大木ヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大木ヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大木ヘルスケアホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、医薬品や健康食品、化粧品などの製造・販売事業を展開する企業です。直近の業績は、日用品等の売上が堅調に推移し増収となった一方、人件費や物流コスト、電子化への先行投資負担等の増加により、大幅な減益となっています。


※本記事は、大木ヘルスケアホールディングス株式会社の有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大木ヘルスケアホールディングスってどんな会社?


同社は、医薬品や健康食品、日用品などのヘルスケア商品を全国の小売店等に供給する卸売業を展開しています。

(1) 会社概要


同社グループの歴史は、1658年に創業した家庭薬製造販売業「大木五臓圓本舗」に遡ります。1912年に大木が応用製薬として設立され、その後長きにわたり医薬品卸売業を展開してきました。2015年に単独株式移転によって持株会社である大木ヘルスケアホールディングスが設立され、JASDAQ市場(現在のスタンダード市場)に上場しました。

現在の同社グループは、連結従業員数685名、単体従業員数15名で事業を運営しています。筆頭株主は同社グループの主要な仕入先であるロート製薬で、第2位は業務提携先ならびに販売・仕入先である東邦ホールディングスです。第3位には国分グループ本社が名を連ねています。

氏名 持株比率
ロート製薬 12.90%
東邦ホールディングス 10.36%
国分グループ本社 7.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松井秀正氏が務めています。取締役7名のうち、社外取締役は1名です(比率14.3%)。

氏名 役職 主な経歴
松井秀正 代表取締役社長 1999年4月大木入社。同社システム部副部長、東京支店長等を経て2006年6月取締役就任。その後、専務、副社長等を歴任し、2015年10月同社代表取締役副社長に就任。2018年6月より現職。
松井秀夫 取締役会長 1972年8月大木入社。同社営業本部長、社長等を歴任。2015年10月同社代表取締役会長兼社長に就任。2018年6月代表取締役会長を経て、2022年6月より現職。
宇部由信 代表取締役専務取締役 1982年4月大木入社。同社東京支店長等を経て2000年6月取締役に就任。その後、常務、専務、代表取締役専務取締役を歴任し、2015年10月より現職。
荒山周久 取締役 1992年4月大木入社。同社大阪支店営業部長、名古屋支社長等を経て2012年6月取締役に就任。2015年10月より現職。
木村充宏 取締役 1997年4月大木入社。同社四国支店長、東京支社長等を歴任し、2019年6月取締役執行役員に就任。2025年6月より現職。
山岡研一 取締役 1992年4月日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ第一フィナンシャルテクノロジー取締役を経て、2020年9月大木入社。2023年6月同社取締役就任。2024年6月より現職。


社外取締役は、川上眞吾(元サン・ダイコー代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品等の製造・販売業」の単一セグメントで事業を展開しています。

医薬品、健康食品、化粧品、医療器、日用品などの幅広いヘルスケア・カテゴリーを対象に、小売店と一体となってカテゴリー提案やインストアマーチャンダイジングを展開しています。生活者自身が気付いていない多種多様な潜在需要を顕在化させることを目指し、商品の開発支援や安定供給に努めています。

収益源は、ドラッグストアなどの小売企業に対する商品の卸売や、医薬品メーカー等からの販売報奨金などです。本事業の運営は、主に大木、大木製薬、エーアイピー大木、奈良ドラッグ、日野薬品工業、リブ・ラボラトリーズなどの連結子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は右肩上がりで成長を続け、2026年3月期には3,604億円に達しています。一方、経常利益は2025年3月期まで順調に増加していましたが、直近は人件費や物流コストの上昇、電子化への投資負担などにより減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,782億円 3,044億円 3,347億円 3,495億円 3,604億円
経常利益 16億円 32億円 33億円 40億円 20億円
利益率(%) 0.6% 1.0% 1.0% 1.1% 0.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 22億円 22億円 26億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は増加したものの、商品値上げの価格転嫁の遅れやコスト上昇等の影響により、売上総利益および営業利益は前年を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,495億円 3,604億円
売上総利益 185億円 176億円
売上総利益率(%) 5.3% 4.9%
営業利益 28億円 7億円
営業利益率(%) 0.8% 0.2%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が80億円(構成比47%)、給料手当及び賞与が40億円(同23%)を占めています。売上原価は3,427億円であり、売上高に対する構成比が95%を占めるため、仕入価格の変動が利益に与える影響が大きい構造です。

