※本記事は、富士通株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 企業概要:どんな会社?
富士通グループは、日本を含む世界各地でデジタルサービスを提供する企業です。サービスソリューション、ハードウェアソリューション、ユビキタスソリューションの3つの事業セグメントを通じて、グローバルに事業を展開しています。
単体従業員数は32,224名、連結従業員数は99,203名です。事業セグメントはサービスソリューション、ハードウェアソリューション、ユビキタスソリューションの3つです。
主な国内グループ会社は、富士通Japan、富士通ネットワークソリューションズ、富士通ディフェンス&ナショナルセキュリティ、Ridgelinez、トランストロンなどです。
富士通グループは、前連結会計年度よりデバイスソリューションを非継続事業に分類し、新光電気工業や富士通ゼネラルなどの株式譲渡を進めました。また、ネットワークプロダクト事業を新会社1FINITY株式会社に承継するなど、事業ポートフォリオの変革を進めています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
富士通は、イノベーションを通じて社会の持続可能性に貢献するテクノロジーカンパニーとして、多様な人材が活躍できる環境づくりに注力しています。同社グループは、グローバルな事業展開とジョブ型人材マネジメントを基盤に、従業員一人ひとりの成長とウェルビーイングを重視した働き方を推進しています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、従業員の平均年齢が40代前半であり、平均勤続年数も17年を超えることから、長期的なキャリア形成が可能な環境であると考えられます。安定した人材基盤のもと、多様な経験を持つ従業員が活躍している傾向が見られます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 10,122,665円 |
| 平均勤続年数 | 17.6年 |
| 平均年齢 | 42.7歳 |
| 単体従業員数 | 32,224人 |
| 連結従業員数 | 99,203人 |
| 単体のグループ内比率 | 32.5% |
同社グループは、退職給付制度として確定給付型と確定拠出型を採用しています。確定給付型は給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度、確定拠出型は会社が拠出した資金を従業員が運用する制度です。これらの制度は国内のほか、英国やドイツなどの海外拠点においても設けられています。
退職一時金制度もありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。当年度末の制度資産の公正価値は1兆3,753億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、パーパスに基づく経営のもと、企業価値向上の駆動力を人的資本に求め、人材戦略を経営戦略の中核に位置付けています。事業ポートフォリオと連動した人材ポートフォリオの最適化を通じ、戦略実現に必要な人材の確保・育成・配置を一体的に推進し、市場競争力の源泉として人的資本の質と配分の最適化を図っています。
その基盤として、ジョブ型人材マネジメントをグローバルに展開しています。各事業戦略に基づき、組織・ポジション・役割を明確化したうえで、職務及び成果責任に応じて人材を配置・評価・処遇することで、戦略と実行の連動性を高め、人的資本の生産性向上と価値創出への貢献を最大化しています。従業員の給与その他の給付の額及び内容の決定に関する方針としては、事業成長を牽引する人材の獲得・定着に向け、労働市場における競争力を重視した報酬設計を基本方針としています。具体的には、「労働市場」を第一義とし、各人が担う職務・ポジションの価値に基づき、マーケットベンチマークを踏まえた適切な報酬水準を設定することで、グローバル水準での人材競争力の確保を図っています。
職責や役割の特性に応じた多様な報酬制度を導入しており、幹部社員向けの株式報酬制度や、高度な専門性を有する従業員を対象とした「高度専門職系人材処遇制度」、営業成績に連動する「セールスインセンティブ制度」などがあります。また、従業員持株会制度を大幅に見直し、加入率が大きく向上しています。2026年度からは新卒採用においてもジョブ型人材マネジメントに基づく採用形態へと移行し、ジョブや職責の高さに基づき処遇することで、高い専門性を持つ人材の獲得を加速させています。
同社グループは、「多彩な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」を目指し、以下の3点を人事部門のグローバル戦略テーマとしています。“Empowerment”として多様性を享受しオープンかつエンゲージメントの高い、信頼を基にした強固な文化を醸成します。“Growth”では常にすべての従業員が魅力ある仕事に挑戦し、学び、成長する機会を提供します。“Impact”では国境や組織の枠組みを越えてコラボレーションし、ビジネスと社会に強いインパクトをもたらす多様性あふれる集団を形成します。
事業戦略と一体化した人材ポートフォリオの策定を進め、成長領域への戦略的な人材の採用・配置や、リスキリング・アップスキリングを含めた人材育成施策を実行しています。グローバル統一の人材情報プラットフォームを導入し、データドリブンな人材ポートフォリオ変革を推進しています。社内の人材流動化を促進するため、グローバル・グループワイドに展開する社内公募制度「ポスティング」や、社内インターンシップ制度「Jobチャレ!!」、社内副業制度「Assign Me」などを提供しています。新卒採用では、2026年度入社者より新卒一括採用を廃止し、通年でフレキシブルに採用するジョブ型人材マネジメントを拡大しています。
リスキリングやアップスキリングの実践として、Uvanceの拡大に向けたSAP、Salesforce、ServiceNow、AWS、Microsoft Azureなどのスキル向上に注力し、AI分野の資格取得も推進しています。キャリアオーナーシップの浸透を重視し、キャリア意識を高める「キャリアCafe」や「キャリアオーナーシップ診断」を提供しています。学びの機会拡充のため、教育プラットフォーム「Udemy Business」や「LinkedInラーニング」を導入・継続利用し、自律的な学びの文化を醸成しています。また、グローバル共通の人材マネジメントの基本コンセプト「Connect」を導入し、毎月の1on1ミーティングや「Connect Conversations」を通じて、社員の成長を後押ししています。
