シンクロ・フード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シンクロ・フード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シンクロ・フードは東京証券取引所プライム市場に上場し、飲食業界に特化した情報サイト「飲食店ドットコム」などのメディアプラットフォーム事業やM&A仲介、プロパティマネジメント事業を展開しています。直近の業績では、プロパティマネジメント事業の追加等により増収を達成した一方、利益面では減益となっています。


※本記事は、株式会社シンクロ・フードの有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シンクロ・フードってどんな会社?


シンクロ・フードは飲食業界に特化したメディアプラットフォーム運営やM&A仲介、不動産管理を展開しています。

(1) 会社概要


2003年に設立され、飲食店の出店開業や運営支援サイトを開設しました。2016年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2018年にはウィットを子会社化してM&A仲介事業へ進出しました。2025年にはホライズン14などを子会社化し商業用不動産のプロパティマネジメント事業を開始し事業を拡大しています。

同社グループは連結で258名、単体で202名の従業員を擁しています。筆頭株主は海外ファンドであり、第2位株主は取締役会長の藤代真一氏が代表を務める資産管理会社となっています。第3位株主にも海外ファンドが名を連ねており、機関投資家による保有比率が高い株主構成となっています。

氏名 持株比率
AVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLC(常任代理人)みずほ銀行 24.69%
エイトクラウズ 9.62%
LIM JAPAN EVENT MASTER FUND(常任代理人)みずほ銀行 8.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役 兼執行役員社長は大久保俊氏が務めており、社外取締役の比率は37.5%となっています。

氏名 役職 主な経歴
大久保 俊 代表取締役 兼執行役員社長 2005年ミツカングループ本社入社。2008年同社入社後、執行役員開発部長や取締役兼執行役員開発部長を経て、2025年12月より現職。
藤代 真一 取締役会長 1999年アンダーセンコンサルティング入社。2003年同社設立・代表取締役。2015年エイトクラウズ設立・代表取締役。2025年12月より現職。


社外取締役は、松崎良太(サードギア代表取締役)、永井美保子(EdgeBridge代表社員)、坂井一成(アセット・バリュー・インベスターズ・リミテッド日本調査責任者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディアプラットフォーム事業」「M&A仲介事業」「プロパティマネジメント事業」を展開しています。

メディアプラットフォーム事業


飲食店出店予定者や運営者などのユーザーと、不動産や内装事業者などを繋ぐ「飲食店ドットコム」をはじめ、求人や食材仕入先探しなどの情報提供を行うメディアプラットフォームを提供しています。

求人広告や店舗物件情報の掲載料、インターネット調査費用、マッチングにかかる成功報酬などを各事業者から受け取ることで収益をあげています。運営は主にシンクロ・フードが行っています。

M&A仲介事業


飲食店の事業譲渡や株式譲渡などのM&A仲介のほか、飲食店が設備を残したまま退去する居抜き譲渡のサポートサービスを専門的に展開しています。

店舗の売却を希望する事業者と譲り受けたい事業者との間でのマッチングやM&A成立時に、仲介手数料や成功報酬を受け取ります。運営はウィットやシンクロ・フードが行っています。

プロパティマネジメント事業


商業用不動産領域に特化し、サブリースやレンタルサービス、賃貸管理、ビルメンテナンス、店舗やオフィスの売買・仲介などの各種サービスを提供しています。

入居者からの礼金や保証金のほか、リース物件の賃貸収入、物件仲介における仲介手数料などを収益源としています。運営はイデアルなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は事業領域の拡大などにより毎期連続で成長を続けています。一方、利益面では求人広告サービスの構造的な変化や子会社化に伴う費用計上などの影響もあり、直近は経常利益や当期利益が減少し、利益率も低下する傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 20億円 29億円 36億円 40億円 55億円
経常利益 5億円 9億円 10億円 11億円 6億円
利益率(%) 23.1% 30.0% 28.8% 27.5% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 6億円 7億円 7億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、増収により売上総利益の金額は増加していますが、原価の増加幅が大きく売上総利益率は低下しています。また、販売費及び一般管理費の増加も影響し、営業利益は減益となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 40億円 55億円
売上総利益 32億円 35億円
売上総利益率(%) 82.0% 63.2%
営業利益 11億円 7億円
営業利益率(%) 27.8% 12.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が12億円(構成比42%)、広告宣伝費が3億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


