※本記事は、ファイズホールディングス株式会社の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ファイズホールディングスってどんな会社?
ECサイト運営企業向けの物流センター管理や配送代行を行う「ECソリューションサービス」を主力としています。
■(1) 会社概要
同社は2013年に株式会社ヴィ企画の3PL事業部門が分社化する形で設立されました。2017年に東証マザーズへ上場し、2019年には持株会社体制へ移行して現社名に変更しました。2022年にAZ-COM丸和ホールディングスと資本業務提携を締結し、2024年には株式会社ファインドオンを子会社化するなど事業拡大を続けています。
現在の従業員数は連結697名、単体21名です。筆頭株主は物流大手のAZ-COM丸和ホールディングス(親会社)であり、第2位は同社社長の和佐見勝氏、第3位は資産管理会社と思われる株式会社Kanamoriアセジメントとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| AZ-COM丸和ホールディングス | 58.36% |
| 和佐見 勝 | 4.84% |
| Kanamoriアセジメント | 4.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は大澤隆氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大澤 隆 | 代表取締役社長執行役員 | 東山産業、トランコムを経て2018年に同社入社。営業本部長、取締役副社長などを歴任し、2023年より現職。 |
| 田中 勝也 | 取締役専務執行役員 | 松本組、ヴィ企画を経て2014年に同社入社。事業統括本部長、常務取締役営業本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 吉島 伸一 | 取締役常務執行役員 | トヨタカローラ大阪、佐川急便を経て2014年に同社入社。法務課長、監査役、管理本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 西村 考史 | 取締役上席執行役員 | 新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)を経て2016年に同社入社。財務担当部長などを務め、2024年より現職。公認会計士。 |
| 青島 亨 | 取締役上席執行役員 | 遠州トラック、トランコムを経て2020年に同社入社。執行役員、営業本部長などを経て2024年より現職。 |
| 岩﨑 哲律 | 取締役 | 丸和運輸機関(現AZ-COM丸和ホールディングス)入社。同社執行役員EC事業本部長、取締役常務執行役員などを経て2022年より現職。 |
| 大塚 信 | 取締役 | 丸和運輸機関入社。同社執行役員経理本部長などを務め、2022年より現職。 |
| 堀口 淳也 | 取締役(監査等委員) | 関西電力、ヴィ企画を経て2013年に同社入社。オペレーションサービス課長、監査役を経て2023年より現職。 |
社外取締役は、井口典夫(青山学院大学名誉教授)、松田佳紀(元ヤマダ・エスバイエルホーム社長)、深山隆(元味の素ヘルシーサプライ社長)、藤原誠(弁護士法人北浜法律事務所社員弁護士)、中喜多智彦(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ECソリューションサービス事業」「国際物流サービス事業」「情報システム事業」を展開しています。
■(1) ECソリューションサービス事業
ECサイト運営企業やメーカー等に対し、物流センター内の入荷から出荷までの工程管理(オペレーションサービス)や、拠点間輸送・個人宅配送(トランスポートサービス)を提供しています。特にEC市場向け3PL(サードパーティー・ロジスティクス)に強みを持ちます。
収益は、顧客企業から受け取る業務受託料や輸配送運賃から構成されます。運営は主にファイズオペレーションズやファイズトランスポートサービス、株式会社ファインドオンなどが行っています。
■(2) 国際物流サービス事業
輸入貨物に関する海外および国内の運送取扱(ドレージ手配等)や、通関手続きの代行サービスを提供しています。
収益は、顧客から受け取る運送取扱手数料や通関手数料などが柱です。運営は主にブリリアントトランスポートが行っています。
■(3) 情報システム事業
IT技術者の派遣、各種情報システムの開発受託、ウェブサイト制作などのシステムコンサルティングサービスを提供しています。
収益は、システム開発の受託料や技術者派遣料から構成されます。運営は主に日本システムクリエイトが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大しており、直近5期間で2.4倍以上に成長しています。経常利益も増加傾向にあり、利益率も4〜5%台で安定して推移しています。EC市場の拡大を背景に事業規模を着実に伸ばしていることが読み取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 130億円 | 180億円 | 237億円 | 275億円 | 316億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 6億円 | 12億円 | 14億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 3.2% | 5.1% | 5.0% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 4億円 | 8億円 | 9億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。利益率は安定しており、コストコントロールが効いている様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 275億円 | 316億円 |
