信和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

信和 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

信和は東証スタンダードおよび名証プレミアに上場し、建設現場用の仮設資材や産業向け物流機器の製造販売、仮設施工工事を展開しています。直近の業績は、主力の仮設資材におけるレンタル・施工サービスや大型物流倉庫案件が好調に推移し、売上収益や各段階利益で上場来最高を更新し、大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、信和株式会社の有価証券報告書(第12期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 信和ってどんな会社?


建設現場を支える仮設足場などの仮設資材や、多様な産業用物流機器の製造販売・レンタル等を行う企業です。

(1) 会社概要


1977年に信和商店として創業し、1979年に仮設資材の製造・販売を行う法人として設立されました。2003年に物流機器部門へ進出し、自動車メーカー等へ販売を開始しました。その後、ファンド主導での組織再編などを経て事業を拡大し、2018年に東京証券取引所および名古屋証券取引所へ上場を果たしています。

従業員数は連結358名、単体145名です。筆頭株主は事業会社のアルインコと阪和興業が同率で並び、第3位には役員の鬼頭和也氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
アルインコ 5.08%
阪和興業 5.08%
鬼頭 和也 1.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は則武栗夫氏が務めており、社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
則武 栗夫 代表取締役社長 1990年ワキタ入社。光洋運輸、丸紅建設機械販売を経て2007年同社入社。営業本部長等を経て、2023年6月より現職。
鬼頭 和也 取締役副社長 1993年鬼頭興業代表。2000年ヤグミ代表取締役。ITABASHI取締役等を経て2024年同社取締役、2025年2月より現職。
平野 真一 専務取締役執行役員 1982年シャープエンジニアリング入社。ソニー瑞浪などを経て2013年同社入社。製造本部長等を経て2026年4月より現職。
平澤 光良 常務取締役執行役員 1998年監査法人トーマツ入社。2002年公認会計士登録。2012年同社入社、管理本部長等を経て2026年4月より現職。


社外取締役は、谷口哲一(谷口法律事務所代表弁護士)、芹澤浩(元阪和興業代表取締役副社長執行役員)、阿知波知子(あちわ社会保険労務士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「仮設資材及び物流機器の製造・販売事業」の単一セグメントですが、「仮設資材部門」および「物流機器部門」の2つの事業部門を展開しています。

(1) 仮設資材部門


建設現場で使用される仮設足場などの仮設資材の製造・販売を主軸に、レンタルサービスおよび仮設施工工事を行っています。主な製品は低〜中層用の「くさび緊結式足場」や中〜高層用の「次世代足場」であり、建設現場の作業負担軽減や施工効率化に貢献する軽量でコンパクトかつ安全性の高いシステム足場を提供しています。

収益源は、足場架払業者やレンタル会社などへの資材の販売代金、レンタル料金、および現場での施工工事代金です。同社が製造・販売を担うとともに、ヤグミや海津建設をはじめとするグループ会社との連携により、製造から販売・レンタル・施工までを一体化させた総合的なサービスを顧客に提供しています。

(2) 物流機器部門


主に工場や倉庫、建設現場において物品の保管・搬送などに使用される物流機器の企画設計・提案・試作・製造・納品を行っています。自動車部品、液晶パネル用ガラス、土石製品などの保管・搬送用パレットのほか、物品保管用のスチールラックなど、顧客ごとの課題や使用環境に応じた最適な製品をオーダーメイドで提供しています。

収益源は、自動車メーカーや物流・建材関連企業への物流機器の販売代金です。顧客の要望に基づく提案型営業と受注生産体制を強みとしており、事業の運営は同社が中心となって行っています。今後は省人化関連分野や新たな産業領域への展開を進め、事業領域および取引チャネルの拡大を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績は、一時的な落ち込みがあったものの、直近2期間は連続して大幅な増収増益を達成しています。特に当期は、仮設資材の販売とレンタルを組み合わせた提案の強化やヤグミ等の子会社化効果、物流機器の大型案件獲得などが寄与し、売上収益と各利益項目で上場来最高を更新する急回復を見せています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 161億円 148億円 127億円 175億円 201億円
税引前利益 21億円 14億円 7億円 15億円 23億円
利益率(%) 12.8% 9.7% 5.1% 8.6% 11.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 10億円 4億円 10億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の175億円から当期は201億円へと増加し、順調な事業拡大を示しています。利益面でも、生産性の向上などコスト競争力の強化が奏功し、売上総利益率および営業利益率がともに改善しました。とくに営業利益率は9.3%から12.4%へと大幅に向上しており、収益性の高さがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 175億円 201億円
売上総利益 30億円 37億円
売上総利益率(%) 17.0% 18.4%
営業利益 16億円 25億円
営業利益率(%) 9.3% 12.4%

