九州フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

九州フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場福岡証券取引所に上場する地域金融グループです。傘下の肥後銀行と鹿児島銀行を中心に、銀行業、リース業、その他金融サービスを展開しています。直近の業績では、資金運用収益の増加等により経常収益、経常利益、当期純利益のいずれも増加し、増収増益となりました。


九州フィナンシャルグループ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社九州フィナンシャルグループの有価証券報告書(第10期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 九州フィナンシャルグループってどんな会社?

熊本・鹿児島・宮崎を基盤とする地域金融グループです。半導体関連産業の集積が進む九州で地域経済の活性化を牽引しています。

(1) 会社概要

2015年10月、肥後銀行と鹿児島銀行の共同株式移転により設立されました。2017年に連結子会社として九州FG証券(現商号)を設立したほか、2022年の東証市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。2023年には地域商社事業を行う九州みらいCreationを設立し、非金融分野への事業領域拡大を進めています。

連結従業員数は4,670名、単体では76名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は一般財団法人岩崎育英文化財団です。主要事業会社である鹿児島銀行と歴史的に関係の深い地元の財団法人が大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.40%
一般財団法人岩崎育英文化財団 4.83%
日本カストディ銀行(信託口) 4.60%

(2) 経営陣

同社の役員は男性13名、女性1名、計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は笠原慶久氏です。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
郡山 明久 取締役会長(代表取締役) 1980年鹿児島銀行入行。同行常務、専務を経て2024年4月より同行頭取。2024年6月より現職。
笠原 慶久 取締役社長(代表取締役) 1984年富士銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ信託銀行常務執行役員を経て2015年肥後銀行入行。2018年同行頭取。2019年6月より現職。
多田 理一郎 取締役(専務執行役員) 1989年肥後銀行入行。同行執行役員、同社執行役員監査部長、常務執行役員等を経て2025年4月より現職。
江藤 英一 取締役 1983年肥後銀行入行。同行取締役常務執行役員、同社取締役専務執行役員等を経て2025年4月より現職。
赤塚 典久 取締役 1982年鹿児島銀行入行。同社執行役員、鹿児島銀行常務取締役、同社取締役専務執行役員等を経て2025年4月より現職。
松前 邦昭 取締役 1988年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。鹿児島銀行常務取締役、同社取締役常務執行役員等を経て2025年4月より現職。
上村 基宏 取締役 1975年鹿児島銀行入行。2010年同行頭取。2015年同社代表取締役社長。2019年6月より鹿児島銀行会長および現職。
田辺 雄一 取締役(監査等委員) 1985年肥後銀行入行。同行理事監査部長、監査役、同社監査役を経て2021年6月より現職。
北ノ園 雅英 取締役(監査等委員) 1988年鹿児島銀行入行。同行執行役員医業支援部長、監査役を経て2021年6月より現職。


社外取締役は、渡辺捷昭(元トヨタ自動車社長)、根本祐二(元日本政策投資銀行地域企画部長)、田中克郎(TMI総合法律事務所代表パートナー)、田島優子(さわやか法律事務所パートナー)、鈴木伸弥(元明治安田生命保険社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業

肥後銀行および鹿児島銀行において、熊本県、鹿児島県、宮崎県を主要エリアとし、預金、貸出、為替、有価証券投資等の銀行業務全般を提供しています。個人および法人顧客に対し、公共債や保険商品の窓口販売、信託業務なども行っています。

収益源は、貸出金利息、有価証券利息配当金、各種手数料などです。運営は主に株式会社肥後銀行および株式会社鹿児島銀行が行っています。

リース業

顧客に対し、リース業務および貸付業務を提供しています。設備投資を行う法人顧客などが主な対象です。

収益源は、リース料および貸付金利息です。運営は連結子会社である肥銀リース株式会社、鹿児島リース株式会社などが行っています。

その他

クレジットカード業務、DXソリューション、信用保証、金融商品取引、ECモール事業など、多角的な金融・非金融サービスを提供しています。

収益源は、カード年会費・手数料、システム開発料、保証料、証券委託手数料などです。運営は九州FG証券株式会社、九州デジタルソリューションズ株式会社、株式会社九州みらいCreationなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

