SGホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SGホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SGホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、宅配便を中心とするデリバリー事業やロジスティクス事業、グローバル物流事業など総合物流ソリューションを展開しています。直近の業績は、成長領域の越境EC等の取扱個数増加などが寄与し、営業収益や営業利益ともに前年を上回り増収増益のトレンドです。


※本記事は、SGホールディングス株式会社の有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月10日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SGホールディングスってどんな会社?


同社は、佐川急便をはじめとするグループ各社を束ね、総合物流インフラを担う持株会社です。

(1) 会社概要


1965年に佐川急便が設立され、2006年に純粋持株会社体制へ移行しSGホールディングスが誕生しました。2017年に東京証券取引所へ上場し、近年は2024年に名糖運輸(旧C&Fロジホールディングス)や2025年に海外のMorrison社をグループ化するなど国内外で事業領域を広げています。

同社グループは連結で60,483人、単体で242人の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社の新生ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位はSGH文化スポーツ振興財団となっています。

氏名 持株比率
新生ホールディングス 17.94%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.12%
SGH文化スポーツ振興財団 8.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長の松本秀一氏や代表取締役会長の栗和田榮一氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松本 秀一 代表取締役社長 1988年西埼玉佐川急便入社。環境省や佐川急便総務部等を経て、同社執行役員、取締役を歴任。2023年より現職。
栗和田 榮一 代表取締役会長 1977年東京佐川急便入社。佐川急便代表取締役社長、会長を歴任。2006年同社代表取締役会長兼社長に就任し、2023年より現職。
本村 正秀 代表取締役副社長事業推進担当 1980年東京佐川急便入社。佐川急便社長や同社取締役等を経て、2025年より現職。名糖運輸やヒューテックノオリンの会長も兼務。
髙垣 考志 取締役財務・経営企画担当 1995年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。同行理事等を経て、2024年同社入社。2025年より現職。
笹森 公彰 取締役 1983年北海道佐川急便入社。SGムービング社長や同社執行役員等を経て、2025年より現職。佐川急便代表取締役社長も兼務。


社外取締役は、髙岡美佳(立教大学経営学部教授)、鷺坂長美(元環境省水・大気環境局長)、秋山真人(元ニチレイロジグループ本社社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デリバリー事業」、「ロジスティクス事業」、「グローバル物流事業」、「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) デリバリー事業


法人および個人顧客向けに、宅配便を中心とする物品輸送サービスを提供しています。飛脚宅配便から大型家具などのラージサイズまで幅広い荷物に対応し、複数の荷物をまとめて納品するスマート納品や最適な輸送パッケージを組むTMS(Transportation Management System)を展開しています。

収益は、顧客企業や個人からの配送料金などで構成されています。主に佐川急便、佐川ヒューモニー、SGムービングなどのグループ会社が事業を運営し、全国を網羅する物流インフラとセールスドライバーによるネットワークを活用しています。

(2) ロジスティクス事業


国内倉庫での保管や流通加工、物流センターの運営受託(3PL)に加え、低温管理が必要なチルド・フローズン商材の配送などコールドチェーンを提供しています。また、大型複合施設への一括納品や館内配送などのサービスも展開し、顧客のサプライチェーンを包括的に支援しています。

収益は、顧客企業からの倉庫保管料や流通加工料、業務受託料で構成されています。運営は佐川グローバルロジスティクスを中心に、名糖運輸、ヒューテックノオリン、ワールドサプライなどの事業会社が担当し、グループシナジーを活かしてサービスを提供しています。

(3) グローバル物流事業


アジア域内やアジア発北米向けを中心とした航空・海上フォワーディング(国際輸送)や、海外現地での物流サービスを展開しています。アパレルや半導体、ハイテク製品などを主要商材として扱い、通関代行や倉庫保管、国際EC物流など国境を越えた物流ニーズに対応しています。

収益は、顧客企業からの国際輸送運賃や通関代行手数料などで構成されています。事業運営は、国内のSGHグローバル・ジャパンのほか、海外子会社のEXPOLANKA HOLDINGS LimitedやMorrison Express Worldwide Corporationなどが担っています。

(4) 不動産事業


物流ソリューションを支えるインフラとして、物流施設の開発、賃貸、管理・運用を行っています。業務効率を追求した一体型物流施設の開発や既存施設の改修を通じてネットワークを最適化し、サステナビリティ活動の一環として太陽光発電による売電事業も展開しています。

収益は、物流施設などの不動産賃貸料収入、管理に係る役務収入、開発した物流施設の信託受益権化を通じた売却収入などで構成されています。運営は主にSGリアルティやSGアセットマックスが担当し、資産効率と資金効率を高める戦略的な投資を実施しています。

(5) その他


総合的な物流ソリューションを提供するための基盤となる各種附帯サービスを展開しています。具体的には、トラックの燃料販売、輸送車両の整備・販売、物流システムの開発・運用、宅配便の代金引換サービス、保険代理店事業、人材派遣や業務請負などを手掛けています。

収益は、商品販売代金やシステム利用料、手数料などで構成されています。運営は、佐川アドバンス、SGモータース、SGシステム、SGフィルダーなどが担当し、デリバリー事業やロジスティクス事業と連携してグループ全体の業務効率化を支えています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高(営業収益)は一時的に落ち込みが見られたものの、直近の2026年3月期には1兆6,448億円と過去最高水準まで回復しています。経常利益も底打ちして増益基調に転じており、成長領域での需要取り込みや新規M&Aによる事業規模拡大の成果が表れています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 15,884億円 14,346億円 13,169億円 14,792億円 16,448億円
経常利益 1,603億円 1,379億円 909億円 889億円 918億円
利益率(%) 10.1% 9.6% 6.9% 6.0% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,067億円 1,265億円 583億円 581億円 591億円

