※本記事は、イーレックスの有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。
1. イーレックスってどんな会社?
イーレックスは、再生可能エネルギーをコアに、電力小売事業、発電事業、燃料事業などを展開する総合エネルギー企業です。
■(1) 会社概要
1999年に設立され、2001年に特定規模電気事業者として電力小売を開始しました。2013年の土佐発電所商業運転開始を皮切りに発電事業へ参入し、2014年にマザーズへ上場、2015年に東証一部へ市場変更しています。近年はベトナムやカンボジアなど海外での再生可能エネルギー事業にも積極的に注力しています。
現在の従業員数は連結で302名、単体で185名です。筆頭株主は投資ファンドであるUH Partners 3投資事業有限責任組合で、第2位は金融機関のDAIWA CM SINGAPORE LTD、第3位は資本業務提携を締結している事業会社のJFEエンジニアリングとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| UH Partners 3投資事業有限責任組合 | 8.49% |
| DAIWA CM SINGAPORE LTDーNOMINEE HIKARI TSUSHIN INVESTMENTS ASIA PTE LTD | 6.84% |
| JFEエンジニアリング | 5.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は本名均氏が務めており、社外取締役比率は27.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 本名均 | 代表取締役社長 | 東亜燃料工業に入社後、事業計画部部長等を歴任。2000年に同社代表取締役副社長に就任し、関連会社の社長等を務めた後、2016年より現職。 |
| 角田知紀 | 専務取締役 | 東亜燃料工業に入社後、執行役員広報渉外本部長等を歴任。KHネオケム執行役員を経て2018年に同社入社。常務取締役等を経て2025年より現職。 |
| 斉藤靖 | 常務取締役 | 昭和シェル石油を経て2001年に同社入社。事業開発部長、経営企画部長等を歴任し、関連会社の代表取締役社長を務めた後、2025年より現職。 |
| 田中稔道 | 常務取締役 | メイタン・トラディション等を経て2000年に同社入社。営業部長、関連会社の代表取締役社長等を歴任し、2025年より現職。 |
| 平井教夫 | 取締役 | 三井銀行に入行後、企業情報部長等を歴任。2020年に同社に入社し、財務経理部長、執行役員を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、田村信(四条代表取締役社長)、守田道明(元上田八木短資代表取締役社長)、木村滋(元東京電力副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電力小売事業」「発電事業」「燃料事業」「トレーディング事業」「海外事業」を展開しています。
■(1) 電力小売事業
全国の法人および個人の需要家に対して電力の販売を行っています。高圧分野では完全固定プランやハイブリッドプラン等の先駆的なプランを提供し、低圧分野では代理店網を活用した市場連動型プランを中心とした販売や蓄電池事業などにも取り組んでいます。
収益源は需要家からの電気料金等であり、運営は主にエバーグリーン・マーケティング、エバーグリーン・リテイリング、沖縄ガスニューパワー、イーセルなどの販売子会社が行っています。
■(2) 発電事業
佐伯、豊前、大船渡および沖縄の4発電所において、パーム椰子殻(PKS)や木質ペレットといったバイオマスを燃料とする発電所を運営しています。また、石炭火力発電所である糸魚川発電所も保有しています。
収益源は、再生可能エネルギーのFIT制度等に基づき、発電した電力を同社グループおよび一般送配電事業者等へ販売することによる売電収入です。運営はイーレックスニューエナジー等の各発電関連子会社が行っています。
■(3) 燃料事業
バイオマス発電の先駆者として培ったノウハウを活かし、良質なバイオマス燃料の調達を行っています。インドネシアに備蓄ヤードを整備し、ベトナムでは木質ペレット工場を運営するなど、現地生産者との直接交渉により安定供給に努めています。
収益源は、同社グループの発電所向けに加え、他社に対してバイオマス燃料を販売することによる燃料卸売収入です。運営は同社およびEREX SINGAPORE PTE. LTD.などの子会社が行っています。
■(4) トレーディング事業
同社グループの発電所および相対契約事業者からの調達を主体に、日本卸電力取引所等の市場からの調達を組み合わせ、安定的かつ価格競争力のある電力調達を行っています。また、独自プランの組成やカーボンクレジット取引も計画しています。
収益源は、卸電力取引所等への電力販売による卸売収入や、グループ内の小売事業を通じた販売への貢献です。運営は主に同社が行っています。
■(5) 海外事業
東南アジア諸国の脱炭素とエネルギー自給率向上に貢献するため、ベトナムやカンボジアで大型の商用バイオマス発電所や水力発電所の建設・運営を進めています。また、既設の石炭火力発電所でのバイオマス混焼事業も計画しています。
収益源は、海外の現地発電所における売電収入や、創出されるカーボンクレジットを活用した取引収入などです。運営はHAU GIANG BIOENERGY JOINT STOCK COMPANY等の海外子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年3月期は燃料価格の高騰等により利益面で大きなマイナスを計上しましたが、その後の2期間においては燃料調達の安定化や事業環境の改善により、売上は安定的に推移しつつ税引前利益および当期利益は着実な回復と増益を見せています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,450億円 | 1,712億円 | 1,692億円 |
| 税引前利益 | -199億円 | 63億円 | 90億円 |
