マツオカコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マツオカコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するアパレルOEM企業です。主要事業としてアパレル製品の企画・製造・物流等を展開し、ユニクロ等の大手顧客を持ちます。当連結会計年度の業績は、生産能力拡大等により売上高は706億円と増収、経常利益は42億円と減益、当期純利益は13億円と減益で着地しました。


※本記事は、株式会社マツオカコーポレーション の有価証券報告書(第69期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マツオカコーポレーションってどんな会社?


マツオカコーポレーションは、アパレル製品のOEM(相手先ブランド製造)事業を主力とし、企画から製造、物流までを一貫して手がける縫製メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1946年に広島県で松岡呉服店として創業し、1956年に法人化しました。1990年代には中国に生産拠点を設立して海外展開を本格化し、2017年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。その後、2022年の市場区分見直しを経て、2023年10月にスタンダード市場へ移行しています。近年は中国に加え、ベトナム、バングラデシュ等へ生産拠点を拡大しています。

現在の連結従業員数は19,635名、単体では167名です。筆頭株主は資産管理会社である合同会社マツオカカンパニーで、第2位は代表取締役社長執行役員の松岡典之氏、第3位は日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行株式会社)となっており、創業者一族が主要株主となっています。

氏名 持株比率
合同会社マツオカカンパニー 17.00%
松岡典之 11.89%
日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行株式会社) 2.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は松岡典之氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
松岡 典之 代表取締役社長執行役員 1980年同社入社。営業部長、専務取締役等を経て2000年代表取締役社長に就任。グループ各社の董事長等を兼任し、2024年4月より現職。
渡邉 篤史 取締役常務執行役員事業本部長兼事業1部長兼営業3部長 2002年同社入社。営業本部営業3部部長、上席執行役員事業1部統括等を歴任。2025年4月より現職。
田村 保治 取締役常務執行役員経営企画部長 1982年樫山(現オンワードHD)入社。オンワード商事代表取締役社長等を経て2023年同社入社。2025年4月より現職。
馬場 誠 取締役上席執行役員事業本部事業1部生産技術担当 1986年同社入社。生産本部長、CPO等を歴任。2025年4月より現職。
金子 浩幸 取締役上席執行役員経理財務部長 2005年サザビー(現サザビーリーグ)入社。2016年同社入社。CFO等を歴任し、2025年4月より現職。
松岡 辰徳 取締役上席執行役員総務人事部長 2006年同社入社。海外事業統括部長、中国地域統括等を歴任。2025年4月より現職。
辻 和克 取締役 特命担当 1981年東レ入社。インドネシア現地法人社長等を歴任し、2020年同社入社。JV管理部管掌等を経て2024年4月より現職。


社外取締役は、江島貴志(元オカノハイテック代表取締役)、中川康明(元オンワード商事取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アパレルOEM事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) アパレルOEM事業


カジュアルウェア、ワーキングウェア、インナーウェア等のアパレル製品の企画・製造・物流を行っています。主な顧客はアパレルメーカー、SPA(製造小売業)、商社、量販店等であり、特にユニクロ等の大手ブランド向けの製品を主力としています。

収益は、顧客からの発注に基づき製品を製造・販売することで得ています。運営は、同社および海外の連結子会社(茉織華実業(集団)有限公司、TM Textiles & Garments Ltd.など)が行っており、中国、ベトナム、バングラデシュ、インドネシア、ミャンマーの各工場で縫製加工を行っています。

(2) その他(生地加工事業)


高機能なアウトドアウェアやスポーツウェア等に利用される透湿防水生地の生産を行っています。外部から調達した生地に自社生産した透湿防水フィルムをラミネート加工することで付加価値を高め、アパレル製品のみならず医療用品等にも利用されています。

