フーバーブレイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フーバーブレイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場するフーバーブレインは、ITツール事業、ITサービス事業および投資事業を展開しています。サイバーセキュリティ対策や働き方改革を支援するツールの提供、ITエンジニアの派遣等を行っており、直近の業績は売上高、営業利益ともに過去最高を更新し、大幅な増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、株式会社フーバーブレイン の有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フーバーブレインってどんな会社?


サイバーセキュリティ対策製品や働き方改革ツールの開発、IT人材サービス等を展開するIT企業です。

(1) 会社概要


2001年5月にITセキュリティ対策に特化したサービス等の提供を目的として設立され、2015年12月に東証マザーズへ上場を果たしました。2018年10月にフーバーブレインへと社名を変更しています。近年は持続的な成長に向けた積極的なM&Aを推進しており、直近では人材紹介を手掛けるYouth Planetや、生成AIを活用したコンサルティングを展開するProofXなどを子会社化しています。

現在の従業員数は連結で251名、単体で52名となっています。筆頭株主は外資系金融機関のINTERACTIVE BROKERS LLCで、第2位は個人投資家の五十畑輝夫氏、第3位は事業会社であるMCホールディングスとなっています。

氏名 持株比率
INTERACTIVE BROKERS LLC 8.41%
五十畑輝夫 5.01%
MCホールディングス 4.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長の輿水英行氏が経営を牽引しており、取締役5名のうち2名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
輿水英行 代表取締役社長 西洋環境開発に入社後、アーサーアンダーセン会計事務所等を経て、同社代表取締役社長に就任。関連子会社の会長職も複数兼任。
板橋啓成 専務取締役 神奈川リコー、リコージャパンの支社長等を歴任。伊藤忠テクノソリューションズを経て、同社専務取締役および関連子会社の取締役として営業部門を管掌。
錦織劉一 取締役 韓国サムスングループ等の関係会社で通信・ネットワーク技術者として従事。GHソリューションを経て、GHインテグレーション代表取締役社長および同社取締役に就任。


社外取締役は、酒井学雄(スプレンダーコンサルティング社長)、上村卓也(アルシエ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、ITツール事業、ITサービス事業および投資事業を展開しています。

ITツール事業


自社開発のエンドポイントソフトをはじめとするセキュリティツールや、ネットワークアプライアンスを提供し、企業のサイバーセキュリティ対策を支援しています。また、業務ログ監視・分析技術を用いた働き方改革ツールを展開し、業務の可視化やテレワーク環境の構築に貢献しています。

収益源は製品の販売やサブスクリプション型の利用料などです。運営は主に同社および子会社のフーバー・クロステクノロジーズが行っており、パートナー企業を通じて中小企業から大企業まで幅広い顧客にサービスを提供しています。

ITサービス事業


ITツールの導入・運用支援や保守サポートを提供するほか、パートナー企業からの受託開発、および大手通信事業者等へITエンジニアを派遣するSES業務を行っています。さらに、採用コンサルティングや人材紹介を通じた採用支援も手掛けています。

保守料やエンジニアの派遣・業務委託料、採用支援にかかるコンサルティング費用や紹介手数料が主な収益源です。運営は同社のほか、子会社のGHインテグレーション、アド・トップ、Youth Planet、ProofXなどがそれぞれの強みを活かして担っています。

