※本記事は、株式会社イノベーションホールディングス の有価証券報告書(第19期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イノベーションホールディングスってどんな会社?
イノベーションホールディングスは、東京を中心に飲食店等の店舗物件に特化した転貸借事業および不動産売買事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2007年に設立され、飲食店舗出退店支援事業を開始しました。2017年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2018年には市場第一部へ市場変更を果たしています。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。2024年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。
2025年3月末時点の連結従業員数は144名、単体従業員数は38名です。筆頭株主は親会社であるクロップスで、第2位は資産管理業務を行う外国法人(常任代理人:三菱UFJ銀行)、第3位は同社専務取締役の志村洋平氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| クロップス | 59.88% |
| UNION BANCAIRE PRIVEE | 4.67% |
| 志村 洋平 | 1.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は原康雄氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 原 康雄 | 代表取締役社長 | 2005年レインズインターナショナル入社。2008年同社取締役営業部長、2011年代表取締役社長兼開業支援営業部長を経て、2015年より現職。 |
| 志村 洋平 | 専務取締役経営管理本部管掌兼経営管理本部長 | 2001年レインズインターナショナル入社。2007年同社取締役管理部長、2019年専務取締役。2023年より現職。 |
| 東城 学将 | 常務取締役 | 2008年テレウェイヴリンクス入社、同社出向。2015年営業部長、2019年常務取締役店舗転貸借事業統括本部管掌を経て、2024年より現職。 |
| 北澤 学 | 取締役 | 2005年レインズインターナショナル入社。2009年同社企画営業部長、2017年取締役営業企画室長を経て、2024年より現職。 |
| 近藤 裕二 | 取締役 | 2009年同社入社。2018年営業部長、2022年店舗転貸借事業統括本部営業本部長を経て、2024年より現職。 |
| 前田 有幾 | 取締役 | 2011年いすゞ自動車入社。2015年クロップス入社。2022年クロップス代表取締役社長執行役員(現任)。2019年より現職。 |
社外取締役は、川原誠(元いすゞ自動車取締役専務執行役員)、青山理恵(毛塚会計事務所副所長)、玉伊吹(曙綜合法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「店舗転貸借事業」および「不動産売買事業」を展開しています。
■店舗転貸借事業
不動産オーナーから店舗物件を賃借し、飲食店等の出店希望者に転貸する事業です。居抜き物件を中心に取り扱い、出店コスト削減や退店時の原状回復負担軽減を実現しています。また、家賃保証サービスも提供しています。
収益は、転貸借物件から得られる毎月の賃料や更新料(ランニング収益)、転貸時の礼金や造作売却益(イニシャル収益)、および家賃保証料から構成されます。運営は主に子会社のテンポイノベーションおよびセーフティーイノベーションが行っています。
■不動産売買事業
店舗不動産の仕入れおよび販売を行う事業です。市場性の高い都心の中小型物件を主要な対象とし、店舗転貸借事業で培ったノウハウを活かして物件の調査・検討を行っています。不動産業者とのリレーションシップ強化も目的の一つです。
収益は、販売用不動産の売却代金から得られます。運営は主に子会社のアセットイノベーションが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間の業績推移です。売上高、経常利益ともに順調に拡大しており、成長基調を維持しています。特に直近では売上高167億円、経常利益14億円に達し、利益率も8%台後半で安定しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 131億円 | 143億円 | 167億円 | |
| 経常利益 | 13億円 | 10億円 | 14億円 | |
| 利益率(%) | 9.7% | 7.1% | 8.6% | |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 7億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、営業利益率も改善傾向にあります。増収効果が利益の押し上げに寄与していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 143億円 | 167億円 |
| 売上総利益 | 26億円 | 32億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.0% | 19.4% |
| 営業利益 | 10億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 6.8% | 8.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が6.4億円(構成比34%)、役員報酬が2.2億円(同12%)を占めています。売上原価は主に転貸借物件の賃借料で構成されています。
■(3) セグメント収益
店舗転貸借事業は物件数の積み上げにより増収増益となりました。不動産売買事業も物件売却が進み、売上高は倍増しましたが、人件費増や費用配分の変更等の影響で減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 店舗転貸借事業 | 136億円 | 152億円 | 8億円 | 12億円 | 8.2% |
| 不動産売買事業 | 7億円 | 15億円 | 2億円 | 1億円 | 9.6% |
| 連結(合計) | 143億円 | 167億円 | 10億円 | 14億円 | 8.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.6%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 10億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | 2億円 |
| 財務CF | -5億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「貢献創造~挑戦と進化~」を企業理念に掲げています。不動産オーナー、不動産業者、店舗出店者・撤退者などのステークホルダーに対して敬意と感謝を持ち、事業用不動産領域におけるプロフェッショナルとして責任ある行動に尽力することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「事業用不動産を科学する」ことで取引先との信頼関係を構築することを目指しています。また、不動産業者とのリレーションシップ強化を重視し、きめ細かな営業活動を展開する姿勢を持っています。常に初心を忘れず、挑戦と進化を続けることを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、事業展開上、転貸借物件数の増加を最重要事項と位置付けており、中長期的な経営目標として以下の数値を掲げています。
* 転貸借物件数:5,500件
■(4) 成長戦略と重点施策
店舗物件のスタンダードを確立するため、専門性の追求と組織の充実を図り、転貸借物件数を積み上げる方針です。具体的には、情報収集の多様化による優良物件の確保、シニアクラス営業担当者の採用やeラーニング活用による人材育成、積極的な情報開示による認知度向上、およびコーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループの事業は人的資源に大きく依存するため、専門知識とノウハウを持つ人材の確保・育成を重視しています。採用ではシニアクラスの営業担当者を責任者とする専門部署を設置し、育成ではeラーニングを活用した教育プログラムを実施することで、効率的かつ効果的な社員育成を行う方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.1歳 | 5.4年 | 5,960,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境に関わるリスク
主要事業である店舗転貸借事業は飲食店舗を中心としているため、景気動向、地価、外食産業の市場動向などの影響を受ける可能性があります。不測の事態により消費者の外食意欲が低下し、出店希望者が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 親会社グループとの関係
親会社であるクロップスは同社株式の過半数を所有しています。現在は競合関係や重要な取引はなく、経営の独自性は確保されていますが、将来的に親会社グループとの関係に大きな変化が生じた場合、同社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 差入保証金について
店舗物件の賃貸借契約において多額の保証金を賃貸人に差し入れており、その総額は総資産の約46%を占めています。賃貸人の倒産等によりこれらの保証金が回収不能となった場合、同社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 空き家賃の発生リスク
同社は転借人の有無にかかわらず毎月定額の家賃を支払う契約となっています。新規仕入れ後や退去後に次の入居者が決まらない期間は空き家賃が発生し、長期間解消されない場合の解約費用の発生とともに、業績に悪影響を与える可能性があります。



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