AIAIグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AIAIグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するAIAIグループは、認可保育園や多機能型事業所等の運営を中心としたチャイルドケア事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前年比増収の146億円、営業利益は11億円となり増収増益を達成しました。人材事業も手がけ、グループの事業基盤拡大を進めています。


※本記事は、AIAIグループ株式会社の有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AIAIグループってどんな会社?


保育事業や療育事業などを通じたチャイルドケアサービスを軸に社会課題の解決に取り組む企業です。

(1) 会社概要


2007年1月に保育・介護事業の運営を目的としてglobal bridgeを設立し、同年3月に初の保育施設を開設しました。2015年にアニヴェルセルHOLDINGSからの新設分割により持株会社体制へと移行し、2019年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場しました。その後、2024年に介護事業を終了し、2026年にはきららグループホールディングスを完全子会社化するなど、チャイルドケア事業への注力を進めています。

現在の従業員数は連結で2,354名です。筆頭株主は事業会社であるアニヴェルセルHOLDINGSで、第2位は創業者の貞松成氏、第3位は貞松氏の資産管理会社であるsocial investmentとなっています。

氏名 持株比率
アニヴェルセルHOLDINGS 32.85%
貞松 成 18.27%
social investment 9.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長兼CEOは貞松成氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
貞松 成 代表取締役社長兼CEO 2004年ワタミフードサービス入社。2007年global bridge設立。2015年同社設立に伴い代表取締役社長兼CEO就任。きららグループホールディングス代表取締役等を経て現職。
木本 彰 取締役COO 1979年東急ストア入社。2009年執行役員、2014年常務執行役員を歴任。2020年同社取締役COO就任。モード・プランニング・ジャパン取締役等を経て現職。
戸田 貴夫 取締役CFO 1990年三井物産入社。三井物産フィナンシャルマネジメント部長、MCM FOODS HOLDING Group CFO等を経て2020年同社入社。2021年より現職。
内田 昌昭 取締役(常勤監査等委員) 1978年日本フェリー旅行入社。1984年セブン-イレブン・ジャパン入社。2020年同社入社。グループ各社の監査役等を経て、2021年より現職。


社外取締役は、野口洋(元トビムシ代表取締役)、豊泉美穂子(元東京地方裁判所判事補)です。

2. 事業内容


同社グループは、「チャイルドケア事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) チャイルドケア事業


認可保育園、小規模保育施設、認証保育園などの直営保育施設や、発達に関する専門家が個別にサービスを提供する多機能型事業所を運営しています。東京23区、千葉県、神奈川県、大阪市などでドミナント戦略を展開し、未来を担う子どもたちの育成に努めています。

収益源は、利用者に保育や療育サービスを提供することで国や自治体から受け取る施設型給付などの公費、および保護者からの保育料・利用料です。事業の運営は、AIAI Child Careやモード・プランニング・ジャパンなどの連結子会社が行っています。

(2) その他事業


人材紹介および人材派遣サービスを通じた人材事業のほか、幼児向け各種教育プログラムの提供・販売などを行っています。保育士や看護師などの有資格者を対象に、福祉・医療分野での転職や就業を支援するサイトを運営しています。

収益モデルとして、人材紹介では求職者の就職が決定した際に求人者から成功報酬を受け取ります。また、人材派遣では派遣スタッフの給与に一定割合を上乗せして求人者に請求します。これらの事業は、主にモード・プランニング・ジャパンやCHaiLDなどが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な減少があったものの、ドミナント戦略に基づく新規施設の開設やM&Aの効果などにより増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。経常利益も売上の伸びに伴い高水準を維持していますが、当期利益については減損損失などの特別損失の計上が影響し、マイナスとなる期も見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 120億円 108億円 118億円 131億円 146億円
経常利益 5億円 4億円 9億円 9億円 9億円
利益率(%) 3.9% 3.8% 7.4% 6.7% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 -5億円 0.8億円 0.8億円 -2億円

