コスモエネルギーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コスモエネルギーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場し、原油開発から精製・販売、石油化学、風力発電等の事業を展開しています。当期の連結業績は、売上高が2兆7,999億円と増収となった一方、経常利益は原油価格の下落等により1,508億円と減益になりました。


※本記事は、コスモエネルギーホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第10期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コスモエネルギーホールディングスってどんな会社?


石油開発、精製、販売の一貫体制に加え、風力発電など再生可能エネルギー事業も展開するエネルギー企業です。

(1) 会社概要


同社の源流は1939年設立の大協石油に遡り、1986年に大協石油、丸善石油、旧コスモ石油が合併してコスモ石油が発足しました。2015年に持株会社体制へ移行し、現社名にて上場しています。再エネ分野では2019年にエコ・パワーを完全子会社化しました。2024年には岩谷産業と資本業務提携契約を締結し、協業関係を強化しています。

2025年3月31日現在の連結従業員数は6,487名、単体では253名です。筆頭株主は同社と資本業務提携を結ぶ事業会社の岩谷産業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も同様に信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
岩谷産業 21.28%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.85%
日本カストディ銀行(信託口) 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役会長は桐山浩氏、代表取締役社長 社長執行役員は山田茂氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
桐山 浩 取締役会長(代表取締役) 1979年大協石油入社。コスモ石油取締役、同社取締役(専務執行役員)、代表取締役社長などを経て、2023年4月より現職。
山田 茂 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1988年コスモ石油入社。同社供給部長、同社執行役員経営企画部長、常務執行役員などを経て、2023年4月より現職。
竹田 純子 取締役(代表取締役)常務執行役員 1990年コスモ石油入社。同社人事総務部長、企画管理部長、取締役執行役員、同社執行役員人事部長などを経て、2022年6月より現職。
松岡 泰助 取締役(代表取締役)常務執行役員 1993年コスモ石油入社。同社供給部長、取締役執行役員、同社常務執行役員を経て、2024年6月より現職。
岩根 茂樹 取締役 1976年関西電力入社。同社代表取締役社長、電気事業連合会会長などを歴任。ユアサM&B上席顧問、岩谷産業顧問などを経て、2024年6月より現職。
植松 孝之 取締役(常勤監査等委員) 1992年コスモ石油入社。同社財務部長、同社代表取締役(専務執行役員)などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、井上龍子(元農林水産省農林水産技術会議事務局研究総務官)、栗田卓也(元国土交通事務次官)、鈴木貴子(エステー会長)、高山靖子(元資生堂常勤監査役)、浅井恵一(元KHネオケム代表取締役社長・指名・報酬委員会委員長)、栗山年弘(元アルプスアルパイン代表取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「石油開発事業」、「石油事業」、「石油化学事業」、「再生可能エネルギー事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 石油開発事業


アラブ首長国連邦(UAE)やカタールなどで原油の自主開発および生産を行っています。連結子会社のコスモエネルギー開発やアブダビ石油などが事業主体となり、Cosmo E&P Albahriya Limitedは探鉱活動を行っています。

収益は、開発・生産した原油の販売により得ています。運営は、主に連結子会社のコスモエネルギー開発、アブダビ石油、および持分法適用関連会社の合同石油開発などが行っています。

(2) 石油事業


原油の輸入から精製、貯蔵、販売までを一貫して行っています。ガソリン、灯油、軽油などの石油製品を製造し、サービスステーションを通じて一般消費者に販売するほか、大口需要家への直接販売も行っています。

収益は、一般消費者や大口需要家、特約店等への石油製品販売代金から得ています。運営は、コスモ石油が原油購入・精製を行い、コスモ石油マーケティングが販売を担っています。また、コスモ石油ルブリカンツが潤滑油の製造販売を行っています。

(3) 石油化学事業


石油化学製品の製造および販売を行っています。エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの基礎化学品や、機能化学品などを取り扱っています。

