※本記事は、株式会社フェニックスバイオ の有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フェニックスバイオってどんな会社?
ヒト肝細胞を持つキメラマウス「PXBマウス」の生産技術を核に、創薬支援サービスを展開するバイオ企業です。
■(1) 会社概要
2002年に株式会社エピフェニックスとして設立され、翌年に現商号へ変更しPXBマウス事業を開始しました。2010年には米国子会社を設立して海外展開を加速させ、2016年に東証マザーズ(現グロース)へ上場を果たしました。2017年にカナダのKMT Hepatech,Inc.を子会社化しましたが、2025年に同社の解散を決議しています。
連結従業員数は69名、単体では48名体制です。筆頭株主は同社創業者の親族が経営する三和商事、第2位は同社のその他の関係会社である三和澱粉工業、第3位は個人株主となっています。特定の大株主や関連会社が株式の過半数近くを保有する安定した株主構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三和商事 | 17.48% |
| 三和澱粉工業 | 14.18% |
| 森本俊一 | 12.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は島田卓氏です。社外取締役比率は14.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 島田卓 | 取締役社長(代表取締役) | 明治製菓を経て特殊免疫研究所入社。2002年同社社長、2018年より現職。 |
| 田村康弘 | 専務取締役管理部長 | サントリーフーズ、井筒屋取締役を経て2004年同社入社。2014年より現職。 |
| 向谷知世 | 取締役研究開発部長生産部長 | 住友化学工業、科学技術振興事業団等を経て2007年同社入社。2022年より現職。 |
社外取締役は、藤井義則(公認会計士・税理士、ビズリンク・アドバイザリー代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「PXBマウス事業」を展開しています。
■(1) PXBマウス事業(製品販売・受託試験)
肝臓の70%以上がヒト肝細胞に置き換えられた「PXBマウス」および、そこから採取した新鮮ヒト肝細胞「PXB-cells」を提供しています。顧客は主に製薬会社や研究機関で、医薬品開発の安全性試験(DMPK/Tox)や肝炎ウイルスの薬効評価などに利用されています。特に核酸医薬や遺伝子治療薬の開発において需要が高まっています。
収益は、PXBマウスやPXB-cellsの製品販売代金、および同社施設で実施する受託試験サービスの利用料から構成されます。運営は主にフェニックスバイオおよび米国子会社のPhoenixBio USA Corporationが行っています。なお、生産拠点であったカナダのKMT Hepatech,Inc.は解散・清算手続き中です。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2023年3月期には売上高21億円超、経常利益5億円超を記録しましたが、直近2期間は減収減益トレンドにあります。当期は売上高が15億円台まで低下し、販管費の増加や子会社整理に伴う損失計上が響き、すべての利益段階で赤字となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 10.1億円 | 13.2億円 | 21.2億円 | 17.2億円 | 15.4億円 |
| 経常利益 | -2.2億円 | -1.3億円 | 5.1億円 | 0.4億円 | -1.6億円 |
| 利益率(%) | -22.1% | -9.7% | 24.1% | 2.5% | -10.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2.4億円 | -3.9億円 | 4.9億円 | 0.3億円 | -4.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益率が低下傾向にあります。当期は売上総利益率が72.5%と高い水準を維持していますが、販売費及び一般管理費が売上総利益を上回り、営業損失を計上しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 17.2億円 | 15.4億円 |
| 売上総利益 | 12.0億円 | 11.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 69.7% | 72.5% |
| 営業利益 | 0.1億円 | -1.4億円 |
| 営業利益率(%) | 0.6% | -9.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.2億円(構成比25%)、研究開発費が2.7億円(同22%)を占めています。売上原価においては、外注加工費等が主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、サービス分野別の売上が開示されています。「安全性等分野」は核酸医薬や遺伝子治療関連の需要が底堅いものの、前期比で微減となりました。一方、かつての主力であった「薬効薬理分野」は、肝炎関連の試験需要の減少により大幅な減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 安全性等分野 | 15.6億円 | 14.7億円 |
| 薬効薬理分野 | 1.6億円 | 0.7億円 |
| 連結(合計) | 17.2億円 | 15.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.8億円 | -0.7億円 |
| 投資CF | 1.2億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -2.4億円 | -1.3億円 |
パターン:**末期型**(事業拡大に伴う資産増加)
※ 営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスですが、これは現預金が11.5億円(月商の約9ヶ月分)あり、借入金の返済を進めている(財務CFマイナス)ことや、子会社整理に伴う損失引当などによるものです。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-10.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.1%で市場平均(グロース非製造業43.3%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「分野のトップランナーを目指すことで、全従業員の物心両面の幸福を追求し同時に人類・社会の進歩発展に寄与する」ことを企業理念として掲げています。生物が持つ本来の機能を利用した医療技術や医薬品開発技術の実用化を通じて、21世紀の医療に貢献する企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「グループ行動規範」において、地球環境の保全、人権の尊重、公平な取引を掲げています。また、実験動物を扱う企業として、動物福祉の観点から理想的な設備と飼育方法で管理する責任を重視しており、AAALAC International(国際実験動物ケア評価認証協会)の認証取得に取り組むなど、国際基準に準拠した倫理的な事業運営を行う文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は経営指標として「売上高」を重視しており、特に市場規模の大きい「安全性等分野」の売上拡大を目指しています。また、顧客自身のタイミングで試験が実施できる製品販売形態へのニーズが高いことから、「製品販売」の売上高も重要な指標と位置づけています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、動物実験代替法として注目される「in vitro分野」への展開を強化しています。具体的には、新鮮ヒト肝細胞「PXB-cells」や関連製品の市場投入、生体模倣システム(MPS)等の新技術への対応を進めています。また、核酸医薬や遺伝子治療、MASH(代謝機能不全関連脂肪性肝炎)などの新しい市場領域における評価データの取得に注力し、北米を中心とした海外展開を加速させる方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、技術職・事務職を問わず、外国籍人材や女性の積極採用を進めており、教育研修プログラムの改善を通じて多様な人材の活躍を推進しています。また、事業ポートフォリオの変革に対応するため、中途採用者を積極的に活用し、入社ハンデのない人事制度を運用しています。さらに、ワークライフバランスの推進により生産性を向上させ、イノベーション創出につなげる方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.9歳 | 13.1年 | 5,566,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
同社および連結子会社は「常時雇用する労働者の数が300人を超えないため」等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(58.2%)、女性管理職比率(40.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) PXBマウス事業および特定顧客への依存
同社グループの売上高は単一事業であるPXBマウス事業のみで構成されており、同事業に依存した収益構造です。また、特定の主要顧客(Alnylam Pharmaceuticals, Inc.)への売上高比率が約41%と高く、同社の事業方針変更等が業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(2) ヒト肝細胞の入手に関するリスク
主要製品であるPXBマウスの生産にはヒト肝細胞の移植が不可欠ですが、これらは国内で入手できず、代理店を通じて国外から輸入しています。仕入価格の高騰や法規制等によりヒト肝細胞の入手が困難になった場合、生産活動に制約が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 生産設備の事故・故障および感染症
実験動物を扱う事業の性質上、厳重な管理体制を敷いていますが、予期せぬ天災や設備故障、動物への感染症発生などのリスクがあります。これらが発生した場合、事業の継続や信頼性に重大な影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。