フーバーブレイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フーバーブレイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フーバーブレインは、東京証券取引所 グロース市場に上場し、サイバーセキュリティ製品の開発・販売やITエンジニア派遣などのITサービスを展開する企業です。直近の業績は、売上高44億円(前期比42.2%増)、営業利益1.9億円(同730.7%増)となり、過去最高益を更新する大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社フーバーブレイン の有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フーバーブレインってどんな会社?


情報セキュリティ製品の開発・販売を行う「ITツール事業」と、エンジニア派遣や受託開発を行う「ITサービス事業」を両輪とする企業です。

(1) 会社概要


2001年に株式会社アークンとして設立され、セキュリティ対策サービスの提供を開始しました。2015年に東証マザーズへ上場し、2018年に現在の社名へ変更しています。2022年の市場区分見直しにより東証グロース市場へ移行しました。近年は積極的なM&Aを展開しており、2024年にはCONVICTION、Assemble(旧ARPEGGIO)、イチアールなどを相次いで子会社化し、事業規模を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結256名、単体55名です。筆頭株主はMCホールディングスで、第2位は個人(五十畑輝夫氏)、第3位は金融市場の仲介業務を行う上田八木短資です。

氏名 持株比率
MCホールディングス 4.99%
五十畑 輝夫 4.86%
上田八木短資 4.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は輿水 英行氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
輿水 英行 代表取締役社長 西洋環境開発、アーサーアンダーセン会計事務所、カーギルジャパンを経て、フォンティス代表取締役社長に就任。2018年より現職。
板橋 啓成 専務取締役ソリューション営業部部長クラウドセキュリティ営業部部長 神奈川リコー、リコージャパンを経て、伊藤忠テクノソリューションズ入社。2018年より現職。
錦織 劉一 取締役 韓国サムスングループ等で技術者として従事。GHソリューションSI営業本部長を経て、GHインテグレーション代表取締役社長に就任。2021年より現職。


社外取締役は、酒井 学雄(スプレンダーコンサルティング代表取締役社長)、上村 卓也(アルシエ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ITツール事業」「ITサービス事業」および「その他」事業を展開しています。

ITツール事業

自社開発のエンドポイントセキュリティソフトやネットワーク機器などのセキュリティ製品、および業務可視化による働き方改革支援ツールを提供しています。主な顧客は国内の中小企業や販売パートナーです。

製品販売による売上や、サブスクリプション型のサービス利用料などが主な収益源です。運営は主にフーバーブレインが行っています。

ITサービス事業

セキュリティ製品等の導入・運用支援、保守サポートに加え、ITエンジニアの派遣(SES)、受託開発、人材紹介サービスなどを提供しています。通信事業者や一般企業が主な顧客です。

保守サービス料、システム開発の委託費、エンジニア稼働に基づく対価、人材紹介手数料などが収益源です。運営はフーバーブレイン、GHインテグレーション、アド・トップ、CONVICTION、Assemble、イチアールが行っています。

その他

上記セグメントに含まれない投資事業を行っています。

株式等の売却によるキャピタルゲインなどが収益源です。運営はフーバー・インベストメントが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近では大幅な増収となっています。利益面では、一時的な赤字期間を経て黒字化し、直近では経常利益、当期利益ともに大きく伸長しており、利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 -億円 17億円 23億円 31億円 44億円
経常利益 -億円 -0.6億円 0.5億円 0.4億円 1.7億円
利益率(%) -% -3.5% 2.3% 1.1% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -億円 -0.3億円 0.3億円 0.3億円 1.1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約1.4倍に拡大し、売上総利益も増加しています。営業利益は大幅に増加し、営業利益率も改善しました。事業規模の拡大に伴い利益創出能力が高まっていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 31億円 44億円
売上総利益 10億円 13億円
売上総利益率(%) 33.0% 29.8%
営業利益 0.2億円 1.9億円
営業利益率(%) 0.7% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.0億円(構成比36%)、役員報酬が1.0億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


ITツール事業、ITサービス事業ともに大幅な増収増益を達成しました。特にITサービス事業は売上が約1.6倍、利益が約2.1倍となり、M&Aによる子会社化の効果や既存事業の拡大が寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ITツール事業 18億円 24億円 1.6億円 2.3億円 9.5%
ITサービス事業 13億円 20億円 1.3億円 2.7億円 13.8%
連結(合計) 31億円 44億円 0.2億円 1.9億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.1億円 -0.1億円
投資CF -1.1億円 -1.5億円
財務CF -1.2億円 2.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


ワンストップですべてのセキュリティソリューションを提供できる「セキュリティソリューションプラットフォーム」を有する「ITエンジニア集団」となることを目指しています。2026年3月期には調整後連結営業利益7億円の達成を業績目標に掲げ、グループの拡大を推進しています。

(2) 企業文化


「ヒトセキュリティ」の向上をテーマとし、セキュリティ意識の向上や働き方改革支援を重視しています。また、グループ会社間で人材採用、教育、労務管理、営業における経営資源と情報を共有し、ベストプラクティスの相互適用によって経営の質の向上を図ることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期に調整後連結営業利益7億円の達成を業績目標として掲げています。この目標に向け、ITツール事業とITサービス事業の両軸で事業拡大を進めています。

* 2026年3月期 調整後連結営業利益:7億円

(4) 成長戦略と重点施策


「オーガニックグロース」「M&Aグロース」「投資グロース」の3つを成長ファクターとしています。基盤事業であるセキュリティ製品の収益性維持、成長事業であるSaaS製品の拡大に加え、積極的なM&Aによるエンジニア集団の構築とITサービス事業の拡張を推進しています。投資事業ではキャピタルゲインによる成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「エンジニア集団の構築」を掲げ、優秀なIT人材の育成・獲得を最重要課題としています。積極的なM&Aにより人材を有する企業をグループ化するとともに、各従業員がスキルアップし生産性を向上できる環境構築に取り組んでいます。自社ツールを活用した業務効率改善にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 6.0年 6,612,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(3.7)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新への対応

セキュリティ脅威の複雑化や競合製品の増加に対し、技術開発・獲得が遅れた場合、競争力が低下する可能性があります。同社は従業員教育やパートナー協業を通じて技術力向上に努めています。

(2) 競合環境の激化

セキュリティツールやITサービス市場には多数の競合が存在します。競合がより優れた製品や人材を獲得した場合、同社グループの競争力に影響を及ぼす可能性があります。差別化と人材育成・獲得により優位性強化を図っています。

(3) 特定販路への依存

ITツール事業の売上は、主にOA機器販売会社やSIerなどの販売パートナーに依存しています。パートナーの方針変更があった場合、業績に影響が出る可能性があります。同社は新規パートナー開拓や直販など販路の多様化を進めています。

(4) 人材の育成・確保

事業拡大には優秀なIT人材の確保が不可欠です。人材獲得競争の中で計画通りに増員できない場合や、人材が流出した場合、事業成長が鈍化する可能性があります。M&Aによる人材獲得やグループ内の採用ノウハウ活用を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。