フェニックスバイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フェニックスバイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グロース市場に上場するフェニックスバイオは、ヒトの肝細胞を持つキメラマウス「PXBマウス」を用いた医薬品開発の前臨床における受託試験サービスおよび関連製品の販売を主力とする企業です。直近の業績は、円安による為替差益の計上や費用圧縮の効果により、増収および各段階利益で黒字転換を達成しています。


※本記事は、株式会社フェニックスバイオの有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フェニックスバイオってどんな会社?


フェニックスバイオは、ヒト肝細胞キメラマウス等の製造・販売および受託試験サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


2002年に毛髪再生療法の事業化を目的として設立され、2003年にキメラマウス実験室を開設しPXBマウス事業を開始しました。2010年には米国ニューヨーク州に完全子会社を設立し、海外展開を本格化させました。2016年に東京証券取引所マザーズ市場へ株式を上場しています。
現在の従業員数はグループ全体で連結55名、単体45名となっています。筆頭株主は事業会社の三和澱粉工業で、第2位は個人の森本俊一氏、第3位は三和澱粉工業の子会社である特殊免疫研究所となっており、事業会社や関連会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
三和澱粉工業 31.33%
森本 俊一 12.43%
特殊免疫研究所 3.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は島田卓氏が務めています。また、社外取締役の比率は約11.1%(取締役9名中1名)です。

氏名 役職 主な経歴
島田 卓 代表取締役社長 明治製菓入社後、特殊免疫研究所等を経て、同社代表取締役社長に就任。現在は米国子会社のChairmanも兼務。
田村 康弘 専務取締役管理部長 サントリーフーズ等を経て、同社に入社。管理部長や常務取締役を歴任し、現在は専務取締役管理部長および米国子会社CFO。
向谷 知世 取締役研究開発部長生産部長 住友化学工業入社後、科学技術振興事業団の研究員等を経て、同社に入社。常務取締役等を経て現職。
加國 雅和 取締役 協和発酵工業(現協和キリン)入社後、同社に入社。受託試験部長や米国子会社President等を歴任し現職。
森川 良雄 取締役 中外テクノス入社後、同社に入社。営業部長等を歴任し、現在は米国子会社のPresident,CEOおよび同社取締役。


社外取締役は、藤井義則(公認会計士・税理士事務所開設、ビズリンク・アドバイザリー代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、PXBマウス事業の単一セグメントで事業を展開しています。サービスライン別の観点からそれぞれの内容を解説します。

製品販売
新薬開発の基礎研究や初期スクリーニングにおいて活用される、ヒト肝細胞キメラマウス「PXBマウス」および、そこから採取された新鮮ヒト肝細胞「PXB-cells」等の関連製品の販売を行っています。顧客は国内外の製薬企業や大学などの公的研究機関が中心です。
収益源は、提供したPXBマウスや関連製品の販売代金です。製品の運営や提供は同社および海外展開を担う米国子会社のPhoenixBio USA Corporationが連携して行っています。

受託試験サービス
顧客に代わり、PXBマウスを用いて薬物動態関連試験や安全性試験、薬効評価などを行う前臨床の受託試験サービスを提供しています。PXBマウスは肝臓の大部分がヒト肝細胞に置き換わっているため、臨床試験前のヒトでの代謝や肝毒性反応を高い精度で予測することが可能です。
収益源は、試験手技やレポート作成に伴うサービス料および利用されたPXBマウスの代金です。試験の進行状況に応じて手技の収益を認識しており、運営は主に同社が主体となって国内施設にて実施しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間では、需要の変動や顧客企業における開発予算抑制の影響を受けつつも、売上高は13億円から21億円の範囲で推移しています。利益面では研究開発費や海外拠点の見直しに伴う特別損失の計上などにより赤字となる期もありましたが、直近は費用圧縮等により黒字転換を果たしています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 13.2億円 21.2億円 17.2億円 15.4億円 15.7億円
経常利益 -1.3億円 5.1億円 0.4億円 -1.6億円 1.3億円
利益率(%) -9.7% 24.1% 2.5% -10.1% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.9億円 4.9億円 0.3億円 -4.5億円 1.3億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は前年並みで推移していますが、売上総利益率は上昇しています。海外生産施設の清算による売上原価の減少や、販管費における費用圧縮の効果が表れ、営業利益は赤字から黒字へと大きく改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 15.4億円 15.7億円
売上総利益 11.2億円 12.0億円
売上総利益率(%) 72.5% 76.7%
営業利益 -1.4億円 0.8億円
営業利益率(%) -9.2% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.0億円(構成比27%)、研究開発費が1.9億円(同17%)、支払手数料が1.4億円(同13%)を占めています。売上原価(3.6億円)は、労務費や外注加工費などが主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


