コスモエネルギーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コスモエネルギーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コスモエネルギーホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、原油の自主開発から輸入・精製・貯蔵・販売までを一貫して手がける総合エネルギー企業です。直近の業績では、原油価格の変動等の影響により売上高および経常利益は微減となったものの、法人税等の減少などにより最終利益は増加しています。


※本記事は、コスモエネルギーホールディングスの有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コスモエネルギーホールディングスってどんな会社?


原油の開発から販売までを網羅する総合エネルギー事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社のルーツは1939年に設立された大協石油にあり、1986年に丸善石油等と合併してコスモ石油へ商号変更しました。その後、2015年に単独株式移転によりコスモエネルギーホールディングスを設立し、東京証券取引所に上場しました。近年は、2019年にコスモエコパワーを完全子会社化して風力発電事業を強化したほか、2024年には岩谷産業と資本業務提携を結ぶなど、次世代エネルギー領域への展開を進めています。

同社グループの従業員数は連結で6,675名、単体で267名です。筆頭株主は事業会社の岩谷産業で、第2位と第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
岩谷産業 22.17%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.41%
日本カストディ銀行(信託口) 4.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は山田茂氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山田茂 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1988年コスモ石油入社。同社供給部長、コスモエネルギーホールディングス執行役員経営企画部長、常務執行役員などを経て、2023年より現職。
松岡泰助 取締役(代表取締役)常務執行役員 1993年コスモ石油入社。同社供給部長、取締役執行役員を経て、2023年にコスモエネルギーホールディングス常務執行役員に就任。2025年より現職。
桐山浩 取締役会長 1979年大協石油入社。コスモ石油取締役を経て、2015年コスモエネルギーホールディングス取締役。2017年代表取締役社長などを経て、2025年より現職。
竹田純子 取締役 1990年コスモ石油入社。同社人事総務部長などを経て、2020年コスモエネルギーホールディングス執行役員人事部長。2025年代表取締役を経て、2026年より現職。
岩根茂樹 取締役 1976年関西電力入社。同社代表取締役社長や電気事業連合会会長などを歴任。ユアサM&B上席顧問、岩谷産業顧問を務め、2024年より現職。
植松孝之 取締役(常勤監査等委員) 1992年コスモ石油入社。同社財務部長などを経て、2016年コスモエネルギーホールディングス執行役員財務部長。代表取締役などを歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、井上龍子(元農林水産省研究総務官)、栗田卓也(元国土交通事務次官)、鈴木貴子(エステー会長)、高山靖子(元資生堂常勤監査役・監査等委員長)、浅井恵一(元KHネオケム社長・指名報酬委員長)、栗山年弘(アルプスアルパイン会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「石油事業」「石油化学事業」「石油開発事業」「再生可能エネルギー事業」および「その他」事業を展開しています。

石油事業


原油・石油製品の輸出入、精製、貯蔵、販売および潤滑油の製造販売等を提供し、系列特約店を通じた一般消費者や大口需要家が主な顧客です。
収益は、顧客への石油製品の販売代金から得ています。運営は主にコスモ石油やコスモ石油マーケティング、コスモ石油ルブリカンツなどが行っています。

石油化学事業


エチレンやプロピレンなどの石油化学製品および機能化学品の製造・販売を提供し、石油化学関連企業などが顧客です。
収益は、顧客への石油化学製品の販売代金から得ています。運営は主に丸善石油化学やコスモ松山石油などが行っています。

石油開発事業


アブダビ首長国などにおいて原油の探鉱、自主開発、生産、販売を提供し、産油国やグループ内の精製会社などが顧客です。
収益は、開発・生産した原油の販売代金から得ています。運営は主にコスモエネルギー開発やアブダビ石油などが行っています。

再生可能エネルギー事業


陸上および洋上での風力発電等によるクリーンな電力供給を提供し、電力会社などが顧客です。
収益は、発電した電力の売電代金から得ています。運営は主にコスモエコパワーなどが行っています。

