西日本フィナンシャルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

西日本フィナンシャルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

西日本フィナンシャルホールディングスは東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場し、銀行業務を中心に多様な金融サービスを提供する持株会社です。直近の業績では、資金運用収益の増加等により経常収益が大幅に拡大し、経常利益および当期純利益ともに前期比で増益の好調な業績トレンドを示しています。


※本記事は、株式会社西日本フィナンシャルホールディングスの有価証券報告書(第10期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 西日本フィナンシャルホールディングスってどんな会社?


西日本フィナンシャルホールディングスは九州を地盤に銀行業務など多様な金融サービスを展開する持株会社です。

(1) 会社概要


西日本フィナンシャルホールディングスは2016年10月に、西日本シティ銀行、長崎銀行、西日本信用保証の共同株式移転により持株会社として設立され、同時に東京証券取引所および福岡証券取引所に上場しました。その後、九州カードや西日本シティTT証券などを連結子会社化し、総合金融グループとしての体制を構築しています。近年ではシティアスコムの連結子会社化なども行っています。

同社グループの従業員数は連結で4,252名、単体では7名体制となっています。筆頭株主および第2位株主は資産管理業務などを行う信託銀行であり、第3位株主には福岡県を拠点とする事業会社の麻生が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.74%
日本カストディ銀行(信託口) 9.45%
麻生 2.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は村上英之氏が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
谷川 浩道 取締役会長(代表取締役) 1976年大蔵省入省。財務省横浜税関長などを経て、2011年西日本シティ銀行入行。2014年頭取。2016年より同社社長等を歴任し、2024年より現職。
村上 英之 取締役社長(代表取締役) 1983年西日本相互銀行(現西日本シティ銀行)入行。人事部長、総合企画部長などを経て2021年西日本シティ銀行頭取。同年より同社社長に就任し現職。
入江 浩幸 取締役執行役員 1981年西日本相互銀行入行。本店営業部長などを経て2020年西日本シティ銀行副頭取。2016年同社取締役などを経て2023年より現職。
竹尾 祐幸 取締役執行役員 1983年福岡相互銀行(現西日本シティ銀行)入行。総務部長等を経て2021年同行副頭取。2024年より同社取締役執行役員に就任し現職。
本田 隆茂 取締役執行役員 1988年西日本銀行(現西日本シティ銀行)入行。総合企画部長等を経て2024年同行専務。2021年同社取締役執行役員に就任し、2026年より現職。
伊東 知子 取締役監査等委員(常勤) 1988年西日本銀行入行。融資統括部長、リスク統括部長などを経て2022年西日本シティ銀行監査等委員。2024年より現職。


社外取締役は、藤岡博(電源開発取締役監査等委員)、久保千春(中村学園大学学長)、宮本佐知子(金融エコノミスト)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業


西日本シティ銀行および長崎銀行が中心となり、預金業務、貸出業務、為替業務のほか、有価証券投資や投資信託・保険商品の窓口販売業務などを展開しています。地域に根ざした多様な金融商品やサービスを提供し、顧客の資産形成や資金調達を支援しています。

収益は主に預金者や市場から調達した資金の運用による資金運用収益や、金融サービスの提供に対する役務取引等収益から得ています。事業の運営は西日本シティ銀行と長崎銀行が担っています。

その他


銀行業務の枠を超え、グループの総合力を高めるための金融関連業務や情報システムサービスなどを展開しています。顧客の多様なニーズに応えるべく、クレジットカード業務や信用保証、経営コンサルティング、債権管理回収などを手がけています。

収益はクレジットカードの決済手数料や保証料、コンサルティング報酬、システムの利用料など多岐にわたる名目で顧客から受け取っています。運営は九州カード、西日本信用保証、NCBリサーチ&コンサルティング、シティアスコムなどの関連会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、経常利益は安定的に推移し、直近2期間で大幅な増益を達成しています。当期利益についても底堅く推移していますが、当期は前期の伸びから一転して減益となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 379億円 337億円 356億円 455億円 588億円
当期利益(親会社所有者帰属) 72億円 90億円 99億円 180億円 147億円