| 売上総利益 | 24億円 | 26億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.6% | 8.1% |
| 営業利益 | 13億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 4.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.2億円(構成比29%)、役員報酬が1.9億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のECソリューションサービス事業が売上・利益ともに全体の大部分を占めており、増収増益を牽引しています。情報システム事業も増収増益で推移していますが、国際物流サービス事業は円安の影響等により減収赤字となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ECソリューションサービス事業 | 253億円 | 291億円 | 12億円 | 14億円 | 4.6% |
| 国際物流サービス事業 | 8億円 | 7億円 | 0億円 | -0.1億円 | -1.1% |
| 情報システム事業 | 15億円 | 18億円 | 0.7億円 | 1億円 | 5.4% |
| 調整額 | -0.1億円 | -0.1億円 | 0.8億円 | 0.2億円 | - |
| 連結(合計) | 275億円 | 316億円 | 13億円 | 15億円 | 4.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.4%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 8億円 |
| 投資CF | -1億円 | -9億円 |
| 財務CF | -7億円 | 8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人と人のつながりで”未来のあたりまえ”を創造する」をコーポレートミッションとして掲げています。人々に便利な生活を提供するため、提案力を活かしたECソリューションを包括的に提供し、社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「人の成長を通じて、社会を日本を元気にする」「今ここにないものを人の力で新たに生み出す」「社員とその家族の幸せも大切に、共に成長する」という3つの行動指針を重視しています。「人=社員」を中心とした経営を行い、発想力と人間力を備えた人材育成や、時代の変化に対応したサービスの創造に取り組む姿勢を示しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「ONE2027」を推進しており、持続的な企業価値向上を目指しています。具体的な数値目標として、以下のような指標を掲げています。
* 自社車両台数:200台(2027年3月期)
* 女性社員比率:30%以上
* 従業員平均給与:2024年3月期比20%増
■(4) 成長戦略と重点施策
同社はECソリューションサービスの拡大に向け、小売チェーンやメーカーなどの新規顧客開拓に注力しています。また、労働力不足や「2024年問題」に対応するため、配車プラットフォーム事業の拡大や物流DXの推進、自社車両と協力会社網を組み合わせた輸送ネットワークの強化を図っています。BtoC配送など新たな成長分野への展開も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は積極的な人材採用と教育への投資を継続する方針です。新卒採用や内部昇格に加え、経験豊富な管理職層のキャリア採用を進めています。教育面では専門性の高い研修や資格取得支援を行い、待遇面では物流業界のステータス向上を目指した給与引き上げや、地域限定社員・時短勤務など柔軟な働き方の導入に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 4.2年 | 5,018,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.8% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 89.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 96.5% |
※男性育児休業取得率については、有価証券報告書に数値の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制について
同社グループは貨物自動車運送事業法や労働者派遣法などの規制を受けて事業を行っています。法令違反による事業停止や許可取消し、法改正に伴う費用負担増などが発生した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス経営を最重要課題とし、法令遵守体制を推進しています。
■(2) 原油価格の高騰について
貨物自動車運送事業を行っているため、軽油などの燃料価格上昇は運送コストの増加に直結します。原油価格の高騰分を運賃に適正に転嫁できない場合、利益率が低下し、経営成績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 特定取引先への依存について
同社グループの売上高の約67%は最大顧客であるアマゾンジャパン合同会社向けが占めています。同社との取引関係維持に努めていますが、顧客の事業戦略変更や契約条件の改定、契約解消などが生じた場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人材の確保及び育成について
事業拡大には優秀な人材やドライバーの確保が不可欠です。労働人口減少や競争激化により計画通りの採用が困難になったり、採用・雇用コストが上昇したりした場合、事業運営や収益性に影響が出る可能性があります。採用強化や社内研修の充実、パートナー企業の活用などで対応しています。



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