シンクロ・フード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シンクロ・フード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。飲食店向けのメディアプラットフォーム事業およびM&A仲介事業を展開しています。2025年3月期の業績は、売上高が前期比9.7%増、営業利益が5.7%増となり、主力サイトの登録ユーザー数増加やM&A仲介の成約進捗により増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社シンクロ・フード の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シンクロ・フードってどんな会社?


飲食店の出店・運営・退店を支援する「飲食店ドットコム」等のメディアプラットフォームを運営する企業です。

(1) 会社概要


2003年に設立され、飲食店の出店開業・運営支援サイト「飲食店.COM」を開設しました。2016年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2017年には市場第一部へ変更、2018年には株式会社ウィットを子会社化しています。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

2025年3月31日時点の従業員数は、連結で203名、単体で189名です。筆頭株主は事業会社のエイトクラウズで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者の藤代真一氏です。エイトクラウズと藤代氏の持株比率を合わせると一定の影響力を有しています。

氏名 持株比率
エイトクラウズ 9.37%
NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE NON TREATY CLIENTS ACCOUNT(常任代理人)香港上海銀行 7.20%
藤代 真一 6.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役 兼執行役員社長 兼事業部長は藤代真一氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
藤代 真一 代表取締役 兼執行役員社長 兼事業部長 1999年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。2003年同社設立し代表取締役就任。2019年より現職。
森田 勝樹 取締役 兼執行役員管理部長 1999年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。2003年同社社外取締役。2015年より現職。
大久保 俊 取締役 兼執行役員開発部長 2005年ミツカングループ本社入社。2008年同社入社。2015年執行役員開発部長を経て、2018年より現職。
中川 二博 取締役 1984年リクルート入社。同社執行役員、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員などを歴任。2017年同社社外取締役を経て、2019年より現職。


社外取締役は、松崎良太(サードギア代表取締役)、永井美保子(EdgeBridge代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディアプラットフォーム事業」および「M&A仲介事業」事業を展開しています。

(1) メディアプラットフォーム事業


主力サイト「飲食店ドットコム」を中心に、飲食店の求人、店舗物件情報、食材仕入先探し、厨房備品購入などのマッチングサービスを提供しています。飲食店事業者や、開業を目指すユーザー、不動産・内装・食材などの関連事業者を対象としています。

収益は、求人広告や店舗物件情報の掲載料、インターネット調査費用、ビジネスマッチングに伴う成功報酬、月額課金サービスの利用料などから得ています。運営は主にシンクロ・フードが行っています。

(2) M&A仲介事業


飲食店の事業譲渡や株式譲渡等のM&A仲介、および飲食店が設備等を残したまま退去する際の居抜き譲渡のサポートサービスを行っています。店舗の売却査定や売却先の検索、M&Aのサポートなどを提供しています。

収益は、事業譲渡または株式譲渡の完了時点、あるいは居抜き譲渡の完了時点で発生する成功報酬を手数料として受け取っています。運営は、シンクロ・フードおよび子会社のウィットが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5期間で継続的に増加しており、特にここ数年は成長が続いています。利益面では、一時的な赤字期間があったものの、その後は急速に回復し、高い利益率を維持しながら黒字幅を拡大しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 12億円 20億円 29億円 36億円 40億円
経常利益 -1.6億円 4.5億円 8.8億円 10.4億円 10.9億円
利益率(%) -13.2% 23.1% 30.0% 28.8% 27.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.8億円 3.4億円 6.0億円 7.0億円 6.0億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、高い利益率を維持しています。営業利益も増加傾向にあり、収益性の高い事業構造が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 36億円 40億円
売上総利益 30億円 32億円
売上総利益率(%) 83.9% 82.0%
営業利益 10億円 11億円
営業利益率(%) 28.8% 27.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が10億円(構成比46%)、広告宣伝費が2億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


メディアプラットフォーム事業は、ユーザー数の増加により堅調に推移し、売上高が増加しました。M&A仲介事業は、成約が安定的に進捗したことで大幅な増収増益となり、前年の赤字から黒字転換を果たしました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
メディアプラットフォーム事業 34億円 36億円 10億円 10億円 27.1%
M&A仲介事業 2.0億円 3.3億円 -0.1億円 1.0億円 30.0%
調整額 - -0億円 0.0億円 0.2億円 -
連結(合計) 36億円 40億円 10億円 11億円 27.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**積極型**: 営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7.4億円 4.4億円
投資CF -5.3億円 -0.1億円
財務CF 0.5億円 3.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「多様な飲食体験から生まれるしあわせを、日本中に、そして世界へと広げる。」をビジョンとして掲げています。インターネットとテクノロジーを活用し、飲食店の出店開業・運営に必要な「ヒト・モノ・サービス」をタイムリーに結びつけることで、飲食業界の労働生産性を向上させ、業界全体の発展と成長に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ミッション」「バリュー」を体現し、食品ロスや環境配慮などSDGsへの意識を高めることにも向き合っています。サステナビリティを重要な経営課題と位置づけ、リスク・コンプライアンス委員会を通じて個々の課題への取り組みを推進するなど、事業を通じて持続可能な世の中を作ることを基本方針としています。

(3) 経営計画・目標


革新的な食のプラットフォームを目指し、既存コア事業の強化・拡大と、新たな成長に向けた新規領域への挑戦を通じて企業価値向上を実現することを基本戦略としています。新中期経営計画の着実な実行と、非連続成長に向けた取り組みの推進を経営方針に掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「飲食店ドットコム」のリブランディングやコンテンツ拡充、Webマーケティングへの投資により知名度向上とユーザー獲得を目指しています。また、新技術への適時対応やシステム安定稼働のための強化、市場変化に即応できる経営管理体制とコンプライアンスを重視した内部管理体制の整備に注力し、ビジョンの実現と事業成長を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人ひとりが力を発揮できるよう、キャリアプランを支援する育成機会や、属性にとらわれない挑戦の機会を提供しています。ミッショングレード制による報酬体系や人材開発会議を通じた適切な仕事の提供、管理職研修を実施しています。また、フレックスタイム制、時間単位有給、リモートワーク、副業推進など、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 32.9歳 4.7年 5,680,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.7%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 飲食店支援市場について


同社グループは飲食店の出店から退店までをサポートし、景気動向による影響を最小化するポートフォリオを組んでいますが、飲食業界全体の市場縮小が起きた場合、ユーザー数が拡大しないなど、事業や業績に影響を与える可能性があります。

(2) インターネット関連市場について


メディアプラットフォーム事業の成長にはインターネットの発展が重要ですが、新たな法的規制や技術革新の遅れなど予期せぬ要因により市場成長が鈍化し、ユーザー数が拡大しない場合、事業や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 技術革新について


インターネット業界では新技術やサービスが次々と生まれており、これらに対応する必要があります。予期しない技術革新への対応に支障が生じた場合、システムの改良や新たな開発費用が発生し、事業や業績に影響を与える可能性があります。

(4) 新規事業について


メディアプラットフォーム運営企業として常に新しいサービス展開を検討していますが、新規事業が計画通りに推移せず投資回収ができない場合、事業や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。