SGホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SGホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。佐川急便を中心としたデリバリー事業やロジスティクス事業などを展開。当連結会計年度は、宅配便の取扱個数は減少したものの、適正運賃収受の取り組みやC&Fロジホールディングスの連結化等により、増収減益となりました。


※本記事は、SGホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第19期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SGホールディングスってどんな会社?

佐川急便を中核とする総合物流企業グループです。宅配便からロジスティクス、不動産まで幅広い事業を展開しています。

(1) 会社概要

1965年に佐川急便として設立され、宅配便事業を開始しました。2006年に純粋持株会社体制へ移行し、同社を設立。2016年には日立物流(現ロジスティード)と資本業務提携を締結しました。2017年に東京証券取引所市場第一部に上場。2024年には低温物流に強みを持つC&Fロジホールディングスを子会社化しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は58,271人、単体では236人です。筆頭株主は新生ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は公益財団法人です。

氏名 持株比率
新生ホールディングス 17.23%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.38%
SGH文化スポーツ振興財団 7.72%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長は栗和田榮一氏、代表取締役社長は松本秀一氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松本 秀一 代表取締役社長 1988年西埼玉佐川急便入社。環境省出向、同社総務部ゼネラルマネジャー、取締役管理・統制担当等を経て2023年6月より現職。
栗和田 榮一 代表取締役会長 1977年東京佐川急便入社。佐川急便社長、同社会長等を歴任。2006年同社代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。
本村 正秀 代表取締役副社長事業推進担当 1980年東京佐川急便入社。佐川急便社長、同社取締役デリバリー・ロジスティクス事業担当を経て2025年4月より現職。
川中子 勝浩 取締役経営企画担当 1989年三和銀行入行。2006年同社入社。佐川急便取締役、同社執行役員等を経て2021年7月より現職。
笹森 公彰 取締役 1983年北海道佐川急便入社。SGムービング社長、佐川急便取締役等を歴任。2025年4月より現職(佐川急便代表取締役社長兼務)。


社外取締役は、髙岡美佳(立教大学経営学部教授)、鷺坂長美(元環境省水・大気環境局長)、秋山真人(元ニチレイロジグループ本社取締役専務執行役員)です。

2. 事業内容

同社グループは、「デリバリー事業」、「ロジスティクス事業」、「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) デリバリー事業

飛脚宅配便を中心に、手紙やはがきの配送を行うメール便、大型家具家電の輸送など、様々な荷物を扱う輸送サービスを提供しています。また、顧客企業の物流効率化に貢献する「スマート納品」や「館内物流サービス」なども手掛けています。

収益は、荷物の配送に伴う運賃やサービス料などから得ています。運営は主に佐川急便が担い、佐川ヒューモニーやSGムービングなども事業を展開しています。

(2) ロジスティクス事業

国際航空・海上輸送や通関業務、倉庫での保管・流通加工を行う3PLサービスなどを提供しています。2024年には低温物流に強みを持つC&Fロジホールディングス(現:名糖運輸)を連結化し、コールドチェーンの構築を進めています。

収益は、国際輸送運賃や倉庫保管料、流通加工料、通関手数料などから得ています。運営は、国内では佐川グローバルロジスティクスや名糖運輸などが、海外ではEXPOLANKA HOLDINGS Limitedなどが担っています。

(3) 不動産事業

物流施設の開発、賃貸、管理を行っています。グループの物流効率性を追求した施設開発を行うほか、保有施設の流動化による資金効率の向上や、太陽光発電による再生可能エネルギー供給も実施しています。

収益は、物流施設の賃貸料や管理料、不動産開発に伴う売却益などから得ています。運営は主にSGリアルティが行っています。

(4) その他

物流付帯サービスとして、トラック燃料の販売、車両の整備・販売、物流システムの開発、代金引換サービス、人材派遣などを提供しています。

収益は、商品販売代金、システム利用料、決済手数料、人材派遣料などから得ています。運営は、佐川アドバンス、SGモータース、SGシステム、SGフィルダーなどが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上収益は直近5期間で変動がありますが、当期は前期比で増加しています。経常利益は2022年3月期をピークに減少傾向にあります。当期は、デリバリー事業の取扱個数減少やコスト増、ロジスティクス事業における買収関連費用などが影響し、減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 13,121億円 15,884億円 14,346億円 13,169億円 14,792億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 1,037億円 1,603億円 1,379億円 909億円 889億円
利益率(%) 7.9% 10.1% 9.6% 6.9% 6.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 743億円 1,067億円 1,265億円 583億円 581億円

