力の源ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

力の源ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、博多ラーメン専門店「一風堂」を中心とした飲食店の運営、および製麺や関連商品の販売を主要事業としています。第40期連結会計年度の業績は、売上高が前期比で増加したものの、営業利益および経常利益は減少し、増収減益となりました。


※本記事は、株式会社力の源ホールディングス の有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 力の源ホールディングスってどんな会社?


博多ラーメン専門店「一風堂」を国内外で展開するグローバル外食企業です。製麺や商品販売も手掛けます。

(1) 会社概要


1985年に福岡でラーメン店「一風堂」を創業し、1994年に法人改組しました。2008年にはニューヨークに海外直営1号店を出店し、グローバル展開を加速させました。2014年に持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。2017年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2024年にはスペインとドイツに現地法人を設立するなど、事業拡大を続けています。

同社グループの連結従業員数は624名、単体では19名です。筆頭株主はシンガポール法人のE&RS' FORCE CREATION PTE.LTD.で、第2位は創業者の河原成美氏、第3位は福岡を拠点とする事業会社の麻生となっています。

氏名 持株比率
E&RS' FORCE CREATION PTE.LTD. 23.31%
河原 成美 17.88%
麻生 9.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼CEOは山根智之氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山根 智之 代表取締役社長兼CEO 2010年力の源カンパニー入社。海外事業グループマネージャー、経営戦略本部長、取締役CSO等を経て、2023年4月より現職。
河原 成美 代表取締役会長兼Founder 1985年「一風堂」創業。力の源カンパニー代表取締役、渡辺製麺代表取締役等を歴任。2023年4月より現職。
中尾 徹 専務取締役Senior Managing Director 2001年エー・ビー・シー・マート西日本専務取締役。エー・ビー・シー・マート専務取締役等を経て、2019年力の源カンパニー代表取締役社長に就任。2023年4月より現職。
齋藤 晃宏 取締役(監査等委員) ソニー・ラテンアメリカ・インク上級副社長兼リージョナルCFO等を経て、2016年力の源カンパニー入社。同社内部監査室長等を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、辻哲哉(弁護士)、田鍋晋二(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内店舗運営事業」、「海外店舗運営事業」、「商品販売事業」を展開しています。

国内店舗運営事業


「一風堂」ブランドを中核に、「名島亭」「因幡うどん」といった複数ブランドの直営店舗運営を行っています。また、フードコート業態「RAMEN EXPRESS」やプラントベースラーメンの提供など、多様なコンセプトショップも展開しています。

収益は、店舗に来店する顧客からの飲食代金が主となります。また、暖簾分け制度(フランチャイズモデル)によるロイヤリティ収入も含まれます。運営は主に株式会社力の源カンパニーが行っており、一部店舗では株式会社渡辺製麺も運営に携わっています。

海外店舗運営事業


海外において「IPPUDO」ブランドを中心に、直営店舗の運営および現地運営パートナー企業へのライセンス供与を行っています。北米、欧州、アジア・オセアニアなど世界16カ国・地域に展開し、現地の文化に合わせたローカライズを実施しています。

直営店における顧客からの飲食代金に加え、ライセンス契約先パートナー企業からのロイヤリティ収入やイニシャルロイヤリティ等が収益となります。運営は、CHIKARANOMOTO GLOBAL HOLDINGS PTE.LTD.統括のもと、各国の現地法人が行っています。

商品販売事業


業務用および一般消費者向けの麺、スープ、調味料等の製造販売を行っています。「おうちでIPPUDOシリーズ」の展開や自社ECサイトでの販売に加え、海外への輸出も強化しています。

