※本記事は、株式会社イノベーションホールディングスの有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イノベーションホールディングスってどんな会社?
東京を中心とした飲食店向けの店舗転貸借事業と不動産売買事業を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
同社は2007年に設立され、会社分割により旧テンポリノベーションから飲食店舗出退店支援事業を承継しました。2013年にテンポイノベーションへ商号変更し、2017年にマザーズ上場、2018年に東証一部へ市場変更を果たしました。2024年10月に持株会社体制へ移行し、現在のイノベーションホールディングスへ社名を変更しています。
現在の従業員数はグループ全体で196名、単体で44名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は移動体通信事業などを展開する親会社のクロップスであり、第2位は外国法人の信託口座、第3位には同社専務取締役の志村洋平氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| クロップス | 59.72% |
| UNION BANCAIRE PRIVEE(常任代理人 三菱UFJ銀行) | 4.66% |
| 志村洋平 | 1.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は原康雄氏が務めており、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 原康雄 | 代表取締役社長 | レインズインターナショナルを経て、同社取締役営業部長等を歴任。2011年より社長に就任。 |
| 志村洋平 | 専務取締役経営管理本部管掌兼経営管理本部長 | レインズインターナショナルを経て同社取締役管理部長等に就任。2023年より現職。 |
| 東城学将 | 常務取締役 | テレウェイヴリンクス等を経て同社営業部長等を歴任。2024年より現職。 |
| 北澤学 | 取締役 | テレウェイヴリンクス等を経て同社企画営業部長等を歴任。アセットイノベーション代表取締役。 |
| 近藤裕二 | 取締役 | 同社に入社後、営業部長や営業本部長等を歴任。テンポイノベーション代表取締役。 |
| 前田有幾 | 取締役 | いすゞ自動車を経てクロップスに入社。現在は同社親会社のクロップス代表取締役社長執行役員。 |
社外取締役は、川原誠(元いすゞ自動車取締役専務執行役員)、青山理恵(元毛塚会計事務所副所長)、玉伊吹(曙綜合法律事務所所属)です。
2. 事業内容
同社グループは、「店舗転貸借事業」および「不動産売買事業」を展開しています。
■店舗転貸借事業
飲食店を中心とした店舗物件を不動産オーナーから賃借し、店舗出店希望者に転貸するサービスを提供しています。出店費用を抑えられる居抜き物件を多く扱い、出店希望者と退店者の円滑なマッチングを支援することで、オーナー、不動産業者、出店者、撤退者のそれぞれにメリットを提供しています。
収益源は、転貸借物件の出店者から毎月継続的に受領する賃料や更新料、契約時の礼金や造作売却等の手数料、および家賃滞納リスクに備える保証料です。事業の運営は主にテンポイノベーションおよびセーフティーイノベーションが行っています。
■不動産売買事業
各地域の不動産業者や不動産オーナーからの情報提供等を通じて、市場性の高い都心の中小型店舗物件を中心とした事業用不動産の仕入れおよび販売を行っています。また、土地を購入または借りた後に小型ビルを建築して販売するケースもあります。
仕入れた販売用不動産を購入希望者に売却することで得られる収益が主な収益源となります。不動産売買取引を行うことで不動産会社との関係を深め、グループ全体での優良物件確保のルート開拓にもつなげています。運営は主にアセットイノベーションが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は右肩上がりで成長を続けており、直近の事業年度では200億円を突破しました。経常利益も増益傾向にあり、利益率も11%台に上昇するなど、安定した収益基盤の拡大が伺えます。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 131億円 | 143億円 | 167億円 | 200億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 10億円 | 14億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 9.7% | 7.1% | 8.6% | 11.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 7億円 | 10億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに大きく伸長しています。利益率も改善傾向にあり、本業での稼ぐ力が着実に強化されていることが読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 167億円 | 200億円 |
| 売上総利益 | 32億円 | 47億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.4% | 23.3% |
| 営業利益 | 14億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 10.2% |
販売費及び一般管理費(約26億円)のうち、給与及び手当が9億円(構成比33%)、賞与が3億円(同11%)、役員報酬が3億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の店舗転貸借事業は、新規契約件数および転貸借物件数の純増が牽引し堅調な増収となりました。不動産売買事業も大型かつ高収益な物件の売却が寄与し、大きく売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 店舗転貸借事業 | 152億円 | 178億円 |
| 不動産売買事業 | 15億円 | 22億円 |
| 連結(合計) | 167億円 | 200億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う積極型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 20億円 |
| 投資CF | 2億円 | -5億円 |
| 財務CF | -2億円 | 0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「貢献創造~挑戦と進化~」を企業理念に掲げています。不動産オーナー、不動産業者、飲食店舗出店者や撤退者等に対して敬意と感謝の念を持ち、常に初心を忘れることなく、事業用不動産領域におけるプロフェッショナルとして責任ある行動に尽力して事業を展開しています。
■(2) 企業文化
店舗物件のスタンダードを確立すべく、専門性を追求し組織の充実を図ることを重視しています。また、社員一人ひとりが事業を通じて成長を実感できる環境を整え、「社員の安心と成長を起点に、会社の発展と利益を生み出す」という価値観のもと、お客様と社会への価値提供に主体的に取り組む文化があります。
■(3) 経営計画・目標
事業展開上、転貸借物件数の増加を最重要事項に位置付けており、中長期的な経営目標として転貸借物件数5,500件を目標としています。転貸借契約数の最大化を通じてサブスクリプション型収益である賃料差益の最大化を実現し、企業価値の積極的な向上を図る方針です。
* 転貸借物件数:5,500件
■(4) 成長戦略と重点施策
東京を中心とした1都3県において、さらなる転貸借物件数の積み上げを目指しています。そのため、情報入手先の多様化や関係性の強化による優良物件の確保を進めるとともに、専門知識を身に付けた優秀な人材の採用・教育強化、WEBサイト等を通じた認知度向上、コーポレート・ガバナンス機能の強化を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な経営資本の一つと位置付け、「事業に深く共感し、お客様と社会への価値提供に主体的に取り組む人材」の確保、育成、定着に向けた取り組みを推進しています。新入社員研修や現場でのOJTによる実践力の養成を行うほか、仕事と生活の両立支援や健康経営の推進、成果に報いる報酬制度の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.1歳 | 5.2年 | 6,618,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 57.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
同社および連結子会社は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律および育児・介護休業法に基づく公表義務の対象ではないため、有報には一部項目の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(33.7%)、キャリア採用者数(72名)、有給休暇取得率(40.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 飲食業界および不動産市況の変動リスク
主力である店舗転貸借事業は飲食店舗を中心としています。このため、景気動向や地価動向、不動産市況、外食産業の市場動向、金融動向等の急激な変動によっては、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 差入保証金および空き家賃に関するリスク
店舗物件の賃貸借契約において賃貸人に対して多額の保証金を差し入れており、賃貸人の倒産等により回収不能となるリスクがあります。また、空き店舗発生時には入居者が見つかるまで毎月定額の空き家賃が発生し、収益を圧迫する可能性があります。
■(3) 法令変更および許認可の取り消しに関するリスク
店舗の造作物売買は古物営業法、店舗転貸借は民法や借地借家法等の規制を受けています。予期せぬ法令変更や新たな規制の制定、何らかの事由による許認可の取り消し等が生じた場合、事業展開に制約を受けるリスクがあります。
■(4) 販売用不動産の在庫リスク
不動産売買事業では販売用不動産を保有しています。当初の販売計画から大幅な乖離が生じた場合や、市場動向により滞留または販売価格の下落が発生した場合には、不動産の評価損の計上等により業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。