※本記事は、株式会社中村超硬 の有価証券報告書(第56期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中村超硬ってどんな会社?
特殊精密機器やダイヤモンドワイヤ、ナノサイズゼオライトの開発と製造を手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1954年に創業し、1970年に設立されました。2010年にダイヤモンドワイヤの販売を開始し、2015年にマザーズ市場(現グロース市場)へ上場しました。2019年にナノサイズゼオライトの技術開発成功認定を受け、2026年には日本ノズルの全株式を譲渡し、化学繊維用紡糸ノズル事業を分離しています。
従業員数は連結で58名、単体で56名です。筆頭株主は証券会社の楽天証券で、第2位は代表取締役会長の井上誠氏、第3位はナカムラコーポレーションとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 楽天証券 | 3.09% |
| 井上誠 | 2.35% |
| ナカムラコーポレーション | 1.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長の井上誠氏と代表取締役社長の井上紘章氏が代表権を持っています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上誠 | 代表取締役会長 | ソニーを経て1983年同社入社。1995年社長就任。日本ノズルや海外子会社の代表を歴任し、2025年よりZeo Next代表取締役CEO、2026年より現職。 |
| 井上紘章 | 代表取締役社長 | 西日本電信電話等を経て2008年同社入社。2021年営業本部長、2022年常務取締役を歴任し、2026年より現職。 |
| 田植啓之 | 常務取締役管理本部長 | ダイエーを経て2001年同社入社。2015年取締役超砥粒応用事業部長、2023年管理本部長兼経営企画室部長を歴任し、2026年より現職。 |
| 井上絢哉 | 取締役DW生産部長 | 東電気工業を経て2008年同社入社。2018年超砥粒応用事業部和泉DW生産部長などを歴任し、2022年より現職。 |
社外取締役は、京谷忠幸(ピーエムティー代表取締役社長)、加藤彰(元日本電産グローバル税務企画部部長)、松村安之(唯一法律事務所代表)、中川雅晴(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、特殊精密機器事業、D-Next事業、マテリアルサイエンス事業を展開しています。
■特殊精密機器事業
ダイヤモンドや超硬合金などを用いた耐摩耗性の高い特殊精密部品・工具の設計、製造、販売を行っています。また、マイクロリアクターシステムの開発なども手がけており、これらは自動車部品や電子機器製造用の産業機械に利用されています。
顧客は自動車部品メーカーやベアリング製造業界などで、部品や装置の販売代金が主な収益源です。事業の運営は同社が主体となって行っています。
■D-Next事業
パワー半導体向けダイヤモンドワイヤの生産と、ダイヤモンドワイヤ製造装置の開発および販売を行っています。以前展開していた太陽光発電向けの経験とノウハウを活かした事業モデルの転換を進めています。
半導体や難削材を加工する国内大手メーカーなどを主な顧客とし、製品の販売代金を収益源としています。事業の運営は同社が行っています。
■マテリアルサイエンス事業
ゼオライトを低コストでナノサイズ化する技術を用いた製品の開発と販売を行っています。透明吸湿フィルムや半導体封止剤、コスメなど、従来のゼオライトでは実現できなかった新たな用途での早期事業化を目指しています。
各用途分野のメーカーに対してサンプル提供や製品販売を行い、代金を受け取る収益モデルです。事業の運営は同社およびZeo Nextが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向から直近2期で回復の兆しを見せています。利益面では本業における経常損失が続いていますが、当期は関係会社株式売却益などの特別利益を計上したことにより、最終利益で大幅な黒字を達成しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 40.4億円 | 33.2億円 | 24.1億円 | 26.4億円 | 27.7億円 |
| 経常利益 | 3.4億円 | 0.7億円 | -5.5億円 | -0.2億円 | -1.4億円 |
| 利益率(%) | 8.4% | 2.0% | -22.9% | -0.8% | -5.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5.9億円 | -1.5億円 | -4.1億円 | 0.1億円 | 20.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年から増加したものの、原材料価格や外注費などの上昇により売上総利益は減少しました。また、販売費及び一般管理費が増加したことで、当期は営業損失に転落しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 26.4億円 | 27.7億円 |
| 売上総利益 | 6.8億円 | 6.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.7% | 23.2% |
