イーレックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イーレックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しています。再生可能エネルギーを基軸に、燃料、発電、トレーディング、電力小売の4事業を一体展開する新電力の大手です。2025年3月期の連結業績は、売上収益が前期比で減少したものの、営業損益および親会社の所有者に帰属する当期損益は黒字転換を果たしました。


※本記事は、イーレックス株式会社 の有価証券報告書(第27期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. イーレックスってどんな会社?


再生可能エネルギーをコアに、燃料調達から発電、電力取引、小売までを一貫して手掛ける独立系新電力会社です。

(1) 会社概要


1999年に日短エナジーとして設立され、2000年にイーレックスへ商号変更しました。2001年に特定規模電気事業者の届出を行い、九州・関東地区で電力小売を開始しました。2014年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2015年に市場第一部へ変更、2022年にプライム市場へ移行しました。近年は海外展開を加速させ、2025年にはベトナムで同国初となる大型商用バイオマス発電所の商業運転を開始しています。

連結従業員数は284名、単体では173名です。筆頭株主は株式会社UH Partners 3で、第3位には資本業務提携先であるJFEエンジニアリング株式会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
株式会社UH Partners 3 8.41%
DAIWA CM SINGAPORE LTD(TRUST A/C) 6.84%
JFEエンジニアリング株式会社 5.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は本名均氏です。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
本名 均 代表取締役社長 東亜燃料工業(現ENEOS)出身。2000年同社代表取締役副社長に就任。複数の子会社社長を経て、2016年6月より現職。
角田 知紀 専務取締役 東亜燃料工業(現ENEOS)、KHネオケム執行役員を経て2018年同社入社。経営企画部長などを歴任し、2024年3月より現職。海外事業統括部長を兼務。
斉藤 靖 常務取締役 昭和シェル石油出身。2001年同社入社。事業開発部長、営業部長、人事部長等を歴任。2025年5月より現職。人事部長兼総務部長を兼務。
田中 稔道 常務取締役 メイタン・トラディション、日短エクスコを経て2000年同社入社。営業部長、小売統括部長等を歴任。エバーグリーン・マーケティング等の子会社社長を兼務。
平井 教夫 取締役 三井銀行(現三井住友銀行)出身。2020年同社入社。財務経理部長等を歴任し、2025年6月より現職。財務部長兼経理部長兼総務部長を兼務。


社外取締役は、田村信(四条代表取締役社長)、守田道明(元日本銀行業務局長)、木村滋(元東京電力副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、電力事業を主な事業としており、以下の5つの機能に分類して事業を展開しています。

(1) 電力小売事業


全国の法人・個人の需要家に対し電力を販売しています。高圧分野では完全固定プランや市場連動プラン等の提案に加え、脱炭素社会に向けたPPA等のソリューションを提供しています。低圧分野では代理店網を活用し、市場連動型プランを中心に販売しています。

運営は主にエバーグリーン・マーケティング、エバーグリーン・リテイリング、沖縄ガスニューパワー、イーセルが行っています。

(2) 発電事業


バイオマスを燃料とする発電所(佐伯、豊前、大船渡、沖縄)を保有し、FIT制度に基づき発電した電力を同グループおよび一般送配電事業者等に販売しています。なお、土佐発電所は運転を休止しており、糸魚川発電所(石炭火力)は2025年度の運転を見合わせる予定です。

運営は主にイーレックスニューエナジー、イーレックスニューエナジー佐伯、沖縄うるまニューエナジー等が行っています。

(3) 燃料事業


バイオマス燃料(パーム椰子殻や木質ペレット)をインドネシア、マレーシア、ベトナム等の生産国から調達し、同グループの発電所および他社へ販売しています。インドネシアに備蓄ヤード、ベトナムに木質ペレット工場を整備し、安定供給に努めています。

運営は主に同社、EREX SINGAPORE PTE. LTD.等が行っています。

(4) トレーディング事業


同グループ発電所や相対契約事業者、日本卸電力取引所からの電力調達を組み合わせ、安定的かつ競争力のある電力調達を行っています。また、トレーディングのノウハウを活かした小売プランの組成や、将来的なカーボンクレジットのトレーディング準備も進めています。

運営は主に同社が行っています。

(5) 海外事業


ベトナムやカンボジアにおいて再生可能エネルギー事業を展開しています。ベトナムではバイオマス発電所の建設・運営や木質ペレット製造を行い、カンボジアでは水力発電所やバイオマス発電所の建設を進めています。

