※本記事は、ヒロセ通商株式会社 の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒロセ通商ってどんな会社?
独立系の外国為替証拠金取引(FX)業者として、個人投資家向けにシステム開発からサービス提供まで一貫して行う企業です。
■(1) 会社概要
同社は2004年3月に設立され、同年4月に外国為替証拠金取引「超為替」の受託業務を開始しました。2008年2月には1,000通貨単位からの取引が可能かつ手数料無料の取引システム「LION FX」の提供を開始し、主力サービスへと成長させました。2016年3月に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場を果たし、2024年5月には商品先物取引業者の許可を取得するなど、事業領域を拡大しています。
2025年3月31日現在の連結従業員数は87名(単体67名)です。筆頭株主は同社常務取締役の友延 雅昭氏で、第2位は個人投資家の渋谷 誠一氏、第3位は同社取締役の石原 愛氏となっており、経営陣が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 友延 雅昭 | 9.40% |
| 渋谷 誠一 | 7.02% |
| 石原 愛 | 6.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は野市 裕作氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野市 裕作 | 代表取締役社長 | 2004年5月同社入社。管理部長、取締役広報部長を経て、2019年4月より現職。 |
| 衣川 貴裕 | 専務取締役内部管理部長 | 2004年5月同社入社。取締役業務IT担当、取締役管理本部担当、取締役内部管理部長を経て、2015年6月より現職。 |
| 友延 雅昭 | 常務取締役業務本部長広報部長 | 2004年3月同社設立時に取締役監査担当として参画。取締役内部監査担当、取締役本部長を経て、2008年6月より常務取締役業務本部長、2019年4月より広報部長を兼務。 |
| 石原 愛 | 取締役業務部長 | 2004年5月同社入社。業務本部統括部長を経て、2008年2月より現職。 |
| 松井 隆司 | 取締役マーケティング部長 | 2004年5月同社入社。業務部長、取締役経営企画室長を経て、2021年4月より現職。 |
| 美濃出 真吾 | 取締役管理部長 | 2008年1月同社入社。管理部長を経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、丸茂 英雄(弁護士)、津田 和義(公認会計士・税理士)、籔内 正樹(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金融商品取引事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 外国為替証拠金取引(FX)事業
同社グループの主力事業であり、個人投資家向けにインターネットを通じて24時間取引可能な外国為替証拠金取引を提供しています。少額資金からの取引や、取引手数料無料、低スプレッドなどのサービス特徴を持ち、初心者から上級者まで幅広い顧客層を対象としています。
収益源は、顧客取引により生じるポジションのリスク回避のために行うカウンターパーティとのカバー取引による収益や、社内で売り買いのポジションを相殺する「為替マリー」による収益、およびスワップポイント(金利差調整分)による収益です。運営は主にヒロセ通商や子会社のJFX株式会社が行っています。
■(2) ホワイトラベルサービス・BtoB事業
同社のFX取引システム「LION FX」をベースに、他の金融商品取引業者向けにカスタマイズして提供するホワイトラベルサービスを展開しています。また、他の金融商品取引業者のカウンターパーティとなり、カバー取引を受託する業務も行っています。
収益は、ホワイトラベル提供先や他の金融商品取引業者からの注文を受けることで発生するカバー取引収益、為替マリー収益、スワップポイント収益などです。運営は同社が行っています。
■(3) 海外事業・その他
英国、マレーシア等の海外子会社を通じて、グローバルにFX取引等の金融商品取引を展開しています。また、国内では店頭証券CFD取引や店頭商品CFD取引も提供しています。
収益源は、海外顧客やCFD取引を行う顧客からの取引に伴うトレーディング損益が主となります。運営は、HIROSE FINANCIAL UK LTD.、Hirose Financial MY Limited、Hirose Solutions Limited等の海外子会社および同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2024年3月期にかけて売上収益(営業収益)および経常利益は概ね増加傾向にありましたが、直近の2025年3月期は減収減益となりました。利益率は高い水準を維持していますが、当期は前期と比較して低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 87億円 | 87億円 | 103億円 | 107億円 | 102億円 |
| 税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 | 29億円 | 27億円 | 36億円 | 43億円 | 31億円 |
| 利益率(%) | 32.7% | 31.0% | 34.8% | 39.7% | 30.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 19億円 | 18億円 | 24億円 | 29億円 | 22億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると、売上高(営業収益)は減少しました。営業利益については、前期から大幅に減少し、営業利益率も低下しました。販売費及び一般管理費の増加が利益を圧迫する要因となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 102億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 43億円 | 31億円 |
