三十三フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三十三フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三十三フィナンシャルグループは、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する金融持株会社です。傘下に三十三銀行や三十三リースなどを持ち、預金、貸出、リース、クレジットカードなどの総合的な金融サービスを地域に提供しています。直近の業績は貸出金利息の増加により増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社三十三フィナンシャルグループの有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三十三フィナンシャルグループってどんな会社?


総合金融グループとして地域に根ざしたサービスを展開する同社の概要を紹介します。

(1) 会社概要


同社は2018年に三重銀行と第三銀行の経営統合により設立された金融持株会社です。設立と同時に東京証券取引所および名古屋証券取引所に上場しました。2021年には傘下の両行が合併して三十三銀行が発足し、体制を強化しています。近年では三十三地域創生の子会社化など、地域経済の発展に向けた取り組みを推進しています。

現在、同社グループの従業員数は連結で2,325名、単体で60名規模となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務を行う信託銀行です。また、第3位には保険代理店事業等を行う事業会社の銀泉が名を連ねており、安定した株主基盤のもとで事業を展開しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.10%
日本カストディ銀行(信託口) 4.40%
銀泉 4.06%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.33%です。

氏名 役職 主な経歴
道廣 剛太郎 取締役社長(代表取締役) 1983年住友銀行入行。三井住友フィナンシャルグループ執行役副社長等を経て2023年三十三銀行副頭取執行役員、同社取締役副社長に就任。2024年より現職。
山川 憲一 取締役副会長(代表取締役) 1983年第三銀行入行。同行営業本部長等を経て2021年三十三銀行取締役専務執行役員。同社取締役等を経て2024年より現職。
渡辺 三憲 取締役会長 1978年住友銀行入行。同行取締役専務執行役員を経て三重銀行取締役頭取に就任。2018年同社代表取締役社長等を経て2024年より現職。
堀内 浩樹 取締役 1986年三重銀行入行。同行常務執行役員総合企画部長等を経て2018年同社取締役執行役員。三十三銀行取締役等を経て2025年より現職。
川瀬 和也 取締役 1988年第三銀行入行。同行取締役上席執行役員総合企画部長、同社執行役員経営企画部長等を経て2021年より現職。
松本 勲 取締役 1985年第三銀行入行。同社人事総務部担当部長、三十三銀行取締役常務執行役員等を経て2024年同社取締役執行役員。2026年より現職。
堀部 勝寛 取締役 1987年三重銀行入行。同行常務執行役員本店営業部長等を経て2024年同社執行役員、三十三銀行取締役常務執行役員。2024年より現職。


社外取締役は、吉田 すみ江(あおば総合法律事務所創設)、松井 憲一(元出光興産取締役副社長)、植田 隆(三重県友の会理事長)、清水 俊行(税理士法人清流会計代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業


個人および法人顧客を対象に、三十三銀行の本支店等を通じて総合的な銀行業務を提供しています。預金、貸出、内国・外国為替業務のほか、国債や投資信託、保険商品の窓口販売など、多様化する顧客の金融ニーズに応える幅広い商品とサービスを展開しています。

収益源は、預金と貸出金の金利差による資金運用収益や、金融商品販売に伴う各種手数料などです。この事業は、同社グループの中核企業である三十三銀行が主体となって運営しており、地域経済を支える金融基盤としての役割を担っています。

リース業


地域の法人顧客を中心に、設備投資を支援するリース業務を提供しています。企業が事業運営に必要とするさまざまな機械設備や車両などを、顧客に代わって購入し、一定期間貸し出すサービスを展開しています。

収益源は、顧客に貸し出したリース物件から定期的に受け取るリース料です。この事業は、三十三リースが主体となって運営しており、企業の初期投資負担を軽減することで、地域の事業者の成長と設備更新をサポートしています。

その他


銀行業やリース業とシナジー効果を生み出す、クレジットカード業務や信用保証業務などの関連金融サービスを提供しています。また、地域企業の事業課題解決に向けた経営相談や販路開拓支援なども行っています。

収益源は、クレジットカードの利用に伴う手数料や、各種サービスの提供・保証による手数料などです。これらの事業は、三十三カード、三十三信用保証、三十三地域創生などの連結子会社がそれぞれ専門的な機能を担って運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社グループの直近5年間の業績を見ると、売上高にあたる経常収益は安定的な拡大傾向にあり、特に直近の2期間で大きく成長しています。利益面でも、経常利益および当期利益ともに順調に増加しており、収益力の向上が確認できます。地域とのリレーション強化による事業性貸出の増加や手数料ビジネスの伸長が業績を牽引していると考えられます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 705億円 659億円 678億円 749億円 938億円
経常利益 49億円 87億円 98億円 118億円 166億円
利益率(%) 6.9% 13.3% 14.4% 15.7% 17.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 49億円 63億円 69億円 87億円 123億円

