中村超硬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中村超硬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。ダイヤモンド等の硬脆材料を用いた特殊精密機器や化学繊維用紡糸ノズルの開発・製造・販売を行う。2025年3月期は化学繊維用ノズル事業が堅調で増収となり、営業損益は黒字転換したものの、経常損益は赤字となった。


※本記事は、株式会社中村超硬 の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中村超硬ってどんな会社?


特殊精密機器や化学繊維用紡糸ノズルなど、硬脆材料加工技術を活かしたニッチトップ製品を展開する企業です。

(1) 会社概要


1970年に大阪府堺市で設立され、2015年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場しました。2008年に日本ノズルを完全子会社化し、化学繊維用紡糸ノズル事業へ本格参入しています。2010年にはダイヤモンドワイヤの販売を開始し、事業を拡大しました。2022年の市場区分見直しに伴い、グロース市場へ移行しています。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は140名、単体従業員数は63名です。筆頭株主は資産管理業務を行う楽天証券で、第2位は株式会社YMD、第3位は株式会社SBI証券となっており、証券会社や法人が上位を占めています。

氏名 持株比率
楽天証券 4.16%
YMD 2.52%
SBI証券 2.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は井上誠氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
井上 誠 代表取締役社長 1978年ソニー入社。1983年同社入社。1995年より代表取締役社長。日本ノズル代表取締役会長を兼務し、上海子会社の董事長も務める。
井上 紘章 常務取締役営業本部長 2005年アイ・ピー・エス入社、西日本電信電話を経て2008年同社入社。高機能機器事業部長等を経て2022年より現職。
田植 啓之 取締役管理本部長 1990年ダイエー入社。2001年同社入社。日本ノズル取締役、超砥粒応用事業部長、経営企画室部長などを経て2024年より現職。
井上 絢哉 取締役DW生産部長 2002年東電気工業入社。2008年同社入社。和泉DW生産部長を経て2022年より現職。
小林 哲哉 取締役 2001年エスアールエンジニアリング入社。2010年日本ノズル入社。同社生産管理部長、常務取締役を経て2025年より現職。


社外取締役は、京谷忠幸(ピーエムティー代表取締役社長)、大山隆司(元札幌高等裁判所長官・京都大学大学院法学研究科教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「特殊精密機器事業」、「化学繊維用紡糸ノズル事業」、「D-Next事業」および「マテリアルサイエンス事業」を展開しています。

(1) 特殊精密機器事業


ダイヤモンドや超硬合金などの硬脆材料を用いた特殊精密部品や工具を製造・販売しています。主な製品は、自動車部品製造用工作機械向けのダイヤモンド部品や、電子機器製造に必要な実装機用ダイヤモンドノズルなどです。また、実装機用ノズル洗浄装置や化学反応用マイクロリアクターシステムも手掛けています。

製品の販売による収益が主な柱です。運営は主に中村超硬が行っています。

(2) 化学繊維用紡糸ノズル事業


化学繊維用紡糸ノズル及び周辺部品、不織布製造装置等の設計・製造・販売を行っています。不織布や炭素繊維の製造において品質を決定づける基幹部品であり、微細加工技術を強みとしています。グローバルな繊維メーカーや紡糸設備メーカーに製品を供給しています。

製品や製造装置の販売による収益を得ています。運営は子会社の日本ノズルが行っています。

(3) D-Next事業


パワー半導体向けダイヤモンドワイヤの開発・製造・販売およびダイヤモンドワイヤ製造装置の開発・販売を行っています。かつての太陽光発電向けからパワー半導体向けへと事業モデルの転換を進めています。

製品および製造装置の販売による収益が柱です。運営は主に中村超硬が行っています。

(4) マテリアルサイエンス事業


ゼオライトをナノサイズ化する技術を用い、ナノサイズゼオライトの開発・事業化を目指しています。従来の機能に加え、透明性や高分散性などの特長を活かし、透明吸湿フィルム、半導体封止剤、塗料、コスメ等の分野での製品開発を進めています。

