ピーバンドットコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ピーバンドットコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ピーバンドットコムは、東証スタンダードおよび名証メインに上場し、プリント基板のEコマースサイト「P板.com」を運営する企業です。ものづくり支援のプラットフォームとして、開発から量産までをワンストップで提供しています。直近の業績は、売上高が前期比8.2%増、経常利益が同20.2%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ピーバンドットコム の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ピーバンドットコムってどんな会社?


同社は、プリント基板のEコマース「P板.com」を運営し、電子機器開発の効率化を支援するファブレス企業です。

(1) 会社概要


同社は2002年に株式会社インフローとして創業し、翌年よりプリント基板ネット通販を開始しました。2012年に現社名へ変更し、2017年に東証マザーズへ上場を果たしました。その後、東証一部、プライム市場を経て、現在はスタンダード市場および名証メイン市場に上場しています。近年は開発・量産支援サービス「S-GOK」を開始するなど事業領域を拡大しています。

従業員数は単体で40名です。大株主の構成は、筆頭株主が株式会社インフローで、第2位は創業者の田坂正樹氏、第3位はネット証券会社となっています。なお、筆頭株主のインフローは、会長である田坂氏の資産管理会社です。

氏名 持株比率
インフロー 33.14%
田坂 正樹 10.23%
楽天証券 3.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は後藤康進氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
後藤 康進 代表取締役社長 2004年同社入社。COO(事業統括)、営業事業部長を経て、事業部門を管掌。2023年6月より現職。
田坂 正樹 取締役会長ファウンダー 1995年ミスミ入社。2002年に同社を設立し代表取締役に就任。ジンジブ取締役などを経て、2023年6月より現職。
上田 直也 取締役CHRO 2007年クリフト入社。2011年同社入社。CFO、管理部長、人事・総務部長などを歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、吉野功一(丸紅出身、他社監査役等を歴任)、櫟木一男(日本興業銀行出身、みずほ証券常務等を歴任)、森博司(山一證券出身、マネックス証券投資銀行部長等を歴任)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プリント基板Eコマース」および「その他」事業を展開しています。

(1) プリント基板のEコマース「P板.com」


電子機器の基幹部品であるプリント基板の設計、製造、部品実装をインターネット上で完結できるサービスを提供しています。主な顧客は研究開発部門を持つ法人や大学・公的機関、個人事業主などのエンジニアです。利用者はWebサイト上で仕様を選択し、図面をアップロードするだけで、短納期かつ低コストで基板を調達できます。

収益は、顧客からの基板製造や実装に伴う代金から得ています。同社は工場を持たないファブレス形態をとっており、国内外の提携工場に製造を委託し、品質管理と顧客サポートを行います。運営はピーバンドットコムが行っており、1-Click見積システムなどの利便性の高い仕組みを提供しています。

(2) 開発・量産支援サービス「S-GOK」


プリント基板単体だけでなく、筐体やハーネスを含めた電子機器全体の受託製造(EMS)や、開発から量産までを一貫して支援するサービスです。IoT製品などを開発するスタートアップ企業やメーカーに対し、サプライチェーンネットワークを活用した部材調達、組立、検査、コンサルティングなどを提供しています。