(2) 損益計算書


売上高(営業収益)と売上総利益(営業総利益)ともに前年を上回り、順調なトップラインの成長が確認できます。積極的な事業投資や人件費等の増加により営業利益率は微減となりましたが、営業利益ベースでも着実な増益を達成しており、堅調な収益構造を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 14,792億円 16,448億円
売上総利益 1,604億円 1,899億円
売上総利益率(%) 10.8% 11.5%
営業利益 878億円 902億円
営業利益率(%) 5.9% 5.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が359億円(構成比36%)、減価償却費が85億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるデリバリー事業は越境ECの取扱個数増などにより増収増益となりました。ロジスティクス事業も新規M&Aの効果で大きく伸長しています。一方、グローバル物流事業は市況の影響で利益が減少しましたが、不動産事業が引き続き高い利益率で全体業績を支えています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
デリバリー事業 10,030億円 10,485億円 683億円 701億円 6.7%
ロジスティクス事業 1,431億円 2,028億円 42億円 63億円 3.1%
グローバル物流事業 2,564億円 3,216億円 35億円 1億円 0.0%
不動産事業 240億円 154億円 105億円 104億円 67.2%
その他 528億円 564億円 19億円 26億円 4.7%
調整額 -億円 -億円 -7億円 7億円 -%
連結(合計) 14,792億円 16,448億円 878億円 902億円 5.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「積極型」です。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,186億円 1,248億円
投資CF -1,647億円 -2,168億円
財務CF 14億円 658億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も44.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「飛脚の精神(こころ)」のもと、「お客さまと社会の信頼に応え 共に成長します」「新しい価値を創造し 社会の発展に貢献します」「常に挑戦を続け あらゆる可能性を追求します」を企業理念とし、顧客から「安心」「満足」「信頼」を得るサービス・品質の向上を目指しています。「トータルロジスティクス」を提供し続けることで、社会に必要不可欠な存在であり続けることを掲げています。

(2) 企業文化


創業の精神である、常に顧客に誠心誠意尽くすという「飛脚の精神(こころ)」が根底にあります。多様な価値観を尊重し、様々な視点から柔軟な意思決定を行うことを重視し、性別や年齢、国籍にかかわらず活躍できるDE&I(Diversity, Equity and Inclusion)を推進しています。挑戦と成長の機会を提供する風通しの良い組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2031年3月期までの長期ビジョン「SGHビジョン2030」を策定し、中長期的な経営目標を掲げています。また、2028年3月期までの中期経営計画「SGH Story 2027」において、段階的な業績拡大を目指しています。

* 2028年3月期目標:営業収益1兆8,300億円
* 2028年3月期目標:営業利益1,100億円
* 2028年3月期目標:親会社株主に帰属する当期純利益700億円
* 2028年3月期目標:ROE12%、ROIC8%
* 2031年3月期目標:営業収益2兆2,000億円、営業利益1,400億円、ROE15%

(4) 成長戦略と重点施策


「トータルロジスティクスの高度化とグローバル物流の基盤拡大」を基本方針とし、国内サービス領域の拡大やグローバル基盤の構築を進めています。宅配便の収益基盤強化に加え、低温物流によるコールドチェーンの構築や越境ECの成長を取り込みます。また、自動設備を導入した大型中継センターの新設によるインフラ強化や、人的資本・DXへの投資を通じた生産性向上にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を重要な経営資源と位置づけ、競争優位性を担う固有人材への投資に注力しています。事業基盤を支える「コア事業推進人材」、成長エンジンを担う「ソリューション人材(DX・グローバル・GOAL人材)」、そして「グループ経営人材」を定義し、それぞれに合わせた育成と登用を進めています。継続的なベースアップや多様な働き方の推進により、エンゲージメントの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.5歳 9.9年 7,864,340円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 40.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 85.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 230.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(32.2%)、従業員エンゲージメント(54.0%)、DX・グローバル人材の年間育成人数(70人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) パートナー企業への業務委託とインフラ維持
同社は宅配便の輸配送の多くをパートナー企業に委託しています。「2024年問題」や労働力不足により十分な委託先が確保できない場合や、委託費が高騰した場合は、サービス品質の低下やコスト増につながる可能性があります。

(2) 労働集約型事業における人材確保
少子高齢化に伴う労働力不足が進む中、セールスドライバー等の人材確保は重要課題です。継続的な処遇改善やDXによる業務効率化を進めていますが、必要な人材を確保・定着できない場合、事業基盤の維持や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 燃料価格の上昇と競争環境の激化
多数のトラックや輸送機材を使用しており、原油価格の変動により燃料費が影響を受けます。また、宅配便や物流市場での他社との競争が激化する中、コスト上昇分をサービス価格に転嫁できない場合、収益性が悪化するリスクがあります。

(4) 情報セキュリティとシステム障害
大量の個人情報や顧客の機密情報を扱い、配送状況のリアルタイム管理などシステムへの依存度が高い事業です。サイバー攻撃やシステムトラブルによる業務停止、情報漏洩が発生した場合は、損害賠償や社会的信用の低下を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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