同社はPXBマウス事業の単一セグメントですが、提供分野別に見ると、従来主力であった肝炎関連の「薬効薬理分野」が縮小傾向にある一方で、核酸医薬や遺伝子治療などを含む「安全性等分野」が成長し、売上の大部分を占めるようになっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
薬効薬理分野 0.7億円 0.7億円
安全性等分野 14.7億円 15.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期は営業活動でキャッシュを獲得し、投資や借入金の返済に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -0.7億円 0.7億円
投資CF -0.3億円 -0.1億円
財務CF -1.3億円 -0.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も70.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、生物が元来持っている機能を利用した細胞技術と動物への移植技術を応用し、事業を通じて21世紀の医療に貢献する企業となることを目指しています。「分野のトップランナーを目指すことで、全従業員の物心両面の幸福を追求し同時に人類・社会の進歩発展に寄与する」ことを企業理念に掲げています。

(2) 企業文化


同社は、役員および全従業員が効率的かつ健全な業務執行に努めるよう、コンプライアンスを重視し「行動規範」に則った適正な事業運営を行っています。また、働き方改革として“ライフワークバランス”の推進や長時間労働の削減に努めており、従業員が健康で安心して働ける職場環境の整備を大切にする文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは経営指標として事業規模を示す「売上高」を採用しています。特に市場規模が大きく成長が期待される「安全性等分野」の売上高を重要な経営指標に据えています。また、顧客ニーズに合わせ生産に注力できる「製品販売」の売上高も重要な指標として事業拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


従来の肝炎関連分野から、核酸医薬や遺伝子治療といった新しいモダリティ領域(安全性等分野)へのシフトを進めています。具体的な施策として、外部への飼育委託等による段階的な増産体制の構築、in vitro(試験管内)分野でのPXB-cells関連製品の拡販、生体模倣システム(MPS)等への用途開発に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


前臨床市場の構造変化に対応するため、高度な専門性を有する生産技術者や研究開発人材、グローバル市場に対応可能な事業開発人材の確保と育成を基本方針としています。中途採用者を積極的に活用し、他の社員とハンデなく働ける人事制度を採用するとともに、技術継承や高度化のための教育・研修制度の充実を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.8歳 14.6年 5,695,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(54.5%)、女性管理職比率(38.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 単一事業への依存リスク


同社グループの売上はPXBマウス事業のみに依存しており、経営資源を集中させることで収益拡大を目指しています。しかし、競合他社の参入や代替技術の開発などにより価格競争にさらされ、優位性が低下した場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定顧客および海外市場への依存


売上の約38%を特定の大手海外顧客に依存しており、さらに米国市場向けの売上が約54%を占めています。顧客の事業方針変更や開発予算の抑制、米国政府の関税政策や薬価政策の動向、為替変動リスクなどが業績に影響を与える懸念があります。

(3) ヒト肝細胞の安定入手の課題


PXBマウスの生産に不可欠なヒトの肝細胞は国内で入手できず、代理店を通じて海外から輸入しています。仕入価格の高騰や法規制の変更等によりヒト肝細胞の入手が困難になった場合、生産に支障をきたし、事業展開に制約を受けるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。