※本記事は、株式会社大冷 の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大冷ってどんな会社?
業務用冷凍食品の企画販売を行うファブレスメーカーです。骨を取り除いた「骨なし魚」シリーズが主力製品です。
■(1) 会社概要
1971年に創業し、翌1972年に設立されました。1998年に主力商品となる「骨なし魚」の開発に成功し、市場を開拓しました。2014年に東証二部へ上場し、2016年には東証一部銘柄に指定されました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場へ移行しています。
単体従業員数は150名で、連結子会社はありません。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社であるフルタで、第2位も創業家出身の個人株主となっており、安定的な株主構成です。社員持株会も上位株主に名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| フルタ | 48.79% |
| 古田耕司 | 4.51% |
| 大冷社員持株会 | 1.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は冨田史好氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 冨田史好 | 代表取締役社長 | 元三菱UFJ銀行。アドヴァン、テクノフレックスを経て同社入社。経営企画室長、副社長を経て2019年より現職。 |
| 髙付広昭 | 専務取締役社長補佐兼経営企画室長 | 元宝幸水産。同社入社後、広域事業部長、開発統括本部長、常務取締役を経て2024年より現職。 |
| 黒川岳夫 | 専務取締役管理統括本部長 | 元三和興業、コスモコミュニケーションズ等。同社管理部長、常務取締役管理統括本部長等を経て2024年より現職。 |
| 竹内奈儀左 | 取締役常勤監査等委員 | 元文化シャッター。同社入社後、2025年より現職。 |
社外取締役は、長尾敏成(長尾敏成法律事務所代表弁護士)、川田剛(税理士法人山田&パートナーズ会長)、布施雅弘(元三菱UFJ信託銀行執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「骨なし魚」「ミート」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 骨なし魚事業
医療・介護食向けに開発された、魚の骨をすべて取り除いた「骨なし魚」シリーズを提供しています。主力商品は、凍ったまま調理できる「楽らくクックシリーズ」や調味済みの「楽らく調味シリーズ」などがあり、病院、介護施設、学校給食などが主な顧客です。
同社が企画・開発を行い、国内外の協力工場で製造するファブレス形態をとっています。商品は同社が全国の問屋等を通じて販売し、収益を得ています。自社ブランド商品のほか、特定ユーザー向けのPB商品も取り扱っています。運営は主に同社が行っています。
■(2) ミート事業
骨なし魚で培った技術を応用した畜肉商品を提供しています。冷めても柔らかく、肉の臭みを抑えた「楽らく匠味シリーズ」が主力で、鶏・牛・豚の各種カット肉や調理品を展開しています。
骨なし魚事業と同様、同社が企画・開発を行い、協力工場で製造しています。商品の販売により収益を得ており、運営は同社が行っています。
■(3) その他事業
惣菜等の調理冷食、冷凍野菜、魚フライ、練り製品、水産品(えび等)を提供しています。製造委託先からの提案を受けた商品や、大手ユーザー向けのPB商品なども取り扱っています。
同社が企画・販売を行い、収益を得ています。前期に工場トラブル等で売上が減少したえび商品については、工場の追加による安定供給を図っています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期まで拡大傾向にありましたが、その後は横ばいから減少に転じています。経常利益も2023年3月期をピークに減少傾向です。2025年3月期は減収減益に加え、特別損失の計上により当期純利益が赤字となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 225億円 | 230億円 | 272億円 | 274億円 | 257億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 11億円 | 15億円 | 11億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 4.6% | 5.6% | 4.0% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 7億円 | 10億円 | 8億円 | -6億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が減少しています。販管費は微減にとどまりましたが、営業利益率は低下しました。当期は事業整理損として11億円の特別損失を計上したため、税引前利益および当期純利益がマイナスとなっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 274億円 | 257億円 |
| 売上総利益 | 43億円 | 40億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.6% | 15.7% |
| 営業利益 | 11億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が8億円(構成比25%)、運搬費が6億円(同20%)、保管費が5億円(同16%)を占めています。売上原価は217億円で、売上高に対する構成比は84%です。
■(3) セグメント収益
当期は全セグメントで売上高が伸び悩みました。特に主力の骨なし魚事業は、ユーザーの低価格志向に伴う販売数量の減少により減収となりました。その他事業もえび商品の販売軟調等が影響し微減となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 骨なし魚事業 | 104億円 | 90億円 |
| ミート事業 | 24億円 | 24億円 |
| その他事業 | 146億円 | 143億円 |
| 連結(合計) | 274億円 | 257億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラスを維持し、借入金の返済や配当金の支払いに充当しており、健全型のキャッシュ・フローです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 7億円 |
| 投資CF | -1億円 | -2億円 |
| 財務CF | -4億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「安全と安心を優先に顧客に満足と感動を提供する。」という経営理念を掲げています。エンドユーザーのニーズに応える安全で安価かつ簡便な商品の提供を使命と認識し、高付加価値商品の開発を通じて価格競争からの回避を図ることを基本戦略としています。
■(2) 企業文化
「FOR THE COMPANY」を基本理念とし、全社員参加の環境活動などを推進しています。ファブレスメーカーとして、国内外の協力工場との連携を重視し、仕入先とともに目標達成を目指す姿勢を持っています。また、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境づくりを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度において、以下の経営数値目標を掲げています。
* 売上高:264億円
* 経常利益:10億円
* 経常利益率:3.8%
* ROE:7.1%
* ROA:8.1%
* 配当性向:52.6%
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、海外協力工場の拡充によるコストダウンや生産拠点の分散(タイ、ベトナム等への新設・拡充)を進めています。また、新商品の販売強化やエンドユーザーへの直接営業の強化を図り、優位性の維持に努めています。さらに、シルバー市場の需要取り込みや販売チャネルの多様化による収益構造の多角化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
組織力向上のための適切な人員配置に加え、個人としての主体的なキャリア形成を支援しています。成果だけでなく組織力向上への貢献も評価し、多様な従業員が働きがいを持てる職場づくりや、能力を最大限発揮できる人事制度・教育研修体系の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.9歳 | 16.5年 | 5,573,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※「男性労働者の育児休業取得率」および「労働者の男女の賃金の差異」については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品の安全性と品質管理
国内外の協力工場に対して衛生・品質管理を徹底していますが、予期せぬ商品クレームの大量発生や、生産国での食品安全性問題による輸入禁止措置などが生じた場合、商品の回収費用や調達・供給への支障により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の市況変動
水産物や畜肉などの原材料について、漁獲規制、相場変動、感染性疾病による生産量低下などが生じた場合、原材料価格の高騰や欠品の発生により、業績に影響を与える可能性があります。分散調達等で対策を行っていますが、想定以上の変動リスクがあります。
■(3) 為替レートの変動
骨なし魚など海外からの仕入比率が約60%を占めるため、為替変動の影響を受けます。急激な為替レートの変動により仕入価格が高騰し、販売価格への転嫁が遅れた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 特定の仕入先への依存
重要な仕入先である三翔やセイショウフーズ等への依存度が高くなっています。分散調達を進めていますが、これら企業との契約終了や生産体制のトラブル等が発生した場合、商品の安定供給に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。



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