※本記事は、アグレ都市デザイン株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アグレ都市デザインってどんな会社?
首都圏を地盤に、デザイン性と機能性を兼ね備えた戸建住宅の企画・開発・販売を一貫して行う企業です。
■(1) 会社概要
2009年に東京都武蔵野市で設立され、戸建販売事業を開始しました。順調に業容を拡大し、2016年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場、2018年には市場第一部へ銘柄指定されました。2022年の市場区分見直しを経て、2023年10月にスタンダード市場へ移行しています。2023年にはハウスバードを完全子会社化し、宿泊事業へ本格参入しました。
同グループの従業員数は連結で129名、単体で127名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の大林竜一氏で、第2位は常務執行役員の平井浩之氏、第3位は大株主の五郎川隆氏となっており、経営陣や個人株主が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大林 竜一 | 40.67% |
| 平井 浩之 | 2.09% |
| 五郎川 隆 | 1.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は大林竜一氏が務めています。取締役3名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大林 竜一 | 代表取締役社長 | 日本信販(現 三菱UFJニコス)、新日本建物常務取締役等を経て、2009年4月に同社を設立し代表取締役社長に就任。2009年より現職。 |
| 柿原 宏之 | 取締役経営管理部長 | 大京、新日本建物を経て、2011年同社入社。経営管理部長、執行役員を経て2013年より現職。 |
社外取締役は、佐々木榮茂(元日本土地建物販売副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ハウジング事業」「アセットソリューション事業」および「宿泊事業」を展開しています。
■(1) ハウジング事業
東京都区部や多摩地区を中心とした首都圏エリアにおいて、自社ブランド「アグレシオ」シリーズの戸建住宅および戸建用地(宅地)の分譲販売を行っています。用地仕入れからプランニング、設計、施工管理、販売、アフターメンテナンスまでを自社一貫体制で手掛けています。
主な収益源は、一般顧客への戸建住宅や宅地の販売代金です。主に同社が事業運営を行っています。
■(2) アセットソリューション事業
投資家や富裕層向けに、収益マンション・収益アパートの建設・販売、およびマンション用地等の販売を行っています。主に希少性の高い都心エリアや山手線沿線などをターゲットとし、投資用賃貸マンション等を供給しています。
主な収益源は、投資家等への物件販売代金です。主に同社が事業運営を行っています。
■(3) 宿泊事業
全国の空き家や空き別荘等を活用した宿泊施設の開業支援および運営コンサルティングを行っています。物件提案からコンセプト策定、設計・施工支援、運営管理までをワンストップでサポートしています。
主な収益源は、宿泊施設のオーナーからのコンサルティング料や運営管理委託料等です。運営は主に子会社のハウスバードが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年3月期から2025年3月期の2期間において、売上高は増加傾向にあります。利益面でも、経常利益率は4.7%から7.3%へと上昇しており、収益性が向上しています。当期利益も前期比で大きく伸長し、増収増益の好調な推移を示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 276億円 | 307億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は14.5%から17.3%へ、営業利益率は5.8%から8.3%へと改善しており、本業の収益力が強化されていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 276億円 | 307億円 |
| 売上総利益 | 40億円 | 53億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.5% | 17.3% |
| 営業利益 | 16億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 5.8% | 8.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比21%)、租税公課が5億円(同16%)を占めています。売上原価については、不動産売上原価における用地費の割合が高くなっています。
■(3) セグメント収益
主力のハウジング事業は、販売棟数の増加により売上高・利益ともに大きく伸長し、全体業績を牽引しました。アセットソリューション事業は減収減益となりましたが、一定の利益を確保しています。宿泊事業は売上高が増加したものの、先行投資等の影響で損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ハウジング事業 | 231億円 | 271億円 | 14億円 | 28億円 | 10.4% |
| アセットソリューション事業 | 45億円 | 36億円 | 7億円 | 4億円 | 10.0% |
| 宿泊事業 | 0.5億円 | 1.0億円 | 0.0億円 | -0.3億円 | -27.1% |
| 調整額 | - | -0.0億円 | -8億円 | -9億円 | - |
| 連結(合計) | 276億円 | 307億円 | 13億円 | 22億円 | 7.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状況は、営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがプラスとなっており、本業赤字を資産売却+借入で補填している「救済型」に分類されます。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -6億円 | -46億円 |
| 投資CF | -5億円 | 0.4億円 |
| 財務CF | 14億円 | 54億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は21.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人類の共同財産を創出すること」を社会的使命として掲げています。不動産事業を通じて社会に価値を提供し、未来に残る良質な住環境や資産を創出することを目指しています。
■(2) 企業文化
覚悟と情熱、専門性に溢れ、業界内外に向けて無類の存在感を放つ「誇り高きプロフェッショナル集団」となることを目指しています。変化の激しい環境に迅速に対応し、常に先を見通した戦略推進や財務基盤強化により、安定的な収益確保と存在感の発揮を重視する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
成長性を重視し、売上高の増大とシェア拡大を目指しています。経営指標として、以下の数値を目標としています。
* 売上高経常利益率:6.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
企業価値向上に向け、商品力の強化やエリア戦略の深化を推進します。具体的には、自社販売比率の向上やSNS活用による顧客訴求力の強化、都心近郊の人気エリアへのドミナント展開を進めます。また、アセットソリューション事業では富裕層向け商品の拡充や資産コンサルティング機能の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
継続的な成長のためには生産性向上と人材育成が不可欠と認識しています。IT活用による業務自動化や無駄の排除を進めるとともに、研修やOJTの充実を図っています。また、テレワークや時差出勤など多様な働き方を推奨し、社員が能力を発揮しやすい環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 36.6歳 | 6.2年 | 7,520,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 4.8% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市況の悪化
主力のハウジング事業は消費者の需要動向に大きく左右されます。金利上昇、地価や物価の変動、税制変更などが消費マインドを冷え込ませ、需要が低下した場合、販売価格の下落や引渡し棟数の減少により、経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
■(2) 事業エリアの集中
事業エリアを首都圏(特に多摩地区および隣接地域)に集中させています。そのため、首都圏における景気動向、住宅需要、地価変動などの地域的な経済環境の変化が、同グループの業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 金融機関からの資金調達
用地取得や建設資金の多くを金融機関からの借入で調達しており、有利子負債への依存度が高い水準にあります。金利水準の上昇や金融機関の融資姿勢の変化など、金融環境が悪化した場合には、資金調達コストの増加や資金繰りに影響が生じる可能性があります。
■(4) 外注先への依存
戸建住宅の施工の大部分を外注に依存しています。職人不足による外注先の減少や、外注先の経営不振により工期遅延が発生した場合、また十分な施工体制が確保できない場合には、事業展開や業績に影響が及ぶ可能性があります。



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