飲食企業や一般消費者への商品販売による代金が収益となります。また、暖簾分け店舗への食材販売や商標ライセンス供与によるロイヤリティ収入も得ています。運営は主に株式会社渡辺製麺が行い、一部海外ではIPPUDO SINGAPORE PTE.LTD.等が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では、経常利益および当期利益が増減を繰り返しており、特に直近の第40期では売上の増加にもかかわらず減益となりました。利益率は変動が見られるものの、一定の水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 165億円 194億円 261億円 318億円 342億円
経常利益 -10億円 11億円 23億円 35億円 28億円
利益率(%) -6.1% 5.6% 8.9% 11.0% 8.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -24億円 9億円 16億円 22億円 18億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加し増収を達成しましたが、営業利益および営業利益率は低下しています。売上総利益率は若干低下しましたが、概ね同水準を維持しています。販売費及び一般管理費の増加が営業利益を圧迫する要因の一つとなっていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 318億円 342億円
売上総利益 224億円 240億円
売上総利益率(%) 70.5% 70.2%
営業利益 33億円 28億円
営業利益率(%) 10.4% 8.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が83億円(構成比39%)、地代家賃が38億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内店舗運営事業は、新規出店や既存店の堅調な推移により増収増益となりました。海外店舗運営事業は、円安効果等により増収となったものの、インフレによるコスト増や新規出店の遅延等が影響し大幅な減益となりました。商品販売事業は、一風堂関連商品の販売強化等が貢献し、増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内店舗運営事業 140億円 156億円 14億円 15億円 9.9%
海外店舗運営事業 143億円 147億円 18億円 11億円 7.7%
商品販売事業 35億円 39億円 5億円 5億円 13.1%
連結(合計) 318億円 342億円 33億円 28億円 8.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


健全型:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 39億円 31億円
投資CF -24億円 -16億円
財務CF -36億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「食を通して新しい価値を創造し「笑顔」と「ありがとう」とともに世界中に伝えていく。変わらないために、変わり続ける」という創業の精神を掲げています。ラーメンをはじめとする日本の食文化の普及をグローバルに実現することを目指し、顧客満足の獲得と企業価値の向上に尽力しています。

(2) 企業文化


創業の精神にある「変わらないために、変わり続ける」という価値観のもと、事業を展開しています。時代や環境の変化に対応しながらも、本質的な価値を守り抜く姿勢を重視しており、食の安心・安全やホスピタリティへのこだわりを持ち続けています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、売上高・営業利益・営業利益率・ROEを重要視する経営指標として掲げています。具体的な数値目標として、期初の予算に基づき以下を設定しています。

* 売上高:350億円
* 営業利益:36億円

(4) 成長戦略と重点施策


国内では、既存店の収益性向上を図りつつ、中商圏やロードサイドへの出店、新コンセプト店舗の開発、M&Aを進めます。海外では、直営エリアでの店舗拡大や、現地パートナーと連携したライセンス事業の拡大を加速させます。また、商品販売事業の拡大、人財の採用と教育強化、衛生面の強化、食習慣の多様化への対応にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


店舗運営力の向上のため、人財育成を他社との差別化要因と位置づけています。国内外での採用強化とともに、給与ベースアップや働き方の多様性確保を推進し、従業員満足度の向上を図っています。また、充実した研修制度や海外派遣を通じてグローバル人財を育成し、高いサービスレベルを全世界で実現することを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.1歳 5.3年 5,021,000円


※平均年間給与については基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 77.5%
男女賃金差異(正規雇用) 78.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 117.8%


※同社(提出会社)の女性管理職比率および男性育児休業取得率は、算出対象となる該当者がいない等の理由により「-」となっています。なお、連結グループ全体では、女性管理職比率39.9%、男性育児休業取得率140.0%という実績を開示しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外食業界の動向及び競争激化


人口減少や高齢化による市場縮小に加え、多様な業態の参入や中食との競合により競争が激化しています。これらの動向により来客数が減少した場合、売上高及び営業利益が減少する可能性があります。

(2) 国内外における業績の季節変動等


外食店舗運営事業は消費者のニーズや競合の影響を受けやすく、また季節によって売上が変動する傾向があります。繁忙期における悪天候や、新規出店が閑散期に重なることによる一時費用の負担増などが、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 国内店舗展開と出店戦略


国内では主に直営による店舗展開を行っており、立地や採算性を考慮して積極的に出店する方針です。しかし、条件に合う物件が確保できない場合や、工事の遅れなどによりオープンが遅延した場合、計画通りの売上高や利益を確保できなくなる可能性があります。

(4) 海外事業展開について


欧米・アジアを中心に店舗展開を進めていますが、進出国の政情、経済、法規制等のカントリーリスクや工事の遅れが業績に影響する可能性があります。また、現地パートナー企業によるライセンス店舗の運営において、パートナーの業績悪化や出店遅延が生じた場合、ロイヤリティ収入等の減少につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。