(3) セグメント収益


同社は医薬品等の製造・販売事業の単一セグメントです。日用品や軽衣料、衛生医療用品の売上が堅調に推移し、前年比で増収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
連結(合計) 3,495億円 3,604億円 28億円 7億円 0.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローがマイナス、財務キャッシュ・フローがプラスとなっており、本業のキャッシュ創出はマイナスですが、借入等による資金調達で将来成長のための投資を継続する勝負型の局面です。なお、営業キャッシュ・フローのマイナスは主に棚卸資産の増加によるものです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -92億円 -14億円
投資CF -31億円 -7億円
財務CF 69億円 14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も23.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「医薬品スタンディングの美と健康と快適な生活にウィングを持つ需要創造型の新しい中間流通業」を目指しています。同時に、「流通コストのナショナルミニマムを実現する中間流通業」として、小売店と一体となって消費者満足の向上を通じて社会に貢献していくことを社会的使命として掲げています。

(2) 企業文化


同社グループの経営理念である「大木の精神」が組織の文化を形作っています。社会への役立ちを志す人材が集い、生活者を取り巻く社会問題や環境課題などに対して、ヘルスケア商品と適切な情報を提供し、解決手段を提案することを目指す姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


安定的な収益を獲得することがすべてのステークホルダーの利益に合致すると考え、「営業利益率」および「経常利益率」を重要な客観的指標として位置付けています。継続的なコスト削減と業務の効率化に努め、これらの利益率指標の改善を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


ドラッグストア等の再編淘汰が進むなか、考え方を共有する小売企業やメーカーとパートナーシップを組み、潜在需要を顕在化させる新商品の開発支援や新カテゴリーの提案に注力します。また、店頭での販売力を強化する「インストアマーチャンダイジング」の展開や、電子化・デジタル化への先行投資を進め、独自のビジネスモデルを持つオンリーワン卸の確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「大木の精神」に基づき、多様なジェンダー、年齢、国籍、キャリアを受け入れ、安定的かつ長期にわたる雇用機会を提供することを目指しています。失敗を恐れずに挑戦し続ける人材の育成に注力し、海外研修や大学院への留学、外部研修プログラムへの参加など、個を活かすための多様な学習機会を提供しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 57.1歳 26.5年 6,856,000円


※平均年間給与は、同社グループ会社における支給金額と合算しており、賞与等を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.9%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 52.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.5%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 62.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特有の商慣習に係るリスク


医薬品卸売業界において、メーカーから支払われる販売報奨金等が業績に寄与しています。メーカーの営業戦略の変更による販売報奨金制度の変更や、大手小売企業の合従連衡に伴う価格交渉力の強化によるセンターフィー(物流負担金)の料率上昇等が生じた場合、収益性に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 取引先の財務状況悪化に係るリスク


ドラッグストアや薬局を中心とする取引先に対して多額の売掛債権を有しています。与信管理の徹底によるリスクの最小化を図っていますが、取引先の財務状況の悪化によって売掛債権の回収が滞った場合、貸倒引当金の追加計上が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制に係るリスク


医薬品やその関連商品を取り扱うため、関連法規による規制を受けます。営業拠点の開設や商品の販売に際して、各事業所が所轄の都道府県知事等から必要な許認可や登録を受ける必要があります。監督官庁の許認可等の状況に変化が生じた場合、事業活動が制限されるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。