ユー・エム・シー・エレクトロニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユー・エム・シー・エレクトロニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。EMS(電子機器受託製造)事業を主力とし、車載・産業・OA機器向けに展開。当期は売上高1,319億円で微増収、経常利益16億円で増益となるも、海外子会社の税務訴訟関連費用により最終赤字。(107文字)


※本記事は、株式会社ユー・エム・シー・エレクトロニクスの有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月1日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ユー・エム・シー・エレクトロニクスってどんな会社?


EMS事業を主軸に、車載機器等の受託製造を行う「ものづくり」企業。トヨタグループ等との強固な関係基盤が特徴です。

(1) 会社概要


1968年に電子機器の受託製造を行うため設立されました。2000年代には香港やベトナムに現地法人を設立し、生産体制を強化しています。2016年に東証一部に上場し、2018年には日立製作所より現UMC・Hエレクトロニクスの株式を取得して子会社化するなど、事業規模を拡大しています。

連結従業員数は5,904名、単体では233名です。筆頭株主は主要販売先でもある豊田自動織機で、第2位はトヨタグループのアイシン、第3位はエレクトロニクス商社のネクスティエレクトロニクスとなっており、事業パートナーが上位を占めています。

氏名 持株比率
豊田自動織機 34.62%
アイシン 7.80%
ネクスティエレクトロニクス 7.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大年浩太氏です。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
大年 浩太 取締役社長(代表取締役) 豊田自動織機経営役員等を経て、2021年より現職。
谷口 芳邦 取締役(執行役員) ソニー生産技術本部統括部長、ネクスティエレクトロニクスフェロー等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、佐々木卓夫(元豊田自動織機取締役副社長)、尾関純(公認会計士尾関会計事務所代表)、中村克己(国広総合法律事務所パートナー)、中野俊夫(日立情報通信エンジニアリング代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「EMS事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) EMS事業(車載機器)


電動車向け電装系、重要保安部品などの車載用電子機器を製造しています。高い技術力と品質が求められる分野で、自動車完成品メーカーの一次請け企業等を通じて製品を供給しています。

収益は、顧客からの製品製造受託による売上および有償支給部品取引における加工賃収入等です。運営は主にユー・エム・シー・エレクトロニクスや中国、ベトナム、タイ等の海外子会社が行っています。

(2) EMS事業(産業機器・OA機器・その他)


インバーターや半導体試験装置などの産業機器、プリンターや複写機などのOA機器、コンシューマー製品等の電子回路基板の実装・組立を行っています。

収益は、各機器メーカーからの受託製造による売上です。運営はユー・エム・シー・エレクトロニクス、UMC・Hエレクトロニクスおよび海外子会社が担っています。

(3) その他の事業


製造現場への人材派遣や製造請負業務を行っています。

収益は、顧客企業への労働者派遣や業務請負による対価です。運営は子会社のUMCジャストインスタッフが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は1,300億円台で推移していますが、利益面では変動が見られます。特に直近では経常利益が増益となったものの、特別損失や税金費用の計上により当期純損益が赤字に転じています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,362億円 1,346億円 1,617億円 1,313億円 1,319億円
経常利益 11億円 21億円 12億円 12億円 16億円
利益率(%) 0.8% 1.6% 0.7% 0.9% 1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -10億円 7億円 7億円 13億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は微増となりましたが、売上原価も増加しています。営業利益は増加しましたが、海外子会社の税務更正処分に伴う巨額の法人税等計上が響き、最終赤字となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,313億円 1,319億円
売上総利益 73億円 76億円
売上総利益率(%) 5.6% 5.7%
営業利益 20億円 21億円
営業利益率(%) 1.6% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が18億円(構成比33%)、支払手数料が7億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


EMS事業の車載機器は中国市場の低迷により減収となりましたが、OA機器は好調に推移し増収となりました。産業機器は在庫調整等の影響で減収となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
EMS事業 1,305億円 1,312億円
車載機器 756億円 698億円
産業機器 243億円 207億円
OA機器 300億円 403億円
その他 5億円 3億円
その他の事業 8億円 8億円
連結(合計) 1,313億円 1,319億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ユー・エム・シー・エレクトロニクスは、営業活動により多くの現金を生み出しました。これは主に、棚卸資産の減少が貢献した結果です。一方、投資活動では、有形固定資産の取得のために資金を使用しました。財務活動では、短期借入金の返済や自己株式の取得により、資金の支出がありました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 87億円 104億円
投資CF -47億円 -37億円
財務CF -35億円 -56億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「心のこもった製品をおとどけします」を社是としています。日系最大級のEMS企業として、業界No.1のQCDS(品質、価格、納期、サービス)を目指し、グローバル拠点で均質なサービスを提供することを基本方針としています。

(2) 企業文化


「ものづくりは人づくり」という考えのもと、全社員が思想や考え方を共有し、課題解決に取り組む姿勢を重視しています。また、「ものづくり力」を企業活力の源泉とし、コンプライアンス遵守やステークホルダーへの貢献を掲げています。

(3) 経営計画・目標


EMS業界において顧客からの信用を得ながら持続的に成長するため、営業利益率の向上を重要な経営指標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


車載機器の電動化や自動運転技術の進展、デジタル技術導入による高性能化等に伴う電子部品市場の拡大を見据えています。サプライチェーンの強化やロスの削減に注力するとともに、強みを伸長させて収益基盤を強化し、持続的な成長と競争力向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長のため、性別や年齢等を問わず有用な人材を採用し、階層別研修や育成面談を通じて成長を支援する方針です。従業員の満足度向上や、フレックスタイム制・在宅勤務制度の導入による働きやすい環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.2歳 13.2年 6,333,685円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.8%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.7%
男女賃金差異(正規雇用) 70.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引先企業の業界動向等


自動車やOA機器等のセットメーカーを主要顧客としており、これらの業界の景気や販売状況が悪化した場合、受注に影響が及び業績が悪化する可能性があります。また、主要顧客の生産変動や生産拠点戦略の変更も業績に大きく影響します。

(2) 海外での事業展開


売上の8割以上を海外子会社が占めており、特に中国・香港の比率が高くなっています。各国の政治情勢、法規制の変更、為替変動、人件費上昇、地政学的リスク等が顕在化した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 生産技術に関するリスク


顧客であるメーカーの技術革新は速く、求められる生産技術水準も年々高度化しています。これらに対応するための技能向上や設備投資を行っていますが、要求水準を満たせなかった場合、競争力を維持できず業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。