※本記事は、今村証券株式会社 の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 今村証券ってどんな会社?
北陸3県を主要地盤とし、対面営業を強みとする独立系証券会社です。地域密着型のサービスを提供しています。
■(1) 会社概要
1921年に金沢市で今村直治商店として創業し、1944年に今村証券を設立しました。2014年にジャスダック(現スタンダード)へ上場を果たし、2017年には富山支店を開設するなど営業基盤を拡大しています。2022年の東証市場区分見直しにより、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
連結子会社はなく、単体従業員数は198名です。筆頭株主は社長の今村直喜氏で、第2位は関連会社の今村コンピューターサービス、第3位は今村不動産となっており、創業家および関連会社による安定的な保有構造が見られます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 今村 直喜 | 26.55% |
| 今村コンピューターサービス | 9.77% |
| 今村不動産 | 8.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名、計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は今村直喜氏です。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 今村 九治 | 取締役会長(代表取締役) | 1967年山一證券入社。1968年同社入社。1984年代表取締役社長、2019年1月より現職。今村不動産および今村コンピューターサービス取締役会長を兼任。 |
| 今村 直喜 | 取締役社長(代表取締役) | 1997年山一證券入社。1998年同社入社。営業事務部長等を経て2013年取締役。2019年1月より現職。今村不動産および今村コンピューターサービス代表取締役社長を兼任。 |
| 宮田 秀夫 | 取締役法人部長 | 1978年入社。小松支店長、営業部長、営業推進部長、富山支店長等を経て、2021年4月より現職。 |
| 山内 幸一 | 取締役コンプライアンス本部長 | 1985年入社。板垣支店長、営業本部副本部長、コンプライアンス本部副本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 池多 将吾 | 取締役営業本部長 | 1995年入社。砺波支店長、本店長、営業推進部長を経て、2024年4月営業本部長。同年6月より現職。 |
| 鳥田 一彰 | 取締役管理本部長 | 1991年入社。加賀支店長、内部管理部副部長、管理本部副本部長を経て、2024年4月管理本部長。同年6月より現職。 |
| 伊藤 正裕 | 取締役情報システム部長 | ピュアシステム等を経て2001年入社。システム部長を経て、2023年情報システム部長。2024年6月より現職。 |
| 山出 勉 | 取締役総務部長 | 1991年入社。加賀支店長等を経て、2017年総務部長。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、室屋和菜(公認会計士・税理士)、小島一郎(元分析広報研究所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「投資・金融サービス業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 金融商品取引業
国内外の株式、債券、投資信託などの有価証券の売買、媒介、取次ぎ、引受け、募集、売出し等を行っています。また、市場デリバティブ取引や投資一任契約の媒介、保険販売なども手掛け、顧客の資金調達と資産運用の両面を幅広いサービスで支援しています。
収益は主に、株式や投資信託の売買に伴い顧客から受け取る委託手数料、投資信託などの募集・売出しの取扱手数料、および自己資金での売買によるトレーディング損益などから構成されています。運営は今村証券が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、営業収益は40億円台を中心に推移していますが、株式市況や債券販売環境の影響を受け増減が見られます。利益面では、経常利益率は20〜30%台の高い水準を維持しているものの、当期は減収に伴い前期比で減益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 50億円 | 45億円 | 38億円 | 48億円 | 42億円 |
| 経常利益 | 19億円 | 14億円 | 9.1億円 | 15億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 38.2% | 32.1% | 23.8% | 31.2% | 24.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 9.4億円 | 6.1億円 | 10億円 | 7.6億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して営業収益、営業利益ともに減少しました。特に受入手数料の減少が全体の減収に影響しています。営業利益率は低下しましたが、依然として20%を超える高い収益性を確保しており、堅実な事業運営が続いています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 48億円 | 42億円 |
| 純営業収益 | 48億円 | 42億円 |
| 純営業収益率(%) | 99.6% | 99.6% |
| 営業利益 | 15億円 | 9.9億円 |
| 営業利益率(%) | 30.6% | 23.6% |
