※本記事は、アグレ都市デザイン株式会社の有価証券報告書(第17期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アグレ都市デザインってどんな会社?
首都圏をターゲットに、デザイン性と機能性に優れた戸建住宅や収益不動産の分譲事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2009年に東京都武蔵野市で戸建販売を目的として設立され、同年に宅地建物取引業免許を取得しました。2016年に東京証券取引所JASDAQに株式を上場し、2019年にアセットソリューション事業部を新設しています。2023年にはハウスバードを子会社化して宿泊事業に参入しました。
現在の従業員数は連結で142名、単体で138名です。筆頭株主は創業者の大林竜一氏で、第2位は平井浩之氏、第3位は五郎川隆氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大林竜一 | 40.67% |
| 平井浩之 | 2.09% |
| 五郎川隆 | 1.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は大林竜一氏が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大林竜一 | 代表取締役社長 | 1990年新日本建物入社。同社取締役等を経て、2009年同社設立。代表取締役社長に就任し現職。 |
| 柿原宏之 | 取締役経営管理部長 | 1995年大京入社。2011年同社に入社し経営管理部長に就任。2013年より現職。 |
社外取締役は、原由香(ペンデル税理士法人社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ハウジング事業」「アセットソリューション事業」「宿泊事業」および「その他」事業を展開しています。
■ハウジング事業
首都圏を中心に「アグレシオ」シリーズなどの戸建住宅および戸建用地の分譲販売を行っています。用地の仕入れから街区のプランニング、企画・設計、施工管理、販売、アフターメンテナンスまでを一貫して提供しています。
一般消費者などを対象とした不動産売買契約に基づき、物件引渡し時に売買代金を受領して収益を計上します。運営はアグレ都市デザインが行っています。
■アセットソリューション事業
希少性の高い都心エリアにおいて、主に富裕層や投資家向けの収益マンション・収益アパートおよびマンション用地等の建設・販売を行っています。
投資家などの顧客との不動産売買契約に基づき、物件引渡しと同時期に代金を受領して収益を得るモデルです。運営はアグレ都市デザインが行っています。
■宿泊事業
空き家や空き別荘等を活用した宿泊施設の開業および運営コンサルティングをはじめ、旅館事業を企図した宿泊施設の分譲販売を行っています。
宿泊施設開業支援や運営管理のコンサルティング料金を受け取るほか、宿泊施設分譲による売買代金を受領して収益とします。運営はアグレ都市デザインおよびハウスバードが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績は、主力事業における販売体制の強化や事業用地の取得が順調に進み、継続的な増収増益のトレンドを描いています。とくに直近期は売上高、経常利益ともに大きく伸長し、過去最高を更新するなど好調な推移を示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 276億円 | 307億円 | 370億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 22億円 | 28億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 7.3% | 7.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 16億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間は、売上高の拡大に加えて売上総利益率および営業利益率も改善傾向にあります。自社設計・自社施工管理による付加価値の向上や、販売効率の改善が利益水準の底上げに寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 307億円 | 370億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 66億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.3% | 17.8% |
| 営業利益 | 25億円 | 33億円 |
| 営業利益率(%) | 8.3% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比19%)、租税公課が6億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ハウジング事業は都心部へのターゲット絞り込みが奏功し増収増益となりました。アセットソリューション事業も富裕層向け商品が伸び大幅な増収増益を達成しました。宿泊事業はコンサルティング契約の遅れ等により損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ハウジング事業 | 271億円 | 304億円 | 28億円 | 33億円 | 10.8% |
| アセットソリューション事業 | 36億円 | 62億円 | 4億円 | 6億円 | 9.8% |
| 宿泊事業 | 1.0億円 | 3.9億円 | -0.3億円 | -0.3億円 | -7.4% |
| 連結(合計) | 307億円 | 370億円 | 22億円 | 28億円 | 7.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -46億円 | -18億円 |
| 投資CF | 0.4億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | 54億円 | 26億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人類の共同財産を創出すること」を社会的使命として掲げています。覚悟と情熱、専門性に溢れ、業界内外に向けて無類の存在感を放つ誇り高きプロフェッショナル集団となることを目指して経営に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は創業以来、自社一貫体制が生み出す付加価値の強化を重視しています。用地仕入れから企画・設計、施工管理、販売、アフターサービスに至るまで、部門間の連携と情報共有を促進し、風通しの良い組織風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は成長性を重視し、売上高の増大およびシェアの拡大を目指しています。中短期的な数値目標として以下を掲げ、各事業における収益性と生産性の向上に努めています。
・売上高経常利益率:6.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
不動産を取り巻くビジネスの可能性を模索し、ターゲットエリアの深耕とドミナント効果の創出を図っています。具体的には、SNSを活用した自社販売の強化や、富裕層向けの収益マンション販売、事業環境の変化に対応できるITを活用した生産性向上に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様なバックグラウンドを有する人材の確保と育成に取り組んでいます。業績・業務・理念の3軸に基づく人事評価制度を導入し、自律的な成長を促すとともに、女性が働きやすい組織環境の整備やテレワーク等の多様な働き方の推奨を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.0歳 | 6.3年 | 8,216,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.4% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女賃金差異(全労働者) | - |
| 労働者の男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 労働者の男女賃金差異(パート・有期雇用労働者) | - |
同社は公表義務の対象ではないため、一部項目の記載が有報にはありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市況の悪化
主力であるハウジング事業は、消費者の需要動向に左右されやすく、景気動向や金利上昇、物価高騰などに起因して需要が低下した場合、着工・引渡し棟数の減少や販売価格の低下が生じるリスクがあります。
■(2) 資材および住宅設備機器等の価格変動
国内外の市場動向により木材や建材などの資材価格が上昇し、その上昇分を販売価格へ十分に転嫁できない場合、利益が減少して同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 金融機関からの資金調達
事業用地の取得や建設において有利子負債への依存度が高いため、金融政策や経済情勢の変化に伴う金利水準の上昇や金融環境の変動があった場合、資金繰りや経営成績に影響が生じるリスクがあります。



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