イワキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イワキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。ケミカルポンプ及び流体制御機器の開発・製造・販売を行うメーカーです。半導体・液晶、水処理、医療機器など幅広い産業分野に製品を提供しています。2025年3月期の連結業績は、売上高458億円(前期比2.7%増)、経常利益65億円(同4.7%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社イワキ の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イワキってどんな会社?


ケミカルポンプの世界的な総合メーカーです。多品種少量生産を強みに、半導体や水処理など幅広い産業の流体制御を支えています。

(1) 会社概要


1956年に理化学機器の販売を目的に創立し、1959年よりケミカルポンプの製造を開始しました。1985年のドイツ現地法人設立を皮切りに海外展開を本格化させ、欧米・アジアに拠点を拡大しています。2016年に東証二部に上場し、2019年に東証一部へ指定替え、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

連結従業員数は1,121名、単体では788名です。筆頭株主はスイスの法人であるCHARON FINANCE GMBHで、第2位は資産管理会社とみられる藤中ホールディングス、第3位は代表取締役社長の藤中茂氏です。創業家および関連資産管理会社が大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
CHARON FINANCE GMBH PRESIDENT OF MANAGEMENT VERDER ANDRIES JAN 12.24%
藤中ホールディングス 12.21%
藤中 茂 8.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は藤中茂氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
藤中 茂 代表取締役社長 1989年入社。技術本部企画推進部長、経営企画室長、専務取締役などを経て2009年より現職。
打田 秀樹 専務取締役 1981年入社。国内営業本部長、常務取締役などを歴任。現在は事業統括を担当し2020年より現職。


社外取締役は、茅原敏広(元三浦研究所社長)、富安貴子(日本エンバイロ工業営業本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ケミカルポンプ事業」および「その他」事業を展開しています。

**(1) ケミカルポンプ事業**
半導体・液晶、水処理、医療機器、新エネルギーなど幅広い産業分野向けに、ケミカルポンプおよびポンプ専用コントローラ等の周辺機器を開発・製造・販売しています。多品種少量生産を強みとし、薬液移送における安全性や耐久性、クリーン度など多様な顧客ニーズに対応する製品を提供しています。

収益は、製品の販売対価として国内外の顧客から得ています。また、製品の修理、アフターサービス、設置工事等の役務提供も収益源となります。運営は主にイワキが行い、海外では各国の販売子会社や生産拠点が事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は282億円から458億円へと大幅に拡大しており、増収基調が続いています。経常利益も22億円から65億円へと約3倍に増加し、利益率も7.9%から14.2%へと大きく改善しました。特に2024年3月期以降は利益率が高い水準で推移しており、収益性の向上が顕著です。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 282億円 324億円 377億円 445億円 458億円
経常利益 22億円 30億円 37億円 62億円 65億円
利益率(%) 7.9% 9.2% 9.9% 14.0% 14.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 22億円 29億円 34億円 42億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も微増しました。売上総利益率は40%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。営業利益も増加し、営業利益率は12.8%と高い水準です。販管費の抑制も利益増に寄与していることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 445億円 458億円
売上総利益 183億円 185億円
売上総利益率(%) 41.2% 40.4%
営業利益 55億円 58億円
営業利益率(%) 12.3% 12.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が45億円(構成比35%)を占めており、人件費が主要なコストとなっています。次いで賞与引当金繰入額が6億円(同5%)となっています。

(3) セグメント収益


同社グループはケミカルポンプ事業の単一セグメントですが、製品群別に見ると、主力であるマグネットポンプや定量ポンプが堅調に推移し全体を牽引しました。一方、半導体・液晶市場の調整局面の影響を受け、空気駆動ポンプなどは減収となりました。全体としては医療機器市場や水処理市場の伸長が寄与し、増収を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
マグネットポンプ 143億円 151億円
定量ポンプ 72億円 81億円
空気駆動ポンプ 57億円 48億円
回転容積ポンプ 30億円 34億円
エアーポンプ 25億円 26億円
システム製品 25億円 27億円
仕入商品 30億円 32億円
その他 64億円 59億円
連結(合計) 445億円 458億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金を、設備投資や借入返済、株主還元に充てており、健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 26億円 35億円
投資CF -25億円 -8億円
財務CF -19億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%でプライム市場平均(9.4%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.0%でプライム市場の製造業平均(46.8%)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「常に最前線で産業を支え、社会の発展と人々の幸福に寄与する。」という経営理念を掲げています。世界中のあらゆる場所で流体制御機器を通じて社会に価値を提供し、変化の激しい時代においても人々の暮らしの流れを支え続ける企業グループでありたいと考えています。

(2) 企業文化


同社は、これからの10年を見据えた長期ビジョンのもと、「これからの暮らしの流れを支える Aid daily life globally, evolving for future needs.」をありたい姿としています。事業活動を通じて世界中のファンを増やし、持続可能な世の中づくりに貢献することを基本方針とし、環境・社会課題の解決や多様な人材の活躍推進を重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「イワキグループビジョンNEXT10」の実現に向け、2026年3月期から2028年3月期までの「中期経営計画2027」を策定しています。

* 連結売上高:530億円
* 連結営業利益:69億円
* 連結営業利益率:13%
* ROE:12%以上の維持

(4) 成長戦略と重点施策


「持続可能な成長への基盤づくり」と「マテリアリティの実現」を方針とし、以下のテーマに取り組むことで目標達成を目指しています。

* 海外市場における水処理ニーズへの貢献拡大
* 水素をはじめとした次世代エネルギー社会づくりへのチャレンジ
* グローバル製品の企画
* グローバル調達の拡大
* DXによる生産性・働きやすさ向上
* ESG経営の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


専門技術に精通した人材やマネジメント能力に優れた人材の確保、および多様な能力と個性を生かした人材育成を戦略として掲げています。性別に関わらず家事・育児に参画できる環境整備や、女性のキャリアアップ支援、社員の継続的な成長機会の提供を通じて、多様な人材が活躍できる基盤づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 18.3年 6,795,749円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 0.5%
男性労働者の育児休業取得率 60.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 53.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 65.7%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) 44.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性のキャリア開発に係る研修等の実施回数(26回)、平均勤続年数差異(106.3%)、育児・介護休業後の復帰率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

**(1) 変動の大きい市場環境**
同社製品は半導体や液晶パネル製造装置などに多く使用されており、これらの最終製品の需要動向や設備投資動向の影響を受けやすい傾向にあります。市場環境が悪化した場合、受注減少や在庫滞留により業績に影響を及ぼす可能性があります。

**(2) 国内需要の減退**
国内産業の経済状況の変化や製造拠点の海外移転等により、国内需要が長期的に停滞・減少した場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。これに対し、同社は海外事業の拡大を進め、海外売上比率の向上を図ることでリスクの低減に努めています。

**(3) 海外事業展開におけるリスク**
海外市場での競争激化や新興国メーカーとの競合、現地のカントリーリスク、為替変動などが業績に影響を与える可能性があります。また、米国関税政策の動向による価格競争力の低下や、各国代理店との連携における課題などもリスク要因として認識されています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。