販売費・一般管理費のうち、人件費が23億円(構成比70.7%)、取引関係費が3.2億円(同10.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は投資・金融サービス業の単一セグメントであるため、全社の営業収益がそのまま事業の収益となります。当期は株式市況の変動や仕組債販売の減少、投資信託販売の反動減などを受け、営業収益は前期比で減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 投資・金融サービス業 | 48億円 | 42億円 |
| 連結(合計) | 48億円 | 42億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、株主への継続的かつ安定的な利益還元を目指し、将来の事業展開や一時的な業績不振にも柔軟に対応できる流動性を確保しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、個人投資家の取引低調による減収減益の影響を受け、資金が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、自己資金での投資有価証券取得による支出が増加したものの、売却収入もあったことから、資金減少額は前事業年度と比較し僅かに縮小しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額が増加したことにより、資金減少額は前事業年度と比較し拡大しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 20億円 | -12億円 |
| 投資CF | -3.1億円 | -3.1億円 |
| 財務CF | -4.0億円 | -4.9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社是として「百術不及一誠(百術は一誠に及ばず)」を掲げ、小細工ではなく真心で接することの重要性を説いています。また、「独立独歩」「進取の気性」「百尺竿頭進一歩」を経営理念とし、独自の路線を歩みながら常に未来を見据え、さらなる高みを目指して挑戦し続ける姿勢を重視しています。
■(2) 企業文化
社是に基づき、全ての顧客に対して誠心誠意接することを大切にする文化があります。顧客の最善の利益を追求し、共に発展することを目指すとともに、常に未来を先取りし続ける「進取の気性」を尊重しています。また、自社でシステムを開発・運営する方針など、「独立独歩」の精神も根付いています。
■(3) 経営計画・目標
「旧収益構造からの脱出」「預り資産の倍増」「人的資本への投資」を優先課題としています。特に、投資信託による信託報酬等(ストック収益)で販管費をカバーする「受益証券による経費カバー率」を重要な指標とし、中期的に36%超(長期的には50%超)とすることを目指しています。
* 受益証券による経費カバー率:中期的36%超(長期的50%超)
* 預り資産の倍増:2032年3月期末までに倍増(2022年3月期末基準)
* 新規顧客獲得:5年間で15,000口座
* 役職員体制:2030年3月期末までに250名体制
■(4) 成長戦略と重点施策
ストック収益の拡大による収益構造の変革や、対面営業の強みを活かした差別化に注力しています。また、自社開発システムの活用による顧客利便性の向上や、NISA制度普及を背景とした資産形成層の取り込み、地方証券会社連携コンソーシアムを通じた地方創生への取り組みなどを推進し、顧客基盤の拡大と企業価値の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「百術不及一誠」の社是のもと、主体性と自主性を持ち、誠心誠意行動できる人材を求めています。従業員エンゲージメント向上のため、FP等の資格取得支援や専門教育を提供し、自発的な能力開発を促進しています。また、2030年までに役職員250名体制を目指し、新卒採用を中心にキャリア採用も併用して人材確保を強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.7歳 | 15.6年 | 8,415,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場の縮小に伴うリスク
株式相場の下落や低迷により市場参加者が減少し、売買高が縮小した場合、委託手数料が減少する可能性があります。また、投資信託等の販売額縮小により手数料収入が減少するなど、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。同社は株式以外での収益を高めることで軽減を図っています。
■(2) 競合によるリスク
規制緩和に伴う銀行等との競合、異業種からの参入、他社同士の再編等により競争が激化しています。競争力を維持できない場合、業績に影響する可能性があります。同社は豊富な品揃えやインターネット取引の自営、信頼される営業員の育成等により競争力の維持・向上に努めています。
■(3) 収益基盤に関するリスク
同社の主たる顧客は個人投資家であり、年齢、相場環境、景気動向、税制変更等による投資行動の変化が業績に影響する可能性があります。同社は新規顧客の獲得に注力して収益基盤の拡大を図り、リスクの軽減に努めています。
■(4) システムに関するリスク
業務で使用するシステムや通信回線に障害が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はシステムの冗長化、ソフトウエア使用前のテスト実施、監視機能の充実、災害・停電への訓練実施等の対策を行い、リスクの顕在化防止に努めています。



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