九州フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

九州フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

九州フィナンシャルグループは東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場しています。肥後銀行と鹿児島銀行を中核とし、銀行業を中心に各種金融サービスや地域価値共創事業を展開しています。直近の業績トレンドは、資金運用収益の増加などにより前年度比で増収増益を達成し、堅調な成長を続けています。


※本記事は、株式会社九州フィナンシャルグループの有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 九州フィナンシャルグループってどんな会社?


肥後銀行と鹿児島銀行を中核に、九州地域で銀行業やリース業など多様な金融サービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は、2014年に肥後銀行と鹿児島銀行が経営統合に合意し、2015年に共同株式移転により設立され上場を果たしました。2017年に九州FG証券を設立したほか、近年ではデジタルや地域共創分野の子会社を設立・完全子会社化するなど、事業領域を幅広く拡大しています。

現在の従業員数は連結で4,858名、単体で83名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は一般財団法人岩崎育英文化財団、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.76%
一般財団法人岩崎育英文化財団 4.94%
日本カストディ銀行(信託口) 4.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は郡山明久氏、代表取締役社長は笠原慶久氏が務めています。社外取締役比率は40.0%(15名中6名)です。

氏名 役職 主な経歴
郡山明久 取締役会長(代表取締役) 鹿児島銀行入行後、取締役人事部長や専務取締役などを歴任。2024年に同行取締役頭取および同社代表取締役会長に就任。
笠原慶久 取締役社長(代表取締役) みずほ信託銀行常務執行役員を経て肥後銀行に入行し、2018年より同銀行取締役頭取。2019年に同社代表取締役社長に就任。
多田理一郎 取締役(専務執行役員) 肥後銀行東京支店長等を経て、同社および傘下銀行の監査部長を務める。2025年に同社取締役専務執行役員に就任。
山方真一 取締役(専務執行役員) 鹿児島銀行で支店長や総務部長を歴任。2021年に同社執行役員経営企画部長に就き、2026年に取締役専務執行役員に就任。
市坪孝一 取締役(常務執行役員) 鹿児島銀行で経営企画部長等を歴任。2024年に同社の上席執行役員事業戦略部長に就き、2025年に取締役常務執行役員に就任。
北村幸代子 取締役(常務執行役員) 肥後銀行で支店長や事務統括部長等を歴任し、常務執行役員CR統括部長を務める。2025年に同社取締役常務執行役員に就任。
上村基宏 取締役 鹿児島銀行で取締役頭取を務めたのち、2015年より同社の代表取締役社長を歴任。2019年より同社取締役に就任。
北ノ園雅英 取締役(監査等委員) 鹿児島銀行で医業支援部長等を歴任。同社監査役などを経て、2021年に同社および鹿児島銀行の取締役(監査等委員)に就任。
坂田二郎 取締役(監査等委員) 肥後銀行でCR統括部長等を歴任。2022年より同行取締役(監査等委員)を務め、2025年に同社取締役(監査等委員)に就任。


社外取締役は、根本祐二(東洋大学名誉教授等)、渋澤健(シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役)、福本伸昭(ピーエスシー執行役員)、田島優子(さわやか法律事務所パートナー弁護士)、鈴木伸弥(明治安田生命保険特別顧問)、大皷利枝(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」の事業を展開しています。

銀行業


熊本県、鹿児島県、宮崎県を主要な営業エリアとし、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、為替業務のほか、各種代理業務や投資信託・保険商品の窓口販売、信託業務などを展開しています。個人および法人顧客向けに幅広い金融商品やサービスを提供し、地域経済を支えています。

主な収益源は、顧客への資金貸出による資金運用収益や、金融商品販売、為替取引などに伴う役務取引等収益です。同事業の運営は、グループの中核企業である肥後銀行および鹿児島銀行の2行が主に行っています。

リース業


各種設備や機械、情報通信機器などのリース業務および貸付業務を展開し、顧客の設備投資ニーズに柔軟に対応しています。地域の法人顧客を中心に、資金調達の多様化や財務改善に資するソリューションを提供しています。

顧客に対するリース資産の提供に伴うリース料収益や、貸付金から得られる利息などが主な収益源となります。同事業の運営は、肥銀リース、JR九州FGリース、鹿児島リースの連結子会社3社が行っています。

その他


クレジットカード業務、信用保証業務、金融商品取引業務のほか、DXソリューション事業やECモール事業といった地域価値共創事業を展開しています。非金融領域のサービスも拡充し、地域の多様な課題解決に取り組んでいます。

