※本記事は、今村証券株式会社の有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 今村証券ってどんな会社?
同社は北陸地方に根差し、株式や投資信託などの金融商品取引業を中核とする投資・金融サービス業を展開しています。
■(1) 会社概要
1921年に金沢市で今村直治商店として創業し、1944年に企業整備令により3店を統合して設立されました。1948年に証券業者として登録し、石川県や福井県、富山県へと店舗網を拡大しました。2005年に証券総合取引口座の取扱いや、2014年には東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場しています。
現在、従業員数は単体で191名です。筆頭株主は代表取締役社長の今村直喜氏で、第2位および第3位には今村コンピューターサービスや今村不動産などの関連企業が名を連ねています。同社は子会社を持たず、投資・金融サービス業という単一セグメントで地域密着型の事業運営を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 今村直喜 | 26.55% |
| 今村コンピューターサービス | 9.77% |
| 今村不動産 | 8.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は今村直喜氏が務め、取締役における社外取締役の比率は20.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 今村九治 | 取締役会長(代表取締役) | 1967年山一證券入社。1968年同社入社、同年取締役。常務、専務等を経て1984年に代表取締役社長就任。2019年より現職。 |
| 今村直喜 | 取締役社長(代表取締役) | 1997年山一證券入社。1998年同社入社。営業事務部長、取締役等を経て2019年より現職。今村不動産等の代表取締役社長も兼務。 |
| 宮田秀夫 | 取締役法人部長 | 1978年同社入社。小松支店長や営業業務部長、富山支店長等を歴任し、2021年より現職。 |
| 山内幸一 | 取締役コンプライアンス本部長 | 1985年同社入社。板垣支店長、営業本部副本部長、コンプライアンス本部副本部長等を経て2025年より現職。 |
| 池多将吾 | 取締役営業本部長 | 1995年同社入社。砺波支店長や本店長、営業推進部長等を歴任し、2024年より現職。 |
| 鳥田一彰 | 取締役管理本部長 | 1991年同社入社。内部管理部副部長や管理本部副本部長等を経て2024年より現職。 |
| 伊藤正裕 | 取締役情報システム部長 | 1985年三興コントロール入社等を経て、2001年同社入社。システム部長等を経て2024年より現職。 |
| 山出勉 | 取締役総務部長 | 1991年同社入社。加賀支店長や総務部長等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、室屋和菜(室屋和菜公認会計士・税理士事務所代表)、小島一郎(分析広報研究所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「投資・金融サービス業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■有価証券の売買・委託業務
有価証券の売買、市場デリバティブ取引、および顧客の注文を金融商品市場へ取り次ぐ委託の媒介・代理等のサービスを提供しています。主に個人投資家や法人顧客に対して、国内外の株式や債券などの多様な金融商品を通じた資産運用の機会を提供しています。
収益源は、顧客からの株式売買等に伴う委託手数料や、自己計算で行うトレーディングによる売買損益などです。これらの業務は、北陸地区を中心とした店舗網を有する今村証券が主体となって運営を行っています。
■有価証券の引受け・募集・販売業務
新たに発行される有価証券の引受けや売出し、さらには投資信託などの受益証券の募集・私募の取扱いサービスを提供しています。資産形成の多様なニーズに応えるため、ゴールベースアプローチ型のラップサービスやNISA制度を活用した積立投資なども推進しています。
収益源は、投資信託や債券などの募集・販売に伴う取扱手数料や、顧客の預り資産残高に応じて定期的に受け取る信託報酬などのストック収益です。同社は、対面営業の強みを活かし、きめ細やかなアフターフォローとともに事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、証券市場の動向に影響を受けつつも底堅い推移を見せています。直近の事業年度では、国内外の株式相場の上昇を背景に株券部門や投資信託の手数料が大きく伸び、大幅な増収増益を達成しました。経常利益率は安定して20%台から30%台を維持しており、高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 45億円 | 38億円 | 48億円 | 42億円 | 49億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 9億円 | 15億円 | 10億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 32.1% | 23.8% | 31.2% | 24.3% | 29.8% |
