※本記事は、株式会社イントラストの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イントラストってどんな会社?
家賃債務保証を中心に、医療や介護などの幅広い保証サービスと業務受託を展開する企業です。
■(1) 会社概要
2006年に家賃債務保証における連帯保証人の代替制度構築を目指して設立されました。2010年にプレステージ・インターナショナルの連結子会社となり、その後医療や介護分野の保証へ進出しています。2017年の市場変更を経て、近年はM&Aを活用し周辺領域への事業拡大を続けています。
従業員数は連結308名、単体217名体制で事業を推進しています。筆頭株主は親会社でBPO事業を展開するPrestige International(S) Pte Ltd.で、第2位は創業者の桑原豊氏、第3位は個人投資家の榊原三郎氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Prestige International(S) Pte Ltd. | 56.80% |
| 桑原豊 | 3.67% |
| 榊原三郎 | 2.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長執行役員は桑原豊氏が務めており、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 桑原豊 | 代表取締役社長執行役員 | INA保険会社入社。チューリッヒ保険会社日本支社営業部長等を経て、2006年に同社設立、代表取締役に就任。2025年1月より現職。 |
| 太田博之 | 取締役執行役員 | 中央監査法人入所。ジークホールディングス経理部長等を経て、2014年に同社入社。財務経理部長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 玉上進一 | 取締役 | 光伸入社。プレステージ・インターナショナル代表取締役等を歴任。2013年に同社代表取締役に就任し、2015年4月より現職。 |
社外取締役は、山中正竹(全日本野球協会代表理事会長)、松山哲人(NANOホールディングス取締役副会長)、網野麻理(プライムコム代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「総合保証サービス事業」を展開しています。
■(1) 保証サービス
家賃債務保証を中心に、介護費用、医療費用、養育費の保証商品を提供し、顧客の滞納リスクをカバーしています。提携する不動産管理会社ごとに保証内容や業務フローをカスタマイズし、利便性の高いオリジナル商品として提案している点が特徴です。
収益源は、保証委託契約に基づき受領する保証料であり、イントラストおよび子会社のプレミアライフやラクーンレントなどが運営しています。引き受けた滞納リスクを安定した回収力によってコントロールすることで、収益構造の安定化を図っています。
■(2) ソリューションサービス
家賃債務保証で培ったノウハウをもとに、審査、未入金案内、債権管理支援といった関連業務を一括または個別に受託しています。また、SMSを利用した督促や決済サービス、保険募集に係る業務受託なども展開し、管理会社の業務負荷削減に貢献しています。
これらのサービスは主にイントラストが運営しており、提供する各種業務の受託手数料やシステム利用料を収益源としています。自社内にスコアリングモデルに基づく審査システムやコールセンターを有し、効率的で品質の高いオペレーションを提供しています。
■(3) ITサービス
主にWebサイトの企画・構築や業務システムの開発・運用を行っています。保証サービスで蓄積された業務知識とIT技術を融合させ、デジタル化や自動化を推進することで、グループ全体の業務効率化や新たな自社サービスの研究開発を担っています。
2026年1月にイントラストの連結子会社となったキャロルシステムが運営しており、システム開発やエンジニアリングサービスの提供によって収益を得ています。これによりグループのシステム競争力を強化し、新規案件の獲得機会の創出を目指しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりで推移しており、堅調な事業拡大が確認できます。特に直近年度はM&A効果や保有契約数の増加により、利益面でも過去最高を達成しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 90億円 | 106億円 | 123億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 23億円 | 28億円 |
| 利益率(%) | 23.1% | 22.2% | 22.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 14億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
売上規模の拡大に伴い、売上総利益および営業利益が順調に伸びています。営業利益率は高水準を維持しており、効率的なコストコントロールと安定した収益基盤の強さがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 106億円 | 123億円 |
| 売上総利益 | 50億円 | 55億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.1% | 44.9% |
| 営業利益 | 23億円 | 28億円 |
| 営業利益率(%) | 22.0% | 22.5% |
販売費及び一般管理費のうち、貸倒引当金繰入額が9億円(構成比32%)、給料及び賞与が6億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の保証サービスが継続して成長を牽引しています。ソリューションサービスは保証契約への切り替えにより微減となりましたが、新たに連結子会社化したITサービスが業績の上乗せに寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 保証サービス | 103億円 | 110億円 |
| ソリューションサービス | 10億円 | 9億円 |
| ITサービス | - | 3億円 |
| 連結(合計) | 106億円 | 123億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 15億円 | 17億円 |
| 投資CF | 1億円 | -6億円 |
| 財務CF | -5億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も63.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お客様にどれだけ喜んでいただけるか。安心していただけるか。信頼していただけるか。」という三つの価値(喜び、安心、信頼)の提供を経営姿勢として掲げています。社会の様々な機会において、保証に基づく安心を社会インフラとして普及させ、サービスと流通の活性化を実現することを使命として経営を行っています。
■(2) 企業文化
「会社の成長と社員の幸せが十分にリンクしている会社を目指す」という考えのもと、「明るく、楽しく、真剣に!」日々の業務に邁進できる環境づくりを推進しています。また、「感動・挑戦・自覚・品格・活躍」からなる五原則を会社運営の基盤に据え、社員が高い社会的自覚と誇りを持って活躍できる組織風土を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は継続的な企業価値の向上を目指し、中期経営計画において「売上の成長」および「成長を育成する投資」を基本方針として掲げています。業績目標として、以下の指標を設定しています。
* 売上高:150億円
* 営業利益:30億円
* 営業利益率:20.0%
* 配当性向:40~60%
* ROE:20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
主力である家賃債務保証において、既存取引先への提案や新規開拓を継続するとともに、新たな保証対象の拡充による新商品開発を進めます。同時に、医療・介護分野への営業活動の活発化や、IT技術と融合させたDX推進による業務受託サービスの拡販を図り、中長期的な収益基盤の強化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
成長戦略を人的資本の面から支えるため、即戦力となる中途採用と中長期的な企業価値向上を見据えた新卒採用をバランスよく実施しています。自由と自己責任に基づく人事方針のもと、個々の能力を積極的に発揮できる「オープンポジション制度」や、社内事業公募制度を通じて、次世代のイノベーション人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.6歳 | 4.1年 | 5,237,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 31.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 76.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部経営環境の変動
同社の提供する保証事業およびソリューション事業は、賃貸住宅市場を前提としています。そのため、賃貸住宅の新設着工戸数の減少や、景気・人口動態などの外部環境の変化が生じた場合、将来的な成長率が鈍化するリスクがあります。
■(2) 立替債権に伴う信用リスク
保証委託者の債務不履行が発生した際に行う代位弁済において、立替債権が未回収となるリスクがあります。経済環境の著しい悪化などにより想定を超えて貸倒費用や保証履行引当金が発生した場合、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 業務に関連する風評リスク
保証事業において督促行為を伴うため、インターネット掲示板等に否定的な風評が広まる可能性があります。その真偽にかかわらず、顧客や取引先からの信用低下を招く恐れがあるため、コンプライアンスを重視した回収活動や適切なモニタリングを徹底しています。



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