#記事タイトル:信和転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、信和株式会社 の有価証券報告書(第11期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 信和ってどんな会社?
建設現場に不可欠な「システム足場」等の仮設資材や、物流倉庫向けのパレット等を製造・販売するメーカーです。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1977年に岐阜県で創業した信和商店に始まります。2014年に現在の法人格となるリバーホールディングスが設立され、2015年に旧信和株式会社を吸収合併して商号変更しました。2018年に東証二部に上場し、2022年にスタンダード市場へ移行しました。2024年には株式会社ヤグミを完全子会社化し、施工機能を強化しています。
連結従業員数は259名、単体では160名です。筆頭株主は仮設機材大手のアルインコと鉄鋼商社の阪和興業で、同率で株式を保有しており、両社とは取引関係があります。第3位は同社取締役副社長の鬼頭和也氏です。事業パートナーや経営陣が主要株主として名を連ねる安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アルインコ | 4.95% |
| 阪和興業 | 4.95% |
| 鬼頭 和也 | 1.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役は則武 栗夫氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 則武 栗夫 | 代表取締役 | 丸紅建設機械販売を経て2007年に入社。営業本部長等を歴任し、2021年より現職。広東日信創富建築新材料有限公司の執行董事などを兼務。 |
| 鬼頭 和也 | 取締役副社長 | 1993年に鬼頭興業代表、2000年にヤグミ(現・同社子会社)代表取締役に就任。2025年2月より現職。 |
| 平野 真一 | 専務取締役執行役員製造本部長 | ソニー瑞浪(現・ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ)等を経て2013年に入社。製造本部長として手腕を振るい、2021年より現職。 |
| 平澤 光良 | 常務取締役執行役員管理本部長 | 監査法人トーマツを経て公認会計士登録後、2012年に入社。管理本部長を務め、2025年2月より現職。 |
社外取締役は、芹澤 浩(元阪和興業代表取締役副社長執行役員)、伊藤 佐英(元日東製粉監査役)、谷口 哲一(弁護士)、阿知波 知子(税理士・社会保険労務士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「仮設資材部門」および「物流機器部門」事業を展開しています。
■(1) 仮設資材部門
建設現場で使用されるシステム足場(くさび緊結式足場「シンワキャッチャー」、次世代足場「SPS」等)の製造・販売、レンタル、および仮設施工工事を行っています。主な顧客はレンタル会社、足場施工業者、商社、ホームセンター等です。市場シェア1位のシステム足場製品を有しています。
収益は、製品の販売代金、レンタル料、施工工事代金から得ています。運営は、製造・販売を信和が、施工サービス等を2024年に子会社化した株式会社ヤグミ等が担い、製造から施工までの一貫したバリューチェーンを構築しています。
■(2) 物流機器部門
工場、倉庫、建設現場等における物品の保管・搬送に使用される物流機器の製造・販売を行っています。具体的には、自動車部品や液晶パネル用ガラス等の保管・搬送用パレット、スチールラック、建設現場向けの吊りパレット等を顧客の要望に合わせて企画設計・製造しています。
収益は、顧客に対する製品の販売代金から得ています。運営は主に信和が行っており、自動車産業や物流倉庫業界など、幅広い産業に向けてオーダーメイドのソリューションを提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期の業績を見ると、売上収益は120億円台から170億円台で推移しています。第10期は減収減益となりましたが、第11期はM&A効果や営業努力によりV字回復し、売上収益・各利益ともに過去最高水準に迫る勢いです。当期利益も前期の倍以上となり、高い収益性を回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 139億円 | 161億円 | 148億円 | 127億円 | 175億円 |
| 税引前利益 | 18億円 | 21億円 | 14億円 | 7億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 12.8% | 12.8% | 9.7% | 5.1% | 8.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 15億円 | 10億円 | 4億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益も大きく伸長しています。販管費も増加していますが、増収効果が上回り、営業利益率は前期の5.5%から9.3%へと改善しました。利益率の向上が顕著です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 127億円 | 175億円 |
| 売上総利益 | 28億円 | 44億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.2% | 25.2% |
| 営業利益 | 7億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 5.5% | 9.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当を含む従業員給付や外注費などが主要な構成要素です。売上原価においては、原材料等の購入費や外注費が大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、仮設資材部門はM&Aによる施工事業の取り込み等により売上が約1.5倍に急増しました。物流機器部門も大型案件の獲得等により2割以上の増収となっています。全社的に事業規模が拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 仮設資材 | 90億円 | 130億円 |
| 物流機器 | 37億円 | 45億円 |
| 連結(合計) | 127億円 | 175億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金と外部調達した資金を元手に、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。特に当期は子会社取得による支出が大きく、財務CFのプラス幅も拡大しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 20億円 | 8億円 |
| 投資CF | -6億円 | -43億円 |
| 財務CF | -16億円 | 45億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%でスタンダード市場平均(7.2%)を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.4%でスタンダード市場の製造業平均(57.5%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループはパーパスとして「いのちを守り、未来を支える。」を掲げています。このパーパスのもと、製品・サービスを通じて利用者の安全と命を守ること、社員のやる気を応援し夢と未来の実現を支えることを「経営理念(Our Mission)」として定めています。
■(2) 企業文化
「お客様から信頼される企業」「お客様とともに成長を続けます」を「経営目標(Our Vision)」として掲げています。安全性・品質向上・納期厳守・価格競争力のレベルを高めるべく対話を重視し、社員一人ひとりが成長し、自ら夢のある企業を創りだせる組織を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は2029年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しています。
* 売上収益:200億円
* 営業利益:24億円
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向け、仮設資材部門では「橋梁向けシステム吊り足場の拡販」と「仮設施工サービスの拡大」を重点施策としています。老朽化する社会インフラ対策として新型吊り足場の普及を図るとともに、ヤグミグループの子会社化による「製造から施工まで」のバリューチェーン強化でシェア拡大を目指します。
物流機器部門では「物流事業の領域拡大と強化」を掲げ、省人化分野や海外展開などの新領域への挑戦と、既存製品の低コスト・短納期化による収益基盤の強化に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長のために「全社員の活力の創出」と「優秀な人材の確保と育成」を掲げています。人事評価の透明性向上、IT投資による業務効率化、積極的な採用活動、研修体制の整備等を推進し、多様な人材が能力を最大限発揮できる職場環境づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.5歳 | 9.4年 | 5,577,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.5% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | -% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | -% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
※男女賃金差異について、同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、5年後定着率(69.8%)、産休後の復職率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設投資動向などの影響
主力製品であるシステム足場は建設現場で使用される仮設資材であるため、日本国内の景気動向や建設市場の経済環境の変化により仮設業界全体が影響を受けた場合、同社グループの事業活動や業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 原材料の価格変動等によるリスク
製品の主要原材料である鉄鋼製部材の価格は、商品相場や為替等の影響を受けます。同社は複数ルートの確保等でリスク軽減を図っていますが、価格高騰が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 総資産に占めるのれんの割合
同社グループは総資産に占める「のれん」の割合が高く(当期末で約41%)、過去の買収や直近のヤグミグループ子会社化によるのれんを計上しています。IFRS採用のため定期償却はありませんが、対象事業の収益力が低下し減損損失が発生した場合には、業績に影響を与える可能性があります。



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