三十三フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三十三フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア上場の銀行持株会社。三十三銀行を中核に、リースやカード等の金融サービスを展開。直近の連結業績は、貸出金利息の増加等により経常収益749億円(前期比10.4%増)、経常利益118億円(同20.5%増)、当期純利益87億円(同25.3%増)の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社三十三フィナンシャルグループ の有価証券報告書(第7期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三十三フィナンシャルグループってどんな会社?


銀行業務を中心に、リース、カード、信用保証などの総合金融サービスを三重県・愛知県・岐阜県等で展開する地域金融グループです。

(1) 会社概要


2018年4月、三重銀行と第三銀行の共同株式移転により設立され、東証一部および名証一部に上場しました。2021年5月には両行が合併し、三十三銀行が発足しました。2022年4月、東証の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。2025年4月には、グループ内の三十三リースが三重リースを吸収合併し、経営効率化を進めています。

連結従業員数は2,378人、単体では60人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は従業員持株会となっており、特定の事業会社による支配的な資本関係は見られません。地域経済の発展を支える安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.25%
日本カストディ銀行(信託口) 4.72%
三十三フィナンシャルグループ職員持株会 4.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は道廣剛太郎氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
渡辺 三憲 取締役会長 住友銀行(現三井住友銀行)取締役兼専務執行役員などを経て、2013年三重銀行(現三十三銀行)入行。2015年同行頭取、2018年同社社長などを歴任。2024年4月より現職。
道廣 剛太郎 取締役社長(代表取締役) 住友銀行(現三井住友銀行)入行。三井住友フィナンシャルグループ執行役副社長、三井住友銀行副頭取などを経て、2023年三十三銀行入行。2024年4月より現職。
山川 憲一 取締役副会長(代表取締役) 第三銀行(現三十三銀行)入行。営業本部副本部長、常務執行役員営業本部長、三十三銀行専務などを経て、2024年4月より現職。
堀内 浩樹 取締役 三重銀行(現三十三銀行)入行。総合企画部長、常務執行役員、三十三銀行常務などを経て、2018年4月より現職。
川瀬 和也 取締役 第三銀行(現三十三銀行)入行。総合企画部長、取締役、三十三銀行常務などを経て、2021年6月より現職。
松本 勲 取締役 第三銀行(現三十三銀行)入行。人事総務部部付部長、三十三銀行常務などを経て、2024年6月より現職。
堀部 勝寛 取締役 三重銀行(現三十三銀行)入行。本店営業部長、三十三銀行常務などを経て、2024年6月より現職。
前田 泰生 取締役(監査等委員) 第三銀行(現三十三銀行)入行。総合企画部部付部長、同社監査部長、三十三銀行理事本店支配人などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、吉田すみ江(弁護士)、松井憲一(元出光興産取締役副社長)、植田隆(元三重県副知事)、清水俊行(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


三十三銀行の本支店等において、預金業務、貸出業務、内国為替業務、外国為替業務、国債・投資信託・保険の窓口販売業務等を行っています。グループの中核業務として、多様化する顧客ニーズに応える商品・サービスの提供に努めています。

収益は、顧客からの貸出金利息、有価証券運用による配当金・利息、および各種手数料収入等です。運営は主に株式会社三十三銀行が行っています。

(2) リース業


設備投資等に伴う物件のリース業務を行っています。企業等の顧客に対し、機械設備や情報通信機器などを賃貸し、長期的な設備導入を支援しています。

収益は、顧客からのリース料収入等です。運営は三十三リース株式会社および三重リース株式会社が行っています(2025年4月に三十三リースが三重リースを吸収合併)。

(3) その他


クレジットカード業務、信用保証業務等の金融サービスに係る事業を行っています。クレジットカードの発行や加盟店業務、銀行融資の保証業務などを展開しています。

収益は、クレジットカード会員からの年会費、加盟店手数料、および融資先からの信用保証料等です。運営は株式会社三十三カード、三十三信用保証株式会社など連結子会社6社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は、経常収益が増加した一方で、経常費用も増加したことにより、経常利益は増益となりました。これは、主に資金運用収益の増加が寄与した結果です。過去からの趨勢としては、経常利益は複数期にわたり増加傾向を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 7,625 7,048 6,590 6,785 7,491
経常利益(億円) 34 49 87 98 118
当期純利益(億円) 42 49 63 69 87