| 営業利益率(%) | 39.7% | 30.0% |
販売費及び一般管理費のうち、システム使用料が24億円(構成比34%)、広告宣伝費が11億円(同16%)、支払手数料が9億円(同13%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)をもとに、借入金の返済や配当支払い(財務CFマイナス)を行いつつ、投資活動(投資CFマイナス)も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に預託金の減少による収入、税金等調整前当期純利益による収入、未払費用の増加による収入等の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3億円 | 22億円 |
| 投資CF | -3億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | 5億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は16.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「3つのC」(Customer satisfaction、Challenge、Compliance)を企業理念としています。「金融商品取引を通じて世界中の人々に平等な投資のチャンスを提供する為、低価格戦略及びフルラインアップ戦略を共に採用し挑戦し続けマーケットリーダーを目指します。」を基本方針として掲げ、人と世界をつなぐ役割を果たすことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、顧客満足度の追求を第一に考え、サポート体制の強化や顧客ニーズの早期実現に尽力する文化を持っています。また、「誰も経験したことのない、利用価値の高い取引環境を低コストで提供するため、あらゆる可能性を信じ挑戦し続けます」という方針のもと、常に新しい価値創造に挑む姿勢を重視しています。法令遵守と高い倫理観を持つ人材育成にも力を入れています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、財務の健全性を図る指標として、国内においては金融商品取引法に基づく「自己資本規制比率」を、英国においては「Capital Requirement」を一定水準以上に保つことを掲げています。また、同業他社との比較において、顧客口座数や受入証拠金などを重視し、業績管理に活用しています。具体的な数値目標としての売上高や利益目標等は記載されていません。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、顧客ニーズの素早い把握・実現、取引システムの安定稼働、ブランディング力の強化、および収益源の多様化を重点施策としています。特に、取引システムの改善やスプレッド縮小による低コスト化、ユニークなキャンペーンの実施等により競争優位性の確保を図ります。また、BtoB取引やCFD取引の拡大、海外子会社を中心とした世界市場の開拓により、収益基盤の安定と拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、顧客への適切なサービス提供と満足度向上のため、適切な知識とサービス精神を持った優秀な人材の確保と育成を重要課題としています。意欲ある人材の積極的な採用に加え、経営理念やコンプライアンス、業務知識に関する研修を実施し、カスタマーサポート担当者だけでなく全社員の育成を図っています。また、多様な人材が活躍できるよう、仕事と育児の両立支援等の社内環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.1歳 | 7.3年 | 8,111,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外国為替証拠金取引市場の変動リスク
同社の主力事業であるFX事業は、景気動向や金融情勢により市場が縮小する可能性があります。また、収益源であるトレーディング損益は顧客の取引高に依存しており、取引高は為替変動率に大きく左右されます。為替変動率の低下や、顧客に不利な為替変動による投資意欲の減退が起きた場合、取引高が減少し、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 為替市場の流動性とカバー取引リスク
同社は顧客取引のリスク回避のためカバー取引を行っていますが、急激な為替変動や市場の流動性低下によりカバー取引が困難になる可能性があります。また、カウンターパーティへの差入証拠金が必要となりますが、急激な相場変動等により証拠金の増額が必要となった場合に資金確保ができなければ、財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制等の変更リスク
FX事業は「金融商品取引業等に関する内閣府令」によるレバレッジ規制やストレステスト等の規制を受けています。今後、レバレッジ規制の強化や新たな規制の導入、法令改正が行われた場合、または同社が自主的に規制強化を図った場合、事業運営や業績に重大な影響を与える可能性があります。
■(4) システムリスク
同社の取引は全てインターネットを通じたオンラインで行われているため、システムの安定稼働が不可欠です。アクセス集中、通信障害、サイバー攻撃、自然災害等によりシステム障害が発生した場合、損害賠償請求や信用失墜による顧客離れを招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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