従業員エンゲージメントの向上にも取り組み、年2回のエンゲージメントサーベイを通じて組織の風土を可視化し、データドリブンな改善サイクルを推進しています。多様性・インクルージョンの推進では、「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、インクルーシブな企業文化」を目指し、リーダーシップレベルにおける女性比率の向上や、多様で柔軟な働き方「Work Life Shift」を進化させています。健康経営と労働安全衛生の遵守も重視し、「富士通グループ労働安全衛生基本方針」に基づき、安全・快適な労働環境の整備と社員の健康・安全の確保を図っています。ウェルビーイングの実現をマテリアリティの一つとして掲げ、「一人ひとりが自らの志を胸に、より良い未来のために挑戦し続けている状態」を目指し、成長意欲とウェルビーイング実感値の双方が高い状態を目指す活動を実践しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男女賃金差異は、男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合を示しており、同一労働の賃金に差はなく、ジョブレベル毎の人数構成の差によるものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 13.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 79.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) | 78.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うちパート・有期労働者) | 81.4% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ 富士通Japan
男性育児休業取得率は、該当事業年度以前に配偶者が出産した男性労働者で該当事業年度中に休職または育児目的休暇を取得した人も含むため、取得割合は100%を超過する場合があります。男女賃金差異は、男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合を示しており、同一労働の賃金に差はなく、ジョブレベル毎の人数構成の差によるものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 11.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 86.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 76.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) | 75.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うちパート・有期労働者) | 75.6% |
▼ 富士通ネットワークソリューションズ
男性育児休業取得率は、該当事業年度以前に配偶者が出産した男性労働者で該当事業年度中に休職または育児目的休暇を取得した人も含むため、取得割合は100%を超過する場合があります。男女賃金差異は、男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合を示しており、同一労働の賃金に差はなく、ジョブレベル毎の人数構成の差によるものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 3.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 93.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 76.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) | 72.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うちパート・有期労働者) | 89.3% |
▼ 富士通ディフェンス&ナショナルセキュリティ
男性育児休業取得率は、該当事業年度以前に配偶者が出産した男性労働者で該当事業年度中に休職または育児目的休暇を取得した人も含むため、取得割合は100%を超過する場合があります。男女賃金差異は、男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合を示しており、同一労働の賃金に差はなく、ジョブレベル毎の人数構成の差によるものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 4.4% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 50.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 78.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) | 72.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うちパート・有期労働者) | 113.9% |
グループ全体(連結)
| 指標 | 2023年度実績 | 2024年度実績 | 2025年度実績 |
|---|---|---|---|
| 従業員エンゲージメントスコア | 69 | 68 | 71 |
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 15.8% | 16.8% | 17.5% |
