九州フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

九州フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

九州フィナンシャルグループは東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場し、銀行業務を中心にリースやクレジットカード、信託などの金融サービスを展開しています。直近の業績トレンドは、資金運用収益の増加等により増収となり、親会社株主に帰属する当期純利益も前年を上回る増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社九州フィナンシャルグループの有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年7月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は日本基準です。

1. 九州フィナンシャルグループってどんな会社?


同社グループは、銀行業務をはじめとする幅広い金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


同社は2015年10月に肥後銀行と鹿児島銀行の共同株式移転により設立され、上場しました。2017年12月に九州FG証券への商号変更、2020年4月に九州会計サービスの完全子会社化を行いました。また、2023年4月には地域商社である九州みらいCreationを設立し、事業領域を拡大しています。

現在の同社グループは、連結従業員数4,858名、単体従業員数83名の体制で事業を運営しています。大株主の構成をみると、筆頭株主および第3位の株主は資産管理業務を行う信託銀行となっています。また、第2位の株主には奨学金給付や教育支援等を行う一般財団法人が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.76%
一般財団法人岩崎育英文化財団 4.94%
日本カストディ銀行(信託口) 4.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は笠原慶久氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
郡山明久 取締役会長(代表取締役) 1980年鹿児島銀行入行。同社取締役人事部長、専務取締役を経て、2019年に取締役副頭取、2024年に取締役頭取に就任。2024年6月より現職。
笠原慶久 取締役社長(代表取締役) 1984年富士銀行入行。みずほ信託銀行常務執行役員を経て、2015年肥後銀行入行。肥後銀行取締役頭取等を歴任し、2019年6月より現職。
多田理一郎 取締役(専務執行役員) 1989年肥後銀行入行。東京支店長等を経て、同社や肥後銀行の執行役員監査部長を歴任。取締役常務執行役員を経て、2025年4月より現職。
山方真一 取締役(専務執行役員) 1988年鹿児島銀行入行。理事総務部長等を経て、2021年同社執行役員経営企画部長に就任。九州会計サービス等の取締役も務め、2026年4月より現職。
市坪孝一 取締役(常務執行役員) 1988年鹿児島銀行入行。執行役員経営企画部長を経て、2024年同社上席執行役員事業戦略部長に就任。肥後銀行等の役員も兼務し、2025年6月より現職。
北村幸代子 取締役(常務執行役員) 1984年肥後銀行入行。執行役員事務統括部長、常務執行役員CR統括部長等を歴任。肥後銀行の取締役常務執行役員を務め、2025年6月より現職。
上村基宏 取締役 1975年鹿児島銀行入行。常務取締役等を経て、2010年取締役頭取に就任。2015年に同社代表取締役社長を務め、2019年6月より現職。
北ノ園雅英 取締役(監査等委員) 1988年鹿児島銀行入行。執行役員医業支援部長等を経て、2021年に同社および鹿児島銀行の取締役(監査等委員)に就任。2021年6月より現職。
坂田二郎 取締役(監査等委員) 1989年肥後銀行入行。理事CR統括部長等を経て、2022年に肥後銀行の取締役(監査等委員)に就任。九州デジタルソリューションズ等の監査役を務め、2025年6月より現職。


社外取締役は、根本祐二(東洋大学名誉教授)、渋澤健(シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役)、福本伸昭(ピーエスシー執行役員)、田島優子(さわやか法律事務所パートナー弁護士)、鈴木伸弥(明治安田生命保険相互会社特別顧問)、大皷利枝(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」の事業を展開しています。

銀行業


熊本県、鹿児島県および宮崎県を主要な営業エリアとし、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、為替業務など幅広い金融商品・サービスを顧客に提供しています。あわせて、証券投資信託や保険商品の窓口販売業務、ならびに信託業務なども手がけています。

収益は、貸出金利息や有価証券の利息配当金のほか、各種手数料や信託報酬などから得ています。当該事業は、主に肥後銀行および鹿児島銀行が運営を担っており、地域に密着した強固な顧客基盤を活かして事業を展開しています。

リース業


法人や個人事業主などの顧客を対象に、事業運営に必要な設備や機器などのリース業務および貸付業務を提供しています。顧客の多様な資金調達ニーズに応えるとともに、地域経済の活性化を金融面からサポートしています。

収益は、リース契約に基づくリース料や貸付に伴う利息収入などから構成されています。事業の運営は、肥銀リース、JR九州FGリース、鹿児島リースの連結子会社3社が行っています。

その他


金融サービスを補完し、地域価値を共創するための多様な付随事業を展開しています。具体的には、クレジットカード業務、DXソリューションおよび収納代行サービス業務、信用保証業務、金融商品取引業務、ECモール事業などが含まれます。

