※本記事は、株式会社ジーニー の有価証券報告書(第15期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ジーニーってどんな会社?
インターネット広告の収益最大化プラットフォーム「GENIEE SSP」を主軸に、マーケティングSaaSやデジタルPR等の事業を展開するテクノロジー企業です。
■(1) 会社概要
同社は2010年に設立され、翌2011年に主力サービス「GENIEE SSP」の提供を開始しました。2012年にはシンガポールに子会社を設立し海外展開に着手、2016年にはマーケティングオートメーションの提供を開始しSaaS領域へ拡大しました。2017年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2024年にはソーシャルワイヤーを子会社化してデジタルPR事業を開始しています。
2025年3月31日時点の従業員数は、連結877名、単体489名です。株主構成については、筆頭株主は事業会社への貸付等を行う銀行で、第2位は創業者の工藤智昭氏、第3位は個人投資家です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社みずほ銀行 | 44.76% |
| 工藤 智昭 | 29.29% |
| 五味 大輔 | 1.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は工藤 智昭氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 工藤 智昭 | 代表取締役社長兼代表執行役員兼グループCEO | リクルート(現リクルートホールディングス)を経て、2010年4月に同社を設立し社長に就任。複数のグループ会社代表を兼務し、2025年4月より現職。 |
| 西野 勇一 | 取締役 | エスプロデューサーズ等を経て2017年に同社入社。経営企画室長、執行役員コーポレート本部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、越水 遥(弁護士)、鳥谷 克幸(元ヤフー内部監査室長)、轟 幸夫(元SBI証券常務取締役)、佐々木 義孝(元CFOナレッジ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「広告プラットフォーム事業」、「デジタルPR事業」、「マーケティングSaaS事業」および「海外事業」を展開しています。
■広告プラットフォーム事業
インターネットメディアや広告主に対し、広告収益や効果を最大化するプラットフォームを提供しています。主力サービスの「GENIEE SSP」はメディア向け、「GENIEE DSP」は広告主向けに展開しており、デジタルOOH(屋外広告)領域にも取り組んでいます。
広告配信における手数料等をメディアや広告主から受領するモデルです。運営は主に同社が行っています。
■デジタルPR事業
企業の広報・PR活動を支援するサービス群を提供しています。具体的には、プレスリリース配信代行の「@Press」、インフルエンサーによる商品PRサービス「Find Model」、メディア記事のクリッピングやリスクチェックなどのサービスを展開しています。
サービスの利用企業から利用料や配信料等を受領します。運営は、2024年7月に連結子会社となったソーシャルワイヤー等が主に行っています。
■マーケティングSaaS事業
企業のマーケティング活動を支援するBtoB向けSaaSプロダクトを提供しています。営業管理システム「GENIEE SFA/CRM」、チャット接客ツール「GENIEE CHAT」、サイト内検索「GENIEE SEARCH」などを展開しています。
導入企業からシステム利用料(サブスクリプション収入等)を受領します。運営は主に同社が行っています。
■海外事業
海外市場において、インターネットメディア向けの「GENIEE SSP」や広告主向けの「GENIEE DSP」を提供しています。特に東南アジアやインド、北米などに拠点を持ち、現地の通信キャリアやアドネットワーク等と連携しています。
現地のメディアや広告主から広告配信に係る収益を得ています。運営は、Geniee International Pte., Ltd.やZelto, Inc.などの海外子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2022年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上収益は右肩上がりに拡大しています。特に直近の2025年3月期は売上収益が100億円を突破し、税引前利益や当期利益も前期比で大きく増加するなど、成長が加速しています。利益率も高い水準で推移しており、収益性を伴った事業拡大が続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 144億円 | 65億円 | 80億円 | 113億円 |
| 税引前利益 | 7億円 | 23億円 | 13億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 35.3% | 15.9% | 20.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 21億円 | 10億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は70%台後半で安定的に推移しており、高い収益性を維持しています。営業利益率も前期の19.2%から当期は22.3%へと上昇しており、効率的な事業運営が行われていることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 80億円 | 113億円 |
| 売上総利益 | 61億円 | 88億円 |
| 売上総利益率(%) | 76.6% | 77.8% |