収益は、受託製造やコンサルティングに対する対価として顧客から受領します。運営はピーバンドットコムが行っています。このほか、エンジニア向け技術情報サイト「@ele」やコンテスト「GUGEN」の運営を通じ、エンジニアの育成とコミュニティ形成も行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね20億円前後で推移しており、直近の2025年3月期には過去最高の22億円に達しました。利益面では、2024年3月期に一時的な落ち込みが見られましたが、2025年3月期には経常利益率が7.3%まで回復し、当期純利益も1.1億円と増益基調に戻っています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 20億円 19億円 20億円 20億円 22億円
経常利益 2.1億円 2.0億円 1.8億円 1.3億円 1.6億円
利益率(%) 10.5% 10.3% 9.0% 6.6% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.4億円 1.4億円 0.9億円 0.9億円 1.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は33.7%から36.2%へと改善しました。営業利益率は6.6%から7.2%へ上昇しており、増収効果に加え、高付加価値サービスの伸長が寄与していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 20億円 22億円
売上総利益 6.8億円 7.9億円
売上総利益率(%) 33.7% 36.2%
営業利益 1.3億円 1.6億円
営業利益率(%) 6.6% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が1.8億円(構成比29%)、役員報酬が1.0億円(同15%)を占めています。売上原価については、当期仕入高が14億円(構成比98%)と大半を占めており、ファブレス形態の特徴を表しています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、サービス別の販売実績等は開示されています。主力のEコマースサービスが堅調に推移し、開発・量産支援などのその他サービスも増加しました。全体として受注単価の増加や新規顧客の獲得が進んだことで、増収を達成しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
プリント基板Eコマース事業 20億円 22億円
連結(合計) 20億円 22億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や株主還元、負債返済に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.5億円 1.4億円
投資CF -0.9億円 -0.5億円
財務CF -0.3億円 -0.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.5%で市場平均(同非製造業48.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「アイデアと探究心で、”あたりまえ”を革新する。」というパーパス(存在意義)を掲げています。この理念のもと、プリント基板のEコマース運営を中心に事業を展開し、将来的には「誰もがアイデアさえあれば、簡単にモノを具現化できる世界の実現」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は行動規範として「ワクワクするチャレンジを選ぶ。」を掲げています。また、「アイデア、どんどん発信しよう!」や「たゆまぬ探究心で、形にしよう!」、「失敗はステップ、恐れず飛び込もう!」といった5つの行動指針(Credo)を定め、挑戦や提案、継続的な学習、心あるコミュニケーションを重視する文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画を策定しています。基本方針として、プリント基板EC事業のシェア拡大を基盤としつつ、成長ドメインを拡張して持続的成長を実現することを掲げています。客観的な経営指標としては、売上高、当期純利益成長率、エクイティスプレッドを重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


プリント基板EC事業のシェア拡大に加え、電子部品調達の自動化による業務効率向上と売上拡大、開発・量産支援サービス「S-GOK」の拡販を重点施策としています。また、ものづくりサービスのサプライチェーンを一気通貫でつなぐ「GUGEN Hub」構想を推進し、新たな成長の軸を確立することを目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を価値創造の源泉と捉え、自律型人材の育成を進めています。社内外の研修活用や配置転換による多様なスキルの習得を推奨しています。また、多様なバックグラウンドを持つ中途採用者や外国人を積極的に採用し、組織の多様性を高める方針です。働く環境については、在宅勤務支援や福利厚生の充実などにより、安心して働き続けられる環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.3歳 5.6年 5,412,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、男性育児休業取得率および男女賃金差異については有報に記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 価格競争の激化


インターネット販売の特性上、価格比較が容易であり、競合他社との価格競争が発生しやすい環境にあります。他社が同様の商品を取り扱い始めた場合、価格競争に陥り収益力が低下する可能性があります。また、既存の通信販売事業者や新規参入者との競争が激化した場合、同社のサービスが陳腐化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) インターネット利用のリスク


事業運営の大部分をインターネットや自社システムに依存しています。自然災害やサイバー攻撃、アクセス集中などによりシステム障害が発生した場合、サービス停止やデータ消失のリスクがあります。また、検索エンジン(SEO)のアルゴリズム変更によりサイトへの流入数が減少した場合や、SNS等での風評被害が発生した場合も、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 仕入・物流およびカントリーリスク


製品の製造を外部委託しており、その多くは韓国、台湾、中国などアジア各国の仕入先に依存しています。現地の政治・経済情勢の変化、自然災害、為替変動(円安)などが、製品の供給遅延や調達コストの上昇を招く可能性があります。また、物流拠点の被災や委託配送料の値上げ、原材料価格の高騰なども業績への懸念材料となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。