#記事タイトル:伊藤ハム米久ホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、伊藤ハム米久ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 伊藤ハム米久ホールディングスってどんな会社?
ハム・ソーセージ等の加工食品や食肉の製造販売を行う持株会社です。業界大手として国内外で事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2016年4月、伊藤ハムと米久が経営統合し、共同持株会社として同社が設立されました(東証一部上場)。2017年12月にはニュージーランドのANZCO FOODS LTD.を完全子会社化し、海外事業を強化しています。2022年4月に東証プライム市場へ移行し、2025年6月には監査等委員会設置会社へ移行する予定です。
連結従業員数は7,926名、単体では866名です。筆頭株主は「その他の関係会社」である総合商社の三菱商事で、発行済株式の40.81%を保有しています。第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は創業者が設立した公益財団法人です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 40.81% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 6.34% |
| 公益財団法人伊藤記念財団 | 4.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は宮下 功氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮下 功 | 代表取締役社長 | 1990年三菱商事入社。食肉事業ユニット等を経て2007年米久入社。2013年同社社長。2016年4月より現職。 |
| 伊藤 功一 | 取締役常務執行役員 | 1997年伊藤ハム入社。執行役員、取締役等を経て、2022年4月より伊藤ハム代表取締役社長、同年6月より現職。 |
| 野澤 克己 | 取締役常務執行役員 | 1983年伊藤ハム入社。経営戦略部長、米久取締役常務執行役員、同社管理本部副本部長等を経て2024年6月より現職。 |
| 堀内 朗久 | 取締役 | 1979年米久入社。商品本部長、営業本部長、代表取締役社長等を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、大坂 祐希枝(さくらインターネット社外取締役)、森本 美紀子(株式会社karna代表取締役)、西村 やす子(株式会社CREA FARM代表取締役)、小林 秀司(三菱商事執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「加工食品事業」「食肉事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 加工食品事業
ハム・ソーセージや調理加工食品等の食肉加工品の製造・販売を行っています。一般消費者向けの家庭用商品や、業務用の商品を幅広く提供しています。
収益は、小売店や外食産業等の顧客に対する製品の販売代金から得ています。運営は主に伊藤ハム、米久、伊藤ハム販売、伊藤ハム米久プラントなどが担っています。
■(2) 食肉事業
食肉(牛・豚・鶏肉等)および調理加工食品の製造・販売を行っています。国内外での調達網を活かし、多様な食肉製品を提供しています。
収益は、卸売業者、量販店、外食産業等の顧客に対する食肉および加工品の販売代金から得ています。運営は主に伊藤ハム、米久、伊藤ハムミート販売東、ANZCO FOODS LTD.などが担っています。
■(3) その他事業
グループ内の事務代行サービス業などを行っています。
収益は、グループ会社に対する事務サービスの提供対価として得ています。運営は主に伊藤ハム米久ヒューマンサービスおよび伊藤ハム米久システムが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にあり、直近では9,888億円に達しています。一方、利益面では原材料価格やエネルギーコストの上昇等の影響を受け、経常利益率は低下傾向にあります。当期純利益も前期比で減少しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,427億円 | 8,544億円 | 9,227億円 | 9,556億円 | 9,888億円 |
| 経常利益 | 270億円 | 286億円 | 260億円 | 260億円 | 208億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 3.3% | 2.8% | 2.7% | 2.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 103億円 | 144億円 | 166億円 | 405億円 | 24億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しました。売上総利益は微増にとどまり、販管費の増加により営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,556億円 | 9,888億円 |
| 売上総利益 | 1,326億円 | 1,333億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.9% | 13.5% |
