※本記事は、ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第31期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジャパンエレベーターサービスホールディングスってどんな会社?
同社は独立系エレベーターメンテナンスのパイオニアとして、適正価格と高い技術力を武器に成長を続ける企業です。
■(1) 会社概要
1994年にメンテナンス専門会社として設立されました。2017年に東証マザーズへ上場し、翌2018年には東証一部へ市場変更を果たしています。その後も事業拡大を続け、国内各地への拠点展開やM&Aを推進し、2022年には東証プライム市場へ移行しました。また、香港やインド、インドネシアなどに拠点を設立し、海外展開も進めています。
同社グループの従業員数は連結で2,028名、単体で249名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるKIで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KI | 21.34% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.02% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 11.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役会長兼社長CEOは石田克史氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石田 克史 | 代表取締役会長兼社長CEO | 1994年同社設立とともに社長就任。2017年より会長兼社長CEOとしてグループ経営を牽引。現在に至る。 |
| 今村 公彦 | 取締役副社長CFO経営管理本部長 | 監査法人を経て2017年入社。CFOとして財務・経営管理を統括し、2024年より現職。 |
社外取締役は、渡邊仁(公認会計士・税理士)、遠藤典子(慶應義塾大学大学院特任教授)、矢野美佳(米国ニューヨーク州弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「保守・保全業務」「リニューアル業務」および「その他」事業を展開しています。
■保守・保全業務
エレベーターやエスカレーターの安全な運行を守るため、定期的な保守・点検、検査、清掃、調整などを行います。独立系企業として国内主要メーカー各社の機種に対応できる技術力を持ち、24時間365日体制のコントロールセンターによる遠隔監視や迅速な現場対応を提供しています。顧客はビルオーナーや管理会社です。
収益は、顧客との保守契約に基づき、定期的に受領するメンテナンス料金が主な源泉です。契約形態には、部品交換や修理まで含むフルメンテナンス契約(FM契約)と、点検のみを行う点検契約(POG契約)があります。運営は主にジャパンエレベーターサービスホールディングスおよび各地域の事業子会社が行っています。
■リニューアル業務
設置から長期間経過したエレベーターに対し、信頼性や安全性の向上、省エネ化を目的として、制御盤や巻上機などの主要装置の交換や全面的な撤去新設工事を行います。特に製造から20年程度経過した機種を対象に、部品供給停止リスクへの対応やバリアフリー化などの提案を行っています。
収益は、ビルオーナーなどの顧客から受領する工事代金が源泉となります。同社グループが独自に開発したリニューアル製品や制御盤を活用し、コスト競争力のあるサービスを提供しています。運営はジャパンエレベーターパーツや各事業子会社が担っています。
■その他
上記に加え、メンテナンス用パーツの販売や、エレベーター内でのメディア事業を展開しています。メディア事業では、エレベーター内に防犯カメラ機能付きのデジタルサイネージを設置し、広告配信と防犯サービスを提供することで付加価値を高めています。
収益は、パーツ販売による代金や、メディア事業における広告主からの広告掲載料などが源泉となります。運営はジャパンエレベーターパーツやエレベーターメディアなどが主に行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長しており、毎期数十億円規模の増収を続けています。利益面でも経常利益、当期利益ともに増加傾向にあり、売上規模の拡大に伴い利益率も高水準を維持・向上させています。全体として力強い成長トレンドにあると言えます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 245億円 | 298億円 | 349億円 | 422億円 | 494億円 |
| 経常利益 | 37億円 | 42億円 | 51億円 | 69億円 | 86億円 |
| 利益率(%) | 15.2% | 14.2% | 14.6% | 16.2% | 17.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 21億円 | 21億円 | 24億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益もしっかりと伸長しており、収益性が向上しています。営業利益率も改善傾向にあり、効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。販管費も増加していますが、売上の伸びがそれを上回っており、健全な利益拡大を実現しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 422億円 | 494億円 |
| 売上総利益 | 160億円 | 188億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.8% | 38.0% |
| 営業利益 | 68億円 | 86億円 |
