イオレ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イオレ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イオレは東証グロース上場のインターネットメディア企業です。グループコミュニケーション支援サービス「らくらく連絡網」や運用型求人広告プラットフォーム「HR Ads Platform」を展開しています。直近の決算では、主力事業は堅調なものの減損損失等の影響で減収となり、当期純損失を計上しています。


※本記事は、株式会社イオレの有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. イオレってどんな会社?


グループコミュニケーション支援サービス「らくらく連絡網」を基盤に、運用型広告やHRテック事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


2001年に設立され、2005年に主力サービスとなる『らくらく連絡網』の運用を開始しました。その後、2014年にプライベートDMP『pinpoint DMP』を、2020年には『HR Ads Platform』の提供を開始し、データ活用事業を拡大しています。2017年に東証マザーズ(現グロース)へ上場を果たし、近年ではペット事業やWeb3事業へも参入しています。

同社(単体)の従業員数は100名です。筆頭株主は創業者の吉田直人氏で、第2位は資産管理会社の五六です。第3位以下には個人株主や信託口が名を連ねています。

氏名 持株比率
吉田直人 21.30%
五六 5.26%
宮崎羅貴 4.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は瀧野諭吾氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
瀧野 諭吾 代表取締役社長 グリー、KAIZEN Platform執行役員、PKSHA Technology執行役員を経て、2022年ストリートホールディングスCTO。2025年6月より現職。
吉田 直人 取締役会長 1991年グローバルデータ通信(現グラムス)設立。2001年イオレ設立し代表取締役社長。2019年より現職。Digital Entertainment Asset Pte.Ltd. CEO兼任。
貞方 渉 取締役執行役員コーポレートユニット長 日本アジア投資、グローヴァ取締役COO、ロゼッタ取締役などを経て、2022年イオレ入社。2025年4月より現職。
天野 晃 取締役 日本アジア投資、ソフトバンクモバイルなどを経て、2025年JAICオルタナティブインベストメント代表取締役。2025年6月より現職。
渡邊 孝行 取締役 エル・ジャポン、オン・ザ・ネット創業などを経て、2024年ダイナミックソリューショングループ代表取締役。2025年6月より現職。
高桑 昌也 取締役 中央青山監査法人、金融庁証券取引特別調査官などを経て公認会計士・税理士登録。2014年メタプラネット監査役。2025年6月より現職。


社外取締役は、天野晃(JAICオルタナティブインベストメント代表取締役)、渡邊孝行(ダイナミックソリューショングループ代表取締役)、高桑昌也(メタプラネット監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インターネットメディア関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) コミュニケーションデータ事業


グループコミュニケーション支援サービス「らくらく連絡網」の運営および、そのユーザーデータを活用した広告配信サービス「pinpoint」を提供しています。部活動やPTAなどの団体活動従事者が主な利用者です。

広告主からの広告掲載料や、有料版「らくらく連絡網」の利用料収入を得ています。運営は主にイオレが行っています。

(2) HRデータ事業


運用型求人広告プラットフォーム「HR Ads Platform」、求人検索エンジンの運用代行、採用支援システム「ジョブオレ」などを提供しています。効率的な採用を行いたい企業が顧客です。

