※本記事は、富士通株式会社の有価証券報告書(第126期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。
1. 富士通ってどんな会社?
同社はサービスやハードウェアなどのデジタルサービスをグローバルに提供するIT企業です。
■(1) 会社概要
1935年に電話交換装置等の製造・販売として設立。1949年に東京証券取引所に上場し、1951年に電子計算機の製造を開始しました。近年では、2020年に富士通Japanを設立し、2024年にサーバ事業等をエフサステクノロジーズに承継、2025年にはネットワークプロダクト事業を担う1FINITYを設立しています。
従業員数は連結で99,203名、単体で32,224名です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理業務を行う日本カストディ銀行、第3位は外資系金融機関のSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANYとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.23% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.68% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 2.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長CEOは時田隆仁氏が務めています。社外取締役は非執行取締役として5名在籍しています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 時田 隆仁 | 代表取締役社長CEO | 1988年同社入社。金融システム事業本部長、執行役員常務等を経て、2019年代表取締役社長、2021年より現職。 |
| 磯部 武司 | 代表取締役副社長CFO | 1985年同社入社。財務経理本部経理部長、執行役員専務、取締役執行役員SEVP等を経て、2024年より現職。 |
| 平松 浩樹 | 取締役執行役員専務CHRO | 1989年同社入社。グローバルコーポレート部門人事本部長、執行役員常務等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、古城佳子(青山学院大学教授)、佐々江賢一郎(元外務事務次官)、バイロン ギル(Indus Capitalマネージング・パートナー)、平野拓也(元日本マイクロソフト社長)、小林いずみ(元メリルリンチ日本証券社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「サービスソリューション」「ハードウェアソリューション」「ユビキタスソリューション」事業を展開しています。
■(1) サービスソリューション
コンサルティングサービス、クラウドサービス、システムインテグレーション、ビジネスプロセスアウトソーシングなどのデジタルサービスをグローバルに提供しています。国内外の多様な業種の顧客に対し、テクノロジーを活用したビジネスの高度化や社会課題の解決を支援しています。
顧客へのシステム構築やクラウド利用料、保守運用に係るサービス対価を収益源としています。事業の運営は同社を中心に、富士通JapanやRidgelinez、海外ではFujitsu Europe Holding B.V.などの子会社が担っています。
■(2) ハードウェアソリューション
サーバやストレージなどのシステムプロダクト、携帯電話基地局や光伝送システムなどのネットワークプロダクトの開発、製造、販売を行っています。また、これらの機器に関する保守や監視などのサポートサービスも提供し、ICTの基盤を支えています。
ハードウェアの販売代金および保守サービスの対価を顧客から受け取って収益としています。運営は同社のほか、サーバ・ストレージ事業を担うエフサステクノロジーズや、ネットワークプロダクト事業を担う1FINITYなどの子会社が行っています。
■(3) ユビキタスソリューション
パソコンなどのクライアントコンピューティングデバイスの開発、設計、製造、および販売を行っています。個人から法人まで幅広い顧客向けに、高品質なデバイスと関連ソリューションを提供し、多様なコンピューティング環境のニーズに対応しています。
パソコンや関連機器の販売代金、ならびに付帯サービスの提供対価を顧客から受け取ることで収益をあげています。同事業の運営は、同社および子会社である富士通パーソナルズ、関連会社である富士通クライアントコンピューティングなどが中心となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上収益は3兆4,000億円から3兆7,000億円台で堅調に推移しています。税引前利益や当期利益は事業再編や株式譲渡益などの影響により変動が見られますが、2026年3月期は採算性の改善や関連会社株式の売却益計上などにより、大幅な増益を達成しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 35,868億円 | 37,138億円 | 34,770億円 | 35,501億円 | 35,030億円 |
| 税引前利益 | 2,400億円 | 3,719億円 | 1,656億円 | 2,734億円 | 4,090億円 |
| 利益率(%) | 6.7% | 10.0% | 4.8% | 7.7% | 11.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,827億円 | 2,152億円 | 2,545億円 | 2,198億円 | 4,494億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は微減となったものの、デリバリーの標準化や自動化などの採算改善策が奏功し、売上総利益および営業利益はともに増加しています。利益率も前年から改善しており、収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 35,501億円 | 35,030億円 |
| 売上総利益 | 5,609億円 | 5,993億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.8% | 17.1% |
| 営業利益 | 2,651億円 | 3,483億円 |
