※本記事は、株式会社力の源ホールディングスの有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 力の源ホールディングスってどんな会社?
同社は国内外で博多ラーメン「一風堂」を中心とした飲食店の展開や商品販売などを行う企業です。
■(1) 会社概要
1985年に福岡市においてラーメン専門店「一風堂」として創業しました。1994年に運営会社を法人改組し、その後は国内外への出店を進め、2008年にはアメリカに海外直営1号店をオープンしています。2014年に持株会社制へ移行して現在の力の源ホールディングスへ商号変更し、2017年に上場を果たしました。
現在の同社グループは、連結従業員数666名、単体では23名の体制で事業を推進しています。筆頭株主はシンガポールの法人であるE&RS' FORCE CREATION PTE.LTD.で、第2位は創業者の河原成美氏、第3位は麻生となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| E&RS' FORCE CREATION PTE.LTD. | 23.30% |
| 河原成美 | 17.87% |
| 麻生 | 9.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長兼CEOは山根智之氏が務めています。社外取締役は3名で構成されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山根智之 | 代表取締役社長兼CEO | 2010年力の源カンパニー入社。海外事業グループマネージャー等を経て、2023年同社代表取締役社長兼CEO就任より現職。 |
| 河原成美 | 代表取締役会長兼Founder | 1985年一風堂創業。1994年力の源カンパニー代表取締役就任。2014年同社代表取締役会長兼CEOを経て、2023年より現職。 |
| 齋藤晃宏 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年ソニー入社。ソニー・ラテンアメリカ上級副社長等を経て2016年力の源カンパニー入社。2021年同社取締役就任より現職。 |
社外取締役は、鈴木美奈子(鈴茂器工代表取締役会長)、辻哲哉(Field-R法律事務所所属弁護士)、田鍋晋二(田鍋会計事務所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内店舗運営事業」「海外店舗運営事業」「商品販売事業」を展開しています。
■国内店舗運営事業
日本国内で「一風堂」ブランドを中核に、「名島亭」や「因幡うどん」、フードコート向けの「RAMEN EXPRESS」など複数ブランドの直営店舗を展開しています。ファミリー層から単身者まで幅広い顧客層を対象にラーメンやうどん等の飲食サービスを提供しています。
収益源は、直営店舗での一般消費者からの飲食代金のほか、フランチャイズ店舗である暖簾分け店舗からのロイヤリティ収入です。事業の運営は、主に力の源カンパニーが担当しています。
■海外店舗運営事業
北米、欧州、オセアニア、アジア等の世界16カ国・地域において、日本の文化やおもてなしの精神とともにラーメン等を提供する「IPPUDO」ブランドを中心とした店舗展開を行っています。各国のカルチャーに合わせたローカライズを実施しています。
収益源は、海外直営店舗での一般消費者からの飲食代金や、現地運営パートナー企業へのライセンス供与に伴うロイヤリティ収入です。事業の統括はCHIKARANOMOTO GLOBAL HOLDINGS PTE.LTD.などが担当しています。
■商品販売事業
業務用を中心とした信州蕎麦、うどん、麺、スープ等の製造・販売や、家庭向け商品「おうちでIPPUDOシリーズ」の展開を行っています。一般消費者や飲食企業など幅広い客層に対して自社ECサイトや店舗を通じて商品を提供しています。
収益源は、一般消費者や飲食企業に対する商品販売代金や、暖簾分け店舗への食材販売代金です。事業の運営は主に渡辺製麺や力の源カンパニーが担当し、製造から流通、販売までを一貫して手がけています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、国内外での店舗網拡大や各種商品の販売強化により、売上高は順調な成長を続けています。一方、利益面に関しては、原材料価格や人件費の高騰などの影響を受け、直近の2期間は増収ながらも減益傾向となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 194億円 | 261億円 | 318億円 | 342億円 | 363億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 23億円 | 35億円 | 28億円 | 26億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 8.9% | 11.0% | 8.3% | 7.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 19億円 | 3億円 | 13億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大していますが、原材料価格の上昇等により売上総利益率はわずかに低下しています。また、販売費及び一般管理費などのコスト増加が影響し、営業利益及び営業利益率は低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 342億円 | 363億円 |
| 売上総利益 | 240億円 | 252億円 |
| 売上総利益率(%) | 70.2% | 69.5% |