収益は、国内外のアウトドアウェアメーカーやアパレルメーカーへの素材販売から得ています。運営は、主に中国の嘉興徳永紡織品有限公司およびベトナムのJDT VIETNAM CO.,LTDが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第66期に一度減少しましたが、その後は増加傾向にあり、特に直近の第69期は706億円と過去最高水準となっています。利益面では、経常利益率が変動しており、第66期に低下した後回復しましたが、直近では再び利益率がやや低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 539億円 511億円 628億円 602億円 706億円
経常利益 41億円 10億円 32億円 45億円 42億円
利益率(%) 7.6% 2.0% 5.1% 7.5% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 -2億円 23億円 34億円 13億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の大幅な増加に伴い売上原価も増加しています。売上総利益率は前期と比較して低下しており、コスト増の影響が見られます。営業利益率も低下傾向にあり、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 602億円 706億円
売上総利益 65億円 66億円
売上総利益率(%) 10.8% 9.3%
営業利益 8億円 4億円
営業利益率(%) 1.3% 0.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が16億円(構成比26.1%)、支払手数料が8億円(同13.3%)を占めています。売上原価に関しては、原材料費や労務費、外注加工費等が主な内訳となります。

(3) セグメント収益


当連結会計年度の売上高は、前期比で大幅に増加しました。これは、中国からASEAN諸国等への生産地シフトが進み、特にベトナムやバングラデシュの工場での生産能力が向上したこと等が寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
連結(合計) 602億円 706億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と財務活動による調達資金を原資として、投資活動を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 54億円 27億円
投資CF -26億円 -20億円
財務CF -8億円 7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「あらゆる服づくりの舞台裏に私たちがいる」をビジョン(Vision)として掲げています。また、「新たな道を切り拓き、未来を紡ぐ」をミッション(Mission)とし、「お客様の全てのニーズに応える」を原点(Values)として経営を行っています。

(2) 企業文化


同社は「行動基準」として、「事実を確認せよ(情報に惑わされるな 現物・現場・現実主義)」「決め打ちするな、選択肢を示せ」「すぐに断らず、諦めず、できる方法を考え抜け」などを掲げています。現場主義や柔軟な発想、挑戦する姿勢を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中期経営計画「ビジョン2025」を推進しており、2026年3月期を最終年度としています。回復するアパレル需要と拡大した生産能力をマッチングさせ、新たな成長を実現することを基本方針としています。

* 売上高740億円
* 経常利益47億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「サプライチェーンの更なる多元化推進と、『良質なものづくり』の一層の強化」を掲げ、ASEAN諸国等を中心とした多拠点展開でコスト競争力強化と地政学的リスク低減の両立を目指しています。また、「新素材開発及び新たな製品開発」として、透湿・防水・撥水加工技術を活かした機能性素材の提案や新領域の開発を進めています。さらに、「主力OEM事業における営業力の強化」として、既存顧客との関係深耕や新規顧客開拓を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営戦略の実現に向け、データ経営の実践および新人事制度とグローバル人事データベースを軸にした、グローバルに活躍できる人材の採用と育成を進めています。また、多様なバックグラウンドを持つ人材を有機的に結び付け、共に挑戦し学び合う職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 8.5年 5,044,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営環境の変化に起因するリスク


同社グループが取り扱う衣料品は、ファッショントレンドの変化や気候変動、景気動向の影響を受けやすく、顧客からの受注量が減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、ファッションアパレルだけでなくワーキングウェアまで幅広い製品を生産することでリスク低減を図っています。

(2) 特定取引先への依存リスク


同社の主要販売先はファーストリテイリンググループ等であり、同グループへの直接・間接販売の割合が高くなっています。主要販売先の生産戦略変更や受注動向は、同社の業績に重要な影響を与える可能性があります。これに対し、生産アイテムや取引ブランドの幅を広げることや、新規取引先の開拓を進めています。

(3) カントリーリスク


中国以外のASEAN諸国等での生産拠点強化を進めていますが、当該国における地政学的リスク、法規制変更、労働争議等により生産活動に支障が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、生産拠点の分散や、外部専門家との連携、現地コミュニティとの共存共栄によりリスク軽減を図っています。

(4) 為替リスク


製品の多くを海外から輸入しているため、急激な為替変動が発生した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。また、多通貨での金融資産保有により、円換算時の評価額が変動するリスクがあります。これに対し、一部取引先との為替変動リスクを負わない契約の締結や、先物為替予約の実行等で対策を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。