※本記事は、東京ボード工業の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年2月28日、2026年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京ボード工業ってどんな会社?
同社は、木質廃棄物を再資源化した建材の製造・販売と、廃棄物の収集運搬から中間処理までを一貫して手掛けています。
■(1) 会社概要
1946年に千住ベニヤ工業として設立し、1983年にグループ4社の合併により東京ボード工業に商号変更してパーティクルボードの製造を開始しました。1991年に産業廃棄物処分業許可を取得して自社一貫生産体制を確立し、2014年には東京証券取引所市場第二部に株式を上場しました。
従業員数は連結で243名、単体で126名です。筆頭株主は創業家出身の代表取締役社長である井上弘之氏で、第2位は事業会社であるセイホク、第3位はT・B・Hとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 井上 弘之 | 27.84% |
| セイホク | 9.94% |
| T・B・H | 8.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は井上弘之氏が務めており、社外取締役の比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上 弘之 | 代表取締役社長 | 1991年にホクヨープライウッドへ入社後、1995年に同社取締役経理部長に就任。2008年より現職。 |
| 長嶌 正英 | 取締役 | 1996年に同社へ入社後、総務課長などを経て、2021年に安全環境室長に就任。2025年より現職。 |
| 奥山 大史 | 取締役 | 2007年に同社へ入社後、研究開発室リーダーなどを経て、2022年にQLCenter室長に就任。2025年より現職。 |
| 柿沼 大介 | 取締役 | 2006年にターベルモーノへ入社し経営管理本部長などを経て、2022年に同社へ入社。2026年より現職。 |
社外取締役は、只腰由紀夫(元ボード社長)、吉田博之(元ハイブレイン代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「木材環境ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。
■木材環境ソリューション事業
マンションの二重床の下地材や戸建住宅の耐力壁として使用されるパーティクルボードの製造・販売を行っています。また、建設現場や解体業者から排出される木質廃棄物を回収し、自社工場で主原料となる木材チップへと加工・再資源化する一貫体制を構築し、循環型社会の形成に貢献しています。
ゼネコンや工務店等の排出事業者から受け取る廃棄物処理費用と、建材商社等の顧客へのパーティクルボード販売による収益が主な収入源です。製造・販売及び中間処理は同社と横浜エコロジーが行い、木質廃棄物の収集運搬はティー・ビー・ロジスティックスやTB関西物流が担当しています。
■その他事業
東京都足立区において、商業施設の管理運営事業を展開しています。地域住民の生活を支えるショッピング施設として、テナントへの店舗スペースの提供や施設全体の維持管理、各種サービスの提供を行っています。
施設に入居するテナント企業から受け取る賃貸収入や管理費などが主な収益源となっています。事業の運営主体は、同社および子会社であるカリブが共同で担当し、円滑な施設運営と収益基盤の維持に努めています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は71億円から85億円のレンジで推移しており、当期は決算期変更に伴う11ヶ月決算の影響で66億円となりました。利益面では原材料価格の変動や設備投資負担の影響などにより経常損失が継続していますが、前期にかけて赤字幅は縮小傾向にありました。当期は工場での火災の影響等もあり再び赤字幅が拡大しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 76億円 | 85億円 | 71億円 | 77億円 | 66億円 |
| 経常利益 | -9億円 | -2億円 | -9億円 | -0.9億円 | -1.9億円 |
| 利益率(%) | -12.1% | -2.6% | -12.5% | -1.2% | -2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -13億円 | -6億円 | -10億円 | 2億円 | -7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高や売上総利益は、前期の12ヶ月から当期の11ヶ月への決算期間の変更により減少しています。売上総利益率はやや改善したものの、営業損失は前期の0.3億円から当期は0.8億円へと赤字幅が拡大しました。原材料調達コストの上昇や一時的な操業停止による稼働率低下が収益性を圧迫している状況が窺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 77億円 | 66億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.5% | 25.5% |
| 営業利益 | -0.3億円 | -0.8億円 |
