ジェイリース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイリース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の同社は、家賃債務保証事業を中核に、不動産関連事業やIT関連事業を展開しています。第22期の連結業績は売上高173億円、経常利益31億円となり、主力の保証事業の拡大やIT企業のグループ化により増収増益を達成しました。


#記事タイトル:「ジェイリース転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、ジェイリース株式会社の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジェイリースってどんな会社?


家賃債務保証を主力とする企業です。医療費や養育費の保証に加え、不動産仲介やIT事業も展開しています。

(1) 会社概要


2004年に大分県で設立され、賃貸不動産における家賃債務保証業を開始しました。2016年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2018年には市場第一部へ市場変更しました。2024年4月には株式会社エイビスの全株式を取得して完全子会社化し、新たにIT関連事業を報告セグメントに追加しています。

連結従業員数は508名(単体437名)です。筆頭株主は同社代表取締役会長が株式を保有する資産管理会社のJLホールディングス株式会社で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は創業者の代表取締役会長CEO中島拓氏です。

氏名 持株比率
JLホールディングス 23.70%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.10%
中島 拓 4.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表者は代表取締役会長CEOの中島拓氏と、代表取締役社長COOの中島土氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
中島 拓 代表取締役会長CEO 1980年拓成入社。2004年同社代表取締役社長兼最高執行役員。2023年より現職。ジェイリースフットボールクラブ代表取締役クラブオーナーを兼任。
中島 土 代表取締役社長COO 2004年アコム入社。2012年同社取締役常務。経営管理、審査、コンプライアンス担当等を歴任し、2024年より現職。
衞藤 秀樹 取締役副社長 1980年大分銀行入行。同行取締役等を歴任。2020年同社取締役副社長兼副社長執行役員。2022年4月より財務経理本部長。
Yoshida Yasuhiro 取締役副社長 1982年豊和銀行入行。同行執行役員を経て2013年同社取締役。事業本部長や審査本部長を歴任し、2023年10月より現職。
中島 重治 取締役専務CFO 1995年ニッシン入社。2010年同社執行役員。経営企画本部長等を歴任し、2025年6月より現職。JLM代表取締役を兼任。
田中 秀幸 取締役専務 1982年大分銀行入行。同行常務取締役、大分リース社長を経て2022年同社取締役。2023年6月よりIT・システム本部長。
山﨑 裕治 取締役常務 1980年電通入社。電通沖縄社長等を経て2020年同社入社。2021年取締役常務。2024年10月より総務本部長兼人財戦略本部長。
領下 速人 取締役 1993年アコム入社。2007年同社入社。総務部長、法務部長等を歴任し、2023年取締役。2024年10月より総務本部副本部長等。


社外取締役は、堂下浩(現東京情報大学教授)、清水宏美(特定非営利活動法人女性自立の会理事長)、朝倉洋一郎(元大樹生命保険入社)、印東大祐(公認会計士)、飯渕裕(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「保証関連事業」「不動産関連事業」「IT関連事業」を展開しています。

保証関連事業


家賃債務保証、医療費保証、養育費保証などを提供しています。家賃債務保証は住居、事業用、駐車場等に対応し、賃借人の信用補完とオーナーへの賃料収入安定化を図ります。医療費保証は入院費等の立替払いを、養育費保証はひとり親世帯への養育費立替を行います。

収益は、賃借人から受領する保証料が主な源泉です。運営は主にジェイリースが行っていますが、連結子会社のJLMも保証関連事業を行っています。

不動産関連事業


主に日本国内で住居を探す外国籍の方に対する賃貸仲介業務、不動産オーナーからの賃貸管理を受託する賃貸管理業務、および不動産賃貸業務を行っています。また、海外投資家による日本国内への不動産投資の仲介も手掛けています。