求人企業から、掲載や応募成果に応じた広告収入、システム利用料を受け取っています。運営は主にイオレが行っています。

(3) Web3事業


提携先であるDigital Entertainment Asset社が運営するWeb3ゲーム内で使用するアイテムやNFTの販売代理、ギルド運営を行っています。

NFTやアイテムの販売代理による手数料収入などを得ています。運営は主にイオレが行っています。

(4) 旅行事業


日帰り旅行ツアー専門サイト「ポケカル」を運営し、シニア層などを対象とした旅行商品を企画・販売しています。

旅行参加者からのツアー代金等が収益源となります。運営は主にイオレが行っています。

(5) ペット事業


ペット専門の情報メディア「休日いぬ部」などを運営し、ペットとのお出かけ情報などを提供しています。

Webサイト上の広告掲載料などを収益としています。運営は主にイオレが行っています。

(6) その他


他社媒体の求人広告枠販売や、大学構内でのセールス・プロモーション(SP)事業を行っています。

広告主からの広告料収入を受け取っています。運営は主にイオレが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は35億円から38億円のレンジで推移していますが、利益面では変動が見られます。当期は減収となり、営業損益および経常損益が赤字に転落しました。また、減損損失の計上により当期純損失も拡大しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 14.4億円 20.9億円 35.6億円 38.2億円 35.5億円
経常利益 ▲2.7億円 ▲0.4億円 0.5億円 0.4億円 ▲0.2億円
利益率(%) ▲19.0% ▲2.1% 1.5% 1.1% ▲0.7%
当期利益(親会社所有者帰属) ▲6.3億円 ▲1.5億円 0.4億円 0.4億円 ▲4.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しました。売上原価率は上昇傾向にあり、売上総利益率は低下しています。営業損益は赤字となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 38.2億円 35.5億円
売上総利益 11.0億円 10.2億円
売上総利益率(%) 28.9% 28.7%
営業利益 0.4億円 ▲0.2億円
営業利益率(%) 1.1% ▲0.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4.2億円(構成比40%)、販売手数料が1.5億円(同14%)を占めています。売上原価においては、仕入高が22億円(構成比82%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


HRデータ事業は堅調に推移しましたが、コミュニケーションデータ事業やペット事業などが減収となり、全体として売上高は減少しました。Web3事業や旅行事業は増収となっています。なお、利益データは開示されていません。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
コミュニケーションデータ事業 8.0億円 5.8億円
HRデータ事業 25.1億円 23.6億円
Web3事業 2.3億円 2.5億円
旅行事業 1.7億円 2.5億円
ペット事業 0.3億円 0.2億円
その他 0.7億円 0.9億円
連結(合計) 38.2億円 35.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できず市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.3%で市場平均を下回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 0.9億円 ▲0.2億円
投資CF ▲3.4億円 ▲0.8億円
財務CF 0.5億円 2.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「新しいテクノロジーを駆使し、今までになかった新しい便利、新しいよろこびを創り出し、世の中を応援し、社会に貢献してゆく」という経営理念を掲げています。この理念のもと、団体活動を支援するサービス等を通じて得られたデータとテクノロジーを融合させ、データベースを最も保有し活かすことのできる企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「データマネジメント力」を強みとしており、「データ集めの仕組み作り」と「データを活用した事業作り」を重視する文化があります。独自サービスから得られるデータを解析し、顧客のマーケティング支援や新サービスの創出に繋げる姿勢を持っています。また、公正で透明性の高い経営に取り組み、ステークホルダーとの良好な関係構築を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長を達成するために、着実に利益を確保することを重視しており、「営業利益」を重要な指標として位置づけています。具体的な中長期の数値目標については記載がありません。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、HRデータ事業の収益強化、コミュニケーションデータ事業の再建、および新規事業の選択と集中に取り組む方針です。HR領域では、主力サービス「HR Ads Platform」の代理店拡充や機能開発を進めます。また、赤字事業であるペット・旅行事業の黒字化を目指す一方、成長中のWeb3事業では商品ラインナップの拡充などを図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は成長過程にあり、専門性やポテンシャルの高い人材の採用を継続する方針です。特に新卒採用による若手社員比率が高まっていることから、これら若手人材の育成とマネジメント体制の構築を重要課題としています。「組織力」と「人材力」の両方を高めるため、社長自らが採用に関与し、多様性の確保にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.9歳 5.1年 5,388,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.3%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異について、同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため公表義務の対象ではなく、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人的資本ROI(▲0.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 求人広告市場の変動


HRデータ事業はインターネットを活用した求人広告市場に依存しています。経済環境の変動や雇用情勢の悪化により求人需要が減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。また、競合他社の新規参入やサービスの台頭により競争が激化した場合には、優位性を保てなくなるリスクがあります。

(2) 技術革新への対応遅延


インターネット関連市場は技術革新や顧客ニーズの変化が速い特徴があります。アドテクノロジー分野における配信システムの高度化やアルゴリズムの変化、プラットフォーム開発における自動化などに適切に対応できない場合、サービス競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 個人情報管理と規制対応


多数のユーザー情報を保有しており、個人情報の漏洩や不適切な利用が発生した場合、法的責任や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。また、Cookie利用制限などのプラットフォーマーの動向や、個人情報保護に関する法的規制の強化に対応できない場合、広告効果の低下や事業活動の制約につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。