(2) 損益計算書


直近2年間の損益構造を見ると、本業の経常収益の増加に伴い、粗利益も順調に拡大しています。貸出金利息などの資金運用収益が大きく伸びたことが増収の主な要因です。資金調達費用などの増加を吸収しながら、効率的な経営と収益基盤の強化によって利益の拡大に結びつけています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 749億円 938億円
連結粗利益 457億円 492億円
連結粗利益率(%) 61.0% 52.5%


経常費用合計771億円のうち、物件費や人件費を含む営業経費が385億円(構成比50%)、資金調達費用が98億円(同13%)、与信関連費用などのその他の経常費用が167億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の収益状況を見ると、中核事業である「銀行業」が全体の収益の大半を占めており、貸出金利息の増加を背景に前期から大幅な増収増益を達成しました。「リース業」も堅調に収益を伸ばしていますが、セグメント利益は若干の減益となりました。「その他」事業はクレジットカード業務等が寄与し、増収増益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
銀行業 596億円 754億円 117億円 165億円 21.9%
リース業 145億円 172億円 4億円 1億円 0.9%
その他 17億円 17億円 35億円 40億円 237.3%
調整額 -9億円 -5億円 -39億円 -40億円 -
連結(合計) 749億円 938億円 118億円 166億円 17.8%


なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 97億円 -497億円
投資CF -117億円 -209億円
財務CF -21億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%であり、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.0%と、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地域のお客さまから愛され信頼される金融グループとして、地域とともに成長し、活力あふれる未来の創造に貢献します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、地域社会や顧客と強固なリレーションを構築し、地域の持続的な成長を支援することで、グループ全体の企業価値向上を目指す姿勢を明確にしています。

(2) 企業文化


同社は、持続可能な社会・経済の実現と企業価値向上の好循環を目指すサステナビリティ方針を定めています。多様性(ダイバーシティ&インクルージョン)を尊重し、個性が活きる職場環境の整備に努める文化が特徴です。また、職員が主体的に学習する文化や、IT・DX(デジタルトランスフォーメーション)に積極的に取り組む風土の醸成にも力を入れています。

(3) 経営計画・目標


第3次中期経営計画(2024年4月~2027年3月)において、「地域信頼度ナンバー1金融グループ」をビジョンとして掲げています。

* 地元(三重県+愛知県)事業性貸出残高:1兆4,200億円(2027年3月末)
* ROE:6%以上(2027年3月期)
* 当期純利益:135億円(2027年3月期)
* 自己資本比率:8.6%程度(2027年3月期)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「リレーション&ソリューションの進化」「経営の効率化・最適化」「経営基盤の強靭化」の3つを基本方針としています。DX戦略の推進と人的資本経営の実践を変革のエンジンとし、お客さまの経営課題に対する多様なソリューション提供を強化しています。また、2027年にはあいちフィナンシャルグループとの経営統合を予定し、プレゼンスの拡大を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「お客さまの期待を超え、感動を届けられる人材になるための成長支援」を人材育成方針、「活力あふれる職場環境の構築と、D&Iへの取組み」を社内環境整備方針として掲げています。専門人材の育成、主体的なリスキリングの支援、DX人材の創出など7つのドライバーを設定し、全役職員の働きがい(エンゲージメント)と生産性の向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 54.1歳 30.1年 10,028,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.5%
男性育児休業取得率 72.9%
男女賃金差異(全労働者) 46.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 54.2%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 47.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外部トレーニー派遣・外部研修等参加者数(93名)、主体的な研修等受講率(629%)、年次有給休暇取得日数(17.3日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスクと不良債権の増加


国内外の経済環境の悪化や不動産価格・株価の変動、取引先の経営悪化等により、不良債権が増加する可能性があります。貸倒引当金を計上していますが、実際の貸倒れが見積もりを上回った場合や、担保価値の下落により追加の引当が必要になった場合、業績および財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 市場リスク(金利・価格・為替変動)


同社は貸出金や有価証券等の金融資産・負債を有しているため、市場環境の変動リスクに晒されています。予期せぬ金利変動による利鞘の縮小や、保有する株式・債券等の有価証券価格の下落による評価損・売却損の発生、あるいは為替相場の不利な変動が、同社の業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3) オペレーショナルリスクと情報漏洩


各種銀行取引における事務手続きの誤りや不正、コンピュータシステムの停止・誤作動、サイバー攻撃等によるリスクが存在します。また、多くの顧客情報や経営情報を保有しているため、情報漏洩や不正使用が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜を招き、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。