富士通 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士通 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、日本を代表する総合エレクトロニクスメーカーです。ITサービスを提供する「サービスソリューション」を主力事業とし、ハードウェアやパソコン事業も展開しています。2025年3月期は、主力事業が牽引し売上収益は増収となりましたが、利益面では減益となりました。


※本記事は、富士通株式会社 の有価証券報告書(第125期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 富士通ってどんな会社?


グローバルに展開する日本の大手ICT企業であり、デジタルサービスや高性能なサーバ、ネットワーク機器などを提供しています。

(1) 会社概要


1935年に富士通信機製造として設立され、1967年に現社名へ変更しました。近年は事業ポートフォリオの変革を進めており、2020年にはDXコンサルティングを行うRidgelinezや富士通Japanを設立しました。2024年にはサーバ事業等を承継するエフサステクノロジーズを発足させた一方、2025年には新光電気工業やFDKを非継続事業に分類するなど、グループ再編を加速させています。

連結従業員数は約11.3万人、単体では約3.5万人を擁する巨大企業グループです。筆頭株主は、資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。第2位も同様に資産管理を行う日本カストディ銀行(信託口)となっており、機関投資家が高い比率を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 17.01%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 6.86%
いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド (常任代理人 香港上海銀行東京支店) 3.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長CEOは時田隆仁氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
時田 隆仁 代表取締役社長CEO 1988年入社。金融システム事業本部長などを経て、2019年より代表取締役社長、2021年よりCEOを兼務。
古田 英範 取締役会長 1982年入社。執行役員専務デジタルサービス部門長、代表取締役副社長、COO、CDPOなどを歴任し、2024年より現職。
磯部 武司 代表取締役副社長CFO 1985年入社。財務経理本部長などを経て、2019年よりCFO。2024年より現職。
平松 浩樹 取締役執行役員専務CHRO 1989年入社。総務・人事本部長などを経て、2021年よりCHRO。2025年より現職。


社外取締役は、古城佳子(元日本国際政治学会理事長)、佐々江賢一郎(元外務事務次官)、バイロン ギル(Indus Capital Partners, LLCマネージング・パートナー)、平野拓也(元日本マイクロソフト社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「サービスソリューション」「ハードウェアソリューション」「ユビキタスソリューション」事業を展開しています。

(1) サービスソリューション


コンサルティング、クラウドサービス、システムインテグレーションなどを提供しており、主要顧客は民間企業や官公庁、自治体など多岐にわたります。グローバル共通の価値提供モデル「Fujitsu Uvance」を軸に、ビジネス変革や社会課題解決を支援しています。

収益は、顧客からのシステム構築対価、サービス利用料、保守運用費などから得ています。運営は、同社および富士通Japan、Ridgelinez、海外のFujitsu Services Holdings PLCなどが担っています。

(2) ハードウェアソリューション


サーバ、ストレージ、ネットワーク機器などの開発・製造・販売・保守を行っています。データセンター事業者や通信キャリア、一般企業などが主な顧客です。高性能なスーパーコンピュータ「富岳」の技術などもこの分野に含まれます。

収益は、ハードウェア製品の販売代金や保守サービス料などから得ています。運営は、同社およびエフサステクノロジーズ、富士通フロンテック、富士通テレコムネットワークスなどが主に行っています。

(3) ユビキタスソリューション


主に法人向けのパソコン(ノートPC、デスクトップPC等)を提供しています。働き方改革やリモートワークの普及に伴い、セキュリティや利便性を高めたクライアントコンピューティング環境を顧客に届けています。

収益は、パソコン等の機器販売代金から得ています。運営は同社および富士通パーソナルズなどが行っています。なお、関連会社の富士通クライアントコンピューティングが開発・製造を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は3兆円台半ばで安定的に推移していますが、直近では増加傾向にあります。利益面では、税引前利益が変動しつつも確保されていますが、当期利益は前期と比較して減少しました。全体としては、底堅い収益基盤を維持しつつ、事業構造改革を進めている段階と言えます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 35,897億円 35,868億円 37,138億円 34,770億円 35,501億円
税引前利益 2,919億円 2,400億円 3,719億円 1,656億円 2,734億円
利益率(%) 8.1% 6.7% 10.0% 4.8% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 2,027億円 1,827億円 2,152億円 2,545億円 2,198億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加し、売上総利益および売上総利益率も改善しています。営業利益は大幅に増加し、収益性が向上しています。これは、本業における収益力の強化や構造改革の効果が現れていることを示唆しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 34,770億円 35,501億円
売上総利益 11,180億円 11,680億円
売上総利益率(%) 32.2% 32.9%
営業利益 1,493億円 2,651億円
営業利益率(%) 4.3% 7.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が1,257億円(構成比約14%)、研究開発費が692億円(同約8%)を占めています。

