綿半ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

綿半ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する同社は、スーパーセンター等を展開する小売事業を中心に、建設事業、貿易事業を行う企業グループです。2025年3月期の連結業績は、売上高1,336億円(前期比4.3%増)、経常利益38億円(同17.8%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社綿半ホールディングス の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 綿半ホールディングスってどんな会社?


長野県を地盤に、スーパーセンター等の小売事業、建設事業、貿易事業を展開する創業400年超の企業です。

(1) 会社概要


1598年に綿屋として創業し、1949年に綿半銅鉄金物店を設立しました。1977年にホームセンター事業を開始し、2003年に持株会社体制へ移行しました。2014年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2015年に同市場第一部へ指定されました。近年では2024年に征矢野建材を完全子会社化するなど事業拡大を進めています。

連結従業員数は1,530名、単体では69名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は綿半グループ従業員持株会、第3位は主要取引銀行である八十二銀行です。創業家出身者が大株主に名を連ねており、伝統ある企業背景がうかがえます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.60%
綿半グループ従業員持株会 8.58%
八十二銀行 4.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は野原勇氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
野原 勇 代表取締役社長 アクテルナ(現Viaviソリューションズ)代表取締役社長を経て2008年同社入社。2013年代表取締役副社長を経て2015年6月より現職。
有賀 博 代表取締役副社長 キングジム、ドーピー建設工業を経て2006年同社入社。2013年常務、2018年専務を経て2024年6月より現職。
木下 晃 取締役 1985年同社入社。綿半パートナーズ副社長、綿半ドットコム社長、綿半林業副社長等を経て2024年6月より現職。
伴野 紋子 取締役 2001年アベルネット(現綿半ドットコム)入社。同社社長、リグナ取締役を経て2024年6月より現職。
野原 佳代子 取締役 三菱商事入社。モンディアル(現綿屋半三郎)代表取締役、綿半三原商店社長等を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、矢島充博(元八十二カード社長)、坂本順子(弁護士)、萩本範文(AMシステムズ代表取締役CEO)、代田昭久(元長野県飯田市教育長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小売事業」「建設事業」「貿易事業」および「その他」事業を展開しています。

小売事業

スーパーセンター、ホームセンター、食品スーパー、ドラッグストア等を展開するほか、インターネット通販を行っています。生鮮食品からホームセンター商材まで幅広く取り扱い、低価格・高品質なオリジナル商品の開発や、鮮魚の「一船買い」など独自仕入による鮮度向上に取り組んでいます。

収益は、一般消費者への商品販売による代金等が主な源泉です。運営は主に綿半ホームエイド、綿半ドットコム、綿半フレッシュマーケットなどが担っています。また、綿半インテックがレンタル・運送業務等を、リグナが家具・インテリア販売を行っています。

建設事業

木造建築、鉄骨加工、内外装工事、自走式立体駐車場建設、土木緑化など多岐にわたる建設工事を行っています。木造建築では戸建木造住宅の企画開発やフランチャイズ運営を行い、鉄骨加工では海外CADセンターと連携した効率的な生産体制を構築しています。

収益は、施主やゼネコン等からの工事請負代金や資材販売代金等が主な源泉です。運営は綿半ソリューションズ、綿半林業、綿半建材などが担当しています。独自の工法や製品開発により、地域経済への貢献と環境配慮型の事業を推進しています。

貿易事業

医薬品原料や化成品原料の輸入販売を行っています。また、不妊治療薬の原薬製造も手掛けています。天然原料の新規開拓を進め、食品や動物飼料へも取扱商品を拡大しています。

収益は、製薬会社や化粧品メーカー等への原料販売代金が主な源泉です。運営は綿半トレーディングが行っています。海外ネットワークを活かし、グループ内の他事業と連携した商品調達も行っています。

