ファイズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファイズホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファイズホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、ECソリューションサービスを包括的に提供する物流企業です。主にネット通販会社向けの物流センター運営や配送を手がけ、直近の業績では売上高約403億円、経常利益約16億円と過去最高を更新して増収増益を達成し、順調な成長を続けています。


※本記事は、ファイズホールディングス株式会社の有価証券報告書(第13期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ファイズホールディングスってどんな会社?


ECソリューションサービス事業を中核とし、商品の流通から宅配まで物流を一貫して手がける企業です。

(1) 会社概要


同社は2013年に設立され、翌年にロジスティクスサービス事業やオペレーションサービス事業を譲受して事業基盤を構築しました。2017年に株式を上場し、2019年には持株会社体制へ移行して現在の社名に変更しています。2022年にはAZ-COM丸和ホールディングスと資本業務提携を締結し、事業を拡大しています。

現在の従業員数はグループ全体で812名、単体で20名です。筆頭株主は資本業務提携先であり親会社でもあるAZ-COM丸和ホールディングスで、過半数の株式を保有しています。第2位は個人株主、第3位は法人株主という構成になっています。

氏名 持株比率
AZ-COM丸和ホールディングス 58.27%
和佐見勝 4.84%
Kanamoriアセジメント 4.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は大澤隆氏が務めており、社外取締役の比率は約41.7%となっています。

氏名 役職 主な経歴
大澤隆 代表取締役社長執行役員 東山産業、トランコムを経て2018年に同社入社。常務、副社長等を経て2023年より代表取締役社長、2024年より現職。
田中勝也 取締役専務執行役員 松本組、K's construction等を経て2014年に同社入社。事業統括本部長、営業本部長等を経て2024年より現職。
西村考史 取締役上席執行役員 新日本監査法人を経て2010年に公認会計士登録。2016年に同社へ入社し、財務担当部長等を経て2024年より現職。
青島亨 取締役上席執行役員 遠州トラック、トランコムを経て2020年に同社へ執行役員として入社。営業本部長等を経て2024年より現職。
岩﨑哲律 取締役 丸和運輸機関(現AZ-COM丸和ホールディングス)入社後、同社EC事業本部長等を歴任。2022年より同社取締役。
大塚信 取締役 丸和運輸機関(現AZ-COM丸和ホールディングス)に入社し、経理部長や執行役員経理本部長を歴任。2022年より同社取締役。
堀口淳也 取締役(監査等委員) 関西電力、ヴィ企画等を経て2013年に同社入社。管理本部課長や監査役を経て2023年より現職。


社外取締役は、井口典夫氏(元青山学院大学教授)、松田佳紀氏(ワコーパレット代表取締役会長)、深山隆氏(ミヤマプロジェクト代表取締役)、藤原誠氏(北浜法律事務所社員弁護士)、中喜多智彦氏(マツオカトレーディング取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「オペレーションサービス事業」「トランスポートサービス事業」「国際物流サービス事業」および「情報システム事業」を展開しています。

オペレーションサービス事業


ECサイト運営企業やメーカー、配送会社等を対象に、物流センターにおける入荷から出荷に至るまでの作業プロセス全体を包括的に管理する実務機能や、庫内オペレーションの設計などをサポートするコンサルティング機能を提供しています。

顧客からの業務委託に基づき、物流業務を長期間一括して受託するサードパーティーロジスティクスなどのサービス対価として収益を得ています。当事業の運営は、主にファイズオペレーションズやファインドオンが行っています。

トランスポートサービス事業


主に実運送サービスおよび配車プラットフォームサービスを展開しています。大型車両を用いた拠点間の大量一括輸送や、大手宅配便会社向けの集配代行、EC関連貨物の個人宅へのラストワンマイル配送などの輸配送ニーズに対応しています。

拠点間の幹線輸送や店舗ルート配送、配車手配を通じたマッチング手数料や輸配送の対価として収益を得ています。当事業の運営は、主にファイズトランスポートサービスや誠ノ真が行っています。

