※本記事は、ユー・エム・シー・エレクトロニクス株式会社の有価証券報告書(第59期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユー・エム・シー・エレクトロニクスってどんな会社?
同社は車載機器や産業機器向け等の基板実装や加工組立を受託するEMS事業をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1968年に電子機器の受託製造を目的として設立され、1991年にユー・エム・シー・エレクトロニクスへ社名変更しました。2000年以降は中国やベトナム等の海外拠点を開設し、2016年に株式上場を果たしました。2018年には日立情報通信マニュファクチャリングを子会社化し事業規模を拡大しています。
従業員数は連結で5,596名、単体で229名です。筆頭株主は事業で提携関係にある自動車部品等の製造・販売を行う豊田自動織機で、第2位には同じく自動車部品等を展開するアイシンおよび電子部品商社のネクスティエレクトロニクスが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 豊田自動織機 | 34.61% |
| アイシン | 7.80% |
| ネクスティエレクトロニクス | 7.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大年浩太が務めています。社外取締役は4名で、社外取締役比率は約66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大年浩太 | 取締役社長(代表取締役) | 1983年豊田自動織機製作所入社。2016年同社常務役員等を経て、2021年4月より現職。 |
| 谷口芳邦 | 取締役(執行役員) | 1983年ソニー入社。ネクスティエレクトロニクス取締役等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、佐々木卓夫(元トヨタ自動車常務役員)、尾関純(公認会計士尾関会計事務所代表)、中村克己(国広総合法律事務所パートナー)、中野俊夫(日立情報通信エンジニアリング代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、EMS事業およびその他の事業を展開しています。
■(1) EMS事業
車載機器、産業機器、OA機器等の最終製品の中核となるプリント基板への電子部品実装および加工組立を受託製造しています。電動車向け電装系、インバーター、プリンター等の幅広い製品を手がけ、高い品質基準が求められる国内外の大手メーカーを主要顧客としています。
顧客からの受託製造に対する製品販売額や加工代相当額が主な収益源です。日本国内のほか、中国、ベトナム、タイなどのグローバル拠点で展開しており、運営はユー・エム・シー・エレクトロニクスのほか、海外子会社のUMC Electronics Hong Kong Limited等が担っています。
■(2) その他の事業
EMS事業以外の分野として、人材派遣や製造請負サービスを提供しています。工場や関連施設等において必要となる人材の供給や業務の請負を担っています。
顧客への人材派遣や製造請負に応じたサービス提供に対する対価が主な収益源です。運営はUMCジャストインスタッフが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的に1,600億円台まで拡大しましたが、近年は減少傾向にあります。経常利益も10億円台で推移し、利益率は1%前後と低い水準にとどまっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,346億円 | 1,617億円 | 1,313億円 | 1,319億円 | 1,127億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 12億円 | 12億円 | 16億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | 1.6% | 0.7% | 0.9% | 1.2% | 1.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 7億円 | 13億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益はともに減少傾向を示しています。売上総利益率は5%台後半で安定しているものの、営業利益は減少しており、営業利益率も1%台に低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,319億円 | 1,127億円 |
| 売上総利益 | 76億円 | 65億円 |
| 売上総利益率(%) | 5.7% | 5.8% |
| 営業利益 | 21億円 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 1.6% | 1.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が18億円(構成比35%)と最も多く、次いで支払手数料が6億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力となる車載機器分野をはじめ、産業機器分野やOA機器分野などすべてのセグメントで売上高が減少しています。特に車載機器分野では、中国市場における需要低迷の影響が大きく響いています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 車載機器 | 698億円 | 586億円 |
| 産業機器 | 207億円 | 167億円 |
| OA機器 | 403億円 | 365億円 |
| その他 | 11億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 1,319億円 | 1,127億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金に加えて借入による資金調達も行い、設備投資などの積極的な投資活動に充てている「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 104億円 | 26億円 |
| 投資CF | -37億円 | -43億円 |
| 財務CF | -56億円 | 6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も22.5%でいずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社是「感謝の心を大切にします。心のこもった製品をおとどけします。社員が幸せで誇れる会社をつくります。健全な持続的成長を通じ社会に貢献します。」を掲げています。業界No.1のQCDS(品質、価格、納期、サービス)を目指し、世界に「日本のものづくり」を実現することを存在意義としています。
■(2) 企業文化
「ものづくり力」を活力の源泉とし、「ものづくりは人づくり」という考え方を大切にする文化があります。国内と海外のどの拠点においても共通の価値観を全社員が共有し、全社的な課題解決に果敢に挑戦する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長に向けて、営業利益率の向上を重要な経営指標に据えています。自動車や産業機器等の電動化ニーズに対応し、中長期的な収益基盤の強化を図ります。
■(4) 成長戦略と重点施策
中国拠点の体制再構築を進める一方、車載機器の電動化や自動運転技術、デジタル技術の進化による需要増を取り込む戦略です。サプライチェーンの強化やロスの削減により、競争力を高めサステナブルな成長を実現します。
* コンプライアンスの推進
* 従業員の安全と満足度の向上
* 企業価値の向上
* ステークホルダーへの貢献
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様で有用な人材を継続的に採用し、階層別研修や専門教育を通じて従業員の能力向上を促す方針です。フレックスタイム制や在宅勤務を推進し、ワークライフバランスや健康で安心して働ける環境づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.0歳 | 13.3年 | 6,234,524円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.8% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 89.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 取引先企業の生産変動
顧客企業の生産状況や拠点戦略の変更、グローバルな需要動向の影響を強く受けます。取引先の大規模かつ急激な生産変動が生じた場合、受注や工場の安定操業に直接的な悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 生産技術の高度化への対応
取引先企業が求める生産技術の水準は年々高まっており、設備投資や現場の技術力向上が必須です。技術革新に対応できず要求水準を満たせなかった場合、競争力を維持できず業績が悪化するリスクがあります。
■(3) 海外事業展開と地政学リスク
売上の大部分を中国や東南アジア等の海外拠点が占めており、各国の政治情勢、規制変更、人件費上昇や為替変動のリスクを抱えています。これらの要因が事業コストの増加やサプライチェーンの混乱を招く懸念があります。



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