※本記事は、日本モーゲージサービス株式会社 の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本モーゲージサービスってどんな会社?
住宅産業向けに金融・保証・システムをワンストップで提供する企業グループです。
■(1) 会社概要
2005年に設立され、翌年には住宅金融公庫(現 住宅金融支援機構)との提携により住宅金融事業を開始しました。その後、2008年に住宅瑕疵保険等事業、2013年に住宅アカデメイア事業を開始し、業容を拡大しました。2016年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)市場へ上場し、2025年には建築確認検査機関であるAI確認検査センター(現 GAI建築確認)を子会社化しています。
同社グループの連結従業員数は205名、単体では66名です。筆頭株主は同社代表取締役社長が代表を務める企業で、第2位も同氏が代表を務める企業です。第3位には住宅関連の事業会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ビルダーズシステム研究所 | 25.43% |
| 日本レジデンシャルファンド | 6.52% |
| OSCARホールディングス | 3.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は鵜澤 泰功氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鵜澤 泰功 | 代表取締役社長 | 住宅産業研究所を経てビルダーズシステム研究所を設立。2005年に日本モーゲージサービスを設立し社長に就任。ハウスジーメン取締役等を兼務し、2014年より現職。 |
| 楳野 範生 | 取締役副社長 | クォードコーポレーション等を経てハウスジーメン社長などを歴任。2015年に日本モーゲージサービス取締役副社長に就任し、現在は子会社管理を担当する。 |
| 髙坂 明孝 | 取締役副社長融資本部長金融サービス部長 | 三井銀行(現 三井住友銀行)出身。セディナ執行役員などを経て、2010年に同社入社。2015年より取締役副社長、2021年より金融サービス部長を兼務。 |
| 青木 裕美 | 取締役融資本部副本部長ローンサポート業務部長 | 三井銀行(現 三井住友銀行)出身。2006年に同社入社。融資業務やエスクロー業務を担当し、2021年よりローンサポート業務部長を兼務。 |
| 羽生 五泰 | 取締役管理本部長経営管理部長 | クォードコーポレーション等を経てハウスジーメンに入社し社長等を歴任。2018年より日本モーゲージサービス取締役管理本部長兼経営管理部長。 |
社外取締役は、小池 敏雄(公認会計士)、野嶋 慎一郎(弁護士)、林 孝重(元シーイーシー常勤監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「住宅金融事業」「住宅瑕疵保険等事業」「住宅アカデメイア事業」を展開しています。
■(1) 住宅金融事業
「フラット35」をはじめとする住宅ローンや、つなぎローンなどの金融サービスを、住宅事業者を介して住宅購入者に提供しています。BtoBtoC型のビジネスモデルを採用し、全国の提携事業者を通じてサービスを展開することで、広告宣伝に依存しない営業を行っています。
収益源は、住宅ローンの融資実行に伴う融資手数料、利息、および債権回収代行によるサービシングフィー等です。運営は主に日本モーゲージサービスが行っています。
■(2) 住宅瑕疵保険等事業
住宅の品質確保のため、法定義務保険である「住宅瑕疵(かし)保険」のほか、住宅性能評価や地盤保証などの審査・検査サービスを提供しています。国土交通大臣指定の住宅瑕疵担保責任保険法人としての高い参入障壁を持つ事業です。
収益源は、住宅瑕疵保険や地盤保証の保険・保証料、および住宅性能評価等の検査料です。運営は主にハウスジーメンおよび住宅技術協議会が行っています。
■(3) 住宅アカデメイア事業
住宅引き渡し後の設備保証やメンテナンス保証などのサービス提供、および住宅事業クラウドシステムの開発を行っています。ストック型事業への転換を目指す中小住宅事業者を支援し、業務効率化やDX化に貢献しています。
収益源は、住宅保証サービスの提供に伴う管理収入(アドミニストレーションフィー)やシステム利用料等です。運営は主に住宅アカデメイアが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高(営業収益)は71億円から77億円のレンジで推移しており、2025年3月期は過去最高の76億円を記録しました。経常利益は14億円前後で安定的に推移しています。当期純利益も高い水準を維持しており、全体として底堅い業績トレンドを示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 71.3億円 | 76.9億円 | 73.3億円 | 71.1億円 | 75.7億円 |
| 経常利益 | 14.2億円 | 17.0億円 | 14.7億円 | 14.0億円 | 14.0億円 |
| 利益率(%) | 19.9% | 22.1% | 20.1% | 19.7% | 18.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9.5億円 | 11.3億円 | 10.0億円 | 8.7億円 | 9.8億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。営業利益率は18.5%と高い水準を維持しており、収益性の高さがうかがえます。売上原価および販管費も増加していますが、増収効果により利益額は微増となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 71.1億円 | 75.7億円 |