(3) セグメント収益


サービスソリューションは増収増益となり、全社の業績を牽引しました。ハードウェアソリューションは増収ながらも減益となり、収益性の改善が課題です。ユビキタスソリューションは減収となりましたが、利益率は改善し増益を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
サービスソリューション 21,376億円 22,460億円 2,372億円 2,900億円 12.9%
ハードウェアソリューション 11,080億円 11,199億円 837億円 613億円 5.5%
ユビキタスソリューション 2,733億円 2,517億円 242億円 314億円 12.5%
調整額 -419億円 -676億円 -797億円 -753億円 -
連結(合計) 34,770億円 35,501億円 1,493億円 2,651億円 7.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で得た現金を借入返済や株主還元に充てつつ、投資も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3,092億円 3,039億円
投資CF -1,572億円 -892億円
財務CF -1,815億円 -2,405億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、社会における存在意義(パーパス)を「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定めています。また、2030年に向けて、サステナビリティに貢献するデジタルサービスを提供し、ステークホルダーにとってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになるというビジョンを掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは「Fujitsu Way」を掲げ、パーパスの実現に向けた行動規範としています。大切にする価値観として「挑戦」「信頼」「共感」を挙げ、社員一人ひとりが自律的に行動し、イノベーションを創出する企業風土の醸成を目指しています。また、マテリアリティ(重要課題)への取り組みを通じて、企業価値の向上と持続可能な世界の実現を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2023年度から2025年度までの中期経営計画において、2030年の目指す姿の実現に向けた持続的な成長と収益力向上のモデル構築に取り組んでいます。

* 2025年度の調整後営業利益率:12%
* 2025年度の売上収益:3兆8,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


「事業モデル・ポートフォリオ戦略」「カスタマサクセス戦略/地域戦略」「テクノロジー戦略」「リソース戦略」の4つの重点戦略を推進しています。特に、グローバルな事業ブランド「Fujitsu Uvance」を中心としたサービスソリューションの拡大、モダナイゼーションビジネスの推進、生成AIなどのコアテクノロジーの強化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業ポートフォリオに連動した人材ポートフォリオの変革を進めています。ジョブ型人事制度への移行、ポスティング制度による人材流動化、リスキリングの推進などにより、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。また、グローバルで競争力のある報酬水準の導入や、女性幹部社員比率の向上など、多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 18.2年 9,291,084円


※平均年間給与は、税込額で時間外勤務手当等及び賞与その他の臨時給与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 11.5%
男性労働者の育児休業取得率 86.2%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 79.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 78.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 86.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、お客様NPS®(前期比20ポイント上昇目標)、従業員エンゲージメント(グローバルスコア75目標)、女性幹部社員比率(グローバルで20%目標)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) セキュリティに関するリスク


サイバー攻撃や不正アクセスによるシステム停止、情報漏洩のリスクがあります。これらが顕在化した場合、社会的信用の低下や損害賠償請求、行政処分などにより、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は情報セキュリティ体制の強化や従業員教育などを実施しています。

(2) 製品やサービスの欠陥や瑕疵に関するリスク


提供するシステムや製品に予期せぬ不具合や欠陥が生じるリスクがあります。大規模なシステム障害や納期遅延が発生した場合、損害賠償や修補費用の発生、信用の失墜につながり、経営成績に影響を与える可能性があります。品質管理体制の強化やプロジェクト管理の徹底を図っています。

(3) 自然災害や突発的事象発生のリスク


地震、台風などの自然災害やパンデミックなどの予期せぬ事象により、事業活動が停止または阻害されるリスクがあります。サプライチェーンの寸断や拠点の被災は、製品・サービスの提供に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。BCP(事業継続計画)の策定や訓練などを通じて対策を講じています。

(4) 人権に関するリスク


グローバルな事業展開において、サプライチェーンを含めた人権尊重の取り組みが求められています。人権侵害などの問題が発生した場合、レピュテーションリスクや法的な制裁を受ける可能性があります。同社は人権デューデリジェンスの実施やサプライヤーとの協働を通じて、人権リスクの低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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