国際物流サービス事業


主に中国をはじめとする東南アジア地域からのアパレル製品や雑貨、機械製品などの輸入貨物や、食品などの輸出貨物に関する海外および国内での運送取扱を手がけています。

輸出入貨物のドレージ手配等や通関手続き代行サービスの提供による手数料などを収益源としています。当事業の運営は、主にブリリアントトランスポートが行っています。

情報システム事業


金融機関や官公庁向けの情報システムの開発受託や、IT技術者の派遣、中小企業向けのパッケージソフトの企画・開発・販売およびシステムの改修などを行っています。

コンピュータシステムの開発受託料やシステムエンジニアの人材派遣料、ソフトウェアの販売代金等から収益を得ています。当事業の運営は、主に日本システムクリエイトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、新規拠点の稼働や既存事業の安定稼働、物流ニーズの増加を背景に、売上高が180億円から403億円へと右肩上がりで拡大しています。経常利益も増収に伴って毎期増加を続けており、順調に収益を伸ばしていることが確認できます。一方、当期利益については年度によって変動が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 180億円 237億円 275億円 316億円 403億円
経常利益 6億円 12億円 14億円 15億円 16億円
利益率(%) 3.2% 5.1% 5.0% 4.7% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 5,517万円 3,381万円 7.4億円 326万円 3.1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から大きく増加し400億円を突破しました。それに伴い売上総利益や営業利益も堅調に推移していますが、利益率の観点では売上総利益率、営業利益率ともに前期からやや低下しています。業容拡大による増収が利益額の底上げに寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 316億円 403億円
売上総利益 26億円 27億円
売上総利益率(%) 8.1% 6.7%
営業利益 15億円 15億円
営業利益率(%) 4.6% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.0億円(構成比26.0%)、役員報酬が1.8億円(同15.8%)、支払手数料が1.5億円(同13.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるオペレーションサービス事業は、既存の受託案件が堅調に推移し大幅な増収を牽引しました。トランスポートサービス事業も実運送の受託拡大などにより順調に売上を伸ばしています。国際物流サービス事業や情報システム事業も着実に成長し、全セグメントにおいて前年を上回る増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
オペレーションサービス事業 203億円 269億円
トランスポートサービス事業 88億円 105億円
国際物流サービス事業 7.1億円 8.0億円
情報システム事業 18億円 21億円
連結(合計) 316億円 403億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金を活用しつつ、外部からの資金調達も併用して積極的な投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.9%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7.6億円 16億円
投資CF -8.8億円 -14億円
財務CF 8.4億円 3.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人と人のつながりで未来のあたりまえを創造します」というコーポレートミッションを掲げています。持続可能な社会の実現への貢献と、持続的な企業価値の向上を重視し、ECソリューションを包括的に提供することで人々の便利な生活を支え、社会的責任を果たすことを使命としています。

(2) 企業文化


「人の成長を通じて、社会を日本を元気にする」「今ここにないものを人の力で新たに生み出す」「社員とその家族の幸せも大切に、共に成長する」という3つの行動指針を重視しています。「人=社員」を中心とした経営を掲げて社員の成長を支援し、全員が幸せを実感できる企業経営に注力しながら、時代の一歩先をゆく事業に先進的に取り組む文化です。

(3) 経営計画・目標


2024年4月より3か年の中期経営計画「ONE2027」を推進しています。持続的な企業価値の向上を目指し、具体的な数値目標として以下を掲げています。

* 2027年3月期において自社車両を200台へ拡大
* 女性社員比率を30%以上に向上
* 従業員平均給与を2024年3月期比で20%増加

(4) 成長戦略と重点施策


ECソリューションサービスに特化すると同時にサービス領域の拡大を図るため、小売業を中心とした新規顧客の開拓と既存顧客の取引拡大に取り組んでいます。さらに、配車プラットフォーム事業と自社車両を組み合わせた効率的な輸配送による積載効率の改善やCO2削減など物流DXを推進し、多様な人材の確保と育成によって経営基盤を強化する戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材採用および人材教育への積極投資を継続する方針です。採用面では、新卒採用や内部昇格による人員拡充に加え、経験豊富な管理職層のキャリア採用を推進しています。教育面では外部講師を招いた専門研修や資格取得支援を行い、労働条件の面でも地域限定社員や時短勤務などの柔軟な対応を取り入れ、従業員待遇を向上させていく方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 4.5年 5,301,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 90.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 92.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 96.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制の遵守対応リスク


貨物自動車運送事業法や貨物利用運送事業法などの関連法規に準拠して事業を行っており、各種法令に違反した場合、車両運行や事業の停止、許可取消などの行政処分を受ける可能性があります。また、法改正への対応費用が生じるリスクがあります。

(2) 燃料価格の変動リスク


貨物自動車運送事業を営んでいるため、原油価格の高騰に伴う軽油燃料価格の上昇は運送コストの増加に直結します。このコスト増加分を運賃に転嫁できない場合、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) EC市場における同業他社との競合リスク


ECソリューションサービスを中心に展開しているため、業務請負を主力とする他社との競合に晒されています。顧客の求めるニーズへの対応や独自の提案力による差別化が維持できなくなった場合、競争上の優位性が低下するリスクがあります。

(4) 特定取引先への依存リスク


最大の顧客であるアマゾンジャパン合同会社への売上高が全体の約69%を占めています。消費低迷など何らかの要因で同社の事業戦略に変化が生じ、取引条件の変更や契約の解消が行われた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。