| 当期利益 | 9億円 | 6億円 | 10億円 | 8億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
証券業界特有の市況変動に影響される側面はありますが、増収に伴い営業利益も大きく伸長しています。手数料収入の拡大とストック収益へのシフトが功を奏し、利益率の向上に寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 42億円 | 49億円 |
| 営業利益 | 10億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 23.6% | 28.6% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が25億円(構成比71%)、取引関係費が3億円(同10%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -12億円 | 33億円 |
| 投資CF | -3億円 | -3億円 |
| 財務CF | -5億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も49.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社是「百術不及一誠(百術は一誠に及ばず)」を掲げ、お客様に誠心誠意接し、最善の利益を追求することでお客様とともに発展し続ける企業を目指しています。また、経営理念として「独立独歩」「進取の気性」「百尺竿頭進一歩」を掲げ、特色ある路線を歩みながら未来を先取りし、高い目標へ一歩踏み出す勇気を持つことで、資本市場と国民経済への寄与を目標としています。
■(2) 企業文化
同社は、主体性と自主性を持ち、時代の変化に柔軟に対応できる人材を重んじる文化を持っています。社是である「百術不及一誠」は社員一人ひとりの行動指針にもなっており、常に「誠心誠意」で接し、「自ら考え、自ら行動する」「未来を見据え、新たなチャレンジを行う」姿勢が浸透しています。また、個々の多様性を認め、個性を活かす環境づくりが推進されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的な収益基盤の確立と顧客基盤の拡大に向けて、以下の数値目標を掲げています。
* 受益証券による経費カバー率:2029年3月期までに36%超(長期的には50%超)
* 預り資産:2032年3月期までに4,752億円
* 新たなお客様の獲得:5年間で15,000口座(単年度3,000口座)
* 役職員(非常勤を除く)体制:2030年3月期末までに250名
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「資産運用立国」への追い風を受け、5つの重点施策(「収益構造の変革」「預り資産の増加」「対面営業の強み」「システムの自社運営」「持続可能な社会への取組み」)を推進しています。株式市況に左右されにくいストック収益の拡大を図るため投資信託の預り資産を増やすとともに、地域密着型の対面営業による独自の情報提供や、自社開発システムを活用した迅速なニーズ対応により他社との差別化を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は持続的な成長と企業価値向上のため、役職員の増加を不可欠な課題と位置付けています。採用においては学部や専攻を問わず、主体性と幅広い視野を持つ多様な人材を求めています。育成面では、集合研修やOJTを通じた能力開発に加え、全社横断的なプロジェクトへの参画機会を提供しています。さらに、仕事と育児・介護の両立支援や健康保持、公正な評価制度の整備を通じてエンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.1歳 | 14.9年 | 8,987,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場の縮小に伴うリスク
株式相場の下落や低迷により、市場参加者の減少や株券等の売買高が縮小した場合、委託手数料が減少する可能性があります。また、投資信託等の販売額の縮小により募集等に係る手数料が減少するなど、同社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。同社は株式以外の収益を高めることでリスクの軽減を図っています。
■(2) 競合によるリスク
規制緩和に伴う銀行などとの競合、異業種からの参入、競合他社同士の合併や業務提携等により競争が激化しています。競争力を維持できない場合、経営に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、同社は取扱商品の豊富な品揃えやインターネット取引の自営、信頼される営業員の育成などを通じて競争力の維持・向上に努めています。
■(3) 収益基盤に関するリスク
同社の主たる顧客は個人投資家であるため、個人投資家の投資行動の変化が業績に影響する可能性があります。投資行動は年齢、相場環境、景気動向、税制の変更など様々な要因で変化します。同社は新たなお客様の獲得に注力して収益基盤の拡大を図り、このリスクの顕在化を防ぐ取り組みを行っています。



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