(3) セグメント収益


仮設資材部門は、販売とレンタルを組み合わせた柔軟な提案営業や子会社を通じた施工機能の強化が奏功し、売上を拡大しました。物流機器部門は、大型物流倉庫関連の案件に加え、多様な業界から継続的に受注を獲得し、売上が大きく成長しました。両部門とも好調に推移し、全社の増収を力強く牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
仮設資材部門 130億円 145億円
物流機器部門 45億円 57億円
連結(合計) 175億円 201億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8億円 23億円
投資CF -43億円 -12億円
財務CF 45億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「私たちは、製品・サービスを通じて大切な『命』を守ります」「私たちは、社員のやる気を応援し、『夢と未来』の実現を支えます」を掲げています。安全に直結する製品を提供する責任を自覚して妥協のない品質を追求するとともに、社員が誇りとやりがいを持って働ける環境を支えることを使命としています。

(2) 企業文化


パーパス「いのちを守り、未来を支える。」のもと、製品を通じた社会課題の解決を目指す文化があります。また、経営目標として「お客様から信頼される企業」「お客様とともに成長を続ける」ことを掲げており、品質や安全性の向上に向けた努力と、社員一人ひとりの成長を組織の成長につなげる姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2029年3月期を最終年度とする中期経営計画において、売上収益200億円、営業利益24億円の目標を掲げていましたが、2026年3月期に当初計画を上回るペースで業績が推移し、この目標を達成しました。これらを踏まえ、現在はグループ会社間のシナジー創出や資本効率を重視した経営へ向け、計画の見直しを進めています。

・売上収益200億円、営業利益24億円(2026年3月期に達成済み)

(4) 成長戦略と重点施策


今後の事業活動では、強固なバリューチェーンの構築と新たな仮設・建設関連サービスの創出を推進します。仮設資材部門では、国内大手のリース企業等と共同開発した橋梁向け「システム吊り足場」の拡販や、子会社を通じた施工・レンタル一体の仮設施工サービスの拡充を図ります。物流機器部門では、省人化ニーズへの対応などを進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員のやる気を応援し、『夢と未来』の実現を支えます」という理念のもと、人的資本経営を推進しています。「職場環境の整備」として、人事評価の透明化や業務効率化に資するIT投資を通じた働きがいの創出に取り組みます。また「人材の育成強化」として、社内外の研修や福利厚生の充実による多様な人材が活躍できる組織づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.2歳 10.2年 5,598,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.3%
男性育児休業取得率 14.2%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は従業員規模が300人以下のため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、5年後定着率(68.7%)、産休後の復職率(100%)、有給休暇取得率(60.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設投資動向の影響

主力製品であるシステム足場は主に建設現場で使用されるため、国内の景気動向や建設投資の変動により仮設業界全体が影響を受けた場合、同社グループの事業活動および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料の価格変動リスク

製品の主な原材料であるパイプやコイルなどの鉄鋼製部材は、商品相場や為替、政治情勢等の影響を受けて価格が変動します。複数の仕入ルートを確保してリスク軽減に努めていますが、原材料価格の高騰が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) のれんの減損リスク

過去の買収等により多額ののれんを計上しており、総資産に占める割合が高くなっています。会計基準(IFRS)により定期的な償却は行われませんが、対象事業の収益力が低下し減損損失を計上する事態となった場合、財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 外注管理に関するリスク

製品の製造過程の一部において外注を活用しており、メッキ加工や社内製造の業務請負などで特定企業への依存が見られます。供給の安定性に努めていますが、何らかの理由で外注先からの供給が不安定になったり、外注費が上昇したりした場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。