| 営業利益率(%) | 16.2% | 17.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が32億円(構成比31%)、販売手数料が13億円(同13%)を占めています。人員増強に伴う人件費や営業活動に伴う費用が主なコスト要因となっています。
■(3) セグメント収益
保守・保全業務は契約台数の堅調な積み上げにより増収となり、全体の約6割を占める基盤事業として安定成長しています。リニューアル業務も営業体制の強化や部品供給停止物件への提案が奏功し、売上が大きく伸長しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 保守・保全業務 | 265億円 | 305億円 |
| リニューアル業務 | 143億円 | 173億円 |
| その他 | 14億円 | 15億円 |
| 連結(合計) | 422億円 | 494億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
パターン判定
**健全型**
営業活動でしっかり現金を稼ぎ出し、その範囲内で借入金の返済や投資を行っている、財務体質の健全な状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 53億円 | 56億円 |
| 投資CF | -28億円 | -15億円 |
| 財務CF | -25億円 | -40億円 |
財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「何よりも安全のために。」「見えないからこそ手を抜かない。」「信頼を礎に。」を経営理念として掲げています。独立系メンテナンス企業として、メンテナンス品質の向上を図るとともに、メーカー主導の価格体系を見直すことで「適正価格の実現」を目指し、誰もが安心してエレベーターを利用できる社会の実現を使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「何よりも安全のために。」という理念のもと、品質と安全を最優先する文化を持っています。独立系企業として、特定のメーカーにとらわれず国内主要メーカーの機種に対応できる高い技術力を重視しています。また、独自の研修施設や資格制度を通じた人材育成に注力し、技術水準の向上と社員の成長を支援する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、成長性と収益性を高め、安定的な事業成長によって企業価値を継続的に向上させることを重視しています。具体的には、成長性の指標として「売上高成長率」を、収益性の指標として「売上高営業利益率」を重要な経営指標と位置付け、これらの向上を目指して経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は中長期的な成長に向け、地域ごとの事業子会社制による営業力強化やM&Aを通じた事業エリアの拡大を推進し、保守契約台数の増加を図っています。また、リニューアル事業の強化、採用力強化による人材確保と育成、財務基盤の安定化にも注力しています。海外市場への展開や、研究開発施設を活用した技術開発も重要な戦略として掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、高品質なメンテナンスサービスを提供するためには人材が競争力の根幹であると考え、採用と育成に注力しています。独自の研修プログラム「STEP24」や社内技術認定制度を通じて、未経験者からスペシャリストまで段階的に技術力を高める環境を整備しています。また、多様な人材の確保と、働きやすくやりがいのある職場環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.8歳 | 7.6年 | 6,647,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 29.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 43.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術職(1,271名)、G3認定者(551名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の仕入先への依存リスク
エレベーター等のメンテナンスに必要な部品の中には、品質維持の目的から特定のメーカー(系列会社含む)からのみ購入するものがあります。これらの部品について供給不足や調達遅延が発生した場合、メンテナンス業務を適時に実施できなくなる可能性があります。また、部品価格の高騰をサービス価格に転嫁できない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 競合に関するリスク
メンテナンス市場には、メーカー系や他の独立系など多数の競合が存在します。競争激化により新規契約獲得数の減少や契約切り替え、サービス価格の下落が発生した場合、メンテナンス事業を単一事業とする同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) メンテナンス用パーツの在庫及び評価リスク
多機種のエレベーターに対応するため、また長期間のメンテナンスに備えて多くのパーツを在庫として保有しています。収益性の低下等により棚卸資産の資産価値が低下した場合、評価損の計上が必要となり、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 事故・災害等に伴うリスク
メンテナンス作業における人的ミスや、地震等の災害、機器の欠陥等により、機器の損傷や人身事故が発生する可能性があります。安全指導や保険加入等の対策を行っていますが、保険でカバーしきれない損失や社会的信用の失墜が生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。