※本記事は、ウェーブロックホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月18日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ウェーブロックホールディングスってどんな会社?
ウェーブロックホールディングスは、樹脂加工技術を核に建設・農業・自動車部材など幅広い分野へ複合素材製品を提供する持株会社です。
■(1) 会社概要
同社は1964年6月、イタリアの技術導入を目的に日本ウェーブロックとして設立されました。2005年4月に持株会社体制へ移行し現社名へ変更するとともに、ダイオ化成を完全子会社化しました。2009年のMBOによる上場廃止を経て、2017年4月に東京証券取引所市場第二部へ再上場を果たし、その後市場第一部を経て現在はスタンダード市場に上場しています。2021年4月には新体制のもと、新たなグループビジョンを制定しました。
2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は616名(単体47名)です。筆頭株主は上田八木短資で、第2位は個人(黒澤博氏)、第3位は外国法人のRE FUND 107-CLIENT ACとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 上田八木短資株式会社 | 2.65% |
| 黒澤 博 | 2.32% |
| RE FUND 107-CLIENT AC | 2.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役兼執行役員社長は石原智憲氏が務めています。社外取締役比率は80.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石原 智憲 | 代表取締役兼執行役員社長 | 1989年リクルート入社。同社財務部長等を経て2009年同社入社。管理本部長等を歴任し、2021年4月より現職。 |
社外取締役は、山木浩(元UL Japan社長)、岡野真也(弁護士)、萩原邦章(萩原工業相談役)、柚木憲一(元野村ビジネスサービス社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マテリアルソリューション事業」および「アドバンストテクノロジー事業」を展開しています。
■(1) マテリアルソリューション事業
建設資材、農業資材、住宅資材、食品包材など、幅広い分野に向けた合成樹脂製品(シート、フィルム、メッシュ、ネット等)を提供しています。建設現場の仮設資材、農業用遮光ネット、住宅用防虫網、食品用パッケージなどが主力製品です。また、地中熱を利用した再生可能エネルギー活用ソリューションも手掛けています。
収益は、建設会社、農業生産者、ホームセンター、食品メーカー等への製品販売から得ています。運営は主に株式会社イノベックスが行っており、その他、株式会社エイゼンコーポレーションなどの子会社が担当しています。
■(2) アドバンストテクノロジー事業
自動車外装用の金属調加飾フィルムや、自動車・家電分野のディスプレイ向け高透明二層シートなどを製造・販売しています。メッキや塗装に代わる環境配慮型の加飾技術として、自動車や家電のデザイン性を高める部材を提供しています。その他、医療用湿布基材への加工や開封テープの販売も行っています。
収益は、自動車部品メーカーや家電メーカー等への製品販売から得ています。運営は主に株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジーが行っており、海外子会社も展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は一時的な減少があったものの、直近では回復・増加傾向にあります。利益面では、2021年3月期をピークに減少しましたが、ここ数期は底堅く推移しており、2025年3月期は増益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 292億円 | 210億円 | 226億円 | 236億円 | 256億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 9億円 | 7億円 | 7億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 4.3% | 3.2% | 2.9% | 2.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 24億円 | 7億円 | 23億円 | 5億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加していますが、売上原価率の上昇により売上総利益率は若干低下しました。販売費及び一般管理費も増加していますが、売上高の伸長が上回り、営業利益は増加しています。全体として増収増益を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 236億円 | 256億円 |
| 売上総利益 | 54億円 | 56億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.9% | 22.1% |
| 営業利益 | 4億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 1.6% | 1.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14億円(構成比28%)、荷造運搬費が6億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
マテリアルソリューション事業は、原材料価格やコスト上昇分の価格転嫁が進み売上が増加しましたが、コスト増の影響で利益は減少しました。一方、アドバンストテクノロジー事業は、金属調加飾フィルムや成形加工品の販売が好調で増収となり、生産効率向上等により利益が大幅に増加しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| マテリアルソリューション | 177億円 | 195億円 | 10億円 | 9億円 | 4.7% |
| アドバンストテクノロジー | 58億円 | 61億円 | 0.4億円 | 1億円 | 2.0% |
| 連結(合計) | 236億円 | 256億円 | 4億円 | 4億円 | 1.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、運転資金および設備投資資金を自己資金または金融機関からの借入で調達しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、金属調加飾フィルムの中国・インド市場での採用拡大や、北米向け車載エンブレム案件の量産移行、国内自動車メーカーの生産復調などにより大幅に増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べて支出が減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期の収入から支出に転じました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1億円 | 22億円 |
| 投資CF | -16億円 | -14億円 |
| 財務CF | 16億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、ステークホルダーの幸せを最大化するため、業界の中でも世界トップクラスの収益性を誇る存在感のある企業になることをビジョンとして掲げています。また、製造技術、ノウハウ、ビジネス上のリレーションやネットワークを駆使して、社会が抱えるさまざまな「不」を解決することをミッションとしています。
■(2) 企業文化
組織の共通の価値観(バリューズ)として、「個人を尊重し、正直であり誠実に行動し、前向きな失敗は問わない」ことを掲げています。この方針のもと、安定的成長を前提とした長期利益の獲得を企図し、収益性や効率性を重視した経営を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2026」を策定し、「安定的かつ継続的な成長を前提とした長期利益の獲得により従業員・株主への持続的な還元を実行する」を基本戦略としています。利益率やROE、ROIC等の収益性や効率性を重視した経営を行うことを目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「マテリアルシナジー」をキーワードに、技術・素材、事業、成長手段、ジオグラフィック、パートナー企業の5つの「組み合わせ」による価値創造を推進しています。マテリアルソリューション事業ではコスト削減と価格転嫁、海外展開を進め、アドバンストテクノロジー事業では金属調加飾フィルム分野への資源集中と高付加価値製品の開発に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を組織の競争力の源泉と認識し、人材の開発・育成・活用を通じて長期的な持続可能性の実現を目指しています。人材開発部を中心に、多様な人材の採用、スキルアップ研修の提供、キャリアアップ支援などを行っています。また、フレックスタイムやテレワーク等の柔軟な働き方の推進、健康経営への取り組みも強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 49.1歳 | 17.0年 | 8,167,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※対象となる女性パート・有期従業員がいないため、非正規の男女賃金差異は記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格の変動と調達リスク
製品の原材料は石化原料への依存度が高く、ナフサ価格や為替変動の影響を強く受けます。価格転嫁が進まない場合、収益性が低下する可能性があります。また、一部原材料は特定メーカーに依存しており、調達困難時に代替品の確保が遅れると製品供給に支障をきたすリスクがあります。
■(2) 国内市場の成熟と競争激化
主力事業は建設・住宅・農業資材等の国内市場に依拠しており、人口減少に伴い市場全体の成長性が乏しくなることが懸念されます。また、成熟した国内市場において海外からの廉価品流入により価格競争が激化しており、収益性に影響を与える可能性があります。
■(3) 自然災害による生産への影響
生産拠点や外注加工場が東海・東南海地震の震源域とされる静岡県西部に集中しています。大規模地震や台風等の自然災害により生産設備が被害を受けた場合、操業停止や製品供給の遅延が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、近隣の原子力発電所の状況による影響もリスク要因です。



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