| グローバルポスティング異動人数 | 65名 | 59名 | 50名 |
| Udemy Business 利用者割合 | 24.4% | 26.5% | 28.9% |
| LinkedIn ラーニング 利用者割合 | 76.6% | 81.1% | 86.3% |
多様性・登用
| 指標 | 2023年度実績 | 2024年度実績 | 2025年度実績 |
|---|---|---|---|
| 高度専門人材認定者数(内3S認定) | 143名(128名) | 178名(159名) | 212名(191名) |
健康・安全
| 指標 | 2025年度目標 | 2025年度実績 |
|---|---|---|
| 重大な災害発生件数 | ゼロ | ゼロ |
人材育成・エンゲージメント
| 指標 | 2023年度実績 | 2024年度実績 | 2025年度実績 |
|---|---|---|---|
| 新規採用数 | 2,131名 | 1,686名 | 1,187名 |
| SAP資格取得件数 | 452件 | 438件 | 379件 |
| ServiceNow資格取得件数 | 430件 | 1,114件 | 1,424件 |
| Salesforce資格取得件数 | 950件 | 1,674件 | 1,195件 |
| AWS資格取得件数 | 2,985件 | 3,016件 | 3,983件 |
| Microsoft Azure資格取得件数 | 3,100件 | 3,237件 | 3,932件 |
| 新卒入社三年後定着率 | 90% | 90% | 95% |
| 社内ポスティング異動人数 | 2,725名 | 2,826名 | 2,143名 |
| Jobチャレ!!利用者数 | 71名 | 73名 | 79名 |
| キャリアCafe参加者数 | 7,255名 | 2,849名 | 3,277名 |
| キャリアオーナーシップ診断 | 11,813名 | 9,979名 | 9,123名 |
| 1on1平均実施回数 | 11.7回実施 | 12.8回実施 | 11.9回実施 |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
富士通は、日本を含む世界各地でデジタルサービスをグローバルに提供しているテクノロジーカンパニーです。同社グループの事業は、「サービスソリューション」、「ハードウェアソリューション」、「ユビキタスソリューション」の3つのセグメントで構成されています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、デジタルサービスを軸に幅広い事業を展開しています。特にサービスソリューションビジネスは、Uvanceやモダナイゼーションビジネスが成長を牽引し、収益性の改善も進んでいます。ハードウェアソリューションではシステムプロダクトとネットワークプロダクトを提供し、ユビキタスソリューションではパソコンなどのクライアントコンピューティングデバイスを取り扱っています。
サービスソリューション
このセグメントでは、コンサルティング、クラウドサービス、システムインテグレーション、ソフトウェア、ITサービス、マネージドサービスなど、多岐にわたるデジタルサービスを提供しています。収益は、Uvanceを中心としたグローバル共通の価値提供サービスや、日本市場・海外市場向けのサービス提供・実装から得ています。運営は、富士通Japan、富士通ネットワークソリューションズ、富士通ディフェンス&ナショナルセキュリティ、Ridgelinez、トランストロン、Fujitsu Europe Holding B.V.、Fujitsu North America, Inc.、Fujitsu Australia Limited、Fujitsu Asia Pte. Ltd.、GK Software SEなどが行っています。
ハードウェアソリューション
ICTの基盤となるサーバやストレージシステムなどのシステムプロダクト、携帯電話基地局や光伝送システムなどのネットワークプロダクトの販売と保守サービスを提供しています。収益は、これらのハードウェア製品の販売と、それらに付随するサポートサービスから得ています。運営は、エフサステクノロジーズ、富士通フロンテック、1FINITY、Fsas Technologies GmbHなどが行っています。
ユビキタスソリューション
パソコンなどのクライアントコンピューティングデバイスの提供を主な事業としています。収益は、これらのデバイスの販売から得ています。運営は、富士通パーソナルズなどが行っています。
同社グループの売上収益は国内市場が中心ですが、欧州、アメリカ、アジアパシフィックなど海外地域からも収益を得ています。特定の顧客への売上収益が連結売上収益の10%に満たないため、特定の顧客への収益集中は見られません。
| セグメント | 売上収益(2025年3月期) | 売上収益(2026年3月期) |
|---|---|---|
| サービスソリューション | 2兆2,460億円 | 2兆3,469億円 |
| ハードウェアソリューション | 1兆1,199億円 | 1兆99億円 |
| ユビキタスソリューション | 2,517億円 | 2,298億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの売上収益は、直近5年間で変動が見られます。当年度は前年度と比較してわずかに減少しましたが、サービスソリューションの国内市場での受注増加が寄与しています。一方で、ハードウェアソリューションやユビキタスソリューションでは、大型商談の反動や需要の一巡により減収となりました。
継続事業からの税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は、直近5年間で増減を繰り返しながらも、当年度は大幅な増加となりました。サービスソリューションにおける増収効果と採算性改善が大幅増益の要因となっています。また、株式会社富士通ゼネラルや新光電気工業株式会社の株式売却益といった一時的な要因も利益を押し上げています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3兆5,868億円 | 3兆7,138億円 | 3兆4,770億円 | 3兆5,501億円 | 3兆5,030億円 |