クレジットカードの決済手数料や信用保証料、証券の売買手数料、システムの開発・運用受託料などが収益源です。運営は、九州FG証券、九州デジタルソリューションズ、九州みらいCreationなど連結子会社20社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を振り返ると、経常利益および当期利益は一貫して右肩上がりで推移しています。特に直近の2期間では利益の伸びが加速しており、堅調な事業成長と収益性の向上が伺えます。地域密着型の金融サービスに加え、新規事業の拡大や経営効率化の取り組みが奏功し、安定した利益基盤を築いていると言えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 247億円 356億円 384億円 430億円 538億円
当期利益(親会社所有者帰属) 70億円 72億円 74億円 84億円 108億円

(2) 損益計算書


同社の利益水準の推移を見ると、直近の2期間において営業利益が着実に増加していることがわかります。本業である金融・リース事業の収益力向上に加え、事業領域の多角化による貢献が利益の拡大に繋がっています。効率的な経営基盤の強化が進んでいる状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 82億円 104億円


販売費及び一般管理費の主要項目をみると、給与・手当が12億円(構成比48%)、減価償却費が7億円(同28%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上収益(経常収益)を見ると、主力の銀行業が全体の8割以上を占めており、貸出金利息や有価証券利息の増加により順調に伸長しています。また、リース業や各種金融サービスを含むその他事業も前年度を上回る実績を計上しており、全セグメントで堅調な増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行業 2,052億円 2,151億円
リース業 389億円 407億円
その他 83億円 93億円
調整額 -11億円 -18億円
連結(合計) 2,513億円 2,633億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務のすべてにおいてマイナスとなっている「末期型」の傾向を示しています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -3,921億円 -59億円
投資CF 78億円 -2,571億円
財務CF -8億円 -206億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も5.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様・地域・社員とともに、より良い未来を創造する『地域価値共創グループ』への進化」をビジョンとして掲げています。地元を中心とした九州において盤石な経営基盤を確立し、広域化した新たな地域密着型ビジネスモデルを創造することで、活力あふれる地域社会の実現に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、自由闊達な組織風土を重んじており、従業員一人ひとりが能力を十分に発揮し、自分らしくいきいきと活躍できる環境づくりを推進しています。社内公募制度である「キャリアチャレンジ」や手挙げ制の研修を導入するなど、社員の主体性と挑戦機会を創出する取り組みを通じて、多様な人材が活躍する組織を構築しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2024年4月から2027年3月までの第4次グループ中期経営計画「躍進」を推進し、「地域価値共創グループ実現へ向けての躍進」を基本方針としています。最終年度の主な目標数値は以下の通りです。

・当期純利益:450億円
・コア業務純益:620億円
・顧客向けサービス業務利益:320億円
・株主資本ROE:6.0%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、新たな事業への挑戦や事業領域の拡充を通じて、地域起点のソリューション提供を加速させています。特に、台湾積体電路製造(TSMC)の進出を機とした半導体サプライチェーン構築などの地域産業支援を強化しています。さらに、人的資本経営の実践やAIを駆使したデジタル統合基盤の構築など、GX・DXへの先進的な取り組みを通じて持続的成長に向けた強固な経営基盤の確立を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、金融の枠にとどまらない様々なフィールドで貢献できる多様な人材の育成を人材育成方針として掲げています。法人や個人コンサルティング、IT・DXなど各専門分野で活躍できる人材ポートフォリオを構築するため、専門人材のキャリア採用を積極化するほか、資格取得支援やグループ合同研修等を通じて専門性の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.8歳 15.8年 10,031,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.6%
男性育児休業取得率 122.7%
男女賃金差異(全労働者) 53.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 64.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 54.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(76ポイント)、入社5年以内の若年層離職率(肥後銀行17%、鹿児島銀行17%)、平均有給休暇取得日数(肥後銀行15.7日、鹿児島銀行16.6日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 持株会社としての配当依存リスク

同社は持株会社であり、収入の大部分を銀行子会社からの配当金および経営管理料に依存しています。銀行子会社が十分な利益を計上できず、配当を行えない状況が生じた場合、同社株主に対する配当支払いに影響を及ぼす可能性があります。

(2) 信用リスクと不良債権の増加

経済動向の変化や取引先の業況悪化、担保資産価値の下落などにより、不良債権残高および与信費用が増加するリスクがあります。貸出先の状況悪化等で貸倒引当金の積み増しが必要となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 金利および価格変動による市場リスク

主要な収益源である資金利益は、金利変動に伴う利鞘の変化による影響を受けます。また、国債や株式などの有価証券を保有しているため、金利上昇や株価下落が発生した際には評価損が発生し、財務状況に影響を与えるリスクがあります。

(4) システムおよびサイバーセキュリティのリスク

業務の多くをシステムに依存しており、システム障害やサイバー攻撃によるサービス停止、情報漏洩、不正送金などが発生した場合、損害賠償や行政処分の対象となるほか、社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。