記事タイトル:「ジェイリース転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、ジェイリース株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジェイリースってどんな会社?
ジェイリースは家賃債務保証を主力とし、不動産、IT事業も展開する企業です。
■(1) 会社概要
2004年に大分県で賃貸保証センターとして設立され、家賃債務保証業を開始しました。2005年にジェイリースへ商号変更し、2011年には大分と東京の2本社体制へ移行しています。2016年に東京証券取引所マザーズに上場後、2018年に市場第一部へ市場変更しました。近年はITや不動産分野の子会社化を進めています。
現在の従業員数は連結で576名、単体で451名です。筆頭株主は創業者の中島拓氏が株式を保有する資産管理会社のJLホールディングスで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。第3位には創業者の同氏が個人として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| JLホールディングス | 23.70% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.70% |
| 中島 拓 | 4.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は中島拓氏、代表取締役社長CEOは中島土氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中島 拓 | 代表取締役会長 兼 会長執行役員 | 1980年拓成に入社。2001年情報大分代表取締役を経て、2004年に同社代表取締役社長兼最高執行役員に就任。2023年に代表取締役会長CEOとなり、2026年より現職。 |
| 中島 土 | 代表取締役社長 兼 社長執行役員CEO | 2004年アコムに入社。拓成常務取締役等を経て、2011年に同社顧問として参画。その後、取締役副社長や事業本部長などを歴任し、2026年より現職。 |
| 衞藤 秀樹 | 取締役副社長 兼 副社長執行役員審査本部長 | 1980年大分銀行に入行し、支店長や取締役本店営業部長等を歴任。2020年に同社取締役副社長兼副社長執行役員渉外担当に就任し、2026年より現職。 |
| 吉田 安弘 | 取締役副社長 兼 副社長執行役員事業本部長 | 1982年豊和銀行に入行し、支店長や執行役員等を歴任。2013年に同社取締役兼執行役員営業推進本部長として参画後、2026年より現職。 |
| 中島 重治 | 取締役専務 兼 専務執行役員CFO経営企画本部長兼財務経理本部長 | 1995年ニッシンに入社し、経理部長等を歴任。2010年に同社執行役員経営管理本部長として参画後、取締役専務等を経て、2026年より現職。 |
| 田中 秀幸 | 取締役専務 兼 専務執行役員IT・システム本部長 | 1982年大分銀行に入行し、システム部長や常務取締役等を歴任。大分リース代表取締役社長を経て、2022年に同社取締役に就任し、2023年より現職。 |
社外取締役は、渡邊博子(大分大学理事・副学長)、佐藤俊明(元豊和銀行取締役)、印東大祐(公認会計士・税理士)、前嶋幸子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「保証関連事業」「不動産関連事業」「IT関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 保証関連事業
同事業では、賃貸住宅や事業物件における家賃債務保証サービスを中核とし、医療機関向けの医療費保証や、ひとり親世帯向けの養育費保証などを提供しています。不動産事業者や医療機関等の与信機能を強化し、収入の安定化を支援しています。
収益は、入居希望者などの保証委託者から受け取る保証料や、家賃収納の代行業務に伴う利用手数料が主な柱です。本事業の運営は、主に親会社であるジェイリースおよび子会社のK-netが中心となって行っています。
■(2) 不動産関連事業
日本国内で住居を探す外国籍の人々に対する賃貸仲介業務や、不動産オーナーからの受託による賃貸管理業務、買取再販などの不動産賃貸業務を提供しています。また、海外投資家による国内不動産への投資仲介も手掛けています。
収益は、顧客との媒介契約に基づく物件の契約成立や引渡し時の仲介手数料、および不動産の売買・賃貸による収入で構成されています。本事業の運営は、子会社であるあすみらいが担っています。
■(3) IT関連事業
社会・経済の発展と環境保全の両立を目指し、水質検査や大気検査などの環境分析業務を支援するシステムの開発・販売を行っています。また、ソフトウェアの受託開発や、医療機関・介護施設向けシステムの提供も行っています。
収益は、環境検査システムやパッケージソフトの販売代金、およびソフトウェア開発の受託に伴う開発費用から得ています。本事業の運営は、子会社であるエイビスが担っています。
■(4) その他
報告セグメントに含まれない事業として、大分県を拠点とするサッカーチームの運営事業と、各種プロモーションを支援する総合広告事業を展開しています。同社グループのマーケティング機能強化にも寄与しています。
収益は、サッカーチーム運営に伴うスポンサー収入やグッズ販売収入、および広告サービスの提供に対する対価によって構成されています。運営は、ジェイリースフットボールクラブとエイエフビイがそれぞれ担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が92億円から216億円へと右肩上がりで成長を続けており、それに伴い経常利益も19億円から36億円へと順調に拡大しています。利益率は16.6%から22.5%の範囲で安定的に推移しており、底堅い収益基盤を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 92億円 | 110億円 | 132億円 | 173億円 | 216億円 |