| 営業利益 | 28億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 6.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が90億円(構成比39%)、地代家賃が42億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内店舗運営事業は新規出店や限定商品の販売促進が寄与し、大幅な増収となりました。商品販売事業も一風堂関連商品の企業向け販売が好調で増収となっています。一方で、海外店舗運営事業は一部地域での客数減少や為替影響等により、わずかに減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内店舗運営事業 | 156億円 | 174億円 |
| 海外店舗運営事業 | 147億円 | 144億円 |
| 商品販売事業 | 39億円 | 44億円 |
| 連結(合計) | 342億円 | 363億円 |
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、本業の営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の優良な状態にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 28億円 |
| 投資CF | -16億円 | -12億円 |
| 財務CF | -8億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も60.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業の精神である「食を通して新しい価値を創造し「笑顔」と「ありがとう」とともに世界中に伝えていく。変わらないために変わり続ける。」を掲げています。ラーメンをはじめとする日本食の普及をグローバルに実現することを目指し、より高いレベルでの顧客満足の獲得と企業価値の向上に尽力しています。
■(2) 企業文化
同社は「おもてなしの心」を磨き続けることを重視し、人を大切にし育てる文化を根付かせています。一人ひとりの従業員が企業理念やコンプライアンスについて共通の認識を持ち、常に公正で機能的な行動をとることができるよう努めています。また、働き方の多様性を確保し、従業員が誇りとやりがいを持って働ける環境づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループが重要視している経営指標は、売上高、営業利益、営業利益率、およびROE(自己資本利益率)の4つです。中長期的な事業拡大により、顧客価値の向上と企業価値の最大化を図り、ステークホルダーの利益を最大化することを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内では、都心近郊やロードサイドへの積極的な出店を行うとともに、DX施策(チャーハン自動調理器等の導入)を推進し、新たな店舗価値の創出と収益性向上を目指します。海外では、日本食への関心の高まりを背景に、新規国・新規エリアへの出店やハラル業態の展開を進めて事業拡大を加速させます。また、商品販売事業におけるEC市場や海外市場への販路拡大にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を最大の競争源泉と位置づけ、人材の確保・育成とイノベーションを核とする人的資本経営を推進しています。働き方の多様性を確保するため、地域限定社員や契約社員の採用を推進するとともに、階層別研修やグローバルリーダーの育成を通じてプロフェッショナルを育成し、世界のサービス基準を確立できる人材を輩出する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.7歳 | 4.9年 | 5,259,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 44.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 46.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率は、育児休業取得の対象となる男性労働者がいないため「-」としています。非正規雇用の男女賃金差異は、男性非正規雇用労働者がいないため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結会社における女性管理職比率(33.8%)、連結会社における男性育児休業取得率(93.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の調達環境リスク
同社グループは、食の安全を第一に良質な食材の調達に努めていますが、天候不順や疫病、世界的な需給バランスの変動などにより必要量の原材料確保が困難になる可能性があります。また、仕入価格の高騰が起きた場合には、同社グループの営業利益が減少するリスクがあります。
■(2) 海外事業展開のリスク
欧米やアジア地域を中心に積極的な店舗展開を進めていますが、進出国に特有の政情、経済、法規制といったカントリーリスクが存在します。また、現地パートナー企業の業績悪化や出店計画の遅れが生じた場合、ロイヤリティ収入が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 外食市場の競争激化と中食との競合
国内外食産業市場は人口減少や高齢化により市場規模の拡大が期待しづらいなか、多様な業態の参入により競争が激化しています。また、コンビニエンスストアを中心とする中食との競合も激しく、客数の減少が生じた場合には同社グループの売上高や利益が低下するリスクがあります。



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