| 利益率(%) | -8.1% | 3.7% | 5.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -213億円 | 21億円 | 53億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となったものの、燃料調達コストの低減等の影響により売上総利益および営業利益はともに増加しており、利益率の改善が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,712億円 | 1,692億円 |
| 売上総利益 | 66億円 | 70億円 |
| 売上総利益率(%) | 3.8% | 4.1% |
| 営業利益 | 71億円 | 75億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 4.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が26億円(構成比19%)、代理店報酬が18億円(同14%)を占めています。また、売上原価のうち、電力仕入が958億円(構成比75%)、燃料仕入が310億円(同24%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は電力事業を主たる事業とする単一セグメントであるため、連結合計の数値を記載しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結(合計) | 1,712億円 | 1,692億円 | 71億円 | 75億円 | 4.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 195億円 | 22億円 |
| 投資CF | -55億円 | -159億円 |
| 財務CF | 0.3億円 | 72億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「~持続可能な社会実現のために~再生可能エネルギーをコアに電力新時代の先駆者になる」というビジョンを掲げています。日本市場のみならず、アジア諸国においても脱炭素に向けた取り組みを段階的に着実に具現化することを使命として経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社は、創業より受け継ぐ「挑む文化」を重視して経営を行っています。この価値観のもと、従来の枠組みにとらわれることなく新たな事業領域への挑戦を続け、「総合エネルギー企業」へと進化していくことを組織の行動様式としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は世界的な脱炭素方針の継続や地政学リスクによるエネルギー安全保障への対応を見据え、収益源の多層化を図ることを目標としています。中長期的な成長に向け、2030年までのロードマップを描きつつ、事業の持続的な拡大と企業価値の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は、供給力・創出・最適化を一体化したエネルギープラットフォームを構築し、上流から下流までの一貫体制のバリューチェーンを実現することに注力します。具体的には、海外バイオマス発電所や混焼事業からのカーボンクレジット創出、および蓄電池事業やコーポレートPPA等のソリューション提供を重点施策として推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長を実現するために人材を最も重要な経営資本の一つと位置付けています。事業ポートフォリオの拡大に対応すべく、成長領域における専門人材の採用強化や既存社員の戦略的な配置転換を通じ、事業成長を支える人材ポートフォリオの最適化を図ることを方針としています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.9歳 | 4.9年 | 8,857,104円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.0% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 61.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
同社はパート・有期労働者の男女賃金差異に関して、有報上に「-」と表記されており具体的な数値が掲載されていないため、本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(3.0)、アブセンティーズム(2.5)、プレゼンティーズム(85)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 電気事業制度の改正
同社グループは電気事業法に基づく事業を行っており、電力システムに関する詳細な制度設計や制度見直しの議論が継続されています。エネルギー基本計画の改定により電源構成の大幅な変化が生じた場合、競争状況や同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法令・FIT制度等の改正
同社グループが運営する発電所は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の設備認定を受けています。経済産業省等による制度の検討状況や、エネルギー政策などの各種法令が変更された場合、同社グループの事業運営やキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
■(3) 卸電力取引市場の価格変動
同社グループが行う電力卸売事業は、日本卸電力取引所への販売および同市場からの調達を行っています。国際情勢を反映した資源価格や気象条件、発電所の稼働状況等により取引価格が大きく変動した場合、同社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 燃料調達の価格上昇
発電所で使用するバイオマス燃料(PKSや木質ペレット等)について、世界的な需要増加や生産国における法令・税制変更等により価格上昇が生じた場合、原材料費の増加につながり、同社グループの収益に影響を及ぼす可能性があります。



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