伊藤ハム米久ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

伊藤ハム米久ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

伊藤ハム米久ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、加工食品事業と食肉事業を中核とする食品メーカーです。直近の業績は売上高1兆714億円、経常利益304億円と増収増益を達成しました。国内外のバリューチェーンを強化し、持続的な成長と社会課題の解決を目指すリーディングカンパニーです。


※本記事は、伊藤ハム米久ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第10期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 伊藤ハム米久ホールディングスってどんな会社?


伊藤ハムと米久の経営統合により誕生した、食肉加工品の製造・販売を中核とする食品メーカーです。

(1) 会社概要


2015年に伊藤ハムと米久が経営統合に関する基本契約書を締結し、2016年に伊藤ハム米久ホールディングスを設立して東京証券取引所市場第一部に上場しました。その後、2017年にニュージーランドの食肉会社を完全子会社化し、2019年には明治ケンコーハムを子会社化するなど、国内外で事業基盤の拡大を進めています。

同社グループの従業員数は連結で6,805名、単体で777名です。筆頭株主は総合商社の三菱商事で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は公益法人の伊藤記念財団となっています。

氏名 持株比率
三菱商事 40.80%
日本マスタートラスト信託銀行 6.43%
公益財団法人伊藤記念財団 4.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.2%です。代表取締役社長は浦田寛之氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
浦田寛之 代表取締役社長 三菱商事入社。同社農畜産本部長などを経て、2025年6月より現職。伊藤ハムおよび米久の取締役も兼務。
宮下功 取締役会長 三菱商事入社。米久代表取締役社長、同社代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。
伊藤功一 取締役常務執行役員 伊藤ハム入社。同社取締役執行役員、同社代表取締役社長などを経て、2022年6月より現職。
野澤克己 取締役常務執行役員 伊藤ハム入社。同社執行役員、米久常務取締役などを経て、2024年6月より現職。
原田健 取締役常務執行役員 三菱商事入社。日本ケンタッキー・フライド・チキン執行役員などを経て、2025年6月より現職。
髙橋伸 取締役常勤監査等委員 伊藤ハム入社。同社執行役員、同社常勤監査役などを経て、2025年6月より現職。
堀内朗久 取締役常勤監査等委員 米久入社。同社代表取締役社長、同社常務執行役員などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、森本美紀子(karna代表取締役)、松村浩司(松村浩司公認会計士事務所開設)、西村やす子(司法書士法人つかさ代表社員)、有松晶(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「加工食品事業」「食肉事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 加工食品事業


主にハム・ソーセージ、調理加工食品などの食肉加工品の製造および販売を行っており、一般消費者や取引先企業向けに商品を提供しています。

これら商品の販売による売上が主な収益源です。運営は主に同社や伊藤ハム、米久、伊藤ハム販売などが担っています。

(2) 食肉事業


主に国内外における食肉や調理加工食品の生産、処理加工および販売事業を行っています。

食肉製品等の販売対価が主な収益源となります。運営は同社や米久、伊藤ハムミート販売東、伊藤ハムミート販売西のほか、ニュージーランドのANZCO FOODS LTD.などの子会社が行っています。

(3) その他事業


報告セグメントに含まれない事業として、人事や庶務、情報システムの開発や運用など、グループ内の事務代行サービス業などを提供しています。

グループ内企業からの各種受託手数料が収益源です。運営は主に伊藤ハム米久ヒューマンサービスおよび伊藤ハム米久システムが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が順調な拡大を続ける一方、利益面では原材料価格の高騰などの影響を受け一時的な落ち込みが見られましたが、直近では大きく回復する傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 8,544億円 9,227億円 9,556億円 9,888億円 10,714億円
経常利益 286億円 260億円 260億円 208億円 304億円
利益率(%) 3.3% 2.8% 2.7% 2.1% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 144億円 166億円 405億円 24億円 101億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も増加していますが、コスト上昇圧力もあり、利益率は安定した水準で推移しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 9,888億円 10,714億円
売上総利益 1,333億円 1,465億円
売上総利益率(%) 13.5% 13.7%
営業利益 196億円 285億円
営業利益率(%) 2.0% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、発送配達費及び荷扱料が433億円(構成比37%)、給料及び手当が249億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


加工食品事業はコスト上昇の影響を受けたものの、食肉事業は国内外での採算性改善により大幅な増収を達成し、全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
加工食品事業 4,009億円 3,986億円
食肉事業 5,879億円 6,728億円
その他 0.2億円 0.1億円
調整額 -1,154億円 -1,140億円
連結(合計) 9,888億円 10,714億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た資金を活用しつつ、金融機関からの借入も行いながら積極的な設備投資を進める積極型のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 100億円 137億円
投資CF -206億円 -260億円
財務CF 75億円 85億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「私たちは事業を通じて、健やかで豊かな社会の実現に貢献します」というグループ理念を掲げています。この理念のもと、事業を通じた社会課題の解決やステークホルダーからの信頼獲得に努め、社会に対して新たな食の価値を提供し続ける存在となることを目指しています。

(2) 企業文化


「フェアスピリットと変革への挑戦を大切にし、従業員とともに持続的に成長する食品リーディングカンパニー」をビジョンとしています。公明正大で透明性のある行動を最優先とし、全員参加の闊達な意思疎通による能力開発や、地球環境に配慮した事業活動を重視する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画2026では、事業環境の変化による影響を考慮し、最終年度の目標水準を以下の通り見込んでいます。また、長期目標として2035年度の経常利益500億円の達成を目指しています。

・経常利益:280億円
・ROIC:5.4%
・ROE:6.2%

(4) 成長戦略と重点施策


長期経営戦略2035のもと、国内バリューチェーンの価値最大化や海外・成長事業への投資を加速させます。また、デジタル技術を活用して業務効率化を図るほか、脱炭素やアニマルウェルフェアへの配慮などサステナビリティの取り組みを通じて、持続的な成長基盤の強化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成を経営戦略の重要課題と位置づけ、従業員が自律的に挑戦し成長できる環境の整備を進めています。社内公募や副業制度の活用促進のほか、テレワーク等の多様な働き方の支援を通じて従業員エンゲージメントを高め、組織基盤の強化を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.0歳 16.4年 7,659,584円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.7%
男性育児休業取得率 73.3%
男女賃金差異(全労働者) 63.0%
男女賃金差異(正規) 72.2%
男女賃金差異(非正規) 77.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(49.0%)、1人当たり年間有休取得率(70.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向に関するリスク


経済情勢の変化に伴う消費活動の減退や、市場での価格競争の激化により、同社グループの製品に対する需要が低下し、収益力が悪化する可能性があります。同社は新たな食シーンを提案する商品の開発を通じ、継続的な市場開拓を進めています。

(2) 市況変動に関するリスク


国内外から調達する食肉や副原料、包装資材、エネルギーコスト、物流費などの価格高騰や、家畜伝染病などによる仕入数量の制限が業績に影響を及ぼす可能性があります。調達先の分散化や適正在庫の維持により、価格変動リスクの低減に努めています。

(3) 食品の安全性に関するリスク


消費者への健康被害の発生や、商品の回収・廃棄等の事態が生じた場合、ブランド価値の毀損や社会的信用の失墜につながる可能性があります。同社グループは厳格な品質管理体制やトレーサビリティの強化を通じ、安全・安心な製品の提供を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。