投資事業


同社グループのM&Aにおける対象企業の発掘や評価といったアドバイザリー業務のほか、今後の成長が見込める新興企業に対する純投資および戦略的投資を行っています。

投資先企業の企業価値向上を支援し、保有する株式の売却等によるキャピタルゲインを収益源としています。この事業セグメントは、主に投資子会社であるフーバー・インベストメントが運営を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近2期間で大幅な成長を遂げています。利益面においても一時的な赤字から黒字転換を果たし、現在は安定的な利益を継続して創出するフェーズへと移行しており、事業規模の拡大と収益性の改善が両立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 17億円 23億円 31億円 44億円 56億円
経常利益 -1億円 1億円 0億円 2億円 2億円
利益率(%) -3.5% 2.3% 1.1% 3.8% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 0.3億円 0.3億円 1億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の堅調な拡大に伴い、売上総利益も順調に増加しています。一方、利益率に関しては売上構成比の変化や子会社取得に伴う一時的な費用の計上などの影響により、前期間と比較して微減傾向となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 44億円 56億円
売上総利益 13億円 16億円
売上総利益率(%) 29.8% 27.6%
営業利益 2億円 2億円
営業利益率(%) 4.3% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4億円(構成比32%)、役員報酬が1億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるITツール事業は、サブスクリプション型の働き方改革製品などの販売が好調に推移し、グループ全体の増収を牽引しました。また、ITサービス事業においてもM&Aによる子会社化効果が寄与し、着実な増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ITツール事業 24億円 32億円
ITサービス事業 20億円 24億円
連結(合計) 44億円 56億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CF、投資CF、財務CFがすべてプラスとなる「再建・転換型」の傾向を示しています。営業CFと資金調達に加え、資産の売却等により事業展開のための投資や財務基盤の強化を行う局面にあるといえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -0.1億円 4億円
投資CF -1億円 0.1億円
財務CF 3億円 0.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「日本発のAIガーディアンを目指す」というビジョンを掲げています。AIの安全な活用を支えるガバナンス需要を新たな成長機会と捉え、情報セキュリティ対策や働き方改革を支援し、安全で信頼できるIT環境の実現を使命としています。

(2) 企業文化


同社は、ワンストップですべてのセキュリティソリューションを提供できる「セキュリティソリューションプラットフォーム」を有する「ITエンジニア集団」としての姿勢を重視しています。専門性の高いIT・AI人材の確保と育成に注力し、技術力と提案力で顧客課題を解決する組織文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定し、持続的な企業価値の向上を目指しています。また、株主還元計画も明確にし、累進配当を軸とした安定的な配当政策を掲げています。

* 売上高150億円
* 営業利益15億円

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業であるセキュリティやネットワーク、働き方改革領域のオーガニックグロースを基盤とし、積極的なM&Aや戦略的提携によるM&Aグロース、保有有価証券の活用等による投資グロースを推進しています。特にAI技術の研究・実装を進め、次世代多層防御やAIエージェント化による製品競争力の強化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画の達成に向け、高度な専門性を持つ人材の確保と育成を最重要課題と位置づけています。トップクラスのAI起業家をChief AI Officerに迎え、グループ全体のAI戦略を牽引する体制を整備するとともに、既存のIT人材にAI領域へのキャリアパスを提示し、AI・IT人材の育成力を強化しています。また、子会社の採用ノウハウを活用し、グループ全体での採用基盤の共通化も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.5歳 6.6年 7,127,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新技術・AI領域における技術革新の遅れ


情報セキュリティを取り巻く脅威は複雑化しており、次世代多層防御やAIを活用した機能の高度化など、競合と差別化できる技術開発が求められています。生成AIをはじめとする技術進化のスピードは極めて速く、これらの技術革新に適切に対応できない場合、同社グループの提供するサービスや製品の競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) サイバーセキュリティ市場における競争激化


主力であるITツール事業においては、海外の強力なセキュリティベンダーや同種のコンセプトを持つ国内メーカーが多数存在し、競争環境が激化しています。また、ITサービス事業のエンジニア派遣や採用支援においても多くの競合が存在します。競合他社がより優位な製品やサービスを展開した場合、同社グループのシェアが低下するリスクがあります。

(3) 特定の販売パートナーに対する販路依存


同社グループの売上高はITツール事業の占める割合が高く、その販売経路は主にOA機器販売会社およびSIerといったパートナー企業に依存しています。主要な販売パートナーの事業戦略や製品開発戦略が変更され、同社製品の取扱方針が見直された場合、売上基盤が揺らぎ、事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) IT・AI領域における専門人材の確保と流出


事業を継続・拡大していくためには、高度な専門知識を持つITエンジニアやAI人材の獲得・育成が不可欠です。事業拡大に向けた人員増員計画が想定通りに進まない場合、成長が鈍化する懸念があります。さらに、所属する優秀な人材が競合他社に流出し、技術ノウハウが漏洩した場合には、事業活動に重大な支障をきたすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。