PCIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PCIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場するPCIホールディングスは、エンジニアリングやプロダクトデバイス等のIT関連事業を多角的に展開する企業です。直近の業績では主要セグメントが牽引し大幅な増収増益を達成しており、親会社であるレスターとの連携強化によるシナジー創出でさらなる事業領域の拡大が期待されます。


※本記事は、PCIホールディングス株式会社の有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. PCIホールディングスってどんな会社?


同社はITシステム開発や組込み制御開発、半導体関連サービスなどを提供するITソリューショングループです。

(1) 会社概要


同社は2005年に情報サービス事業を目的としてM&Sを設立したことに始まります。翌2006年には純粋持株会社へと移行しました。その後、M&Aを通じた積極的な事業拡大を続け、2015年に東証マザーズへ上場を果たしました。2021年にはエンベデッド事業を営むソードを完全子会社化しています。

現在の同社グループは、連結従業員数1,647名、単体24名体制で事業を展開しています。筆頭株主は親会社であるレスターであり、両社で強固な資本業務提携関係を構築しています。第2位はPCIホールディングス従業員持株会、第3位は信託銀行の常任代理人となっており、安定した株主構成を維持しています。

氏名 持株比率
レスター 51.05%
PCIホールディングス従業員持株会 5.83%
THE BANK OF NEW YORK MELLON 140040常任代理人(みずほ銀行決済営業部) 1.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は森下健作氏が務めています。社外取締役は4名在籍しており、社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
森下健作 代表取締役社長社長執行役員 富士通に入社し商品戦略推進本部長等を歴任。富士通コワーコ代表取締役社長を経て、2025年6月より現職。
戸澤正人 取締役会長 富士通に入社しソリューションビジネス企画室長等を歴任。レスター専務執行役員を経て、2025年6月より現職。
井口直裕 取締役執行役員経営企画本部長 サイオステクノロジー入社後、同社へ転籍し経営企画室長等を歴任。2018年12月より現職。
杉薗和也 取締役執行役員管理本部長 広石会計事務所などを経て同社へ入社。財務・経理室長等を歴任し、2020年12月より現職。
生田優二 取締役(監査等委員)(常勤) 松本税務会計事務所等を経てPCIソリューションズへ入社し代表取締役社長等を歴任。2024年12月より現職。


社外取締役は、中村浩之(元日本ATMビジネスサービス代表取締役社長)、坂倉裕司(元リレーションズJAPAN代表取締役)、牧真之介(牧真之介公認会計士事務所代表)、櫻井康史(晴海パートナーズ法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンジニアリング事業」「プロダクト/デバイス事業」「ICTソリューション事業」を展開しています。

エンジニアリング事業


自動車関連、情報家電、モバイル等の組込み制御系システムの設計・開発、ならびに一般企業、金融機関、官公庁向けの業務システム設計・開発やITシステム構築を行っています。また、自社パッケージソフトウェア製品の企画・開発も手掛け、高度な専門性と技術力を要する顧客課題の解決を支援しています。

収益は、顧客企業からのシステム開発の受託や技術者派遣による業務委託料、ソフトウェア製品の販売から得ています。事業の運営は、主にPCIソリューションズ、ソード、パーソナル情報システムなどの連結子会社が担い、自動車業界をはじめとした幅広い顧客基盤に対して強固なリレーションを築いています。

プロダクト/デバイス事業


組込みPCやコントローラー等の開発・製造・販売、ならびに半導体設計・テスト受託やLSIターンキーサービスを提供しています。モノとITを組み合わせた付加価値の高いソリューションを展開し、医療機器メーカーや半導体メーカーなどの多様な優良顧客に対して包括的な価値を提供しています。

顧客企業へ製品を販売することによる売上や、受託した半導体設計・テスト業務の委託料から収益を得るモデルです。事業の運営は主にソードやプリバテックが担っており、製品開発能力や量産能力を活かしてIoTやEdge-AI分野などの新製品開発・販売を通じた事業拡大を推進しています。

ICTソリューション事業


組込制御技術やアプリケーション技術など同社グループの強みを活かし、IoTプラットフォームやAI活用ソリューションなどのサービスインテグレーションを提供しています。顧客接点を通じてニーズの拡がりを捕捉し、新たなサービス領域の探索や必要技術の習得による共同開発を行っています。

