※本記事は、大木ヘルスケアホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第10期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大木ヘルスケアホールディングスってどんな会社?
1658年創業の老舗企業を起源に持ち、医薬品や健康食品等の卸売事業を展開する需要創造型の中間流通企業です。
■(1) 会社概要
1658年(万治元年)に江戸両国で創業した家庭薬製造販売業「大木五臓圓本舗」を起源とし、1912年に現在の株式会社大木の前身となる応用製薬が設立されました。2015年10月、単独株式移転により持株会社である同社が設立され上場しました。2022年4月の東証市場区分見直しにより、スタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は648名、単体従業員数は14名です。筆頭株主は同社の主要な仕入先であるロート製薬で、第2位は業務提携先かつ販売・仕入先である東邦ホールディングス、第3位は食品卸大手の国分グループ本社となっており、取引関係のある事業会社が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ロート製薬 | 12.89% |
| 東邦ホールディングス | 10.35% |
| 国分グループ本社 | 7.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松井秀正氏です。社外取締役比率は10.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松井秀夫 | 取締役会長 | 1972年大木入社。同社営業本部長、代表取締役社長などを経て、2010年代表取締役会長兼社長。2015年同社設立に伴い代表取締役会長兼社長に就任。2022年6月より現職。 |
| 松井秀正 | 代表取締役社長 | 1999年大木入社。同社システム部副部長、経営企画室長、代表取締役副社長などを歴任。2015年同社代表取締役副社長兼統括管理本部本部長を経て、2018年6月より現職。 |
| 宇部由信 | 代表取締役専務取締役 | 1982年大木入社。同社多摩支店長、営業企画本部本部長、常務取締役などを経て、2009年同社代表取締役専務取締役。2015年10月より現職。 |
| 植木雅昭 | 取締役 | 1983年大木入社。同社業態開発部長、営業本部本部長、常務取締役などを歴任。2015年同社常務取締役、2020年専務取締役を経て、2022年6月より現職。 |
| 荒山周久 | 取締役 | 1992年大木入社。同社名古屋支社長、取締役などを歴任。2012年同社営業本部副本部長兼名古屋支社長兼快適生活用品事業部長を経て、2015年10月より現職。 |
| 山岡研一 | 取締役 | 1992年日本興業銀行入行。みずほ第一フィナンシャルテクノロジー取締役などを経て2020年大木入社、経営企画室長。2023年同社取締役執行役員業務本部長。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、川上眞吾(元サン・ダイコー代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品等製造・販売業」単一セグメントで事業を展開しています。
**医薬品等製造・販売業**
医薬品、健康食品、化粧品、衛生用品、日用雑貨品等の製造および販売を行っています。主な顧客はドラッグストアや薬局などの小売業です。メーカーと小売業をつなぐ中間流通業として、商品の供給だけでなく、インストアマーチャンダイジング(店頭での販売力強化策)の提案なども行っています。
収益は、小売店等への商品販売による対価が主な源泉です。運営は、中核事業会社である株式会社大木を中心に、医薬品製造を行う大木製薬株式会社、株式会社エコ・ファクトリーなどの連結子会社が行っています。各社は同社および同社の取引先を対象に事業を営んでいます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近数年は連続して増収を達成しており、事業規模の拡大が続いています。利益面では、経常利益が30億円台から40億円近くまで伸長しており、利益率も安定して推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,709億円 | 2,782億円 | 3,044億円 | 3,347億円 | 3,495億円 |
| 経常利益 | 40億円 | 16億円 | 32億円 | 33億円 | 40億円 |
| 利益率(%) | 1.5% | 0.6% | 1.0% | 1.0% | 1.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 4億円 | 4億円 | 4億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上総利益率は5%台で推移しており、卸売業特有の薄利多売の構造が見られますが、販管費のコントロール等により営業利益率は改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,347億円 | 3,495億円 |
| 売上総利益 | 172億円 | 185億円 |
| 売上総利益率(%) | 5.1% | 5.3% |
| 営業利益 | 20億円 | 28億円 |
