※本記事は、株式会社九州フィナンシャルグループの有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 九州フィナンシャルグループってどんな会社?
銀行業務を中心にリースやクレジットカード等の幅広い金融サービスを提供する地域密着型の金融グループです。
■(1) 会社概要
2015年10月に肥後銀行と鹿児島銀行の経営統合により、共同株式移転で設立されました。同時に東京証券取引所市場第一部および福岡証券取引所本則市場に上場しました。2017年に九州FG証券を設立し、2022年に東京証券取引所プライム市場へ移行しています。2023年には地域商社である九州みらいCreationを設立しました。
従業員数は連結で4,858名、単体で83名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は一般財団法人である岩崎育英文化財団、第3位も信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.76% |
| 一般財団法人岩崎育英文化財団 | 4.94% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は郡山明久氏、代表取締役社長は笠原慶久氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 郡山 明久 | 取締役会長(代表取締役) | 1980年鹿児島銀行入行。取締役人事部長、専務取締役等を経て、2024年6月より現職。 |
| 笠原 慶久 | 取締役社長(代表取締役) | 1984年富士銀行(現みずほ銀行)入行。肥後銀行取締役頭取を経て、2019年6月より現職。 |
| 多田 理一郎 | 取締役(専務執行役員) | 1989年肥後銀行入行。同社および子会社で監査部長を務め、2025年4月より現職。 |
| 山方 真一 | 取締役(専務執行役員) | 1988年鹿児島銀行入行。同社常務執行役員などを経て、2026年4月より現職。 |
| 市坪 孝一 | 取締役(常務執行役員) | 1988年鹿児島銀行入行。同社上席執行役員事業戦略部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 北村 幸代子 | 取締役(常務執行役員) | 1984年肥後銀行入行。同社常務執行役員などを経て、2025年6月より現職。 |
| 上村 基宏 | 取締役 | 1975年鹿児島銀行入行。同社取締役頭取、同社代表取締役社長を経て、2019年6月より現職。 |
| 北ノ園 雅英 | 取締役(監査等委員) | 1988年鹿児島銀行入行。同社監査役などを経て、2021年6月より現職。 |
| 坂田 二郎 | 取締役(監査等委員) | 1989年肥後銀行入行。同社取締役などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、根本祐二(東洋大学名誉教授)、渋澤健(シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役)、福本伸昭(ピーエスシー執行役員)、田島優子(さわやか法律事務所パートナー弁護士)、鈴木伸弥(明治安田生命保険特別顧問)、大皷利枝(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
肥後銀行および鹿児島銀行を通じて、熊本県、鹿児島県、宮崎県を主な営業エリアとして金融サービスを提供しています。預金、貸出、有価証券投資、内国為替、外国為替のほか、代理業務や国債等の窓口販売、信託業務を行っています。
顧客からの預金運用や貸出金利息、為替手数料、信託報酬などが主な収益源です。事業の運営は主に肥後銀行および鹿児島銀行が担っています。
■リース業
同社グループの連結子会社3社において、リース業務および貸付業務を展開しています。企業などの顧客に対して設備や機器のリースを行っています。
顧客からのリース料や貸付による利息が主な収益源となります。事業の運営は主に肥銀リース、JR九州FGリース、鹿児島リースが行っています。
■その他
クレジットカード業務、DXソリューションおよび収納代行サービス業務、信用保証業務、金融商品取引業務、ECモール事業などを展開しています。
カード利用者からの手数料、保証料、システム利用料などが主な収益源です。運営は九州FG証券、九州デジタルソリューションズ、九州みらいCreationなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、経常利益および当期利益はともに継続的な増加傾向を示しています。特に直近の事業年度にかけては利益水準の伸びが顕著であり、資金運用収益の拡大や金融サービスの手数料収入の増加などが寄与し、着実な利益成長を実現しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 247億円 | 356億円 | 384億円 | 430億円 | 538億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 70億円 | 72億円 | 74億円 | 84億円 | 108億円 |
■(2) 損益計算書
利益は前期間から当期間にかけて順調に拡大しており、本業の収益力が向上していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 82億円 | 104億円 |
