※本記事は、株式会社ホクリヨウの有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ホクリヨウってどんな会社?
鶏卵の生産・製造・販売を一貫して行い、北海道市場で高いシェアを誇る企業です。
■(1) 会社概要
1949年に北海道糧食として設立され、1964年から本格的な養鶏事業を開始しました。1972年にホクリヨウへ社名を変更し、鶏卵生産販売の専門会社として事業を拡大しました。2014年には第一ポートリーファームを子会社化して本州へ進出し、2015年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。
従業員数は単体で259名です。筆頭株主は事業会社であるココリコで、第2位も事業会社である十文字チキンカンパニーとなっています。第3位には創業家と見られる個人株主が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ココリコ | 42.04% |
| 十文字チキンカンパニー | 4.97% |
| 米山 惠子 | 3.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。
代表取締役会長CEOの米山大介氏、代表取締役社長COO営業本部長の勝部慎一氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 米山大介 | 代表取締役会長CEO | 北海道電力入社後、同社入社。常務取締役、代表取締役副社長、代表取締役社長等を経て、2026年6月より現職。 |
| 勝部慎一 | 代表取締役社長COO営業本部長 | 三井物産入社後、同社東アジア食料商品本部長等を経て、同社取締役。2026年6月より現職。 |
| 松岡昌哉 | 取締役副会長企画本部長 | 三井物産入社後、米国三井物産ニューヨーク本店食料部長、同社理事食料本部本部長補佐等を経て、2026年6月より現職。 |
| 山角征司 | 取締役管理本部長 | 北海道銀行入社後、同行本店営業部長、札幌駅前支店長等を経て、同社管理副本部長。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、日浅尚子(元北海道新聞社帯広支社長)、土屋俊亮(元北海道副知事)です。
2. 事業内容
同社は、「鶏卵事業」の単一セグメントを展開しています。
■(1) 鶏卵事業
鶏卵の生産、製造、販売を自社内で一貫して行っています。北海道内の独自の育成農場で雛から育て、ウインドレス鶏舎による徹底した温度・衛生管理の下で鶏卵を生産し、FSSC22000認証を取得した自社工場でパッキングや液卵・温泉卵への加工を行っています。主な顧客はスーパー、ホテル、レストランなどです。
消費者が求める価値を付与した高価格設定の特殊卵(「PG卵モーニング」など)や、プライベートブランドのOEM提供を通じた鶏卵販売によって収益を得ています。近年はマヨネーズ等の原料となる加工用卵や、香港市場向けへの輸出も手掛けています。運営はホクリヨウ単体が直接行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
5期間の業績推移を見ると、売上高は安定して成長を続けており、特に直近2期で急激な伸びを見せています。経常利益と当期純利益についても、鶏卵相場の上昇や販売単価の改定、差別化卵の拡販効果が大きく寄与し、大幅な増益傾向が続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 154億円 | 178億円 | 189億円 | 194億円 | 231億円 |
| 経常利益 | 9.4億円 | 13.8億円 | 23.2億円 | 20.0億円 | 50.5億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 7.8% | 12.3% | 10.3% | 21.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11.9億円 | 7.5億円 | 16.6億円 | 21.8億円 | 38.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も飛躍的に増加しています。飼料価格上昇などのコスト増を販売価格の改定で吸収したことで、売上総利益率、営業利益率ともに前期から大きく改善しており、収益力の高さが際立っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 194億円 | 231億円 |
| 売上総利益 | 38.1億円 | 73.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.6% | 31.9% |
| 営業利益 | 19.3億円 | 49.7億円 |
| 営業利益率(%) | 9.9% | 21.5% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃諸掛が11億円(構成比44%)、卵価安定基金支払が2.8億円(同12%)、給料・雑給及び手当が2.6億円(同11%)を占めています。また、売上原価の大部分は当期製品製造原価が占めており、そのうち材料費(主に飼料費)が98億円(当期総製造費用に対する構成比64%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は鶏卵事業の単一セグメントであるため、売上高は全社業績と一致しています。鶏卵相場が年間を通じて堅調に推移したことに加え、販売単価の改定や物流の合理化によるコスト削減が奏功し、売上高は大きく成長しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 鶏卵事業 | 194億円 | 231億円 |
| 連結(合計) | 194億円 | 231億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CF・財務CFがマイナスであることから、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 61億円 |
| 投資CF | -23億円 | -21億円 |
| 財務CF | -7.2億円 | -9.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.9%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「グローバルな競争社会で成長発展していくために、常に将来を見通し、大胆に変化していく。」を経営方針としています。人口減少局面に入った国内市場だけでなく、アジアを中心とした海外市場動向の変化にも目を配り、鶏卵関連製品の国内販売、輸出、さらには事業投資をバランスよく進めていくことを掲げています。
■(2) 企業文化
「かけがえのない星=地球を将来にわたってまもっていくために」という環境方針を定め、家畜排せつ物の適切な処理や産業廃棄物の削減などサステナビリティに関する課題に積極的に取り組んでいます。また、「挑戦・失敗ともに成長の糧とできる人材育成」や「先取・オリジナルなアイデア発想のための支援」を重視する組織文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
売上高総利益率等の指標を計画や経営上の目標とすることは経営の本質を見誤る危険性を含んでいるとして、事業計画上の数値目標は設定していません。代わりに、事業成績目標の達成状況を判断するため、産卵率、平均卵重、飼料要求率、一人一時間当たり製造量、相場差などの生産・製造・販売に関連する指標を重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
アニマルウェルフェアへ対応したケージフリー卵(多段式平飼い卵)の拡売、アジア市場向け鶏卵・発酵鶏糞肥料・加工食品の輸出強化、海外におけるM&A等の事業投資を重点施策としています。また、老朽化した鶏舎から最新技術を導入した鶏舎への建て替えや、工場の統廃合を通じた生産性向上によるコスト削減と鳥インフルエンザ予防に取り組んでいく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な人材が能力を最大限発揮できる組織づくり」を重要な経営課題と位置付けています。性別、年齢、国籍等にかかわらず多様な人材の採用・登用を進める「多様な人材の確保と活躍推進」、自律的なキャリア形成を支援する「人材育成の強化」、適正な労働時間管理などの「働きやすい職場環境の整備」、将来の経営を担う「次世代経営人材の育成」を基本方針としています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社単体従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.7歳 | 11.5年 | 5,006,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.4% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 91.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員定着率(全社員、入社3年以内)(62%)、一人当たりの研修費用(18千円)、障がい者雇用率(3.68%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 鶏卵相場と原料価格の変動
鶏卵を主力商品としているため、需給バランスの崩れによる鶏卵相場の長期低迷は業績に影響を与えます。また、生産原価の約60%を占める飼料価格が為替や世界的な需要動向で高騰した場合、コスト削減策だけでは吸収しきれず、財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 鳥インフルエンザ発生による生産減少
農場での高病原性鳥インフルエンザ感染リスクを完全に排除することは困難です。成鶏で発生した場合は殺処分により鶏卵供給力が減少し、元の水準に回復するまで約1年を要するため、売上減少を通じて経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 食品の安全・衛生問題
生で食べる鶏卵の特性上、サルモネラ菌などによる食中毒リスクが内在しています。ウインドレス鶏舎の導入やワクチンの接種、FSSC22000認証工場での品質管理など万全の対策を講じていますが、万一製品を起因とした安全衛生問題が発生した場合、業績や社会的信用に重要な影響を与えるリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。