションとしています。すべての人々が等しくインターネットの恩恵を享受できるようサポートする製品開発に尽力しています。

(2) 企業文化


同社は、常に新しい分野において積極的に研究開発を行い、知的財産を構築することを重視しています。新しい市場の創出とイノベーションの創出を同時に行うことで、「世界の人々に大きく良い影響を与える普遍的なテクノロジー・サービス・ビジネスモデルを創りだす」ことを目指す文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上高の増加を研究開発投資および将来的利益の源泉と考えており、経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として「売上高の増加」を重視しています。具体的な数値目標としてのKPIは記載されていませんが、DX・AX市場でのイノベーション創出と「モバイルマネジメントサービス」の成長により事業拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「既存製品・サービスのシェア拡大」「周辺領域での市場創出」「新規製品・サービスによる市場創出」の3つを成長戦略として掲げています。具体的には、強固なセキュリティ技術や特許群を活かしたシェア拡大、オフィス業務のDX・AX推進、そしてAI・IoT・Roboticsを活用した農業・医療・建設などの産業構造の再構築に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


DX・AXの急速な進展に対応するため、企画・開発・営業・内部管理の全部門で人員の拡充と強化を最重要課題としています。社内研修や勉強会による組織の底上げに加え、新卒・中途採用を積極的に行い、優秀な即戦力人材を確保する方針です。また、人事制度や給与制度の改善に投資し、人材の定着率向上にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 33.2歳 5.3年 6,058,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 70.5%
男女賃金差異(正規雇用) 82.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 159.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の新卒採用の比率(21.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の人物への依存


創業者であり代表取締役社長である菅谷俊二氏は、経営方針の決定や開発、特許発明などにおいて中心的な役割を果たしています。権限委譲を進めていますが、同氏に不測の事態が生じた場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) システムダウン及び情報セキュリティ


事業基盤をインターネット通信網に依存しているため、災害や事故による通信断絶、アクセス集中によるサーバーダウン、サイバー攻撃やウイルス感染などが発生した場合、サービス停止や信頼失墜により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定取引及び特定取引先への依存


KDDIへのIoTプラットフォームサービス提供による売上高が全体の30.9%を占めています。良好な関係を維持していますが、契約上の即時解除事由に抵触し契約が解除された場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(4) 技術革新への対応


AI・IoT・Robotics業界は技術革新が速く、利用者ニーズも変化し続けています。新技術への対応遅れや、代替サービスの登場により競争力が低下した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。