販売費及び一般管理費のうち、給与・手当が12億円(構成比37%)、減価償却費が7億円(同22%)、事務委託費が6億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上はいずれも前期から増加しています。主力の銀行業において預金や貸出などの資金運用収益が拡大したほか、リース業やその他事業でも着実な成長が見られ、グループ全体の収益基盤の強化が進んでいます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 2,052億円 | 2,151億円 |
| リース業 | 389億円 | 407億円 |
| その他 | 83億円 | 93億円 |
| 調整額 | -11億円 | -18億円 |
| 連結(合計) | 2,513億円 | 2,633億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる末期型(事業拡大に伴う資産増加)の傾向を示しています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3,921億円 | -58億円 |
| 投資CF | 78億円 | -2,571億円 |
| 財務CF | -81億円 | -206億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も5.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客様・地域・社員とともに、より良い未来を創造する『地域価値共創グループ』への進化」をビジョンとして掲げています。両行の地元を中心とした九州での存在感をさらに発揮できる盤石な経営基盤を確立し、広域化した新たな地域密着型ビジネスモデルを創造することで、活力あふれる地域社会の実現に積極的に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループでは、自由闊達な組織風土のもと、従業員一人ひとりが能力を十分に発揮し、自分らしくいきいきと活躍できる環境づくりを重視しています。また、国連が定めた持続可能な開発目標であるSDGsの趣旨に賛同し、「サステナビリティ宣言」のもと全役職員が主体的に環境にやさしい経営の実践に取り組む文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
第4次グループ中期経営計画「躍進」(2024年4月~2027年3月)において、最終年度である2027年3月期に向けた具体的な数値目標を掲げています。
・当期純利益:450億円
・コア業務純益:620億円
・顧客向けサービス業務利益:320億円
・OHR:60.0%
・株主資本ROE:6.0%
・自己資本比率:11.00%
■(4) 成長戦略と重点施策
地域価値共創グループ実現に向けた躍進を基本方針とし、「未来を創る地域価値提供の取り組み加速」「地域経済の成長に向けたコア事業の強化」「持続的成長に向けた強固な経営基盤の確立」を戦略の柱としています。TSMC進出による半導体関連産業への成長支援のほか、地域・顧客起点のソリューション提供や、グループ一体でのライフプランコンサルティングの深化に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、パーパスおよび「お客様、地域、社員とともに、より良い未来を創造する『地域価値共創グループ』への進化」というビジョンに基づき、金融の枠にとどまらない多様な人材を育成する方針です。法人・個人コンサルティング、IT・DX、マーケット等の各分野で活躍できる人材の確保に向け、適材配置や専門性の高い公的資格の取得支援に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.8歳 | 15.8年 | 10,031,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.6% |
| 男性育児休業取得率 | 122.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 53.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 64.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 54.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(76P)、若年層離職率(17%)、平均有給休暇取得日数(15.7日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 持株会社のリスク
同社は持株会社であり、収入の大部分を銀行子会社からの配当金や経営管理料に依存しています。各種規制や契約上の制限等により、子会社からの配当金が制限されたり、子会社が十分な利益を計上できず配当を支払えない事態が生じた場合、同社の株主に対して配当を支払えなくなる可能性があります。
■(2) 自己資本比率に関するリスク
同社グループは、連結自己資本比率を国内基準である4%以上に維持する必要があります。債務者の信用力悪化に伴う与信費用の増加や、有価証券の時価下落に伴う減損処理の増加などにより自己資本比率が要求される水準を下回った場合、金融庁から業務の停止等の命令を受ける可能性があります。
■(3) オペレーショナル・リスク
事務上の事故や不正に起因する不適切な事務、システム障害、サイバー攻撃によるサービス停止や情報漏洩などが発生した場合、損害賠償や行政処分、風評の悪化を招くおそれがあります。さらに、法令解釈の相違や大規模自然災害などによる施設の毀損等も、業務の継続や業績に影響を及ぼすリスクとなります。



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