| 売上総利益 | 50.3億円 | 54.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 70.7% | 71.5% |
| 営業利益 | 14.0億円 | 14.0億円 |
| 営業利益率(%) | 19.7% | 18.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が11億円(構成比27%)、代理店手数料が9億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりました。特に主力の住宅金融事業は、プロパーローン商品の販売強化や他金融機関との提携推進により増収増益を達成しました。住宅瑕疵保険等事業および住宅アカデメイア事業も増収となりましたが、本社移転費用の計上などにより利益面では減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 住宅金融事業 | 33.3億円 | 36.3億円 | 9.6億円 | 10.5億円 | 29.0% |
| 住宅瑕疵保険等事業 | 31.7億円 | 33.1億円 | 3.7億円 | 2.9億円 | 8.7% |
| 住宅アカデメイア事業 | 6.1億円 | 6.3億円 | 0.7億円 | 0.6億円 | 9.7% |
| 連結(合計) | 71.1億円 | 75.7億円 | 14.0億円 | 14.0億円 | 18.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本モーゲージサービスは、住宅保証サービス件数の増加や住宅金融事業の拡大により、営業活動によるキャッシュ・フローが増加しました。一方で、投資活動では有形・無形固定資産の取得により資金が減少しました。財務活動では、短期借入金の減少や配当金の支払いにより資金が減少しました。これらの活動の結果、現金及び現金同等物の残高は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16.0億円 | 18.2億円 |
| 投資CF | -0.4億円 | -2.3億円 |
| 財務CF | -13.0億円 | -10.9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「住宅産業の課題を解決する」という経営理念のもと、中小住宅事業者への経営支援を事業目的としています。住宅分野に特化した金融サービスとITを融合させ、住宅産業のDX化や中古住宅流通活性化のための仕組みづくりを推進しています。
■(2) 企業文化
同社は8つの経営方針を掲げています。「顧客幸福に繋がらないことは行わない」「メジャーは目指さない。カテゴリーキラーとしてインディーズであり続ける」「資産は人財」「強くて優しい人と組織であり続ける」「最大のモラル(人格)と最小のルール」など、独自の価値観に基づいた経営を行っています。
■(3) 経営計画・目標
「MSJグループ中期経営計画2028年3月期」を策定しており、以下の数値目標を掲げています。
* 2028年3月期 連結営業収益:90億円
* 2028年3月期 連結営業利益:17.5億円
■(4) 成長戦略と重点施策
短期戦略として、住宅形成経路と一体化したサービス群を活かしたクロス販売の推進や、専門性の高いサービスの展開による利益率の拡大を目指しています。長期戦略としては、住宅建設プロセスのコスト削減を実現するプラットフォーム開発を推進し、BIM活用やサプライチェーンの合理化を通じて住宅産業構造の変革を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「資産は人財」という方針のもと、多様な視点や価値観を持つ人材が活躍できる企業風土の醸成を目指し、専門的な能力や経験を持つ人材のキャリア採用を進めています。また、育児や介護と仕事の両立支援、健康意識の向上サポートなど、働きやすい職場環境づくりにも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.7歳 | 7.9年 | 7,240,710円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(61%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金利及び住宅市場の動向
住宅ローン金利の上昇や建材価格の高騰、景気悪化による住宅取得意欲の低下などが生じた場合、住宅着工・流通戸数が減少し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合企業との競争
フラット35や住宅瑕疵保険を取り扱う競合他社が存在します。競争の激化や他社の新規参入により、同社グループの競争優位性が低下した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制に関するリスク
貸金業法や住宅瑕疵担保履行法などの許認可事業を展開しているため、法令違反等により登録や指定の取消しが生じた場合、事業継続が困難となり、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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