ソーシャルワイヤー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソーシャルワイヤー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソーシャルワイヤーは東京証券取引所グロース市場に上場し、インフルエンサーPRやリリース配信などのデジタルPR事業を展開しています。インフルエンサーマーケティングの需要拡大を背景に、直近の業績は売上高および利益ともに増加し、増収増益を達成しており、今後のさらなる事業規模拡大と収益力向上が期待されます。


※本記事は、ソーシャルワイヤー株式会社の有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ソーシャルワイヤーってどんな会社?


同社グループは、インフルエンサーマーケティング支援やプレスリリース配信代行など、デジタルPRに特化した事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は2006年に未来予想として設立され、2008年にアットプレス等を子会社化してリリース配信やシェアオフィス事業を開始しました。2012年に現在の社名に変更し、2015年に上場を果たしました。近年は事業ポートフォリオの選択と集中を進め、シェアオフィス事業などを譲渡する一方、2024年にジーニーの子会社となり、2025年にはiHackを子会社化するなど、デジタルPR事業への経営資源の集中を図っています。

現在の従業員数はグループ連結で153名、単体で105名体制で事業を運営しています。大株主については、筆頭株主は事業会社であり親会社のジーニーで、第2位は創業者の矢田峰之氏、第3位は金融機関であるSBI証券となっています。

氏名 持株比率
ジーニー 49.00%
矢田 峰之 9.70%
SBI証券 5.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は矢田峰之氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
矢田 峰之 代表取締役社長 元楽天銀行。2006年に同社設立、代表取締役就任。2023年4月より現職。
藤原 直美 取締役COO 2007年同社入社。インフルエンサーPR事業部長等を経て2024年4月より現職。
中村 利之 取締役CTO 2022年ジーニー入社、CVG事業本部CTOを経験。2024年7月より現職。
工藤 智昭 取締役 元リクルート。2010年にジーニーを設立し代表取締役社長就任。2024年7月より現職。
大山 泰生 取締役 楽天や電通等を経て2023年にジーニー入社。デマンドサイド事業部長を経験し2026年6月より現職。
北原 圭一郎 取締役 2019年ジーニー入社。デマンドサイドビジネスCOO兼事業部長代理を経験し2026年6月より現職。
河東 健二郎 取締役 エスアールエル等を経て2024年にジーニー入社。経営企画室IRグループを経験し2026年6月より現職。


社外取締役は、大野誠一(ライフシフト・ジャパン代表取締役CEO)、白川久美(with River代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルPR事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

インフルエンサーPRサービス


InstagramなどのSNSを活用したインフルエンサーマーケティングを希望する顧客に対し、総合サービス「Find Model」や「iHack」、および月額制マッチングプラットフォーム「Find Model Circle」を提供しています。専門的な知見を持つスタッフが、再現性のある設計と運用で持続的な成果が積み上がるSNS活用を支援しています。
収益源は企業からのサービス利用料です。運営はソーシャルワイヤーや子会社のiHackが行っています。

リリース配信代行サービス


顧客のプレスリリースを自社運営のWEBサイト「@Press」に掲載し、様々なニュースメディアへ配信するサービスを提供しています。生成AIを活用した原稿校正支援や、掲載実績データに基づく親和性の高いメディア選定機能により、情報品質を高めながら網羅的なニュース配信インフラとして機能しています。
収益源は企業からのプレスリリース配信利用料です。運営は主にソーシャルワイヤーが行っています。

クリッピング・リスクチェックサービス


新聞や雑誌、WEB、SNSなどから顧客が必要とする記事を選別・報告する「@クリッピング」や「Clip Master」、および取引先に潜在するリスクを把握するコンプライアンス特化型のSaaSツール「RISK EYES」を提供しています。
収益源は企業からの調査依頼料やSaaS利用料です。運営はソーシャルワイヤーや子会社のアットクリッピングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、事業の選択と集中による過渡期を経て、足元では再び売上高が成長軌道に乗り、利益面でも大幅な改善を果たして黒字転換および増益を実現していることがわかります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 46.3億円 47.7億円 36.7億円 29.1億円 35.1億円
経常利益 1.4億円 -2.0億円 -0.3億円 0.7億円 2.1億円
利益率(%) 3.0% -4.2% -0.7% 2.5% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.2億円 -9.1億円 -0.8億円 1.3億円 2.3億円