| 営業利益 | 15億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 19.2% | 22.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が33億円(構成比46%)、減価償却費及び償却費が6億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、広告プラットフォーム事業が安定的に収益を上げつつ、マーケティングSaaS事業が前期比約40%の増収と高い成長を見せています。また、新たに加わったデジタルPR事業も21億円の売上を計上し、全体の成長に寄与しました。海外事業も増収増益となり、全セグメントで黒字を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 広告プラットフォーム事業 | 43億円 | 48億円 | 22億円 | 22億円 | 46.5% |
| デジタルPR事業 | - | 22億円 | - | 4億円 | 19.9% |
| マーケティングSaaS事業 | 27億円 | 38億円 | 2億円 | 7億円 | 17.7% |
| 海外事業 | 12億円 | 14億円 | 2億円 | 4億円 | 29.0% |
| 調整額 | -2億円 | -8億円 | -11億円 | -12億円 | - |
| 連結(合計) | 80億円 | 113億円 | 15億円 | 25億円 | 22.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で稼いだキャッシュを投資活動に回しつつ、財務活動による支出(借入返済等)も行っていることから、「健全型」のキャッシュ・フロー状態といえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 22億円 |
| 投資CF | -8億円 | -11億円 |
| 財務CF | -8億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は15.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、企業のあらゆるマーケティング活動をテクノロジーで支援することを目指しています。Business Purposeとして「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」、Corporate Purposeとして「日本発の世界的なテクノロジー企業となり、日本とアジアに貢献する」を掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「技術開発力」と「事業推進力」を重視する文化を持っています。プロダクトの企画から開発、サポートまでを内製化し、顧客ニーズに迅速に対応する体制を構築しています。また、作り手であるエンジニアと売り手であるビジネス職の比率バランスを保ち、両者が連携して事業拡大を推進する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2030年ビジョンに向けた中期経営計画において、2023年度から2025年度までの3カ年を「Phase1(アドテク事業再強化)」と位置づけています。ユニークで圧倒的な顧客価値の創造、組織文化の向上、プラットフォームの拡充などを実施し、継続的な成長投資を通じて企業価値の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、インターネット広告市場やSaaS市場の拡大を背景に、AI等の先端技術を活用したプロダクト開発を強化します。また、M&Aによる事業領域の拡大や、海外市場(特に東南アジア、インド、北米等)でのシェア拡大を推進します。さらに、開発体制やグローバル組織体制の強化にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業拡大と業界革新のため、優秀な人材の確保とグローバル組織体制の強化を重視しています。即戦力となる中途採用と組織活性化のための新卒採用を積極的に行い、職種別・階層別研修や資格取得支援等を通じて人材育成を推進しています。年齢や国籍に関わらず、高いスキルや情熱を持つ人材を積極的に登用する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 32.0歳 | 2.6年 | 6,490,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.4% |
| 男性育児休業取得率 | 27.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男女賃金差異(非正規雇用)については、該当者がいない等の理由により記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の育児休業取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット広告市場の動向及び競争環境について
同社の主力事業であるインターネット広告業界は景気動向の影響を受けやすく、景気悪化や広告予算の減額、市場成長の鈍化等が業績に影響する可能性があります。また、生成AIの進展によるビジネスモデルの変革や激しい競争環境において、競合優位性を維持できない場合も業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新への対応について
インターネット関連分野は技術革新が急速に進んでおり、新技術や新サービスへの対応が遅れた場合、競争力が低下し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特にスマートフォン関連技術などへの適応が重要であり、対応のための追加的なシステム投資や人件費が発生する可能性もあります。
■(3) 海外拠点における広告プラットフォーム事業のリスクについて
同社はアジア地域や北米で事業を展開していますが、各国特有の商習慣や法的規制等への対応が困難になった場合、事業推進に支障をきたし、投資回収ができなくなる可能性があります。これにより、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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