| 営業利益 | 223億円 | 196億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、発送配達費及び荷扱料が426億円(構成比37%)、給料及び手当が240億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
加工食品事業は価格改定やコスト削減効果により増収増益となりました。一方、食肉事業は販売単価上昇により増収となったものの、消費マインド低下による高価格帯商品の販売減やコスト増の影響で減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 加工食品事業 | 3,916億円 | 4,009億円 | 98億円 | 2.4% |
| 食肉事業 | 5,639億円 | 5,879億円 | 122億円 | 2.1% |
| その他 | 323億円 | 299億円 | 1億円 | 0.2% |
| 調整額 | -1,094億円 | -1,154億円 | -13億円 | - |
| 連結(合計) | 9,556億円 | 9,888億円 | 208億円 | 2.1% |
※利益は経常利益ベースです。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で得た現金を活用しつつ、借入金も活用して設備投資などの投資活動を積極的に行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 294億円 | 100億円 |
| 投資CF | -160億円 | -206億円 |
| 財務CF | -133億円 | 75億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「私たちは事業を通じて、健やかで豊かな社会の実現に貢献します」というグループ理念を掲げています。また、「フェアスピリットと変革への挑戦を大切にし、従業員とともに持続的に成長する食品リーディングカンパニー」となることをビジョンとしています。
■(2) 企業文化
同社は行動指針として、安全安心と品質の追求、有言実行の徹底による信頼関係の構築、全員参加の闊達な意思疎通、コンプライアンス最優先の行動、地球環境に配慮した事業活動の推進を定めています。これらに基づく活動を通じて企業価値の向上を図る姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2035年度に向けた「長期経営戦略2035」および直近3カ年の「中期経営計画2026」を推進しています。
* 2026年度:経常利益300億円、ROIC 5.8%、ROE 6.6%
* 2035年度:経常利益500億円
■(4) 成長戦略と重点施策
長期経営戦略2035では、成長投資による利益拡大と収益力の向上を両輪とし、DXとサステナビリティを軸に経営基盤を強化します。国内では工場再編等によるバリューチェーン価値の最大化、海外では成長事業への投資を加速させます。
中期経営計画2026では「基礎収益力の底上げ」を掲げています。
* 加工食品事業:多様なニーズへの対応、新工場(静岡県三島市)の建設(2026年度下期稼働予定)。
* 食肉事業:販売網の強化、輸出認定取得等の推進。
* 財務戦略:安定的な株主還元(DOE採用)と成長投資の両立。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
長期的な人材育成を基本としつつ、多様な価値観を尊重し、従業員が自律的にキャリア形成できる支援を行う方針です。男性育児休業の推進やテレワーク環境の整備、副業・自己啓発支援の拡充を進め、挑戦と成長を支援する風土を醸成することで、エンゲージメントと企業価値の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.0歳 | 16.2年 | 7,262,150円 |
※平均年間給与は、出向元である子会社で支給された年間給与、賞与及び時間外勤務手当等を合計したものです。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.6% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 74.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(48.0%)、係長級の女性比率(14.0%)、1人当たり年間有休取得率(67.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場動向に関するリスク
経済情勢の変化による消費減退や価格競争により、同社グループ商品の需要低下や収益力低下を招く可能性があります。これに対し、新たな価値創造による商品提案や市場開拓を推進しています。
■(2) 市況変動に関するリスク
国内外から調達する食肉等の原材料価格や飼料価格の変動、調達コストの上昇は業績に影響を及ぼす可能性があります。調達先の分散化、在庫の適正化、販売価格の適正化などの対策を講じています。
■(3) 家畜の疾病に関するリスク
ASF(アフリカ豚熱)や鳥インフルエンザ等の家畜疾病の拡大は、食肉の調達・販売に支障をきたし業績に影響を与える可能性があります。対応マニュアルの整備や調達体制の分散によりリスク低減を図っています。
■(4) 人材の確保・育成に関するリスク
少子高齢化による労働力不足や人材流出、育成の遅れは競争力低下につながる可能性があります。多様な人材の採用やエンゲージメント向上に資する人事制度の整備、教育研修を推進しています。



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