大冷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大冷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大冷は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、医療食や外食向け等に業務用冷凍食品の企画および販売を展開しています。2026年3月期の連結業績は、安価な商品の拡販に努めたものの、値引き等による粗利率低下が響き、前年同期比で減収・経常減益となりましたが、当期純利益は黒字転換を果たしました。


※本記事は、株式会社大冷の有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大冷ってどんな会社?


同社は業務用冷凍食品に特化したメーカーであり、骨なし魚などの付加価値商品の企画・販売に強みを持っています。

(1) 会社概要


同社は1972年に設立されました。1998年には同社の強みである商品開発力を活かして「骨なし魚」の開発に成功し、主力事業へと成長しました。2014年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2016年には同市場第一部へ銘柄指定を受け、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

同社は単体で146名の従業員を擁し、国内外の協力工場に製造を委託するファブレス形態で事業を展開しています。筆頭株主は創業関係の資産管理会社であるフルタで過半数の株式を保有しており、第2位に古田耕司氏、第3位に大冷社員持株会が名を連ねるなど、上位株主は関係者や社内組織で占められています。

氏名 持株比率
フルタ 51.44%
古田耕司 2.33%
大冷社員持株会 1.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は冨田史好氏が務めており、社外取締役比率は約43%です。

氏名 役職 主な経歴
冨田史好 代表取締役社長執行役員 三和銀行等を経て、2012年に同社入社。代表取締役副社長等を経て2025年より現職。
髙付広昭 取締役専務執行役員社長補佐兼経営企画室長 宝幸水産を経て、2004年に同社入社。開発統括本部長等を経て2025年より現職。
黒川岳夫 取締役専務執行役員管理統括本部長 三和興業等を経て、2001年に同社入社。管理統括本部長兼経営企画室長等を経て2025年より現職。
竹内奈儀左 取締役常勤監査等委員 文化シャッターを経て、1995年に同社入社。2025年より現職。


社外取締役は、長尾敏成(長尾敏成法律事務所代表)、川田剛(税理士法人山田&パートナーズ会長)、布施雅弘(元三菱UFJ信託銀行執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「業務用冷凍食品卸売事業」の単一セグメントで事業を展開しており、主に以下の部門で構成されています。

(1) 骨なし魚事業


医療食や介護食用などに魚の骨をすべて取り除いた「骨なし魚」の企画・販売を行っています。凍ったまま調理できて冷めても柔らかさが持続する「楽らくクックシリーズ」など付加価値の高い商品を展開し、サーモントラウトやさば等、豊富な魚種を取り揃えています。

収益は、国内の医療・介護施設、弁当仕出し業者、外食産業などのエンドユーザーおよび問屋に対する商品の販売代金から得ています。商品の製造は当社の検査基準を満たした国内外の協力工場に委託するファブレス形態をとっており、運営は大冷が行っています。

(2) ミート事業


骨なし魚の開発で培った加工技術を応用し、畜肉商品の企画・開発を行っています。オリジナルの特殊加工により肉の臭みを軽減し、冷めても柔らかさが持続する「楽らく匠味シリーズ」などの画期的な商品を展開しており、調理済みの商品群も充実させています。

収益は、骨なし魚事業と同様にエンドユーザーや問屋等への商品販売代金として受領しています。安価で価格競争力のあるタイ生産の鶏肉製品の拡販などに取り組んでおり、本事業もファブレスモデルの下で大冷が主体となって運営を行っています。

(3) その他事業


惣菜等の調理冷凍食品や冷凍野菜、魚フライ、練り製品、水産品などの企画・販売を行っています。また、製造委託先からの提案を受けた商品開発や、大手ユーザーとの直接商談によるプライベートブランド(PB)商品の開発販売にも積極的に取り組んでいます。