ソリューションの提供・導入によるシステム構築費や、AI・クラウド関連の自社パッケージの販売、ならびに保守・運用サービスから継続的な収益を得ています。事業の運営は主にPCIソリューションズやプリバテックが担当し、AWS等のプラットフォームを活用した迅速で高付加価値なサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間において、売上高は一時的に決算期変更の影響(2025年3月期は6ヶ月の変則決算)を受けましたが、全体として拡大傾向にあります。特に当期は主要セグメントの好調により大幅な増収を達成し、経常利益・当期利益ともに高い水準へ回復しました。利益率も改善傾向を示し、堅調な事業成長が伺えます。

項目 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 252億円 285億円 251億円 133億円 268億円
経常利益 15億円 18億円 10億円 7億円 16億円
利益率(%) 6.0% 6.2% 3.9% 5.3% 6.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 10億円 8億円 6億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益は、前期が6ヶ月間の変則決算であったことを考慮しても、当期は順調な伸びを見せています。原価コントロールや価格転嫁の推進により売上総利益率は安定的に推移しており、営業利益率も改善し、本業における収益力の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 133億円 268億円
売上総利益 31億円 64億円
売上総利益率(%) 23.2% 23.7%
営業利益 7億円 16億円
営業利益率(%) 5.1% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が18億円(構成比38%)と最も大きく、次いで役員報酬が3億円(同6%)、賞与引当金繰入額が1億円(同2%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて、前期からの変則決算の反動増に加え、堅調な投資需要の取り込みにより売上高が増加しています。エンジニアリング事業では車載関連などの開発案件が好調に推移し、ICTソリューション事業ではAIやクラウド構築ビジネスの伸長が寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
エンジニアリング事業 72億円 150億円
プロダクト/デバイス事業 43億円 79億円
ICTソリューション事業 19億円 39億円
連結(合計) 133億円 268億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で十分なキャッシュを創出し、その資金で設備投資や借入金の返済、株主還元などの財務活動を賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。安定した手元資金を背景に、成長への投資と財務基盤の強化を両立しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6億円 12億円
投資CF 0.1億円 -0.5億円
財務CF -5億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も60.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

(1) 経営理念


同社グループは、「我々は、お客様の満足を通じて全社員の幸せを追求し、そして社会の発展に貢献します。」を企業理念として掲げています。ITの力で様々な社会課題を解決し、環境変化や技術進化に機動的かつ柔軟に対応することで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、以下の5つの行動方針のもと事業を展開しています。「安定した事業成長を実現します」「ユーザーに適したソリューションを提供します」「応援して頂ける企業を目指します」「積極的(Positively)に変化(Change)を求め、革新(Innovate)します」「全てのステークホルダーに満足して頂ける企業を目指します」。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、収益の質向上の視点で「EBITDAマージン」、資本効率性の視点で「ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)」、市場評価の視点で「PBR(株価純資産倍率)」を重視する経営指標として掲げています。
・ROE:収益の「質」向上への取組み及び適切な資本政策・株主還元を実施

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、親会社であるレスターとの連携強化による事業領域の拡大やシナジー創出を最優先課題としています。また、次世代技術領域において受託開発への依存から脱却し、自動車業界のSDV化や生成AIを活用した独自ブランドの確立に注力するほか、ポートフォリオの最適化による高収益体質への転換を急務として推進しています。

5. 働く環境

(1) 人材戦略・方針


同社はIT人材の不足が深刻化する中、「人的資本経営」の理念のもと、優秀なエンジニアの確保と育成を持続的成長における最重要課題と位置付けています。クラウドやAI等の重点分野へのリスキリング投資を強化し、健康経営や多様な働き方の整備を通じてエンゲージメントを向上させる組織風土の構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.7歳 7.5年 7,469,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 116.7%
男女賃金差異(全労働者) 77.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 61.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(76.7%)、ストレスチェック受検率(90.4%)、健康診断受診率(87.2%)などです。

6. 事業等のリスク

(1) 経済・市場環境の影響


国内企業によるITや半導体の設備投資動向に一定の影響を受けます。景気低迷や市場の設備投資意欲の減少が生じた場合、新規顧客開拓の低迷や既存顧客からの受注減少、保守・運用契約の解約等により、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) グローバルな半導体需給の影響


半導体関連事業において、国内半導体メーカーの経営方針変更やコスト構造の見直しにより、開発委託先を国外企業に変更する等、国内半導体開発市場の縮小が顕著となった場合には、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) AIの利活用・技術革新の影響


技術革新の速度が著しい情報サービス産業において、変化するニーズや新しい技術に対応できなかった場合、あるいはAI利活用の場面で安全性・正確性の確保や倫理的配慮等について適切な対応ができない場合には、社会的信用の低下を招き業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。