| 営業利益率(%) | 7.5% | 9.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が1,277億円(構成比14%)、研究開発費が878億円(同10%)を占めています。売上原価は2兆2,561億円(構成比100%)です。
■(3) セグメント収益
サービスソリューションはモダナイゼーションビジネスなどの好調により増収増益を牽引しました。ハードウェアソリューションとユビキタスソリューションは減収となったものの、事業効率の向上や高付加価値商品へのシフトにより利益を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| サービスソリューション | 22,460億円 | 23,469億円 | 2,899億円 | 3,614億円 | 15.4% |
| ハードウェアソリューション | 1,120億円 | 10,098億円 | 613億円 | 670億円 | 6.6% |
| ユビキタスソリューション | 2,517億円 | 2,298億円 | 313億円 | 388億円 | 16.9% |
| 消去・全社 | -676億円 | -836億円 | -753億円 | -767億円 | -% |
| 連結(合計) | 35,501億円 | 35,030億円 | 2,651億円 | 3,483億円 | 9.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3,039億円 | 3,381億円 |
| 投資CF | -892億円 | 1,445億円 |
| 財務CF | -2,405億円 | -3,797億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.0%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、社会における存在意義(パーパス)を「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定めています。このパーパスの実現を通じて、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイングの向上という3つの分野で社会に貢献し、持続可能な世界の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、グループの行動の原理原則として「Fujitsu Way」を掲げています。この中で「挑戦」「信頼」「共感」という価値観を大切にし、社員一人ひとりの主体的な挑戦や多様性の尊重を推進しています。また、誰もが一体感を持って自分らしく活躍できるインクルーシブで公平な組織文化の構築を目指し、キャリアオーナーシップの浸透に注力しています。
■(3) 経営計画・目標
2035年度をゴールとする10年の中長期ビジョンに向け、テクノロジー主導の価値創造を進めています。2025年度までの中期経営計画では、以下の非財務KPIの達成などを目指していました。
- 従業員エンゲージメント:グローバルスコア75
- ダイバーシティリーダーシップ:グローバル女性幹部社員比率20%
- 温室効果ガス排出量削減:Scope1・2で59.2%減など
■(4) 成長戦略と重点施策
社会課題の解決に向けて、エネルギー効率の高いコンピューティングを提供する「Sovereign Platform」、ロボットと人が協調する「Physical AI」、デジタルツインで分析を行う「Intelligent Society」の3領域を成長の柱に定めています。また、AI技術や量子コンピュータ、次世代プロセッサの開発などコアテクノロジーの強化に投資を加速させています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、イノベーションを創出する企業」を目指しています。ジョブ型人材マネジメントを導入し、職務に応じた処遇を徹底するとともに、社内公募制度(ポスティング)や自律的な学び(リスキリング)の環境を整備し、社員のキャリアオーナーシップを後押ししています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.7歳 | 17.6年 | 10,122,665円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.1% |
| 男性育児休業取得率 | 86.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 78.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 81.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(71ポイント)、リーダーシップレベルの女性比率(17.5%)、コミュニティ活動に参加した社員の割合(30.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) セキュリティに関するリスク
サイバー攻撃の高度化や不正アクセス等により、システム運用停止や情報漏洩が発生するリスクがあります。これに対応するため、ゼロトラストを前提としたIT基盤の構築や、AIを活用した攻撃手法の分析・検知能力の強化などを推進し、サプライチェーンも含めた全社的なセキュリティリスクマネジメントを徹底しています。
■(2) 製品やサービスの欠陥や瑕疵に関するリスク
システムの受託開発や製品製造における複雑化に伴い、欠陥や納期遅延が生じるリスクがあります。対策として「富士通グローバル品質指針」を定め、開発プロセスの監視や品質マネジメントシステムを運用するとともに、全社横断的な知見の共有などにより、製品やサービスの品質維持・向上を図っています。
■(3) 競合・業界に関するリスク
ICT業界における技術革新の速さや競争激化により、製品・サービスの価格下落や陳腐化が進むリスクがあります。同社は市場動向や顧客ニーズを注視し、競争力のある製品ラインナップの拡充とコストダウンの両立に取り組むとともに、独自技術への研究開発投資を継続し、競争優位性の確保に努めています。
■(4) 経済や金融市場の動向に関するリスク
国内外の景気後退により、顧客のIT投資の抑制や案件の延期・縮小が発生するリスクがあります。また、為替や金利の変動が業績に影響を及ぼす可能性もあります。同社は市場動向を定期的にモニタリングし、戦略の見直しや為替予約等のヘッジ措置を講じることで、リスクの軽減を図っています。



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