マツオカコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マツオカコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マツオカコーポレーションは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、アパレル製品のOEM生産を行う縫製事業と、透湿防水生地を生産するラミネーションフィルム事業を展開しています。業績はバングラデシュやベトナムなどの海外工場の稼働が順調に進捗したことなどから、直近では増収増益の堅調なトレンドとなっています。


※本記事は、マツオカコーポレーションの有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マツオカコーポレーションってどんな会社?


アパレル製品のOEM生産と機能性素材の製造を手がけるグローバル企業の全体像を紹介します。

(1) 会社概要


1956年に松岡呉服店として設立され、1964年に各種繊維製品の製造加工へ業態転換しました。1990年の中国進出を皮切りに、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアなどアジア各地へ生産拠点を拡大しています。2017年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしました。

現在の従業員数は連結で21,086名、単体で177名です。筆頭株主は合同会社マツオカカンパニーで、第2位は創業家で代表取締役社長執行役員を務める松岡典之氏、第3位は金融機関である上田八木短資が名を連ねています。

氏名 持株比率
合同会社マツオカカンパニー 16.91%
松岡典之 11.95%
上田八木短資 3.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は松岡典之氏が務めています。社外取締役は取締役の約23%にあたる3名が選任されています。

氏名 役職 主な経歴
松岡典之 代表取締役社長執行役員 1980年同社入社、営業部長等を経て2000年代表取締役社長。海外子会社董事長などを歴任し、2024年より現職。
渡邉篤史 取締役常務執行役員事業本部長兼事業1部長兼営業3部長 2002年同社入社、営業本部の各部長や事業部統括を経て2024年取締役常務執行役員に就任。2025年より現職。
田村保治 取締役 1982年オンワードホールディングス入社、オンワード商事代表取締役社長等を経て2023年同社入社。2026年より現職。
馬場誠 取締役上席執行役員事業本部事業1部生産技術担当 1975年ハチダイヤ入社、1986年同社入社。生産本部長やCPOを経て、2025年より現職。
金子浩幸 取締役上席執行役員経理財務部長 2005年サザビーリーグ入社、2016年同社入社。経理財務部長やCFOを経て、2025年より現職。
松岡辰徳 取締役上席執行役員総務人事部長 2006年同社入社、海外子会社MDや東南アジア地域担当、中国地域統括等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、江島貴志(オー・エイチ・ティー元代表取締役)、中川康明(オンワード商事元取締役)、ニクライペーテル(JICキャピタル元マネージングディレクター)です。

2. 事業内容


同社グループは、縫製事業およびラミネーションフィルム事業を展開しています。

(1) 縫製事業


メンズ・レディースのカジュアルウェア、インナーウェア、ワーキングウェアなど、幅広いアパレル製品のOEM生産を手がけています。国内外の有力ブランドを顧客とし、高い技術力と品質管理体制を強みに企画・製造・物流まで一貫したサービスを提供しています。

収益はアパレルメーカーや量販店等への製品の販売による対価として得ています。運営はマツオカコーポレーションと同社の海外連結子会社群(中国、バングラデシュ、ベトナム、インドネシア、ミャンマーの各生産拠点)が主に行っています。

(2) ラミネーションフィルム事業


アウトドアウェアやスポーツウェアなどに使用される透湿防水生地の生産を行っています。外部から調達した生地に自社生産の透湿防水フィルムを貼り合わせる加工を施し、機能性素材として国内外のアパレルメーカー等に提供しています。

収益はこれら機能性素材の販売によって得ています。事業の運営は、主に中国の嘉興徳永紡織品やベトナムのJDT VIETNAMなどの現地子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、生産体制の拡充や需要の回復により売上高が拡大傾向にあります。特に海外工場の稼働向上と円安の効果も寄与し、経常利益などの各利益指標も底堅く推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 511億円 628億円 602億円 706億円 743億円
経常利益 10億円 32億円 45億円 42億円 54億円
利益率(%) 2.0% 5.1% 7.5% 5.9% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 23億円 34億円 26億円 45億円

(2) 損益計算書


堅調な受注を背景とした生産量増加により売上高が伸長し、稼働率向上に伴う生産性の改善が売上総利益の大幅な増加につながっています。営業利益も前年比で大きく改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 706億円 743億円
売上総利益 66億円 88億円
売上総利益率(%) 9.3% 11.8%
営業利益 4億円 22億円
営業利益率(%) 0.6% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が16億円(構成比25%)、支払手数料が10億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


縫製事業はワーキングウェアやインナーウェアの需要増加に対応してバングラデシュ工場などの生産体制を拡充したことで増収となりました。一方、ラミネーションフィルム事業は前期のヒット商品向け需要の反動等により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
縫製事業 587億円 660億円
ラミネーションフィルム事業 119億円 82億円
連結(合計) 706億円 743億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 27億円 61億円
投資CF -20億円 -44億円
財務CF 7億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「あらゆる服づくりの舞台裏に私たちがいる」をビジョン(Vision)に、「新たな道を切り拓き、未来を紡ぐ」をミッション(Mission)として掲げています。また、「お客様の全てのニーズに応える」ことを原点(Values)とし、アパレル製品のOEM生産を通じて社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


行動基準として「事実を確認せよ(現物・現場・現実主義)」「決め打ちするな、選択肢を示せ」「すぐに断らず、諦めず、できる方法を考え抜け」などを定めています。現場の事実に基づく柔軟な課題解決や、失敗を恐れず新しい目標に挑戦する風土を重視し、情報を早く広く共有するオープンな組織文化の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2028年度を計画期間とする新中期経営計画「BEYOND2028~Stitch the Future~」を策定しています。持続的な企業価値向上に向けた資本効率の改善を掲げ、最終年度となる2029年3月期において以下の数値目標を設定しています。

・売上高:900億円
・経常利益:60億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:40億円

(4) 成長戦略と重点施策


拡大した生産キャパシティを最大限に活用し、アイテムや拠点の最適配置による利益の最大化を目指します。スマートファクトリー化の推進により納期短縮や品質強化を実現し、「選ばれる工場」としての価値を高めます。また、事業成長に必要な投資と財務健全性のバランスを保ちながら、人的資本への重点的な投資も進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、海外自社工場における高度な縫製技術や品質管理ノウハウを支える人材の育成を競争力の源泉と位置付けています。技術者の派遣を通じたスキル向上や工場横断の改善活動により、現場リーダー層の育成と組織力の強化を図るほか、スマートファクトリー化を牽引するデジタル人材の育成にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 8.4年 5,552,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 42.0%
男性育児休業取得率 -
全労働者の男女の賃金の差異 -
正規雇用労働者の男女の賃金の差異 -
非正規雇用労働者の男女の賃金の差異 -


※同社および連結子会社は法定要件などにより公表義務の対象ではないため、有報には一部項目の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定取引先への依存リスク


同社はユニクロをはじめとするファーストリテイリンググループ向けの販売割合が高く、直接・間接販売を合わせて売上の約7割を占めています。主要顧客の生産戦略の変更や受注動向が、同社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。

(2) カントリーリスク(海外拠点運営)


生産拠点を中国以外のASEAN諸国等へ拡大し最適化を図っていますが、進出先での地政学的リスクの顕在化や国際情勢の変動、法規制の変更、現地での雇用・育成の停滞などが発生した場合、生産活動に支障が生じ業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 為替の変動リスク


製品の多くを海外の生産工場から輸入しているため、決済通貨に対する急激な為替変動が発生した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。為替予約や個別契約による為替変動リスクのヘッジを行っていますが、完全な回避は困難です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。