製品用ナノサイズゼオライトの販売等による収益化を図っています。運営は主に中村超硬が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は回復傾向にありますが、利益面では変動が見られます。特に2024年3月期は大幅な減益となりましたが、直近の2025年3月期は増収となり、経常損失の幅も縮小しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 38.1億円 40.4億円 33.2億円 24.1億円 26.4億円
経常利益 1.8億円 3.4億円 0.7億円 -5.5億円 -0.2億円
利益率(%) 4.8% 8.4% 2.0% -22.9% -0.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.6億円 -5.9億円 -1.5億円 -4.1億円 0.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高は増加し、売上総利益率も大きく改善しています。これにより営業損益は黒字転換を果たしました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 24.1億円 26.4億円
売上総利益 3.9億円 6.8億円
売上総利益率(%) 16.0% 25.7%
営業利益 -5.3億円 0.1億円
営業利益率(%) -22.1% 0.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が1.7億円(構成比26%)、役員報酬が1.2億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


化学繊維用紡糸ノズル事業が増収となり、セグメント利益も大きく改善しました。D-Next事業は売上が倍増したものの、赤字が継続しています。特殊精密機器事業は微減収ですが黒字を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
特殊精密機器事業 7.2億円 7.1億円
化学繊維用紡糸ノズル事業 15.7億円 16.8億円
D-Next事業 1.2億円 2.4億円
マテリアルサイエンス事業 0.1億円 0.1億円
その他 - -
調整額 - -
連結(合計) 24.1億円 26.4億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で現金を稼ぎ出し、借入金の返済や投資を行っている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6.4億円 1.2億円
投資CF -17.7億円 -0.5億円
財務CF 6.1億円 -2.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はデータなしですが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は15.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「努力、活力、創造力」を経営理念として掲げています。お客様や協力会社との共栄、従業員とその家族の幸せ、そして社会と地球環境への貢献を目指し、長年培ってきた開発力と技術力を基盤に、優れた品質の製品を安定供給することで、信頼と期待に応えられる企業を目指しています。

(2) 企業文化


「全員営業、全員製造、全員参加の経営」を掲げ、ものづくりのエキスパート集団となることを目指しています。夢ある未来を共に育てるという価値観のもと、組織全体で一体感を持って事業に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期の連結業績予想として、以下の数値を掲げています。
* 売上高:30億円
* 営業利益:35百万円
* 経常利益:55百万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:10百万円

(4) 成長戦略と重点施策


構造改革を完了させ、各事業の成長基盤確立と収益拡大を目指しています。特殊精密機器事業では新開発の実装機用ノズルの量産販売や新規顧客開拓により収益力を強化します。化学繊維用紡糸ノズル事業では大型加工設備を活用し、フィルム用ダイ等の受注拡大を図ります。D-Next事業はビジネスモデル転換の完了と収益事業化を目指し、ナノサイズゼオライトは量産開始に向けた体制づくりを進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


高度かつ熟練した生産技術の継承と次世代経営人材の育成を急務としています。継続的な採用活動に加え、人材教育体制の構築や人事制度の再設計を行い、従業員がやりがいを持って長く働ける環境整備を進めています。また、従業員の成長を組織力の源泉と捉え、国家技能検定の受検推進などを通じて技術力向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.8歳 14.3年 5,174,264円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、国家技能検定2級以上合格者指数(50)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 江蘇三超社との仲裁に関するリスク


中国の江蘇三超社との間で、ダイヤモンドワイヤ生産設備等の譲渡に関する契約義務履行を巡り仲裁手続きが行われています。中間判断では同社に債務不履行があったとされ、損害賠償等の支払いが命じられましたが、具体的な金額は今後の手続きで決定されます。多額の支払いが命じられた場合、業績や財務に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新規事業の事業化に関するリスク


ナノサイズゼオライトなどの新規事業開発に取り組んでいますが、サンプル提供先での製品化に時間を要したり、量産顧客の獲得が実現できなかった場合、固定費負担が継続し、事業化の蓋然性低下により業績や財務に影響を与える可能性があります。

(3) 米国による関税政策に関するリスク


米国による相互関税や自動車への追加関税は、日本からの輸出減少や国内製造業の稼働率低下を引き起こす可能性があります。これに伴い同社製品の受注・販売が減少し、業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(4) 海外取引の拡大に関するリスク


海外売上比率が高く、今後も拡大が見込まれる中、取引慣行の違いによるトラブル、地政学的要因、急激な為替変動などが営業活動や製品出荷に影響を与える可能性があります。予期せぬトラブルが顕在化した場合、業績や財務に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。