その他

上記報告セグメントに含まれない事業として、不動産事業等を行っています。

収益は、不動産の賃貸借仲介や売買、管理業務等による手数料や賃貸料収入等が源泉です。運営は綿半リアルエステートなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,100億円台から1,300億円台へと拡大傾向にあります。2023年3月期に利益率が低下しましたが、その後は回復基調にあり、当期は売上高・各利益ともに増加しました。特に当期利益は20億円台を回復しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,148億円 1,145億円 1,343億円 1,281億円 1,336億円
経常利益 35億円 29億円 31億円 32億円 38億円
利益率(%) 3.1% 2.6% 2.3% 2.5% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 20億円 10億円 7億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約21%の水準を維持しており、営業利益率は2%台前半から後半へと改善しました。コスト管理と売上拡大の両立が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,281億円 1,336億円
売上総利益 274億円 280億円
売上総利益率(%) 21.4% 21.0%
営業利益 28億円 35億円
営業利益率(%) 2.2% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が103億円(構成比42%)、支払手数料が21億円(同9%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入等が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


当期は全セグメントで増収となりました。特に建設事業はM&A効果等により売上が大きく伸長し、利益も大幅増となりました。小売事業も増益を確保しましたが、貿易事業は減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
小売事業 789億円 793億円 14億円 18億円 2.2%
建設事業 403億円 448億円 12億円 18億円 4.0%
貿易事業 77億円 78億円 11億円 9億円 10.9%
その他 12億円 17億円 1億円 2億円 9.4%
調整額 3.6億円 4.2億円 -9.5億円 -10.8億円 -%
連結(合計) 1,281億円 1,336億円 28億円 35億円 2.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の収益(または資産売却等)よりも事業拡大等による資金需要が上回っており、借入等の財務活動で資金を調達している「勝負型」のキャッシュ・フロー状態です。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 125億円 -29億円
投資CF -22億円 -18億円
財務CF -95億円 49億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「合才の精神」(力を合わせ、分かち合い、響き合う)を経営理念に掲げ、経営者と社員の隔てなく全員による企業を目指しています。また、「絶え間なき暮らしの変革」を事業理念とし、時代の変化に対応しながら地域社会の活性化と、より良い地球環境・生活環境の構築に邁進しています。

(2) 企業文化


1500年代の創業から「合」の旗印のもと地域を守り発展させてきた歴史を背景に、時代の流れを読み、綿商いから小売、建設、貿易へと形を変えてきた「多様性ある企業グループ」としての文化を持っています。「地域」「環境」「グローバル」を3つの柱とし、420年以上続く信用・信頼を基盤に、地域社会への貢献を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画として「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」を掲げています。数値目標としては、2027年3月期において以下の数値を定めています。また、経営指標として売上高経常利益率を重視しています。

* 売上高:1,500億円
* 経常利益:45億円

(4) 成長戦略と重点施策


創業500年に向けて事業ポートフォリオの変革に努めています。小売事業では流通網の拡大やオリジナル商品開発、新業態開発を推進し、建設事業では木材の加工・流通網構築や海外ネットワークの強化を図っています。貿易事業では食品分野への進出などを重点施策としています。全体としてICT化の推進や人的資源管理の強化にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


業容拡大のために優秀な人財の確保・育成を急務とし、次世代経営者育成研修やライフスタイルに合わせた働き方改革、専門研修の拡大等を推進しています。多様な人財が能力を発揮できるよう、新規事業研究会やオープンアカデミー等を通じて、年齢・ジェンダー・業種を超えた新しい価値の創造を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 50.6歳 20.0年 8,322,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.1%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 66.2%
男女賃金差異(正規雇用) 100.5%
男女賃金差異(非正規) 95.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める中途採用者の割合(56.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引先の信用リスク

取引先の財政状態や業績に応じた与信管理を行っていますが、予期せぬ経営破綻等により債権回収が不能となった場合、同グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 有利子負債のリスク

店舗増設等の設備投資資金を主に金融機関からの借入で調達しており、2025年3月末時点で267億円の有利子負債があります。金融情勢の変動等により資金調達に支障が生じたり金利が上昇したりした場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人財の確保及び育成リスク

事業拡大に伴い優秀な人財の確保と育成が急務となっています。採用活動や研修制度の充実に注力していますが、これらが十分に進行しない場合、同グループの競争力や事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法的規制のリスク

小売、建設、貿易の各事業において、大規模小売店舗立地法、建設業法、薬機法など多数の法的規制を受けています。法令違反による許認可の取り消しや事業停止、新たな法規制への対応コストが発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。