その他


グループ内の不動産売買・管理、経理・財務・人事などの業務受託、製油所設備の建設・維持補修工事等を提供しています。
収益は、不動産の賃貸収入やグループ各社からの業務受託手数料、工事請負代金などから得ています。運営は主にコスモビジネスアソシエイツやコスモエンジニアリングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間において、売上高は2.4兆円から2.8兆円規模で推移しており、経常利益も1,400億円から2,300億円規模で安定的に計上しています。利益率は5〜9%台で推移しており、安定した収益基盤を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 24,405億円 27,919億円 27,296億円 27,999億円 26,776億円
経常利益 2,331億円 1,645億円 1,616億円 1,508億円 1,492億円
利益率(%) 9.6% 5.9% 5.9% 5.4% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 159億円 401億円 639億円 810億円 392億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上原価の減少幅が大きかったことにより、売上総利益と営業利益はそれぞれ増加しています。これに伴い、売上総利益率は11.0%から12.5%へと改善傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 27,999億円 26,776億円
売上総利益 3,068億円 3,360億円
売上総利益率(%) 11.0% 12.5%
営業利益 1,282億円 1,448億円
営業利益率(%) 4.6% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、外注作業費が437億円(構成比23%)、給料が277億円(同14%)、支払運賃が252億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


石油事業が売上高の大半を占めており、原油価格変動等の影響を受けつつも安定した規模を維持しています。再生可能エネルギー事業や石油開発事業も着実に売上を計上しており、事業ポートフォリオの多様化が進められています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
石油事業 24,170億円 22,988億円
石油化学事業 2,970億円 2,883億円
石油開発事業 436億円 452億円
再生可能エネルギー事業 132億円 161億円
その他 292億円 292億円
連結(合計) 27,999億円 26,776億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,371億円 2,137億円
投資CF -1,457億円 -847億円
財務CF -690億円 -819億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「私たちは、地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざします。」というグループ理念を掲げています。この理念のもと、エネルギーの安定供給を通じて社会を支え、持続的な企業価値の向上とサステナブル経営の実践を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、グループ理念を推進し達成するための具体的指針として「コスモエネルギーグループ企業行動指針」を定めています。これに基づき、経営の透明性・効率性の向上、迅速な業務執行、リスクマネジメントおよびコンプライアンスの徹底を推進し、役員と従業員が一体となって高い倫理観を持つ組織づくりに努めています。

(3) 経営計画・目標


2035年を見据えた長期ビジョン「Vision 2035」を策定しており、10年間で約8,000億円の成長投資を実施する計画です。2035年度における数値目標として以下を掲げています。

* 在庫評価を除く経常利益2,500億円以上
* ROE15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


第8次連結中期経営計画において、「Oil & New エネルギーと、その先へ。」をスローガンに、「収益力最大化」「成長機会の追求」「生産性向上」「三位一体の資本政策」を基本方針としています。石油・資源開発を柱としつつ、電力や次世代エネルギー領域の収益機会を強化し、AI・デジタル活用への投資を拡充することで環境変化に揺るがない経営体質を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


何事にも主体的に挑戦し、社員と会社がともに成長する人材集団の形成を目指しています。多様な価値観を尊重し、年齢や性別に関わらず能力を最大限に発揮できる環境づくりを進めるほか、ジョブ型志向による能力発揮の促進や自律的キャリア形成の支援、心身の健康維持・増進を目的とした健康経営を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 13.3年 11,881,994円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.4%
男性育児休業取得率 84.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.0%
男女賃金差異(正規雇用) 80.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 78.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェックの受検率(98.4%)、新卒学卒女性採用比率(55%)、従業員の育成・研修に対する投資額(年間18万円/人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サプライチェーンの中断


広範囲に及ぶサプライチェーンにおいて、政治情勢の悪化やテロ、取引先の要因等により原油生産拠点の操業停止や輸送・製油所運営が中断し、同社グループの事業に支障をきたし巨額の損失が発生するリスクがあります。

(2) 原料・資材価格の変動


世界情勢や各国の政策変更等に伴う原油価格等の変動、インフレによる資機材・労務費の高騰や為替変動が、同社グループの収益性や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 脱炭素化の進展による石油需要の減少


エネルギートランジションの進行により、想定以上のスピードで国内の石油製品の需要が減少することや、炭素賦課金等によるコスト増加によって収益性が低下し、事業資産が座礁化するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。