運営は主にHAU GIANG BIOENERGY JOINT STOCK COMPANY等の現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2025年3月期は、売上収益が前期と比較して減少しました。一方で、利益面では税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに、多額の損失を計上した前期から大きく改善し、黒字転換を果たしました。利益率もプラスに回復しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 2,450億円 1,712億円
税引前利益 -199億円 63億円
利益率(%) -8.1% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -213億円 21億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益は減少していますが、売上原価が大幅に抑制されたことで売上総利益はマイナスからプラスへ転換しました。これに伴い、営業損益も黒字化しています。原価率の改善が収益性の回復に大きく寄与していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,450億円 1,712億円
売上総利益 -87億円 205億円
売上総利益率(%) -3.6% 12.0%
営業利益 -219億円 71億円
営業利益率(%) -9.0% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、その他が40億円(構成比36.7%)と最も大きく、次いで従業員給付費用が22億円(同20.6%)、代理店報酬が14億円(同12.7%)を占めています。売上原価においては、電力仕入が976億円(売上原価の80.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


電力小売事業は販売単価の変動等により増収となりました。一方、電力卸売事業は相対での卸販売電力量の減少や売上高の減少により、大幅な減収となりました。その他事業は微減となりました。全体としては電力卸売事業の減収影響が大きく、連結売上収益は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
電力小売 753億円 972億円
電力卸売 1,478億円 537億円
その他 218億円 203億円
連結(合計) 2,450億円 1,712億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスの「積極型」です。本業で得た資金に加え、財務活動でも資金を調達し、投資を行っている状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -227億円 195億円
投資CF -66億円 -55億円
財務CF 151億円 0.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは、「~持続可能な社会実現のために~再生可能エネルギーをコアに電力新時代の先駆者になる」という2030年ビジョンを掲げています。日本市場だけでなく、アジア諸国においても脱炭素に向けた取り組みを着実に具現化し、「総合エネルギー企業」への進化を目指しています。

(2) 企業文化


創業より受け継ぐ「挑む文化」を重視しています。また、バリューとして「挑戦とスピード」、「共創」を掲げ、従業員への浸透を図っています。これらの価値観のもと、脱炭素社会の実現に向けた事業活動を推進しています。

(3) 経営計画・目標


第7次エネルギー基本計画における再生可能エネルギー比率倍増の方針を踏まえ、脱炭素戦略として2030年に2500万tのCO2削減を掲げています。さらに、2050年のカーボンマイナス実現に向け、環境価値を収益源として成長を加速させることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


海外ではベトナムでのバイオマス発電所建設や石炭火力への混焼、カンボジアでの水力・バイオマス発電所建設を進め、カーボンクレジットを創出し日本へ供給する計画です。国内ではカーボンクレジット供給に加え、蓄電池導入等を通じたアグリゲーション事業を展開します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


2030ビジョンの実現に向け、ジェンダーや国籍にとらわれない採用と、働きやすい環境、公正な評価・処遇の整備に努めています。人材育成では、職位に応じた「あるべき姿」を指針とし、新卒・管理職研修やフォローアップ研修、外部セミナー受講等を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.6歳 4.2年 8,392,797円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 59.7%
男女賃金差異(正規雇用) 58.5%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※男性育児休業取得率および非正規雇用の男女賃金差異について、HTML原文において「-」と記載されています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性比率(30.1%)、新卒採用における女性新入社員比率(33.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 電気事業制度改正の影響


電気事業法やエネルギー基本計画等の制度見直しにより、競争状況や電源構成に変化が生じ、同グループの財政状態や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)の変更などもリスク要因となります。

(2) 法令等の改正の影響


再生可能エネルギー固定価格買取制度の設備認定を受けた発電設備を運営していますが、関連法令やエネルギー政策の変更があった場合、事業運営や収益に影響が及ぶ可能性があります。気候変動対応のための新たな規制導入も事業の制約となる可能性があります。

(3) 気候変動問題への対応


2050年カーボンニュートラルに向けた政策や規制強化が進む中、バイオマス発電事業を中心に事業への影響評価を行っています。新たな法的規制の導入等により、事業計画や運営に大幅な変更や制約が生じた場合、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 競争激化に伴う影響


電力小売全面自由化に伴う競争環境の変化、電力取引市場の動向、気候や景気動向の影響を受けます。競合他社の参入による競争激化は、電力購入価格の上昇や販売価格の下落を招き、同グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。