| 税引前利益 | 2,400億円 | 3,719億円 | 1,656億円 | 2,734億円 | 4,090億円 |
| 税引前利益率 | 6.7% | 10.0% | 4.8% | 7.7% | 11.7% |
| 当期利益 | 1,827億円 | 2,152億円 | 2,545億円 | 2,198億円 | 4,494億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 924.21 | 110.76 | 135.59 | 120.93 | 254.83 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上収益は、前期と比較して増加しています。また、従業員1人あたり営業利益も前期から大きく向上しています。これらの指標の改善は、事業ポートフォリオの変革や経営基盤の強化、システム開発プロセスの標準化・自動化といった取り組みが生産性向上に寄与していることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上収益(連結) | 31.5百万円 | 35.3百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 2.4百万円 | 3.5百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
富士通グループの経営の安定性は、財務基盤と資金の流れから読み解くことができます。同社グループは本業で安定した資金を創出し、将来への投資も着実に進めている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率とROEの推移から安定した状態を示しています。自己資本比率はプライム市場の製造業平均を上回る水準であり、ROEも高い水準で推移しています。手元資金である現金及び現金同等物も増加しており、事業運営における資金の厚みがある状況です。これらの財務指標は、事業の持続可能性と安定した雇用環境を支える基盤となります。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 自己資本 | 1兆7,410億円 | 2兆249億円 |
| 自己資本比率 | 49.8% | 59.6% |
| ROE(自己資本利益率) | 12.6% | 23.9% |
| 現金及び現金同等物 | 2,361億円 | 4,504億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは当期に3,381億円のプラスとなり、前期から増加しています。投資活動によるキャッシュフローは、新光電気工業株式会社や株式会社富士通ゼネラルの株式売却収入により1,445億円のプラスとなりましたが、株式会社ブレインパッドの完全子会社化やRapidus株式会社への出資といった成長投資も行われています。営業活動と投資活動を合わせたフリーキャッシュフローは4,826億円のプラスとなり、前期から大幅に増加しました。
財務活動によるキャッシュフローは、短期借入金の返済や自己株式の取得により△3,797億円のマイナスとなっています。これらの資金の流れは、同社グループが本業で安定的に資金を創出し、事業構造改革を進めつつ、将来の成長に向けた投資もバランス良く行っている状況を示しており、雇用や給与の安定性、そして今後の成長性への期待につながるものです。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 3,039億円 | 3,381億円 |
| 投資CF | △892億円 | 1,445億円 |
| 財務CF | △2,405億円 | △3,797億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 2,147億円 | 4,826億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、ハードウェアソリューションにおいて前年度の公共分野での大型商談の反動減、ユビキタスソリューションにおいてOS更新需要の一巡といった影響を受けています。これらの要因により、全社連結では減収となりました。
③ 人材・組織に関するリスク
同社では、事業ポートフォリオの変革と連動した人材ポートフォリオの変革に伴う人材の流動化が進んでいます。これは、事業環境の変化に対応するための組織再編や人材配置の見直しが行われていることを示しています。
④ 雇用安定性・リストラ
同社グループは、当年度に事業構造改善引当金として25.2億円を計上しています。これは人員の適正化や事業整理等に伴う損失見込額です。また、欧州および国内ハードウェア事業関連の構造改革等に伴う一過性の損失として422億円を計上しました。これらの費用は事業再編や人員削減等に伴うものであり、転職先を検討する際に留意すべき情報です。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
富士通は、イノベーションを通じて社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことをパーパスとして掲げています。このパーパス実現に向けて、地球環境問題の解決やデジタル社会の発展、人々のウェルビーイング向上に貢献する企業文化を醸成しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスとしています。このパーパス実現のため、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイングの向上という3つの分野で課題解決に取り組んでいます。
同社グループは、企業価値向上と持続可能な世界の実現を目指しています。2035年度に向けた中長期ビジョンでは、AIやコンピューティングといったTechnology-drivenでの価値創造を推進し、信頼できるテクノロジーをコアに、お客様や社会と共に成長する企業となることを目指しています。