(2) 損益計算書

売上収益は前期比で増加しましたが、売上原価や販売費及び一般管理費も増加し、営業利益は減少しました。特にロジスティクス事業の拡大に伴う費用増が影響しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 13,169億円 14,792億円
売上総利益 1,540億円 1,604億円
売上総利益率(%) 11.7% 10.8%
営業利益 892億円 878億円
営業利益率(%) 6.8% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が236億円(構成比32.6%)、租税公課が60億円(同8.3%)を占めています。

(3) セグメント収益

デリバリー事業は取扱個数減少により減収減益となりました。一方、ロジスティクス事業はC&Fロジホールディングスの連結化や国際輸送の好調により大幅な増収となりましたが、のれん償却費などの負担もあり利益率は低下しました。不動産事業は物件売却により増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
デリバリー事業 10,285億円 10,211億円 815億円 693億円 6.8%
ロジスティクス事業 2,198億円 3,813億円 -49億円 69億円 1.8%
不動産事業 126億円 240億円 71億円 105億円 43.9%
その他 560億円 528億円 34億円 19億円 3.6%
調整額 -1,108億円 -1,115億円 20億円 -7億円 -
連結(合計) 13,169億円 14,792億円 892億円 878億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスであるため、積極型(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 776億円 1,186億円
投資CF -414億円 -1,647億円
財務CF -703億円 140億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

創業の精神である「飛脚の精神(こころ)」のもと、お客さまと社会の信頼に応え共に成長すること、新しい価値を創造し社会の発展に貢献すること、常に挑戦を続けあらゆる可能性を追求することを企業理念としています。顧客から「安心」「満足」「信頼」を得られるサービスと品質の向上を目指しています。

(2) 企業文化

グループ横断的なプロジェクトチーム「GOAL(GO Advanced Logistics)」を組成し、顧客の物流課題解決に向けた提案活動を推進しています。また、セールスドライバーが営業担当者として顧客ニーズを把握し、ソリューションを提案するスタイルを重視しています。

(3) 経営計画・目標

長期ビジョン「SGHビジョン2030」の実現に向け、2026年3月期から2028年3月期までの新中期経営計画「SGH Story 2027」を策定しました。トータルロジスティクスの高度化とグローバル物流の基盤拡大を基本方針としています。
* 2028年3月期目標:営業収益1兆8,300億円
* 同営業利益:1,100億円
* 同ROE:12%

(4) 成長戦略と重点施策

国内サービス領域の拡大とグローバル物流基盤の強化を推進します。具体的には、宅配便の効率化、低温物流ソリューションの拡大によるコールドチェーンの構築、海外フォワーディング事業の拡大などに取り組みます。また、大型中継センターの新設やDXへの投資により、サービス品質の向上と業務効率化を図ります。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

持続的な成長を支えるため、「コア事業推進人材」「ソリューション人材」「グループ経営人材」を定義し、投資を行っています。DXによる業務効率化やベースアップを通じた人材確保、グローバル人材やDX人材の育成強化を進めています。また、株式報酬制度の導入や多様な人材が活躍できる環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.8歳 9.8年 7,691,947円


※平均年間給与には、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 37.3%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 84.8%
男女賃金差異(正規雇用) 72.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 221.4%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動への適応と緩和

気候変動による風水害や山火事の頻発、地球温暖化の進行は、物流インフラに影響を与える可能性があります。また、脱炭素社会への移行に伴い、運輸部門としてのCO2排出削減が求められており、対策の遅れは事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

(2) アライアンスを含めた国内外輸送ネットワークの強化

デリバリー事業やロジスティクス事業では一部業務を外部に委託していますが、労働力不足やコスト上昇により委託先の確保が困難になるリスクがあります。また、委託先での不祥事や業務品質の低下は、グループの社会的信用の低下や業績への悪影響を招く可能性があります。

(3) 人的資本への投資及びエンゲージメントの向上

少子高齢化による労働力不足の中で、人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、事業運営に支障をきたす恐れがあります。従業員エンゲージメントの低下や、経営人材・ソリューション人材の不足は、長期ビジョンや中期経営計画の達成を困難にする可能性があります。

(4) グローバル化に対応したガバナンスの構築

海外展開を進める中で、各国の法規制や商慣習への対応が必要です。法令違反やコンプライアンス上の問題が発生した場合、追加費用の発生や社会的信用の低下、事業運営の変更を余儀なくされる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。