※本記事は、PCIホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第21期、自 2024年10月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. PCIホールディングスってどんな会社?
M&Aで成長した組込みソフト・半導体技術に強みを持つ企業グループ。レスター傘下で新体制へ移行。
■(1) 会社概要
2005年に設立し、ITシステム開発を開始。積極的なM&A戦略により事業領域を拡大し、2015年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場、2016年には市場第一部へ変更しました。2024年にはレスターと資本業務提携契約を締結し、株式公開買付けを経て同社の連結子会社となりました。
連結従業員数は1,632名、単体では23名です。筆頭株主は親会社のエレクトロニクス商社であるレスター(51.14%)で、第2位はPCIホールディングス従業員持株会です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| レスター | 51.14% |
| PCIホールディングス従業員持株会 | 5.51% |
| THE BANK OF NEW YORK MELLON 140040常任代理人(みずほ銀行決済営業部) | 1.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は戸澤正人氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 戸澤 正人 | 代表取締役社長社長執行役員 | 富士通を経て都築電気取締役、レスターホールディングス専務執行役員等を歴任。2024年12月より現職。 |
| 森下 健作 | 取締役執行役員戦略推進本部長 | 富士通にて統合商品戦略本部長等を歴任後、富士通コワーコ社長、ソード会長を経て、2024年12月より現職。 |
| 井口 直裕 | 取締役執行役員経営企画本部長 | フューチャー・テクノロジー(現サイオステクノロジー)を経て同社入社。経営企画室長、管理本部長等を歴任し現職。 |
| 杉薗 和也 | 取締役執行役員管理本部長 | フューチャー・テクノロジー(現サイオステクノロジー)を経て同社入社。財務・経理本部長等を経て現職。 |
社外取締役は、中村浩之(元日本ATMビジネスサービス社長)、牧真之介(公認会計士・税理士)、櫻井康史(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンジニアリング事業」、「プロダクト/デバイス事業」、「ICTソリューション事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
**(1) エンジニアリング事業**
自動車関連、情報家電、モバイル等の組込み制御系システムの設計・開発や、一般企業、金融機関、官公庁向けの業務システムの設計・開発およびITシステム構築を行います。特にSDV化が進む自動車業界向けのソフトウェア開発に強みを持ちます。
収益は、顧客企業からのシステム開発・構築案件の受託料や、エンジニア派遣による対価、自社パッケージ製品のライセンス料等から得ています。運営は主にPCIソリューションズやソードが行っています。
**(2) プロダクト/デバイス事業**
医療機器や産業機械向けの組込みPC、コントローラー等の開発・製造・販売を行うほか、半導体の設計・テスト受託、LSIターンキーサービスを提供しています。
収益は、ハードウェア製品の販売代金や、半導体設計・テスト業務の受託料から得ています。運営は主にソードやプリバテックが行っています。
**(3) ICTソリューション事業**
組込制御技術やアプリケーション技術を活かしたIoTソリューションの提供、AI活用ソリューション、IoTプラットフォーム、サービスインテグレーション等を展開しています。クラウドプラットフォームを活用したシステム構築も行います。
収益は、ソリューション提供に伴う対価、共同開発費、システム構築支援料等から得ています。運営は主にPCIソリューションズやプリバテックが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上高は安定的に推移していましたが、当期は決算期変更に伴う6ヶ月決算のため単純比較はできません。利益面では、経常利益率は5〜6%台で推移していましたが、前期は一時的に低下しました。当期は再び5%台を回復し、底堅い収益性を示しています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 212億円 | 252億円 | 285億円 | 251億円 | 133億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 15億円 | 18億円 | 10億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 5.7% | 6.2% | 6.2% | 3.9% | 5.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 6億円 | 9億円 | 8億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上原価率は約77%前後で推移しています。販売費及び一般管理費は売上の18〜19%程度を占めており、当期は変則決算ながら営業利益率は5.1%を確保しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 251億円 | 133億円 |
| 売上総利益 | 57億円 | 31億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.9% | 23.2% |