収益は、顧客からの仲介手数料や管理料、賃料収入などです。運営は、連結子会社のあすみらい株式会社が行っています。

IT関連事業


環境検査システムの販売、ソフトウェアの受託開発、医療機関・介護施設向けシステムの販売などを事業として行っています。

収益は、システムやソフトウェアの販売代金、開発受託費などです。運営は、連結子会社の株式会社エイビスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに増加基調を維持しており、増収増益のトレンドが続いています。特に直近では売上高が大きく伸長しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 76億円 92億円 110億円 132億円 173億円
経常利益 9億円 19億円 25億円 26億円 31億円
利益率(%) 12.0% 21.2% 22.5% 19.8% 17.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 14億円 17億円 18億円 23億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。一方で、販売費及び一般管理費も増加していますが、営業利益は前期を上回る結果となりました。売上高の成長がコスト増加を吸収し、利益拡大に寄与している構造が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 132億円 173億円
売上総利益 97億円 118億円
売上総利益率(%) 73.6% 68.4%
営業利益 26億円 31億円
営業利益率(%) 19.7% 18.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が22億円(構成比25%)、貸倒引当金繰入額が10億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の保証関連事業は、住居用・事業用の拡大や医療費保証の伸長により大幅な増収増益となりました。不動産関連事業は減収となり営業損失を計上しました。新たに連結されたIT関連事業は、ソフトウェア販売等の好調により収益に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
保証関連事業 128億円 152億円 26億円 31億円 20.6%
不動産関連事業 4.4億円 2.9億円 0.3億円 -0.4億円 -13.1%
IT関連事業 - 17億円 - 0.3億円 1.8%
調整額 -0.1億円 -1.3億円 - -0.2億円 -
連結(合計) 132億円 173億円 26億円 31億円 18.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動によるキャッシュ・フローがプラスである一方、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 14億円 21億円
投資CF -3.5億円 -13億円
財務CF -8億円 1.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は39.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、社会の安定と発展に貢献する責任を自覚し、公正かつ誠実な企業活動を基盤とした創造的なサービスの提供を通して、全社員と私たちに関わる全ての人の幸せを追求します。」という企業理念を掲げています。また、「誰もが自分の人生をまっとうできる社会をつくる」を未来ビジョンとしています。

(2) 企業文化


同社は「地域密着」で培ってきた情報力・対応力を最大限に発揮し、深い信頼関係を築くことを重視しています。市場環境の変化や顧客ニーズに合わせて柔軟に対応し、新たな事業展開を図る姿勢を持っています。また、全社員採用や理念経営の実践を通じて、共に働く仲間を増やし、社員一人ひとりの成長を促す風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループでは、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を公表しており、主力事業の拡大等により計画を上回る見込みとしています。2026年3月期の数値目標として以下を設定しています。

* 売上高:210億円
* 営業利益:35億円
* 営業利益率:16.7%

(4) 成長戦略と重点施策


「利益の拡大」「リスクコントロール」「事業領域の拡大」等を重点課題としています。既存店舗網を活かした営業展開や首都圏強化、大型オフィス等への積極展開に加え、医療費保証等の新収益基盤も拡大させます。また、AI分析を用いた与信審査の高度化やDXの推進、M&Aも含めた事業領域の拡大に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「全社員と私たちに関わる全ての人の幸せを追求する」理念のもと、人的資源の最大化を目指しています。全社員によるリクルーティング(全社員採用)や多様な働き方の推進により優秀な人材を獲得・育成する方針です。また、理念浸透やマネジメント研修を通じた教育、健康経営の推進など、働きやすい環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.4歳 6.9年 5,612,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.8%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.6%
男女賃金差異(正規) 73.0%
男女賃金差異(非正規) 43.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 賃貸不動産市場の動向


主力事業である家賃債務保証は国内賃貸不動産市場の影響を受けます。人口減少や経済悪化により、空室率上昇や賃料低下、持ち家率の変化、貸家着工減少などが生じた場合、またオフィス等の開業・転居の手控えが起こった場合、グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 家賃債務保証業界の競争激化


同社が属する業界は、特に住居用賃料保証において多数の競合が存在し、不動産管理会社によるサービス提供も含め競争が激化しています。AI分析等による差別化を図っていますが、他社の新商品や価格競争により優位性が失われた場合、グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制の変更


現在は家賃債務保証業務を制限する直接的な法的規制はありませんが、国土交通省の登録制度に基づき登録しています。今後、住宅セーフティネット法改正等の法令改正や新たな規制導入により、業務への対応が求められたり規制が強化されたりした場合、事業内容や経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 協定代理店経由の契約依存


同社は業務協定を結んだ不動産事業者を介して賃借人と保証委託契約を締結しており、これが主な収入源です。取引先は分散されていますが、不動産事業者からの紹介が減少した場合、グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。