※本記事は、株式会社イントラスト の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イントラストってどんな会社?
同社は、家賃債務保証を中心に、医療・介護費用や養育費の保証などの総合保証サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
2006年に連帯保証人代行システムの構築を目指して設立されました。2016年に東証マザーズへ上場し、翌年には東証一部へ市場変更を果たしました。その後、2023年にプレミアライフを子会社化、2024年にはラクーンレントを子会社化するなど、M&Aを通じた事業拡大を積極的に進めています。
連結従業員数は201名、単体では183名です。筆頭株主は親会社であるプレステージ・インターナショナルの完全子会社Prestige International(S) Pte Ltd.で、第2位は代表取締役社長の桑原豊氏です。親会社グループの一員として、強固な経営基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Prestige International(S)Pte Ltd.(常任代理人 みずほ証券株式会社) | 56.80% |
| 桑原 豊 | 3.67% |
| 榊原 三郎 | 2.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長執行役員は桑原 豊氏が務めています。取締役6名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 桑原 豊 | 代表取締役社長執行役員 | 1981年INA保険会社入社。1999年エム・ファースト代表取締役。2006年同社設立代表取締役。2015年より現職。 |
| 玉上 進一 | 取締役 | 1986年プレステージ・インターナショナル入社。2022年同社代表取締役社長執行役員グループCEOより現職。 |
| 太田 博之 | 取締役執行役員人材開発部長 | 1999年中央監査法人入所。2014年同社入社。2025年より現職。 |
社外取締役は、山中 正竹(一般財団法人全日本野球協会代表理事会長)、松山 哲人(NANO MRNA株式会社監査役)、網野 麻理(株式会社プライムコム代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「総合保証サービス事業」の単一セグメントですが、サービス別には「保証事業」および「ソリューション事業」を展開しています。
■(1) 保証事業
家賃債務保証を中心に、介護費用保証、医療費用保証、養育費保証を提供しています。家賃債務保証では、賃貸借契約等の締結時に保証委託契約を結び、連帯保証人となることで滞納リスクを引き受けます。商品は画一的なものではなく、提携する不動産管理会社ごとにカスタマイズして提供しています。
収益は、保証委託契約に基づき、契約時および更新時に受領する保証料からなります。運営は主に同社および連結子会社のプレミアライフが行っており、家賃等の滞納発生時には代位弁済を実施し、その後求償債権として回収を図るビジネスモデルです。
■(2) ソリューション事業
家賃債務保証で培ったノウハウを活用し、C&O(コンサル&オペレーション)サービス、Doc-onサービス、保険デスクサービスを提供しています。不動産管理会社等から、入居申込受付、審査、未入金案内、債権管理支援といった業務を一括または個別に受託しています。
収益は、不動産管理会社等から受領する業務受託料や、SMS送信サービスの手数料などからなります。運営は同社が行っており、自社コールセンターやスコアリングモデルに基づく審査システムを活用してサービスを提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
連結業績は、売上高、経常利益ともに増加傾向にあり、順調に成長を続けています。利益率も20%を超える高い水準を維持しており、収益性の高さがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 90億円 | 106億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 23.1% | 22.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。利益率は若干低下しているものの、依然として高い水準を維持しており、安定した収益構造であることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 90億円 | 106億円 |
| 売上総利益 | 44億円 | 50億円 |
| 売上総利益率(%) | 48.8% | 47.1% |
| 営業利益 | 21億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 23.1% | 22.0% |
販売費及び一般管理費のうち、貸倒引当金繰入額が9億円(構成比33%)、給料及び賞与が5億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
保証サービスは大幅な増収となりましたが、ソリューションサービスは減収となりました。保証サービスが全体の成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 保証サービス | 77億円 | 95億円 |
| ソリューションサービス | 12億円 | 10億円 |
| 連結(合計) | 90億円 | 106億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
イントラスト社の当連結会計年度における現金及び現金同等物は増加しました。
営業活動による資金は、主に事業活動による利益の増加や、保証履行に関連する引当金の増加などにより、前年度から大きく増加しました。投資活動による資金は、有形・無形固定資産の取得や投資有価証券の取得による支出があったものの、投資有価証券の償還収入などにより増加しました。財務活動による資金は、配当金の支払いが主な減少要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 15億円 |
| 投資CF | 0.5億円 | 1億円 |
| 財務CF | -4億円 | -5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お客様に三つの価値(喜び、安心、信頼)を提供すること」を経営姿勢として掲げています。総合保証サービス会社として、保証事業及びソリューション事業を通じて、ステークホルダーから常に頼りにされる企業を目指しており、保証に基づく安心を社会インフラとして普及させていく方針です。
■(2) 企業文化
「経営姿勢」として「三つの価値(喜び、安心、信頼)」を提供することを掲げています。また、コンプライアンスを重視し、適正な審査や債権管理を通じて、社会的な信頼を構築することを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2024年5月に中期経営計画を策定しています。重要な指標として、以下の目標値を定めています。
- 2027年3月期目標
- 売上高:150億円
- 営業利益:30億円
- 営業利益率:20.0%
- 配当性向:40~60%
- ROE:20以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「売上の成長」及び「成長を育成する投資」を基本方針としています。保証事業では、家賃債務保証の新規取引先開拓や保証対象の拡充、医療・介護・養育費保証の成長を目指します。ソリューション事業では、DX推進による効率化や金融機関との協業を進めます。また、M&Aによる積極投資や、人材の採用・育成にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員を最大の財産と捉え、「働きがい」をもって仕事を続けられる健全な労働環境の構築を目指しています。即戦力となる中途採用と中長期的な視点での新卒採用をバランスよく行い、組織力の向上を目的とした研修制度の拡充を図る方針です。また、女性管理職研修やオープンポジション制度などを導入し、チャレンジングな組織風土の醸成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.6歳 | 4.2年 | 5,139,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 27.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 53.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 67.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | 80.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 賃貸住宅市場の動向による影響
住宅の賃貸借契約を前提としたサービスを提供しているため、賃貸住宅の着工件数や人口・世帯数の増減などの外部環境の影響を受けます。今後、賃貸住宅戸数の増加傾向が頭打ちとなれば、家賃債務保証の成長率が鈍化する可能性があります。
■(2) 信用リスクと代位弁済
保証委託者の債務不履行時に代位弁済を行うため、立替債権の一部が未回収となるリスクがあります。経済環境の悪化等により立替債権が増加し、貸倒引当金等が想定を超えて計上された場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 大和リビング株式会社との取引関係
大和リビングが管理する物件に関連する売上高が連結売上の6割以上を占めています。同社との取引関係や同社の経営方針に変更が生じた場合、新規契約数の減少等により、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 親会社との関係
親会社であるプレステージ・インターナショナルが議決権の過半数を保有しています。親会社の経営方針の変更などが、同グループの事業展開や意思決定に影響を与える可能性があります。



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