| 営業利益率(%) | 0.6% | 0.8% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が73億円(構成比46%)、給料手当及び賞与が39億円(同25%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、売上高は前期比で増加しています。これは、主要子会社において日用品、軽衣料、化粧品等が好調に推移したことや、インバウンド需要の回復等が寄与したことによるものです。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 医薬品等製造・販売業 | 3,347億円 | 3,495億円 |
| 連結(合計) | 3,347億円 | 3,495億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**勝負型(本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続)**
本業の収支を表す営業CFはマイナスとなりましたが、これは主に仕入債務の減少や棚卸資産の増加によるものです。投資活動による支出も継続しており、これらを財務活動(借入等)によって賄っている状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 75億円 | -92億円 |
| 投資CF | -5億円 | -31億円 |
| 財務CF | -20億円 | 69億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%でスタンダード市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.2%でスタンダード市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「医薬品スタンディングの美と健康と快適な生活にウィングを持つ需要創造型の新しい中間流通業」を目指しています。また、「流通コストのナショナルミニマムを実現する中間流通業」として、小売店と一体となり消費者満足の向上を通じて社会に貢献することを社会的使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「大木の精神」を経営理念として掲げ、社会への役立ちを志す人材が集う組織を目指しています。コンプライアンス体制を堅持しつつ、変化する環境に対応するために未来に向けてチャレンジし続ける企業文化の醸成を図っています。小売店やメーカーとパートナーシップを組み、共に成長することを目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、安定的な収益を獲得することが全てのステークホルダーの利益に合致すると考え、以下の指標を重要な経営指標として位置付けています。
* 営業利益率
* 経常利益率
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、人口減少や少子高齢化、業界再編などの環境変化に対応し、オンリーワンの卸売業者となることを目指しています。具体的には、カテゴリーの拡大やマーチャンダイジング商品の開発に注力し、生活者の潜在需要を顕在化させる「需要創造型」のビジネスモデルを推進しています。
* 新しい商品の開発支援や新カテゴリーの提案による新規需要の開拓
* インストアマーチャンダイジングの展開による店頭販売力の強化
* デジタル化の推進と業務改革による効率化
* 物流部門等の間接部門の生産性向上による経費抑制
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、人的資本を付加価値の源泉と捉え、多様なジェンダー、年齢、国籍、キャリアを受け入れる方針です。外国籍人材やシニア人材、異業種経験者の採用・登用を積極的に行っています。また、社内eラーニング、海外研修、大学院への派遣など、自己啓発や自己研鑽を奨励する多様な育成機会を提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 56.6歳 | 27.6年 | 6,348,000円 |
※平均年間給与は、株式会社大木における支給金額と合算しております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.4% |
| 男性育児休業取得率 | 28.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 66.2% |
※主要な連結子会社である株式会社大木の数値です。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制に係るリスク
各種医薬品および関連商品を取り扱っており、医薬品医療機器等法などの規制を受けます。営業拠点の開設や販売には許可が必要であり、監督官庁の許認可等の状況によっては、グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特有の商慣習に係るリスク
医薬品卸売業界では、販売実績に応じた販売報奨金や、小売店からの物流負担金(センターフィー)等の商慣習があります。メーカーの戦略変更や小売市場の競争激化により、これらの制度や料率が変更された場合、業績に影響が出る可能性があります。
■(3) システム障害発生に係るリスク
事業運営はコンピュータシステムに大きく依存しています。自然災害、事故、ウイルス侵入等によりシステム機能が停止した場合、復旧に時間を要し、販売や物流に大きな支障を及ぼす可能性があります。
■(4) 取引先の財務状況悪化に係るリスク
ドラッグストアや薬局を中心とする取引先に多額の売掛債権を有しています。与信管理を徹底していますが、取引先の財務状況が悪化し回収が滞った場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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