(2) 損益計算書

当期は、経常収益が前期比で増加しました。これは、主に資金運用収益の増加によるものです。一方、経常費用も増加しましたが、収益の伸びがそれを上回ったため、経常利益は増益となりました。当期純利益も同様に増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 6,785 7,491
経常費用 5,809 6,316
経常利益 98 118
当期純利益 69 87

(3) 役務取引等収益の内訳

当行の役務取引等収益は、前期比で増加しました。これは、主に預金・貸出業務における収益の増加が牽引した結果です。次いで、証券関連業務も収益に貢献しました。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 - -
預金・貸出業務 - -
証券関連業務 - -

(4) キャッシュ・フローと財務指標

三十三フィナンシャルグループは、預金等の増加を背景に営業活動によるキャッシュ・フローがプラスとなりました。投資活動では、有価証券の取得が売却・償還を上回り、マイナスとなりました。財務活動では、配当金の支払い等によりマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 671 97
投資活動によるキャッシュ・フロー 234 △117
財務活動によるキャッシュ・フロー △23 △21

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地域のお客さまから愛され信頼される金融グループとして、地域とともに成長し、活力あふれる未来の創造に貢献します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、地域社会との共存共栄を目指し、企業価値の向上に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、人材育成方針として「お客さまの期待を超え、感動を届けられる人材になるための成長支援」を掲げ、社内環境整備方針として「活力あふれる職場環境の構築と、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)への取組み」を定めています。従業員一人ひとりが主体的に学び、挑戦できる環境づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は第3次中期経営計画(2024年4月~2027年3月)において、「地域信頼度ナンバー1金融グループ」をビジョンとして掲げています。最終年度の2027年3月期には以下の財務目標の達成を目指しています。

* ROE(連結):5%以上
* 当期純利益(連結):110億円
* 自己資本比率(連結):8.4%程度
* コアOHR(銀行単体):67%未満

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「リレーション&ソリューションの進化」「経営の効率化・最適化」「経営基盤の強靭化」の3つを基本方針としています。DX戦略の推進と人的資本経営の実践を変革のエンジンとし、ビジネスマッチングや事業承継支援などのソリューション提供を強化することで、地域顧客との関係深化を図ります。

* ビジネスマッチング成約件数:3年間累計3,000件
* 事業承継支援件数:3年間累計3,600件
* 地元(三重県+愛知県)事業性貸出残高:1兆4,200億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成を経営戦略の柱とし、「専門人材」「主体性」「DX戦略」「人材ポートフォリオ」「成長意欲」「多様性」「働き方」の7つのドライバーを設定しています。外部トレーニー派遣や公募研修の拡充、タレントマネジメントシステムの導入などを通じて、自律的なキャリア形成と専門性の向上を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 53.5歳 29.2年 9,516,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
※同社従業員はすべて株式会社三十三銀行からの兼務出向者です。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.1%
男性育児休業取得率 151.5%
男女賃金差異(全労働者) 45.1%
男女賃金差異(正規雇用) 52.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 48.1%


※数値は主要な連結子会社である株式会社三十三銀行のものです。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、e-learning受講修了者数(378名)、人事部面接実施人数(266名)、年次有給休暇取得日数(17.2日/人)、エンゲージメント指数(7.4点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 持株会社のリスク


同社は銀行持株会社であり、収入の大部分を銀行子会社からの配当金等に依存しています。銀行法や会社法等の規制により配当可能額が制限されたり、子会社の業績悪化により配当が滞ったりした場合、同社株主への配当支払いに影響が及ぶ可能性があります。

(2) 信用リスク


国内外の経済環境の悪化や取引先の経営状況の変動等により、不良債権が増加する可能性があります。また、担保価値の下落等により貸倒引当金が不足し、追加の積み増しが必要となった場合、同社グループの業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。

(3) 市場リスク


金利、株価、為替等の市場価格変動リスクがあります。特に、予期せぬ金利変動により調達金利の上昇が運用利回りの上昇を上回った場合、利鞘が縮小し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、保有有価証券の価格下落による評価損や売却損の発生リスクもあります。

(4) オペレーショナルリスク


事務ミスや事故、システム障害、サイバー攻撃、法令違反等のオペレーショナルリスクがあります。特にシステムリスクについては、障害や不正使用が発生した場合、業務運営への支障や社会的信用の失墜を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。