(2) 損益計算書


営業利益は前期と比較して減少しており、減益傾向となっています。一方、経常利益ベースでは増益となっている点が特徴です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 188億円 154億円

(3) セグメント収益


セグメント別の収益動向を見ると、主力である銀行業の売上が大きく伸長しており、全体の大幅な増収を牽引しています。また、その他事業についても堅調に推移し、増収に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行業 1,721億円 2,220億円
その他 244億円 249億円
連結(合計) 1,964億円 2,469億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -5,522億円 -657億円
投資CF 38億円 -2,059億円
財務CF -107億円 -130億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も4.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちは、高い志と誇りを持って時代の変化に適応し、お客さまとともに成長する総合力№1の地域金融グループを目指します」というグループ経営理念を掲げています。地域に根ざす総合金融グループとして、持株会社体制のもとでグループ総合力を一段と進化させ、「地域経済へのさらなる貢献」と「グループ企業価値の最大化」を目指しています。

(2) 企業文化


グループブランドスローガンとして「ココロがある。コタエがある。」を掲げ、顧客との強い信頼関係を基盤とした文化を大切にしています。また、「お客さま・地域の期待を超えた総合金融サービスの展開」と「グループ経営管理態勢とリスク管理態勢の高度化」という2つのグループ経営戦略を軸に、地域社会の持続的な発展に貢献する価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年4月から2029年3月までの中期経営計画「未来共創2029~ともに歩む、未来を拓く~」を展開し、「お客さま・地域・従業員・株主から最も支持され、選ばれる地域金融グループ」を目指しています。

* 連結当期純利益:600億円(うち西日本シティ銀行以外55億円)
* 連結ROE:9%程度
* 連結OHR:50%台前半
* 連結自己資本比率:10%台前半

(4) 成長戦略と重点施策


長期的な目標の実現に向け、「お客さま起点の"One to Oneソリューション"の提供」「地域振興戦略」「経営基盤強化戦略」の3つの基本戦略を展開しています。企業や個人へのソリューション提供やベストミックスチャネルの構築を図るほか、地域の課題解決やまちづくり、スタートアップ支援に注力しています。また、AI活用による業務変革や人的資本の強化なども進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画において「人的資本の強化」を重点施策に掲げ、職員一人ひとりの成長を後押ししています。コンサルティング・DX・企画等の各分野において将来を担う「戦略人財」の育成を強化し、階層別・業務別研修やリスキリングを推進しています。また、人事制度の改定や処遇改善、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を通じて、働きがいのある職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.6歳 21.5年 9,742,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.0%
男性育児休業取得率 111.9%
男女賃金差異(全労働者) 47.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 65.5%
男女賃金差異(非正規雇用者) 51.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、コンサルティング人財のコア人財育成人数(252人)、DX人財のスペシャリスト育成人数(112人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 貸出先の信用悪化や地域経済に依存するリスク


貸出先の信用力の悪化や担保価値の大幅な下落が発生した場合、想定外の償却や貸倒引当金の積み増しなどにより信用コストが増加する可能性があります。また、同社グループの総与信額の約8割が福岡県の貸出先に集中しているため、同地域の経済情勢の悪化や大規模な自然災害が発生した場合には、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金利および有価証券価格の変動リスク


同社グループの主たる収益源は資金運用と資金調達による利鞘収入であるため、資金の運用・調達における金額や期間のミスマッチが存在する中で金利が変動した場合、利鞘が縮小するリスクがあります。また、保有する市場性のある株式や債券などの有価証券についても、価格の下落により減損または評価損が発生する可能性があります。

(3) サイバー攻撃等によるシステム障害リスク


同社グループは高度なコンピュータ情報処理システムに依存して業務を運営しており、システムの安定稼働とサイバーセキュリティの強化に努めています。しかし、巧妙化するサイバー攻撃によるサービス停止、データの改ざん、情報漏洩や不正送金などが発生した場合、損害賠償や信用低下が生じ、業務運営に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。