| 経常利益 | 19億円 | 25億円 | 26億円 | 31億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | 21.2% | 22.5% | 19.7% | 17.9% | 16.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 17億円 | 18億円 | 23億円 | 26億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の成長に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は約68%で安定しています。営業利益率も約17〜18%を維持しており、着実な利益成長を実現しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 173億円 | 216億円 |
| 売上総利益 | 117億円 | 146億円 |
| 売上総利益率(%) | 67.7% | 67.7% |
| 営業利益 | 31億円 | 36億円 |
| 営業利益率(%) | 18.0% | 16.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が25億円(構成比23%)、貸倒引当金繰入額が16億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の保証関連事業は、首都圏での営業強化や子会社化の効果により売上が大幅に増加し、収益を牽引しています。また、不動産関連事業は買取再販が好調に推移し、IT関連事業も採算性の高い案件の獲得により増収に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 保証関連事業 | 152億円 | 193億円 |
| 不動産関連事業 | 3億円 | 7億円 |
| IT関連事業 | 17億円 | 15億円 |
| その他 | - | 1億円 |
| 連結(合計) | 173億円 | 216億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、営業で利益を出しつつ借入によって積極的な投資を行っている「積極型」の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 21億円 | 9億円 |
| 投資CF | -13億円 | -16億円 |
| 財務CF | 1億円 | 10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は37.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「私たちは、社会の安定と発展に貢献する責任を自覚し、公正かつ誠実な企業活動を基盤とした創造的なサービスの提供を通して、全社員と私たちに関わる全ての人の幸せを追求します。」という企業理念を掲げています。社会の発展やステークホルダーの幸福追求を事業の根幹に据えています。
■(2) 企業文化
同社は「誰もが自分の人生をまっとうできる社会をつくる」を未来ビジョンとして掲げています。市場の環境変化に対応する柔軟性と実行力を発揮し、さまざまな企業との提携等を通じて各種サービスを充実させることで、家賃保証にとどまらない金融インフラとして企業価値を高めていく文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画において、主力事業の堅調な拡大や子会社化等により、1年前倒しで計画を達成しています。2027年3月期は、新たな数値目標を設定して事業を推進しています。
* 売上高:249億円
* 営業利益:39億円
* 営業利益率:15.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存店舗網や地域密着の強みを活かし、首都圏や大型オフィス・商業施設への積極展開による売上拡大を目指しています。また、AI分析を用いた与信審査モデルの高度化により貸倒コストを抑制しつつ、既存事業のノウハウを活かした新サービス開発やM&Aを通じた事業領域の拡大に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員一人ひとりを最大の資産と捉え、「全社員採用」を掲げてリファラル採用やアルムナイ採用を推進しています。能力と成果に基づく公正な評価や多様な働き方の支援を行うとともに、人事制度改革や労働環境の改善、健康経営の推進を重点テーマとして、エンゲージメントと生産性の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.2歳 | 7.2年 | 5,709,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.2% |
| 男性育児休業取得率 | 70.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 89.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 賃貸不動産市場の動向
同社の主力である家賃債務保証事業は、国内賃貸不動産市場の影響を受けます。人口減少や少子高齢化、経済状況の悪化により空室率の上昇や賃料水準の低下などが生じた場合、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 家賃債務保証業界における競合
住居用賃料保証において大小さまざまな競合他社が存在し、不動産管理会社による保証サービスの提供も行われています。他社による新商品や新たなサービスの提供、価格競争の激化により優位性が失われた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 信用リスクと代位弁済の増加
賃借人の家賃不払い等が発生した際、賃貸人に対して代位弁済を行っています。経済環境や雇用環境が著しく悪化し、賃借人の支払能力に影響が及んだ場合、代位弁済の増加や回収率の低下、貸倒引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
■(4) 法的規制の変更
家賃債務保証業務に関する法的規制として、住宅セーフティネット法等の改正による認定制度が創設されています。今後、既存法令の改正や新たな法整備等によって業務に対する規制が強化された場合、事業内容や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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