収益は、石油化学製品の販売代金から得ています。運営は、主に連結子会社の丸善石油化学、コスモ松山石油、CMアロマ、京葉エチレンなどが行っています。

(4) 再生可能エネルギー事業


風力発電事業を中心とした再生可能エネルギー事業を展開しています。陸上風力発電所の開発・運営に加え、洋上風力発電プロジェクトへの取り組みも進めています。

収益は、発電した電力の販売(売電収入)から得ています。運営は、主に連結子会社のコスモエコパワーが行っています。

(5) その他


不動産の売買・管理、建設工事、保険代理店業などを行っています。また、グループ内の経理、財務、購買、総務、人事関連業務の受託も行っています。

収益は、不動産売買・賃貸料、工事代金、保険手数料、業務受託料などから得ています。運営は、コスモ石油、コスモビジネスアソシエイツ、コスモエンジニアリング、コスモトレードアンドサービスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第8期に大幅に増加した後、高水準で推移しています。経常利益は第7期をピークに減少傾向にありますが、依然として1,500億円以上の水準を維持しています。当期純利益は第7期が最も高く、その後は変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 22,333億円 24,405億円 27,919億円 27,296億円 27,999億円
経常利益 974億円 2,331億円 1,645億円 1,616億円 1,508億円
利益率(%) 4.4% 9.6% 5.9% 5.9% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 333億円 159億円 401億円 639億円 810億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高は微増しましたが、売上原価の増加率が売上高の増加率を上回ったため、売上総利益は減少しました。また、販売費及び一般管理費も増加した結果、営業利益は減少しました。売上高営業利益率は低下しており、収益性の面でやや厳しい結果となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 27,296億円 27,999億円
売上総利益 3,196億円 3,068億円
売上総利益率(%) 11.7% 11.0%
営業利益 1,492億円 1,282億円
営業利益率(%) 5.5% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、外注作業費が414億円(構成比23%)、給料が266億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


石油事業は売上高が微増しましたが、原油価格の下落等により減益となりました。石油化学事業は市況低迷により売上が減少し、損失を計上しています。石油開発事業は為替変動等の影響で増収増益となりました。再生可能エネルギー事業は風況悪化等により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
石油事業 23,410億円 24,170億円
石油化学事業 3,131億円 2,970億円
石油開発事業 391億円 436億円
再生可能エネルギー事業 142億円 132億円
その他 221億円 292億円
調整額 -億円 -億円
連結(合計) 27,296億円 27,999億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で稼いだ資金で借入金の返済を行いつつも、設備投資等の投資活動が営業キャッシュ・フローを上回る支出となっており、手元資金を取り崩している「健全型」に近い状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,779億円 1,371億円
投資CF -328億円 -1,457億円
財務CF -1,042億円 -690億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざします。」というグループ理念を掲げています。また、Vision 2030として「未来を変えるエネルギー、社会を支えるエネルギー、新たな価値を創造する。」というスローガンを設定し、ありたい姿の実現を目指しています。

(2) 企業行動指針


グループ理念を推進し達成するための具体的指針として「コスモエネルギーグループ企業行動指針」を定めています。これは役員および従業員が業務遂行上実践・遵守すべき規範と位置付けられています。経営の透明性・効率性の向上、迅速な業務執行、リスクマネジメントおよびコンプライアンスの徹底を推進しています。

(3) 経営計画・目標


第7次連結中期経営計画において、2025年度の経営目標として以下の数値を掲げています。
* 在庫影響を除く経常利益:1,650億円
* ROE:10.0%以上
* ネットD/Eレシオ:1.0倍程度
* 自己資本:6,000億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


「Oil & New ~Next Stage~」をスローガンに、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」を基本方針としています。石油事業の収益力強化とともに、SAF(持続可能な航空燃料)や再生可能エネルギーなどの次世代エネルギー事業へ投資し、ポートフォリオの拡充を図ります。

* SAFの大規模生産開始(国内初)
* 陸上・洋上風力発電の設備容量拡大(2030年1,500MW超目標)
* DX(デジタル変革)による製油所運営の高度化や顧客接点の強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人が活き、人を活かす人材戦略の実践(HRX)」を掲げ、自律的で多様な思考を持ち挑戦し続ける人材集団の形成を目指しています。「人材活用方針」では多様な人材の活躍推進やジョブ型志向による能力発揮を、「健康経営方針」では従業員の心身の健康維持・増進を定めています。具体的には、自律的キャリア形成の促進、経営人材の育成、女性活躍推進、健康経営の推進などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.0歳 14.7年 11,507,592円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 79.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.2%
男女賃金差異(正規雇用) 78.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.0%


※ 上記数値は主要子会社であるコスモ石油の実績を含みます。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒学卒女性採用比率(51%)、ストレスチェック受検率(98.2%)、データ活用コア人材の育成(980名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 脱炭素化の進展による石油需要の減少


エネルギートランジションの進行等により、石油製品需要が想定以上のスピードで減少したり、炭素税等のコストが増加したりすることで、収益性が低下し、事業資産が座礁化する可能性があります。同社は需要減少に備えた販路確保や、SAF、グリーン電力、水素事業などの新たな取り組みを推進しています。

(2) 環境規制・気候変動対策の強化


エネルギー政策や規制変更等により気候変動対策が急激に強化され、事業ポートフォリオや戦略投資の判断に影響を及ぼす可能性があります。特に風力発電事業では、開発段階での事業化断念や、資材高騰、洋上風力の促進区域指定の遅れなどがリスク要因となります。同社は中長期的な環境変化を捉えた戦略構築に努めています。

(3) 労働市場の変化による人材確保・育成の困難化


労働人口が減少する中、人材獲得競争が激化しており、経営戦略の推進に必要な多様で専門性を持った人材の確保・育成や、在籍社員の流出防止が困難になる可能性があります。同社は処遇制度の見直し、自律的キャリア形成の強化、採用手法の多様化などを通じて、人材の確保と育成に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。