※本記事は、ヒロセ通商株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒロセ通商ってどんな会社?
同社はインターネットを通じて投資家に外国為替証拠金取引などの金融商品を提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2004年に外国為替証拠金取引を事業目的として設立されました。2006年に金融先物取引業の登録を完了し、2008年には現在の主力である取引システム「LION FX」の提供を開始しました。2010年には英国ロンドンに海外進出を目的とした子会社を設立するなどグローバル展開を進め、2016年に株式上場を果たしています。
現在の従業員数は連結で93名、単体で67名体制となっています。筆頭株主は同社役員の友延雅昭氏で、第2位は渋谷誠一氏、第3位も同社役員の石原愛氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 友延 雅昭 | 8.56% |
| 渋谷 誠一 | 6.98% |
| 石原 愛 | 6.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は野市裕作氏が務めており、社外取締役比率は33.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野市 裕作 | 代表取締役社長 | 2004年入社。管理部長、取締役広報部長等を経て、2019年4月より現職。 |
| 衣川 貴裕 | 専務取締役内部管理部長 | 2004年入社。取締役業務IT担当、取締役管理本部担当等を経て、2015年6月より現職。 |
| 友延 雅昭 | 常務取締役業務本部長広報部長 | 2004年設立時に取締役監査担当として参画。取締役内部監査担当等を経て、2019年4月より現職。 |
| 石原 愛 | 取締役業務部長 | 2004年入社。業務本部統括部長を経て、2008年2月より現職。 |
| 松井 隆司 | 取締役マーケティング部長 | 2004年入社。業務部長、取締役経営企画室長を経て、2021年4月より現職。 |
| 美濃出 真吾 | 取締役管理部長 | 2008年入社。JFX取締役、管理部長を経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、丸茂英雄(神戸伊藤町法律事務所共同代表)、津田和義(ブレイントラスト代表取締役)、籔内正樹(オーロラ法律事務所入所)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金融商品取引事業」を単一セグメントとして展開しています。
■外国為替証拠金取引(FX)の提供
主として投資家向けにインターネットを通じて外国為替証拠金取引を提供しています。国内外の金融機関から取得した最良のレートを提示し、1000通貨単位からの少額取引を手数料なしで提供することで、初心者を含む幅広い層が投資に親しめる環境を構築しています。また、使いやすさを追求した取引ツールや独自のキャンペーンも展開しています。
収益は、為替変動リスクを回避するカバー取引による収益や、社内で売り買いの注文を相殺させる為替マリーによる収益、スワップポイントによる収益で構成されています。運営は主にヒロセ通商と同社子会社のJFXが担っており、海外向けには英国やマレーシアなどの現地法人がサービスを展開しています。
■BtoBサービスおよびその他の金融商品取引
金融商品取引業者向けに外国為替証拠金取引システムをカスタマイズして提供するホワイトラベルサービスを展開しています。さらに、外国為替証拠金取引で蓄積したノウハウをもとに、主要国の株価指数を対象とした店頭証券CFD取引や、金や原油などを対象とした店頭商品CFD取引などの差金決済取引も提供しています。
ホワイトラベル提供先のカウンターパーティとして注文を受注することによるカバー取引収益などが主な収益源となっています。これらの事業は主にヒロセ通商が運営しており、外国為替市場の環境による収益面の不安定要素を軽減するため、収益源の多様化に取り組んでいます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績をみると、経常利益は増減を繰り返しながら推移しています。N-2期に43億円規模でピークを迎えた後、直近2期間は約31億円規模で安定して推移しています。当期利益についても概ね経常利益と連動した動きを見せており、安定した利益水準を維持していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 27億円 | 36億円 | 43億円 | 31億円 | 31億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 18億円 | 24億円 | 17億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の営業利益は横ばい傾向にあります。営業収益が増加した一方で、取引高に連動する費用などが増加したことにより、前期間と同水準の利益を維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 31億円 | 30億円 |
販売費及び一般管理費のうち、システム使用料が26億円(構成比36%)、広告宣伝費が11億円(同15%)、支払手数料が9億円(同12%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは事業検討型に分類されます。これは本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況を示しています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に預託金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22億円 | -4億円 |
| 投資CF | -1億円 | 14億円 |
| 財務CF | -5億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は15.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人と世界をつなぐ」「Customer satisfaction」「Challenge」「Compliance」の3つのCを企業理念として掲げています。「金融商品取引を通じて世界中の人々に平等な投資のチャンスを提供する為、低価格戦略及びフルラインアップ戦略を共に採用し挑戦し続けマーケットリーダーを目指します」を経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、顧客の期待以上のサービスを提供する「Customer satisfaction」を追求し、利用価値の高い取引環境を低コストで提供する「Challenge」精神を重視しています。また、全社員が「Compliance」の概念を受容し推進し続けるよう徹底した社員教育を行うなど、高い倫理観に基づいた企業文化の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、財務の健全性を図る指標として、国内においては金融商品取引法で義務付けられている自己資本規制比率を、英国においてはCapital Requirementを目標に掲げています。また、同業他社と比較するにあたり、顧客口座数や受入証拠金などを重視し、事業の業績管理に活用しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、顧客ニーズの素早い把握と実現、取引システムの安定稼働、ブランディング力の強化による他社との差別化を推進しています。また、外国為替証拠金取引事業への依存を軽減するため、ホワイトラベルの提供やCFD取引などによる収益源の多様化を図るとともに、海外子会社を中心に世界市場の開拓を進める戦略を掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
顧客への適切なサービスの提供や顧客満足度の向上を図るため、適切な知識やサービス精神を持った優秀な人材の確保と継続的な育成を重要課題と位置付けています。また、社員の多様性を活かし、ライフステージの変化に柔軟に対応できるよう、出産育児休暇・休業、時短勤務制度などの環境整備を積極的に行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.7歳 | 7.8年 | 6,998,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 47.4% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外国為替証拠金取引市場の動向と為替変動
同社の主要な収益源は顧客の取引によるトレーディング損益であり、これは為替変動に大きく左右されます。景気動向や競合商品の出現による市場の縮小、あるいは為替変動率の低下や顧客の想定以上の損失発生により取引高が減少した場合、同社グループの財政状態および経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
■(2) 取引システムの安定稼働と業務委託
すべての取引がオンラインによるため、取引システムの安定稼働は重要な経営課題です。動作不良、アクセス増加、サイバーテロ、自然災害等によるシステム障害への対応が不十分な場合、信用失墜につながる恐れがあります。また、システム会社との業務委託契約の継続が困難になった場合にも、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法的規制とコンプライアンスの遵守
金融商品取引事業には、レバレッジ規制や自己資本規制比率の維持など厳格な法的規制が課せられています。さらなる規制強化や法令違反が生じた場合、業務停止や登録取消などの行政処分を受ける恐れがあります。また、顧客資産の適切な分別管理や個人情報の保護体制に不備があった場合も、同社の信用や事業継続に甚大な影響を与えるリスクがあります。



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