収益は、クレジットカードの加盟店手数料や保証料、システム提供に伴う手数料、ECモールの販売手数料などから得ています。運営は、九州FG証券や九州デジタルソリューションズ、九州みらいCreationなど連結子会社20社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、経常収益および経常利益ともに順調な右肩上がりの成長を継続しています。特に当期は、資金運用収益や役務取引等収益の増加が寄与し、大幅な増収増益を達成しました。経常利益率も20%を超える水準まで改善しており、安定した収益力の向上が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 1,876億円 2,144億円 2,226億円 2,513億円 2,633億円
経常利益 247億円 356億円 384億円 430億円 538億円
利益率(%) 13.1% 16.6% 17.3% 17.1% 20.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 70億円 72億円 74億円 84億円 108億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を比較すると、営業利益は前期から増加傾向にあります。同社は金融業を主力としているため、一般的な売上総利益ではなく資金利益などを中心に収益を形成しており、本業の収益力を示す指標として堅調な推移を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 82億円 104億円


販売費及び一般管理費のうち、給与・手当が12億円(構成比37%)、減価償却費が7億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の経常収益を見ると、主力である銀行業の肥後銀行と鹿児島銀行がいずれも堅調に推移し、全社的な増収を牽引しました。また、リース業やその他の事業セグメントにおいても前期を上回る実績を残しており、各事業分野で安定した収益基盤を確立しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行業(肥後銀行) 1,170億円 1,199億円
銀行業(鹿児島銀行) 882億円 951億円
銀行業(合計) 2,052億円 2,151億円
リース業 389億円 407億円
その他 83億円 93億円
調整額 -11億円 -18億円
連結(合計) 2,513億円 2,633億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -3,921億円 -587億円
投資CF 78億円 -2,571億円
財務CF -81億円 -206億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.6%で、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、経営の基本方針として「広域化した新たな地域密着型ビジネスモデルを創造し、地元との信頼関係を更に強化するとともに経営の効率化を促進し、企業価値を高め、地域価値共創グループとして活力あふれる地域社会の実現に積極的に貢献する」ことを掲げています。金融の枠を超えた課題解決を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業文化として「お客様・地域・社員とともに、より良い未来を創造する『地域価値共創グループ』への進化」をビジョンに掲げています。持続可能な社会づくりに向けて、環境にやさしい経営の実践や、地域全体との対話を深めるなど、全役職員が主体的に地域社会の発展に貢献する行動様式を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、第4次グループ中期経営計画「躍進」(2024年4月~2027年3月)において、地域価値共創グループ実現へ向けた躍進を基本方針としています。最終年度の2027年3月期に向け、以下の数値目標を設定しています。

* 当期純利益:450億円
* コア業務純益:620億円
* 顧客向けサービス業務利益:320億円
* OHR:60.0%
* 株主資本ROE:6.0%

(4) 成長戦略と重点施策


目標達成に向けた成長戦略として、「未来を創る地域価値提供の取り組み加速」を掲げ、新たな事業への挑戦や事業領域の拡充を進めています。また、TSMC進出による半導体関連産業への成長支援など「地域経済の成長に向けたコア事業の強化」を推進し、デジタル基盤の強化による「KFGビジネスモデルの変革」にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、地域価値共創グループへの進化に向けた人材戦略として、多様な人材が活躍する働きやすい職場環境の構築を目指す「社内環境整備方針」と、金融の枠にとどまらない多様な人材を育成する「人材育成方針」を定めています。各専門分野で活躍できる人材の育成とキャリア採用を積極的に推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.8歳 15.8年 1,003万円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.6%
男性育児休業取得率 122.7%
男女賃金差異(全労働者) 53.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 64.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 54.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(76ポイント)、若年層離職率(17%)、副業実施者数(47名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自己資本比率の低下リスク


同社グループは、銀行法に基づく国内基準(4%)以上の自己資本比率を維持する義務があります。債務者の信用力悪化に伴う与信費用の増加や、有価証券の時価下落による減損処理などにより自己資本比率が低下した場合、業務の全部または一部の停止命令を受けるなど、事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) オペレーショナル・リスク


金融インフラを担う同社において、システム障害やサイバー攻撃によるサービス停止、情報漏洩、不正送金などが発生した場合、事業継続への支障や損害賠償、行政処分の対象となるリスクがあります。また、事務上の事故や不正、大地震等の自然災害による施設毀損も、業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。

(3) マネー・ローンダリング等の金融犯罪リスク


金融業界ではマネー・ローンダリングやテロ資金供与などの金融犯罪防止が重要課題となっています。同社グループにおいて、不正や不適切な取引を未然に防止する対策やシステム体制に不備があり、インシデントが発生した場合、不測の損失や著しい信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。