過去5期間の業績を見ると、経常収益は増加傾向にあり、特に直近では資金運用収益の増加により大きく伸長しています。経常利益および当期純利益も、一貫して増加トレンドを維持しており、収益性が向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 1,809億円 1,876億円 2,144億円 2,226億円 2,513億円
経常利益 217億円 247億円 356億円 384億円 430億円
利益率(%) 12.0% 13.1% 16.6% 17.3% 17.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 150億円 167億円 247億円 264億円 304億円

(2) 損益計算書

2期間の傾向を分析すると、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益が増加し、収益全体を押し上げています。一方で、経費やその他業務費用も増加していますが、増収効果が上回り、利益成長を続けています。

※銀行業特有の財務構造のため、一般的な損益計算書の項目(売上総利益・営業利益等)による表示は行いません。

(3) セグメント収益

銀行業は貸出金利息や有価証券利息配当金の増加により増収増益となりました。リース業も増収でしたが、利益は減少しました。その他事業は増収増益となり、グループ全体の業績拡大に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
銀行業 1,793億円 2,052億円 382億円 417億円 20.3%
リース業 373億円 389億円 21億円 17億円 4.4%
その他 77億円 83億円 14億円 14億円 17.0%
調整額 -17億円 -11億円 -33億円 -18億円 -
連結(合計) 2,226億円 2,513億円 384億円 430億円 17.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は事業検討型(金融事業の拡大に伴う資産増加)です。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -1,532億円 -3,921億円
投資CF 1,450億円 777億円
財務CF -65億円 -81億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回り、財務の安定性を測る自己資本比率は5.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「お客様・地域・社員とともに、より良い未来を創造する『地域価値共創グループ』への進化」をビジョンとして掲げています。地域密着型ビジネスモデルを創造し、活力あふれる地域社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化

「地域価値共創グループ」として、従来の金融の枠組みを超えて地域産業振興等の課題解決に主体的に取り組む姿勢を重視しています。「協働」「融合」を経て「共創」ステージへと進化し、自律的な変革を推進する風土があります。

(3) 経営計画・目標

第4次グループ中期経営計画「躍進」(2024年度~2026年度)を推進しています。最終年度である2026年度の数値目標として以下を掲げています。
* 当期純利益:360億円
* コア業務純益:530億円
* 株主資本ROE:5.0%
* 自己資本比率:10.50%
* PBR:0.88倍以上

(4) 成長戦略と重点施策

「未来を創る地域価値提供の取り組み加速」と「地域経済の成長に向けたコア事業の強化」を基本戦略としています。特に半導体受託生産大手TSMCの熊本進出を好機と捉え、半導体関連産業への融資やサプライチェーン参入支援を強化し、「新生シリコンアイランド九州」の実現を目指しています。また、地域商社事業やDXソリューション事業など、非金融分野での新たな価値創出にも注力しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「未来のKFGグループを支える人材ポートフォリオの構築」をテーマに、金融の枠にとどまらない多様な人材を育成しています。専門人材プールの充足を目指し、戦略的な適材配置や資格取得支援を実施するとともに、「多様な人材が活躍する働きやすい職場環境の構築」に向けて、従業員エンゲージメントの向上や健康経営の推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.7歳 15.8年 9,676,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.1%
男性育児休業取得率 119.1%
男女賃金差異(全労働者) 52.8%
男女賃金差異(正規雇用) 64.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 53.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、SDGs・脱炭素支援件数(1,819件)、エンゲージメントスコア(74P)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 持株会社のリスク

同社は持株会社であり、その収入の大部分を銀行子会社からの配当金等に依存しています。規制や契約上の制限、あるいは子会社の利益状況により配当金が制限された場合、同社株主への配当支払いに影響が及ぶ可能性があります。

(2) 自己資本比率に関するリスク

同社グループおよび銀行子会社は、銀行法等に基づき定められた自己資本比率の基準(国内基準4%)を維持する必要があります。与信費用の増加や有価証券の評価損等により自己資本比率が低下し、基準を下回った場合、業務停止命令等の行政処分を受ける可能性があります。

(3) オペレーショナル・リスク

事務リスク、システムリスク、サイバーセキュリティ・リスクなどを含みます。事務処理の不備やシステム障害、サイバー攻撃による情報漏洩等が発生した場合、損害賠償や行政処分、社会的信用の失墜を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。