| 営業利益 | 0.1億円 | -1.6億円 |
| 営業利益率(%) | 0.3% | -5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が1.7億円(構成比21%)、給料手当が1.6億円(同20%)、研究開発費が1.1億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
特殊精密機器事業は新素材ノズルの量産等で増収となりました。化学繊維用紡糸ノズル事業も堅調に推移しましたが、当期末での株式譲渡により今後は連結から除外されます。D-Next事業は半導体市況の低迷を受け減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 特殊精密機器事業 | 7.1億円 | 7.4億円 |
| 化学繊維用紡糸ノズル事業 | 16.8億円 | 17.8億円 |
| D-Next事業 | 2.4億円 | 2.3億円 |
| マテリアルサイエンス事業 | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 26.4億円 | 27.7億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益と資産売却で得た資金を活用し、借入返済を進める改善局面のパターンです。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.2億円 | 3.9億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | 16.7億円 |
| 財務CF | -2.6億円 | -23.0億円 |
企業の収益力を測るROEは29.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.9%となり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「努力、活力、創造力」を経営理念に掲げています。全員営業、全員製造、全員参加の経営をもって「ものづくりのエキスパート集団」となり、顧客や協力会社との共栄、従業員とその家族の幸せ、社会と地球環境への貢献を実現し、夢ある未来を共に育てることを目指しています。
■(2) 企業文化
長年培ってきた開発力と技術力を基盤に、優れた品質の製品を安定供給することで顧客満足度の向上を図る文化があります。取引先や協力会社、地域社会、投資家および従業員からの信頼と期待に応える誠実な姿勢を大切にしており、組織全体の成長を促す風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
企業価値を最大化するための成長戦略「Reスタート2026」の初年度として、各事業における売上高と収益の拡大を目指しています。化学繊維用ノズル事業の分離に伴い、2027年3月期は以下の数値を予想しています。
* 2027年3月期 売上高:13.0億円
* 2027年3月期 営業利益:マイナス1.6億円
* 2027年3月期 経常利益:マイナス1.6億円
■(4) 成長戦略と重点施策
ナノサイズゼオライトの量産開始とグローバル市場での営業展開により、新規事業の早期事業化を推進します。特殊精密機器事業では新素材ノズルの量産や半導体業界からの新規受注、M&Aによる事業規模拡大を図ります。また、D-Next事業の収益化と、エネルギー・環境・医療分野での次世代技術の研究開発を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員の成長が組織力と競争力の源泉であると認識し、一人ひとりの自己実現とチャレンジできる成長の機会を提供することで、持続的な企業価値の向上を目指しています。高度な生産技術を継承するため国家技能検定の受検を推進するなど、やりがいを持って長く働ける環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.9歳 | 15.3年 | 5,312,909円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ナノサイズゼオライトの事業化遅延
新規事業として立ち上げ中のナノサイズゼオライトについて、顧客の評価や開発に想定以上の時間が必要となった場合や、量産採用に至らなかった場合、固定費負担が継続し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 米国による通商政策変動
米国による相互関税や特定製品への追加関税により、日本から米国への輸出減少や国内製造業の稼働率低下が引き起こされる懸念があります。これにより同社製品の受注や販売が減少し、業績に影響する可能性があります。
■(3) 原材料等の調達価格上昇
地政学リスクの高まりや円安の影響により、資源価格や物流コストが高止まりしています。販売価格への転嫁が困難な水準で原材料やエネルギーコストが高騰した場合、利益が圧迫される可能性があります。
■(4) 株式希薄化と買収可能性
財務状態の安定化を目的に発行した新株予約権の行使により、個人株主比率が非常に高い状態にあります。安定株主が不在の中で株価低迷が続いた場合、企業買収等が発生し事業運営に影響を与える可能性があります。



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