メディアプラットフォーム事業は、求人広告での市況影響や商品ニーズの変化により減収減益となっています。M&A仲介事業も案件成約の長期化などが影響し減益です。一方、新たに連結に加わったプロパティマネジメント事業が売上全体を大きく牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
メディアプラットフォーム事業 36億円 34億円 10億円 6億円 17.0%
M&A仲介事業 3億円 3億円 1億円 1億円 24.2%
プロパティマネジメント事業 - 18億円 - 0.2億円 1.0%
連結(合計) 40億円 55億円 11億円 7億円 12.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは積極型といえます。営業CFは安定してプラスを維持しつつ、プロパティマネジメント事業を担う子会社取得などの積極的な投資を行っており、それに伴う借入等で財務CFもプラスとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4億円 9億円
投資CF -0.1億円 -41億円
財務CF 4億円 19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「多様な飲食体験から生まれるしあわせを、日本中に、そして世界へと広げる。」をビジョンに掲げています。インターネットやテクノロジーの力を最大限に活用し、飲食店の出店開業・運営に必要な「ヒト・モノ・サービス」をタイムリーに結びつけることで、飲食業界の労働生産性を向上させ、さらなる発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティを重要な経営課題と位置づけています。ビジョンのもと「ミッション」「バリュー」を体現し、食品ロスや食糧生産、地球環境への配慮など、食の側面からSDGsへの意識を高めながら、事業を通して持続可能な社会を作っていくことを基本方針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は「多様な飲食体験から生まれるしあわせを、日本中に、そして世界へと広げる」というビジョンのもと、創業以来注力してきた店舗ビジネス関連領域を最重要テーマと位置づけています。事業規模の拡大に向け、以下の数値目標を掲げています。

* 2030年3月期 連結売上高 100億円
* 2030年3月期 連結営業利益 30億円

(4) 成長戦略と重点施策


革新的な食のプラットフォームを目指し、既存コア事業の強化・拡大と新規領域への挑戦を進めます。具体的には、オウンドメディアの展開や広告投資による認知度向上、生成AIなどの新技術への適時な対応と新サービス開発を推進します。また、アクセス増や会員数増加に対応するシステムの安定稼働や、経営管理体制の強化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ビジョンやミッションの体現のため、社員一人ひとりが持てる力を存分に発揮できる環境を重視しています。人事部門だけでなく管理職や経営層が社員に向き合い、キャリアプランを支援する育成機会を提供しています。年次や年齢、性別にとらわれない挑戦の機会を設け、フレックスタイム制やリモートワークなど柔軟な働き方を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 33.7歳 5.2年 5,642,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.9%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は従業員規模等の理由により男性育児休業取得率および男女賃金差異について公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 飲食店支援市場の縮小


同社グループは飲食業界に特化したサービスを展開しており、出店から退店までを包括的にサポートする事業ポートフォリオを組んでいます。しかし、景気動向等の影響で日本における飲食店支援市場全体が縮小した場合には、プラットフォームのユーザー数が拡大せず、業績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 特定サービスへの収益依存


同社の連結売上高において、「求人飲食店ドットコム」から生ずる求人広告収入が大きな割合を占めています。同社は他サービスの拡充を図っていますが、景気動向や飲食業界の雇用情勢の変化、競合の動向等により当該サービスの成長が鈍化した場合、収益性が低下するリスクがあります。

(3) 検索エンジンへの集客依存


同社が運営するサイトは、特定の検索エンジンからの流入により多くのユーザーを獲得しています。Web広告等の多様な集客施策によるリスク分散に努めていますが、検索エンジンの表示ロジック変更等により検索最適化対策が有効に機能しなくなった場合、サイトへの集客に支障が生じる可能性があります。

(4) 個人情報漏洩とシステム障害


同社は飲食店事業者や求職者の個人情報を取り扱っており、不正アクセス等により情報が流出した場合、損害賠償や信頼低下を招く恐れがあります。また、アクセス急増や自然災害等で予期せぬシステム障害が発生した場合、事業活動が停止し業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。