(2) 損益計算書


売上高が順調に拡大する一方で、利益率の高い事業への資源集中と経営管理体制の効率化が奏功し、営業利益および営業利益率ともに前年を上回る実績を残しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 29.1億円 35.1億円
売上総利益 18.4億円 20.9億円
売上総利益率(%) 63.4% 59.6%
営業利益 1.4億円 2.3億円
営業利益率(%) 4.7% 6.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6.2億円(構成比33%)、雑給が2.5億円(同13%)、広告宣伝費が1.8億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


デジタルPR事業のサービス別売上高を見ると、iHackの子会社化等の効果もありインフルエンサーPRが大きく伸長し、全体増収を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
リリース配信 9.6億円 9.4億円
クリッピング 6.1億円 6.1億円
リスクチェック 3.9億円 4.9億円
インフルエンサーPR 7.5億円 14.8億円
その他 2.0億円 -
連結(合計) 29.1億円 35.1億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出しつつ、借入等によって成長のための積極的な投資を行っている積極型の状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1.6億円 2.9億円
投資CF -1.9億円 -10.2億円
財務CF 11.0億円 5.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も51.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


コーポレートビジョンとして「全ての魅力にスポットライトがあたる社会へ」を掲げています。あらゆる企業や商品、個人が持つ多様な魅力や価値を、事業を営む地域や規模に関係なく、世の中に広く伝えることを使命(ミッション)として事業を展開しています。

(2) 企業文化


「デジタルPRのパイオニア」という行動指針のもと、「量の追求」こそが質を担保するという価値観を重視しています。また、「ポジション(ポスト)が人を育てる」という育成方針を掲げ、積極的なポジション提供と権限委譲により、多様なバックグラウンドを持つ人材が自律的に活躍できる組織風土を構築しています。

(3) 経営計画・目標


「付加価値の追求による企業価値の向上」を経営方針とし、中期テーマとして「ソーシャル時代のPRリーダーへ」を掲げています。技術投資とM&Aを積極的に活用し、生産性向上と高成長を目指しています。

* 売上高50億円
* 営業利益8億円
* 営業利益率16%

(4) 成長戦略と重点施策


「インフルエンサーPRの仕組み化」によるサービス品質の継続的向上とクロスセル増大、「メディア化推進」に向けた生成AI導入による品質向上と融合、そして「メディアデータ付加価値創出」を通じたオペレーション効率化と高付加価値化を重点的に推進しています。あわせてM&Aを活用した成長戦略を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ポジション(ポスト)が人を育てる」という方針に基づき、社員一人ひとりの強みを活かし、年齢や性別、雇用形態にとらわれない平等な人事評価と積極的な管理職登用を推進しています。また、リモートワークやコアタイム制などの柔軟な働き方を整備するとともに、外部連携を通じたマネジメント層の育成強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 33.2歳 3.9年 5,390,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 39.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.0%
男女賃金差異(正規雇用者) 82.0%
男女賃金差異(非正規雇用者) -


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員の女性比率(61%)、正規雇用者の元非正規雇用者率(5%)、管理職の元非正規雇用者率(3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金利変動リスク


同社グループは、今後の事業投資やM&A等の実行に際して金融機関からの借入を活用する可能性があります。その際、金融市場の動向による金利水準の変動が生じた場合、資金調達コストが増加し、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) AIの技術革新に伴うサービスへの影響


同社のインターネット活用サービスにおいて、生成AI等の技術革新は急速に進展しています。これら新技術の導入や対応への遅れが生じた場合や、AIに対する法規制、外部サービスの利用規約変更等への対応が迅速に行えなかった場合、競争力の低下を招く可能性があります。

(3) 情報管理及びサイバー攻撃リスク


顧客の未公開情報や個人情報等の機密情報を取り扱うため、不正アクセスやマルウェアなどのサイバー攻撃(標的型攻撃等)によりシステム障害や情報漏洩が発生した場合、企業としての信頼性が低下し、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) メディア各社及びインフルエンサー等との関係


デジタルPR事業において、メディアやインフルエンサーとの広範かつ親密なネットワークは重要な事業インフラです。情報の誤提供や競合との競争激化によってこれらの関係者との信頼関係が低下した場合、効果的なサービスの提供が困難になり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。