| 営業利益率(%) | -0.4% | -1.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円(構成比27%)、運賃及び荷造費が3億円(同15%)を占めています。売上原価の主な内訳としては、材料費が11億円(構成比27%)、労務費が7億円(同19%)、経費が21億円(同54%)を占めています。
■(3) セグメント収益
木材環境ソリューション事業は、決算期変更の影響や佐倉工場での一時的な操業停止による出荷数の減少などから、前期に比べて売上が減少しました。その他事業についても、商業施設のテナント賃貸等における売上が計上されていますが、全体に占める割合は小さく、売上規模は前年を下回る結果となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 木材環境ソリューション事業 | 73億円 | 63億円 |
| その他事業 | 4億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 77億円 | 66億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13億円 | 7億円 |
| 投資CF | -11億円 | -13億円 |
| 財務CF | -0.4億円 | -0.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期のデータがありませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は7.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「リサイクリングで地球環境の未来を創る」を経営理念に掲げています。木質廃棄物のマテリアルリサイクルを通じて二酸化炭素の放出を削減し、炭素の固定量を増やすことで、地球温暖化の改善をお客様とともに取り組むことを使命としています。循環型社会の構築を目指し、持続可能な未来の実現に貢献しています。
■(2) 企業文化
従業員一人一人が活き活きと働くことを通じて、豊かな地球環境の未来を創る社会づくりに貢献できると信じる文化を持っています。経営理念の教育と伝承を基本とし、安全・安心で魅力ある職場環境づくりを推進しています。また、従業員の目標設定や評価を明確にし、従業員参加型の経営を重視する姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営理念の達成と企業の持続的な発展を目指し、佐倉工場への大規模な設備投資を継続しています。この資本効率や投資回収の成果を測るため、中長期的な経営指標として「ROA(総資産利益率)」および「EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)」を重視し、収益性の向上と安定的な事業基盤の確立を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
木質廃棄物の確保や長尺構造用パネル「壁武者」などの新商品販売を強化するため、新規顧客の開拓を積極的に進めています。また、新設住宅着工戸数の減少を見据え、佐倉工場の稼働率向上や接着剤の使用量削減による環境負荷の低減とコストダウンを図り、景気に左右されにくい安定した収益構造の構築を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
地球温暖化改善事業に共感する人材の育成に注力しており、従業員に対する教育・研修の実施や各種資格取得の奨励・補助を行っています。部課ごとの教育目標を明確にし、従業員のモチベーション向上を目指すとともに、男性の育児休業取得促進や健康経営の推進など、一人一人が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 47.0歳 | 10.0年 | 5,040,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職数(2人)、女性社員平均勤続年数(7.8年)、平均所定外労働時間(24.6時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新設住宅着工戸数が業績に与える影響
同社のパーティクルボード製品は、マンションや戸建住宅の床下地材や耐力壁として使用されるため、新設住宅着工戸数の動向に業績が大きく影響を受けます。これに対し、非住宅向けの製品拡販や廃棄物処理事業、一般貨物運送事業の強化により、特定市場への依存度を下げてリスクの分散に努めています。
■(2) 有利子負債への依存と財務制限条項
工場建設等に伴う設備投資を借入金で調達しており、有利子負債が総資産の多くを占めています。一部の借入金には財務制限条項が付されており、条項に抵触した場合は返済期限の利益を喪失するリスクがあります。金融機関との緊密な連携と継続的な協議を通じ、安定的な収益向上による財務体質の改善を図っています。
■(3) 主力製品の原材料である木質廃棄物の確保
主力製品の主原料は廃木材であり、想定する量の廃木材確保が困難になった場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、他の廃棄物との同時運搬や製品納入後の帰り便を利用した「循環物流」の効率化を図り、顧客関係の強化を通じて十分な廃木材の回収量を確保できるよう取り組んでいます。



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