(2) 損益計算書


売上高は新規施設の開設や既存施設における幼児教育の導入効果、M&Aによる事業拡大によって前年比で増収となりました。保育士の処遇改善による人件費の増加がありましたが、増収効果がこれを上回り、売上総利益および営業利益ともに前年を大きく上回る大幅な増益を達成しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 131億円 146億円
売上総利益 21億円 28億円
売上総利益率(%) 16.4% 19.0%
営業利益 7億円 11億円
営業利益率(%) 5.6% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が4.2億円(構成比25%)、租税公課が4.1億円(同24%)、給料及び手当が3.0億円(同18%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金と借入による資金調達を合わせ、積極的な投資活動に充てる「積極型」の傾向を示しています。当期はM&Aに伴う子会社株式の取得等により投資キャッシュ・フローのマイナス幅が拡大し、借入金等による財務キャッシュ・フローが大きくプラスとなっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は12.1%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 14億円 9億円
投資CF -4億円 -114億円
財務CF -3億円 121億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会課題を解決し、世の中に貢献する」という経営理念を掲げています。保育・療育・教育の3つの「育」を一体的に提供する「AIAI三育圏」に沿った事業展開を推進することで、多様な子どもたちが生まれ持った素晴らしい力を発揮できるよりよい社会の実現を目指し、社会に貢献し続けることを使命としています。

(2) 企業文化


設立当初より「人口問題を解決する」というミッションのもと、事業活動を通じた社会課題の解決に貢献する文化が根付いています。保育を基幹とした公共性の高い事業を営む企業グループとして、公正、透明かつ健全な経営を堅持し、地域社会における重要な役割を果たし続けることで、あらゆるステークホルダーと共生する価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


過去に策定した「AIAIグループ中期経営計画2023~2025」では、最終年度の2026年3月期において連結売上高120億円~130億円、営業利益3億円~5億円を目標としていましたが、これを大幅に上回る水準で着地しました。今後はM&Aの影響等により定量的な業績目標を固定的に掲げることが難しいため、当面の間は新たな中期経営計画を策定しない方針です。

* 売上高146億円
* 営業利益11億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、保育および療育事業領域におけるM&Aを重要な成長戦略の一つとして位置付けています。「AIAI三育圏」の拡大と地域ドミナント戦略を推進し、取得後のPMIを通じて運営体制やサービス品質の標準化・高度化を図ります。また、AIAI PLUSにおける専門的な療育サービスの提供や幼児教育プログラムの充実により、園児の獲得と収益力のさらなる強化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、保育・療育・教育領域における専門人材の確保、育成、配置および定着を、中長期的な企業価値向上の基盤と位置付けています。独自の「社内ライセンス制度」や大学院との連携による教育体制を整備するほか、M&Aによりグループ化した人材サービス機能を活用し、採用力と組織力の強化を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.4歳 3.9年 4,760,833円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。なお、本数値は最大人員会社であるAIAI Child Careのデータです。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 72.6%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金差異(全労働者) 73.5%
労働者の男女の賃金差異(うち正規雇用労働者) 87.1%
労働者の男女の賃金差異(うちパート・有期労働者) 100.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社内ライセンス取得者数(131名)、有給休暇取得率(76.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 施設開設時の経営成績への影響


新たに保育所等の施設を開設する場合、初期の数年間は稼働率が低く、新規採用コストや研修費等の経費が先行するため赤字となる傾向があります。稼働率の向上により通常2〜3年目以降に黒字化しますが、計画通りの開設が困難になった場合は、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 固定資産の減損リスク


同社グループは、チャイルドケア事業において建物や設備などの固定資産を多数保有しています。今後、業績が著しく悪化して投資回収が困難になった場合や、不採算施設の撤退を決定した場合には減損処理が必要となり、同社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 関連法規制・行政方針の変更


認可保育園や多機能型事業所の運営は、国や自治体の補助金・報酬制度に大きく依存しています。少子化対策などの国策が推進されている一方で、将来的に制度の廃止や補助金の削減、報酬の引き下げ等の行政方針の変更が行われた場合、同社グループの財政状態および業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。