※本記事は、イワキの有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イワキってどんな会社?
ケミカルポンプを中心とした流体制御機器の開発・製造・販売を主力事業とする企業です。
■(1) 会社概要
イワキは1956年に理化学機器の販売を目的として設立されました。1959年にケミカルポンプの製造・販売を開始して以降、流体制御機器メーカーとして成長を続けています。1985年のヨーロッパ販売会社設立を皮切りにグローバル展開を推進し、2016年には東証二部に株式上場を果たしました。近年では2021年にテクノエコーを吸収合併するなど、事業基盤の強化と拡大を図っています。
現在の従業員数は連結で1,146名、単体で790名体制となっています。大株主の状況をみると、筆頭株主はスイスに拠点を置く法人のCHARON FINANCE GMBHで、第2位は代表取締役社長の藤中茂氏に関連するとみられる藤中ホールディングス、第3位には藤中氏本人が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| CHARON FINANCE GMBH | 14.83% |
| 藤中ホールディングス | 12.17% |
| 藤中 茂 | 8.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は藤中茂氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤中 茂 | 代表取締役社長 | 1989年同社入社。技術本部企画推進部長、経営企画室室長などを経て、2008年に専務取締役に就任。2009年より現職。 |
| 打田 秀樹 | 専務取締役 | 1981年同社入社。国内営業本部長、常務取締役などを歴任。2018年より営業統括等を担当し、2020年より現職。 |
社外取締役は、茅原敏広(元三浦研究所社長)、富安貴子(元日本エンバイロ工業営業本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ケミカルポンプ事業」を展開しています。
■(1) ケミカルポンプ製品
半導体や液晶、水処理、医療機器など幅広い産業分野向けに、薬液移送に使用されるケミカルポンプを開発・製造・販売しています。マグネットポンプや定量ポンプ、空気駆動ポンプなどをラインアップし、化学薬液を安全かつクリーンに移送する役割を担っています。
これら製品の販売による代金が主な収益源です。顧客の厳しい品質や利便性の要求に応えるため、多品種少量生産体制を敷いています。開発・製造・販売の運営は主にイワキが行うほか、海外ではIwaki EuropeやIwaki Americaなどの子会社・関連会社を通じてグローバルに展開しています。
■(2) システム製品およびメンテナンスサービス
ポンプ単体だけでなく、ポンプ制御用の機器や流体制御システム、各種水質計測機器などのシステム製品を提供しています。また、製品納入後の履歴管理に基づくオーバーホール提案や運転に関するアドバイスといったメンテナンスサービスも商品として位置づけ、提供しています。
システム製品の販売代金や、修理・保守点検などのメンテナンスサービス料が収益源となります。流体制御のノウハウを活かした付加価値の高い提案により顧客の生産性向上に貢献しています。この事業もイワキを中心に展開されており、国内外の関係会社と連携して顧客を強力にサポートしています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで推移しており、堅調な成長を続けています。経常利益および当期利益も売上高の拡大に伴い増加傾向にあります。特に利益率は直近3期間において高い水準を維持しており、収益性の向上が伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 324億円 | 377億円 | 445億円 | 458億円 | 477億円 |
| 経常利益 | 30億円 | 37億円 | 62億円 | 65億円 | 67億円 |
| 利益率(%) | 9.2% | 9.9% | 14.0% | 14.2% | 14.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 24億円 | 43億円 | 45億円 | 45億円 | 48億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も安定して推移しています。売上総利益率は高い水準をキープしており、付加価値の高い製品の提供が維持されています。営業利益率も安定した水準で推移しており、効率的な事業運営が行われていることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 458億円 | 477億円 |
| 売上総利益 | 185億円 | 191億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.4% | 40.0% |
| 営業利益 | 58億円 | 59億円 |
| 営業利益率(%) | 12.8% | 12.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が46億円(構成比35%)、賞与引当金繰入額が7億円(同5%)を占めています。また、売上原価は286億円となっており、売上高に対する構成比は60%となっています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.0%で、いずれも市場平均を上回っています。営業キャッシュ・フローがプラス、投資・財務キャッシュ・フローがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業といえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 35億円 | 53億円 |
| 投資CF | -8億円 | -34億円 |
| 財務CF | -19億円 | -13億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「常に最前線で産業を支え、社会の発展と人々の幸福に寄与する。」という経営理念を掲げています。世界中のあらゆる場所でケミカルポンプを中心とした流体制御機器を利用してもらうことで社会に価値を提供し、変化の激しい時代においても「これからの暮らしの流れを支える」存在であり続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、多様なステークホルダーと信頼関係を築き、共感を得て応援される企業グループであり続けることを重視しています。事業の成長を追求するだけでなく、環境や社会にも配慮した取り組みを推進し、ステークホルダーにとって価値ある存在であり、愛される企業グループを目指して持続可能な社会づくりに貢献する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「イワキグループビジョンNEXT10」において、2035年3月期の定量目標として連結売上高1,000億円、連結営業利益率15%以上を掲げています。また、その第一段階である「中期経営計画2027」では、2028年3月期の目標を設定しています。
* 連結売上高:530億円
* 連結営業利益:69億円
* 連結営業利益率:13%
* ROE:12%以上の維持
■(4) 成長戦略と重点施策
長期目標の達成に向け、海外市場における水処理ニーズへの貢献拡大や、次世代エネルギー社会づくりへのチャレンジ、グローバル製品の企画・調達の拡大などの重要テーマに取り組んでいます。また、製品の安定供給に向けた調達先の多様化や生産体制の強化を図るとともに、人材基盤の強化を喫緊の経営課題として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、専門技術に精通しマネジメント能力に優れた人材の確保と、多様な能力・個性を生かした育成を重視しています。ダイバーシティ経営の方針として、誰もが活躍できるよう家事や育児への参画を支援するほか、女性のキャリアアップ教育への投資を積極的に行っています。また、従業員の健康を第一とする健康経営を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.9歳 | 18.5年 | 6,977,371円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.6% |
| 男性育児休業取得率 | 57.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 67.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 46.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児・介護休業後の復帰率(100.0%)、平均勤続年数差異(女性平均勤続年数/男性平均勤続年数)(105.8%)、休業災害発生件数(0件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 変動の大きい市場環境
同社の製品は半導体や液晶パネル製造、化学、水処理など幅広い産業分野で使用されています。特に半導体や液晶関連製品は市況変動が大きく、顧客の生産設備投資の動向に左右されやすいため、市場環境が悪化した場合には、受注減少や在庫滞留などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 国内需要減退および海外事業展開
国内産業の海外移転等により長期的な需要減少が生じた場合、収益基盤である国内事業に悪影響が及ぶ可能性があります。一方で、海外市場への展開を推進していますが、各国の市場変化や競合状況、米国の関税政策の動向、現地販売代理店の競争力低下などが生じた場合、事業展開や業績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 製品の品質
同社は品質管理部門において厳格な管理を行っていますが、予期せぬ重大な品質問題が発生する可能性は排除できません。製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が生じた場合、企業評価の著しい低下や売上高の減少を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は不具合撲滅に向けたプロジェクト体制を敷き、品質向上に取り組んでいます。



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