ウェーブロックホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウェーブロックホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウェーブロックホールディングスは東証スタンダード市場に上場し、各種プラスチックや繊維を用いた建設・農業資材等のマテリアルソリューション事業と、自動車・家電向け加飾フィルム等のアドバンストテクノロジー事業を展開しています。直近の業績は売上高が減収となった一方、営業利益は増益を達成しました。


※本記事は、ウェーブロックホールディングスの有価証券報告書(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ウェーブロックホールディングスってどんな会社?


同社グループは、独自技術による高品質な合成樹脂製品の製造・販売を主力事業として展開しています。

(1) 会社概要


同社は1964年、イタリアの技術を導入するために日本ウェーブロックとして設立され、製品の生産を開始しました。1996年に東証二部へ上場し、2005年に現在の持株会社体制へ移行しています。2013年には製販分離と統合を行い体制を強化し、2022年に東証スタンダード市場へ移行しました。

同社の従業員数は連結で628名、単体で49名です。筆頭株主はATRAで、第2位はシティインデックスファーストとなっています。

氏名 持株比率
ATRA 9.79%
シティインデックスファースト 9.66%
野村絢 9.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表者は代表取締役執行役員社長の石原智憲氏です。社外取締役比率は83.3%です。

氏名 役職 主な経歴
石原智憲 代表取締役執行役員社長 1989年リクルート入社。2009年同社執行役員管理本部長に就任。2010年に取締役となり、2021年より現職。


社外取締役は、山木浩(イセノート代表取締役)、岡野真也(弁護士)、萩原邦章(萩原工業相談役)、原澤三夏(弁護士)、柚木憲一(元野村ファシリティーズ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マテリアルソリューション」および「アドバンストテクノロジー」事業を展開しています。

マテリアルソリューション

高品質な各種合成樹脂製品(シート、フィルム、ネット等)を、建設資材、住宅資材、農業資材、日用雑貨、食品包材等の幅広い分野に向けて提供しています。ビルディング、アグリ、リビング、パッケージング、環境ビジネスの各ソリューション部門を展開し、市場の多様な変化に対応しています。

製品の販売や関連施工工事から収益を得ています。運営は主にイノベックス、エイゼンコーポレーション、大連嘉欧農業科技有限公司、ミネなどの連結子会社が行っています。

アドバンストテクノロジー

金属調加飾フィルム分野として、特殊金属を蒸着したフィルムを使用した自動車外装用テープや部品外装用加飾フィルムを製造・販売しています。また、自動車や家電向けのディスプレー用高透明二層シートや、特殊印刷加工、消費財向けの開封テープなども提供しています。

製品は自動車や家電業界の加工メーカー等での組み立てを経て最終ユーザーに提供され、製品の販売から収益を得ています。運営は主にウェーブロック・アドバンスト・テクノロジーおよび海外子会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は長期的に増加傾向にありましたが、直近では減収に転じています。経常利益は安定して推移しているものの、利益率は緩やかな低下傾向が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 210億円 226億円 236億円 256億円 251億円
経常利益 9億円 7億円 7億円 7億円 7億円
利益率(%) 4.3% 3.2% 2.9% 2.7% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 25億円 -1億円 -2億円 -3億円

(2) 損益計算書


直近2期において売上高は微減となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しており、利益率の改善が進んでいます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 256億円 251億円
売上総利益 56億円 58億円
売上総利益率(%) 22.1% 22.9%
営業利益 4億円 4億円
営業利益率(%) 1.6% 1.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比29.5%)、荷造運搬費が6億円(同11.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


マテリアルソリューション事業は堅調に推移し増収となりましたが、アドバンストテクノロジー事業は減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
マテリアルソリューション 195億円 198億円
アドバンストテクノロジー 61億円 53億円
連結(合計) 256億円 251億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは積極型です。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 12億円
投資CF -14億円 -12億円
財務CF -2億円 9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も55.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

ビジョンとして「業界の中でも世界トップクラスの収益性を誇る存在感のある企業になること」、ミッションとして「社会が抱えるさまざまな「不」を解決すること」を掲げ、ステークホルダーの幸せを最大化することを目指して経営を行っています。

(2) 企業文化

組織の共通の価値観として「バリューズ」を定めており、「個人を尊重し、正直であり誠実に行動し、前向きな失敗は問わない」ことを重視しています。従業員が自由に意見を出し合い、失敗から学び成長できる風土の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標

安定的成長を前提とした長期利益の獲得を企図し、利益率やROE、ROIC等、収益性や効率性を重視した経営を行っていくことを目指しています。中長期的視野に立った事業ポートフォリオの構築を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策

「異なる特徴を持つモノを複数組み合わせることで新たな価値を生み出すこと」をマテリアルシナジーとし、事業領域の拡大に取り組んでいます。具体的には、事業戦略のゼロベースでの見直し、ハードとソフトの三位一体化、生産合理化によるコストダウン、海外展開の強化を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

人的資本を重要な経営資源と位置づけ、従業員エンゲージメントの向上を中核指標としています。人財育成、健康経営、報酬還元の三位一体で人的投資を推進し、多様な働き方を取り入れながら自走型の組織文化の醸成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.2歳 16.2年 8,125,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 63.7%
男女賃金差異(正規雇用) 61.4%
男女賃金差異(パート・有期) -

※提出会社のパート・有期労働者については、対象となる女性従業員がいないため記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料等の仕入価格高騰

原材料の一部を特定メーカーに依存しており、供給制限や代替品への切り替えによるコスト上昇のリスクがあります。また、石化原料価格の高騰を製品価格に転嫁できない場合、同社の収益性が低下する恐れがあります。

(2) 生産設備の長期停止

一部の製品は専用生産設備の重複化がされておらず、長期間の停止を余儀なくされた場合、製品供給が一時的に滞り、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新規設備投資の遅れもリスクとして認識されています。

(3) 在庫の過剰生産や滞留

受注生産におけるロット単位や歩留まりによる過剰生産、また計画生産品目において実際の販売が計画を下回った場合、在庫処分による損失の計上や破棄を余儀なくされ、業績に影響を与えるリスクがあります。

(4) 為替レートの変動

海外展開に伴い外貨建資産および外貨建取引が増加しており、為替相場の変動や、為替リスクヘッジ目的で行うデリバティブ取引(為替予約等)の評価損の計上が、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。