※本記事は、ブライトパス・バイオ株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ブライトパス・バイオってどんな会社?
がん免疫治療薬に特化し、細胞医薬や抗体医薬の探索研究から早期臨床試験までを手掛ける創薬ベンチャーです。
■(1) 会社概要
2003年5月に久留米大学医学部の基礎研究成果を承継して設立されました。2015年10月に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場しています。2016年8月に川崎創薬研究所を開所し、抗体医薬や細胞医薬へと研究領域を拡大しました。2017年7月に現社名のブライトパス・バイオへ変更し、研究開発を推進しています。
2026年3月末時点の従業員数は単体で23名です。筆頭株主は楽天証券共有口で、第2位はSBI証券、第3位は上田八木短資です。国内外のアカデミアやベンチャー企業とのオープンイノベーションを進め、開発の途上段階で製薬企業にライセンスアウトする事業モデルにより、持続可能な開発と企業成長を目指しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 楽天証券共有口 | 2.47% |
| SBI証券 | 2.46% |
| 上田八木短資 | 2.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は永井健一氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 永井健一 | 代表取締役社長 | メリルリンチ証券投資銀行部門、ペルセウスプロテオミクス取締役CFOを経て、2009年に同社取締役CFOに就任し、2011年より現職。 |
| 山田亮 | 取締役 | 久留米大学医学部免疫学講座助教授、同大先端癌治療研究センター教授等を経て、2003年同社設立時に代表取締役。2004年より現職。 |
社外取締役は、竹内弘高(元一橋大学商学部教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品開発」事業を展開しています。
■(1) 細胞医薬の開発
同社は、ナチュラル・キラーT(NKT)細胞やCAR-T細胞を用いた新規の他家細胞医薬候補の開発を進めています。代表的なパイプラインとして、iPS細胞由来再生NKT細胞療法(BP2201)や多発性骨髄腫治療薬候補(BP2202)、HER2陽性固形がんを標的とするCAR-T細胞療法(BP2301)の臨床・非臨床試験が進められています。
収益モデルは、自社または共同で探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬企業に開発製造販売権をライセンスアウトし、一時金や開発進捗に応じたマイルストン収入、上市後の販売ロイヤリティ収入を得る仕組みです。本事業はブライトパス・バイオが単体で運営しています。
■(2) 抗体医薬の開発
腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子や、免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。固形がんを対象とする抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体(BP1212)や、急性骨髄性白血病を対象とするT細胞エンゲージャー(BP1223)などを有しています。
こちらも細胞医薬と同様に、探索研究から早期臨床試験までを進め、開発の途上段階で製薬企業等へライセンスアウトすることによって早期収益化を目指すビジネスモデルを採っています。本領域の事業運営もブライトパス・バイオが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、継続的に研究開発を先行させる事業モデルのため、売上高は小規模に留まり、毎期10億円を超える経常赤字と当期純損失を計上しています。新薬候補のライセンスアウト前段階における先行投資が続いており、事業の特性上、赤字先行の傾向が顕著に表れています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 0.2億円 | 0.1億円 | - | - | - |
| 経常利益 | -14.8億円 | -14.7億円 | -11.6億円 | -11.5億円 | -12.9億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -14.8億円 | -14.9億円 | -11.7億円 | -11.5億円 | -13.0億円 |
■(2) 損益計算書
研究開発型ベンチャーとしての性質上、売上高および売上総利益の規模は限定的です。一方、研究開発への継続的な投資が必要なため、販売費及び一般管理費が先行して発生し、毎期10億円規模の営業赤字を計上しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | 97.2% | 64.3% |
| 営業利益 | -11.6億円 | -13.0億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が10.0億円(構成比77%)、役員報酬が0.7億円(同5%)を占めています。売上原価は研究開発原価として計上されています。
■(3) セグメント収益
同社は医薬品開発事業の単一セグメントです。製薬企業等へのライセンスアウト時の一時金やマイルストン収入等を収益源としていますが、当期は大型のライセンス契約等による収益がなく、特許実施許諾による一時金収入にとどまりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 医薬品開発事業 | - | - |
| 連結(合計) | - | - |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
キャッシュ・フローの状況は「勝負型」です。本業は赤字ですが、将来の成長に向けた研究開発投資を継続するため、株式の発行等による資金調達を積極的に行っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -12.5億円 | -13.7億円 |
| 投資CF | - | - |
| 財務CF | 10.0億円 | 27.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されておらず、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は90.1%でグロース市場の非製造業平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「私たちは、がん免疫治療分野の最先端を切り拓くことにより、一人ひとりが自らの力でがんを克服する世界を実現します。」を経営理念として掲げています。新規がん免疫治療薬を創製することによって、現在進行しているがん治療革新の一翼を担うことを目指し、有効な治療法のないアンメットメディカルニーズの解決に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、少人数の専門人材によって構成されるベンチャー企業として、高度な専門性とベンチャーマインドを持ち、成長意欲の高い組織風土を重視しています。また、オープンイノベーションを積極的に推進しており、国内外のアカデミアや研究機関、他企業と広く連携しながら、日進月歩で進展する最先端のサイエンスへアクセスし、革新を追求しています。
■(3) 経営計画・目標
研究開発型の創薬ベンチャーとして、研究開発投資からライセンスアウトによる収益化までの事業サイクルが長期間に及ぶため、売上高や当期純損益、ROEといった年単位の財務指標を目標として定めていません。代わって、製薬企業へのライセンスアウトの成立や、その前提となる非臨床・臨床試験成績の取得、規制当局による治験開始申請の受理などの開発イベントの達成を重要な経営指標として位置付けています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、がん免疫治療薬に開発領域を特化し、細胞医薬と抗体医薬の2つのモダリティ(治療手段)に軸足を置いて研究開発を進めています。オープンイノベーションを活用して探索から早期臨床試験までを手掛け、後期臨床試験以降は製薬企業にライセンスアウトする事業モデルを推進しています。中長期的には、創薬プラットフォームを感染症等の他疾患へ応用することや、新たなモダリティの導入も想定しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「がんを克服する世界の実現」という理念を共有できる人材を重視し、多様な経験やスキルを持つ人材を中途で積極的に採用しています。高度な専門知識と技術が求められるため、研究開発や知財等の各分野で専門性を有する人材の育成をOJT等を通じて進めています。また、育児や介護と両立できる働きやすい職場づくりやハラスメント防止研修を実施し、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.6歳 | 5.9年 | 9,382,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象外であるため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 創薬事業全般にかかるリスク
医薬品候補物質の研究開発は長期間にわたり多額の資金を要します。試験成績の目標未達や競合新薬の先行、技術の陳腐化などによって開発が遅延・中止となった場合、製薬企業へのライセンスアウトが成立せず、同社の事業や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) がん免疫治療領域における競合
がん免疫治療領域は市場規模の拡大が見込まれ、国内外の多くの企業が参入しています。競合他社の研究開発が先行した場合や競合新薬が上市された場合、同社の開発品の競争力が低下し、臨床試験の遅延・中止、ライセンス契約の解約を招くおそれがあります。
■(3) 多額の研究開発費と資金調達
研究開発が完了し製品化されるまでに長期間を要するため、多額の資金調達が必要です。ライセンス契約の締結が想定通りに進まない場合や既存パイプラインで想定以上の費用が発生した場合、また適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、事業継続に重大な懸念が生じる可能性があります。



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