| 営業利益 | 11億円 | 7億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が9億円(構成比37%)、役員報酬が2億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エンジニアリング事業はモビリティ関連等の需要により堅調です。プロダクト/デバイス事業は医療向けPC等が好調で利益率が改善しました。ICTソリューション事業はクラウド関連等が伸長し、高い利益率を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンジニアリング事業 | 136億円 | 72億円 | 10億円 | 5億円 | 6.9% |
| プロダクト/デバイス事業 | 85億円 | 43億円 | 4億円 | 2億円 | 5.7% |
| ICTソリューション事業 | 30億円 | 19億円 | 4億円 | 3億円 | 17.8% |
| 調整額 | 0億円 | - | -8億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 251億円 | 133億円 | 11億円 | 7億円 | 5.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはプラス、財務CFはマイナスであり、本業の利益と資産売却等で借入返済や株主還元を進める改善型に近い状態です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | 6億円 |
| 投資CF | 12億円 | 0.1億円 |
| 財務CF | -14億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.5%で市場平均を上回るまたは同等水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「我々は、お客様の満足を通じて全社員の幸せを追求し、そして社会の発展に貢献します。」を企業理念として掲げています。ITの可能性を探求し続け、安心・安全・豊かな社会(サステナブルな社会)の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「安定した事業成長を実現します」「ユーザーに適したソリューションを提供します」「応援して頂ける企業を目指します」「積極的(Positively)に変化(Change)を求め、革新(Innovate)します」「全てのステークホルダーに満足して頂ける企業を目指します」を行動方針としています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「PCI X-formation 2032(PX2032)」では、2032年に向けて企業ブランドの確立と総合技術コンサルティング企業への進化を目指しています。また、中期経営計画「PCI-VISION2027」を推進しており、最終年度の目標として以下を掲げています。
* 連結売上高:310億円
* 連結営業利益:28億円(利益率9.0%)
* ROE:15%以上
* PBR:2倍以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では「第二の創業期」として基盤作りを重視し、親会社であるレスターとのシナジー追求や収益の「質」向上に取り組みます。エンジニアリング事業やプロダクト/デバイス事業を安定コア事業としつつ、ICTソリューション事業を成長ドライバーとしてAI・クラウド関連に資源を集中します。
* 人的資本経営の高度化(教育投資、人事制度改革)
* サステナブル経営の深化(脱炭素、D&I推進)
* 資本コストを意識した経営(ROE向上、株主還元強化)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人的資本投資の強化・人的資本経営の再構築」を基本戦略とし、競争力ある領域への人材配置やスキル高度化教育、リスキリング教育を推進しています。多様性・公平性・包摂性のある組織づくりへの投資を活性化させ、社員エンゲージメント向上とイノベーション創出を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.4歳 | 6.9年 | 6,883,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 150.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 60.8% |
※数値は主要連結子会社であるPCIソリューションズの実績です。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(3.2%)、有給休暇取得率(74.6%)、健康診断受診率(87.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済・市場環境による顧客の設備投資意欲等の影響
同社グループの事業は国内企業のソフトウェア・半導体等の設備投資動向の影響を受けます。景気低迷等により顧客の投資意欲が減退した場合、受注減少や契約解約等により業績に影響を及ぼす可能性があります。市場動向の把握と競争優位性の確保に努めています。
■(2) グローバルな半導体需給の影響
半導体関連事業は、メーカーの統合や開発方針変更、生産拠点の海外移転等の影響を受けます。国内開発市場の縮小が顕著になった場合、業績に影響が出る可能性があります。顧客需要の把握と事業ポートフォリオ最適化で対応しています。
■(3) AIの利活用・技術革新による影響
技術革新が速い業界であり、新技術(特にAI)への対応遅れや、AI利活用における安全性・倫理的配慮の不足が生じた場合、競争力低下や社会的信用失墜のリスクがあります。「PCIグループAI倫理方針」の整備や共同研究等で対応を進めています。



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