※本記事は、日本モーゲージサービス株式会社の有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本モーゲージサービスってどんな会社?
同社は、中小規模の住宅事業者を対象とした住宅金融サービスやクラウドシステムを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社グループは、1996年に住宅事業専門のコンサルティング会社として創業したのが始まりです。2000年にハウスジーメン、2005年に同社を設立し、2006年からは「フラット35」の取扱いを開始して住宅金融事業へ参入しました。2016年には東京証券取引所JASDAQ市場への上場を果たしています。
従業員数は連結で209名、単体で69名体制で事業を運営しています。大株主については、筆頭株主が創業者の経営する事業会社であるビルダーズシステム研究所で、第2位も同様に創業者が代表を務める日本レジデンシャルファンド、第3位が投資ファンドのベル投資事業有限責任組合1となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ビルダーズシステム研究所 | 25.44% |
| 日本レジデンシャルファンド | 6.53% |
| ベル投資事業有限責任組合1 無限責任組合員 ベル有限責任事業組合 | 5.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は鵜澤泰功氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鵜澤泰功 | 代表取締役社長 | 1983年コスモワールド入社。1996年ビルダーズシステム研究所設立、代表取締役。2005年同社設立、代表取締役社長。2013年住宅アカデメイア設立、代表取締役。 |
| 楳野範生 | 取締役副社長 | 1987年写真印刷入社。2006年日本レジデンシャルファンド代表取締役。2011年ハウスジーメン代表取締役社長。2015年同社取締役副社長。 |
| 髙坂明孝 | 取締役副社長融資本部長金融サービス部長 | 1978年三井銀行入行。2006年同行新宿法人営業第二部長。2010年同社入社、取締役融資審査部長。2015年同社取締役副社長。 |
| 青木裕美 | 取締役融資本部副本部長ローンサポート業務部長 | 1984年三井銀行入行。2006年同社入社、融資部長。2009年同社取締役融資業務部長。2015年同社取締役融資本部副本部長。2021年より現職。 |
| 羽生五泰 | 取締役管理本部長経営管理部長 | 1987年三晃商事入社。大島会計事務所等を経て2009年ハウスジーメン入社。2018年同社取締役管理本部長兼経営管理部長。2020年ハウスジーメン代表取締役社長。 |
社外取締役は、小池敏雄(小池公認会計士事務所開業)、野嶋慎一郎(野嶋慎一郎法律事務所開業)、林孝重(元シーイーシー取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「住宅金融事業」「住宅瑕疵保険等事業」「住宅アカデメイア事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■住宅金融事業
住宅金融支援機構と提携した「フラット35」をはじめ、固定金利型・変動金利型の住宅ローンやプロパーのつなぎローン等の金融サービスを提供しています。主に住宅事業者を介して、住宅資金を必要とする消費者に貸付を行っています。
住宅ローンの融資実行による融資手数料収入のほか、利息収入、サービシングフィー収入を得ています。事業の運営は同社が行っています。
■住宅瑕疵保険等事業
新築住宅の引渡し時に必要な法定義務保険である住宅瑕疵保険の販売を中心に、地盤保証や住宅品質を可視化する住宅性能評価等の審査・検査サービスを住宅事業者に提供しています。
住宅瑕疵保険の販売による保険料収入や地盤保証料収入、および各種検査料収入を受け取っています。事業の運営は、ハウスジーメンおよび住宅技術協議会が行っています。
■住宅アカデメイア事業
各種住宅保証サービスの提供や、住宅事業クラウドシステム「助っ人クラウド」の開発・提供を行っています。中小住宅事業者のアフターメンテナンス分野の支援や、DX化・経営合理化をサポートしています。
住宅保証サービスの役務提供による保証サービス管理収入や、クラウドシステムの利用等に伴うシステム収入を得ています。事業の運営は住宅アカデメイアが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
経常利益は一時減少傾向にありましたが、直近では回復し増益に転じています。当期利益も底打ちから反転し、安定した収益基盤を維持しながら堅調に推移していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 17.0億円 | 14.7億円 | 14.0億円 | 14.0億円 | 16.0億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9.4億円 | 9.9億円 | 8.9億円 | 7.3億円 | 9.5億円 |
■(2) 損益計算書
営業利益は前期から増加し、増益基調にあります。安定した利益水準を維持しており、主力事業における堅調な推移が営業利益の拡大に貢献していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 14.0億円 | 15.8億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて前年度から増収となっています。特に中核である住宅金融事業は融資実行件数の増加により堅調に推移し、住宅瑕疵保険等事業や住宅アカデメイア事業も各種サービスのクロス販売が進んだことで売上拡大に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 住宅金融事業 | 36.3億円 | 39.1億円 |
| 住宅瑕疵保険等事業 | 33.1億円 | 33.7億円 |
| 住宅アカデメイア事業 | 6.3億円 | 6.8億円 |
| 連結(合計) | 75.7億円 | 79.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなる「勝負型(事業拡大に伴う資産増加)」となっています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に営業未収入金および営業貸付金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18.2億円 | -12.1億円 |
| 投資CF | -2.3億円 | -1.6億円 |
| 財務CF | -10.9億円 | 13.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「住宅会社向けの経営支援」を目的として住宅産業を支えるプラットフォームを提供し、豊富な知見を活かして住宅産業の信用創造に取り組むことを経営の基本方針としています。近年は「住宅金融サービスとクラウドの融合」を経営戦略の中心に据え、持続的な成長を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は8つの経営方針を掲げています。具体的には、「顧客幸福に繋がらないことは行わない」「資産は人財」「最大のモラル(人格)と最小のルール」「バッド情報ファースト。体裁より中身」「サービスが先、利益は後。健全な投資は短期利益より大事」など、誠実さと本質を重んじる文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、増収よりも増益に重きを置き、「営業利益」を最重要指標として位置付けています。ステークホルダーへの責任を果たすため、増益により投資を継続し持続的に成長していくことを目標としています。2027年3月期の業績予想として以下の数値を掲げています。
* 営業収益:82.0億円
* 営業利益:13.4億円
* 経常利益:13.5億円
* 当期純利益:9.1億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は住宅の「生存インフラ」化という変化を捉え、短期戦略としてサービスの多角化や高付加価値化を推進し、住宅事業者の事業継続支援に注力しています。中長期戦略としては、プラットフォーム開発と異業種連携を通じたアライアンスを推進し、住宅産業全体の合理化と新たな価値創出を図りながら持続的な成長を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「住宅産業の課題を解決する」ことを事業戦略に掲げ、専門的な能力や経験を持つ人材のキャリア採用を推進しています。多様な視点を持つ人材が活躍できる企業風土の醸成を目指し、健康意識の向上や育児・介護との両立支援、シニア層の活躍促進など、働きやすい職場環境づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.3歳 | 7.9年 | 7,496,640円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金利・住宅市場の動向による影響
同社の事業は住宅・不動産関連業界に属するため、金利や住宅着工戸数の動向に影響を受けます。住宅ローン金利の上昇や建材価格の高騰、景気悪化による消費者の購買意欲低下などが生じた場合、事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 同業他社との競争激化
「フラット35」や「住宅瑕疵保険」を取り扱う競合企業が複数存在しています。同社はサービスの複合的な提供により差別化を図っていますが、他社の競争優位性が高まったり、新規参入による競争が激化したりした場合、相対的な競争力が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 事業に関する法的規制と許認可
同社の事業遂行には、貸金業法や住宅瑕疵担保履行法に基づく登録や指定が必要です。法令遵守に努めていますが、万が一重大な違反等により許認可の取消しや更新不可といった事態が生じた場合、事業の継続が困難となり、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。