本事業の収益も、製品の販売代金から得ています。外部業者に保管や物流を委託し、1ケースからの翌日配送が可能なデリバリーシステムを構築することで顧客の利便性を高めており、大冷が各製造委託先と連携しながら事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は250億円から270億円台で推移してきましたが、直近2期は減収傾向にあります。利益面でも原材料価格や物流費の高騰等が影響し、利益率が徐々に低下してきましたが、直近の2026年3月期には当期利益が黒字転換を果たし、回復の兆しを見せています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 230億円 272億円 274億円 257億円 251億円
経常利益 11億円 15億円 11億円 8億円 7億円
利益率(%) 4.6% 5.6% 4.0% 3.3% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 10億円 8億円 -6億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益率はほぼ横ばいの15%台を維持しています。しかし、低価格志向に対応するための値引き等により粗利益の額自体が減少したことが響き、営業利益率も前期の3.3%から2.6%へと低下しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 257億円 251億円
売上総利益 40億円 38億円
売上総利益率(%) 15.7% 15.2%
営業利益 8億円 7億円
営業利益率(%) 3.3% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料が7.9億円(構成比25%)、運搬費が6.1億円(同19%)、保管費が5.0億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は業務用冷凍食品卸売事業の単一セグメントであるため、部門別の売上高を比較します。主力の骨なし魚事業およびその他事業が前年同期比で減収となった一方、ミート事業はアメリカンドック類の販売回復により微増収となり、部門間で明暗が分かれました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
骨なし魚事業 90億円 87億円
ミート事業 24億円 24億円
その他事業 143億円 139億円
連結(合計) 257億円 251億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を進めつつ、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7.1億円 3.1億円
投資CF -1.5億円 -0.3億円
財務CF -6.7億円 -4.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「安全と安心を優先に顧客に満足と感動を提供する。」を経営理念として掲げています。エンドユーザーの「安全安心でおいしく、安価で簡単調理な商品を」というニーズに応える商品の提供を自社の使命と認識し、事業を通じた社会貢献と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「FOR THE COMPANY」という基本理念に基づき、全てのステークホルダーの人権を尊重し、多様な従業員が働きがいを感じられる職場環境づくりを重視しています。安全・安心な商品提供を第一に考え、品質やコストなど公正で合理的な基準に基づく仕入先の選定を徹底する文化を有しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、収益の安定と財務体質の強化、資本効率の向上を目指し、経営数値目標を設定してその達成に取り組んでいます。投資家が経営方針や戦略の進捗状況を評価できるよう、2026年度において以下の具体的な目標値を掲げています。

* 売上高:252億円
* 経常利益:8億円
* 経常利益率:3.1%
* ROE:7.1%
* ROA:6.7%

(4) 成長戦略と重点施策


高付加価値商品の開発により価格競争からの回避を図ることを基本戦略としています。骨なし魚事業では新商品「MOTTO」シリーズの拡販で事業の再構築を図り、ミート事業ではタイで生産する安価で競争力のある製品の拡販を進めます。また、拡大が見込まれるシルバー市場の需要取り込みや、生産拠点の分散・国内シフトによるリスク管理の強化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


組織力向上のための適切な人員配置に加え、従業員が主体的・自律的なキャリア形成を図れるよう支援する方針を掲げています。従業員が能力を最大限に発揮できるよう人事制度や教育研修体系を整備し、多様性を認め合いながら「創造と挑戦を実践する人づくり」に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.1歳 16.8年 5,705,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は従業員規模が300人以下のため、男性育児休業取得率および男女賃金差異は公表義務の対象ではなく、有報には記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全性と風評被害


同社は国内外の協力工場に対する衛生・品質管理を徹底していますが、想定外の商品クレームや大規模な回収事態が発生した場合、多額の費用負担が生じる可能性があります。また、食品業界全体に関わる安全性問題により風評被害が発生し、同社商品に問題がなくとも受注が減少するリスクが存在します。

(2) 為替や原材料の市況変動


同社が取り扱う商品の約55%は海外の協力工場に依存しているため、急激な為替レートの変動により仕入価格が高騰した場合、販売価格への転嫁が遅れ業績に影響を及ぼす可能性があります。また、漁獲規制や水揚げ数量の変動等による原材料価格の高騰もリスク要因となります。

(3) 特定仕入先と海外生産への依存


主要な仕入先への依存が存在しており、これらの企業との取引終了や災害等による生産支障が業績に影響を与える可能性があります。また、商品の約40%を中国の生産拠点に依存しているため、地政学リスク等に備えてタイやベトナムへの拠点分散や国内シフトを進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。