AI-driven経営の支援を成長の柱とし、Sovereign Platform、Physical AI、Intelligent Societyの3つの領域を中心に、社会課題解決に向けたソリューション開発と提供に注力していく方針です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、インクルーシブな企業文化」の醸成を目指しています。これはFujitsu Wayを礎とし、社員一人ひとりの多様な経験や専門性、個性と能力を最大限に引き出すことを重視するものです。
人事部門のグローバル戦略テーマとして、「Empowerment(多様性を享受しオープンかつエンゲージメントの高い文化)」「Growth(魅力ある仕事に挑戦し学び成長する機会)」「Impact(国境や組織を超えてコラボレーションし強いインパクトをもたらす集団)」の3点を掲げています。
人材マネジメントの基本コンセプトは「Connect」であり、パーパスと個人のパーパスを結びつけ、主体的な挑戦を後押しし、組織と個人の成長を最大化することを目指しています。評価制度では、Fujitsu Wayの価値観である「挑戦」「信頼」「共感」の体現度も評価されます。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、パーパス実現に向けたマテリアリティとして、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイングの向上という3分野に重点的に取り組むべき課題を設定し、企業活動を推進しています。
リソース戦略では、事業と連動した人材ポートフォリオの実現を掲げ、ジョブ型人事制度の適用拡大やリスキリングの推進、グローバル共通の人事プラットフォーム「OnePeople」の展開を進めています。
非財務面では、環境、お客様、生産性、人材の4項目でKPIを定め、従業員エンゲージメントや女性幹部社員比率の向上に取り組んでいます。
2035年度をゴールとする中長期ビジョンに基づき、AIやコンピューティングといったTechnology-drivenでの価値創造を推進し、社会課題解決に向けたソリューション開発に注力していく方針です。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
富士通の取締役会は、非執行取締役による業務執行取締役の監督と助言を重視した構成となっています。監査役による監査・監督に加え、指名委員会、報酬委員会、独立役員会議が取締役会を補完する体制です。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社の筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、機関投資家や信託銀行が上位株主として多く見られます。また、同社従業員持株会も上位に位置しています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.23% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.68% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 2.77% |
| THE CHASE MANHATTAN BANK, N.A. LONDONSECS LENDING OMNIBUS ACCOUNT(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 2.61% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 1.95% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は13名(男性10名・女性3名)で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長CEOは時田隆仁氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 時田 隆仁 | 代表取締役社長 CEO | 1988年4月 同社入社、2019年6月 代表取締役社長、2021年4月 CEOより現職。 |
| 磯部 武司 | 代表取締役副社長 CFO | 1985年4月 同社入社、2019年6月 CFO、2024年4月 代表取締役副社長より現職。 |
| 平松 浩樹 | 取締役 執行役員専務 CHRO | 1989年4月 同社入社、2021年4月 CHRO、2025年4月 取締役執行役員専務より現職。 |
社外取締役は、古城佳子氏(青山学院大学国際政治経済学部国際政治学科教授・指名委員会委員長・取締役会議長)、佐々江賢一郎氏(公益財団法人日本国際問題研究所理事長・指名委員会委員)、バイロン ギル氏(Indus Capital Partners, LLCマネージング・パートナー・報酬委員会委員長)、平野拓也氏(Three Fields Advisors, LLC共同創業者・報酬委員会委員)、小林いずみ氏(オムロン社外取締役・報酬委員会委員)です。
同社は監査役会設置会社であり、非執行取締役による業務執行の監督と、業務の決定に関与しない監査役による独立した立場からの監督の両方が機能することで、充実した監督機能が確保されています。取締役会の過半数を独立社外取締役が占めることで、監督機能および助言機能の強化を図っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、職務と職責に応じた月額定額の基本報酬、短期業績に連動する賞与、そして株主価値との連動を重視した中長期インセンティブとしての株式報酬(業績連動型株式報酬および譲渡制限付株式ユニット)で構成されています。報酬水準は、国内外のグローバル企業の報酬構成割合や職務・職責ごとの水準をベンチマークとして設定されています。業務執行取締役の総報酬における業績連動報酬の割合は、職責の重い取締役ほど高くなるように決定されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 4名 | 15.8億円 | 3.95億円 |
| 監査役(社外除く) | 3名 | 90百万円 | 30.0百万円 |
| 社外役員 | 9名 | 1.6億円 | 17.4百万円 |
| 社外取締役 | 6名 | 1.0億円 | 17.0百万円 |
| 社外監査役 | 3名 | 55百万円 | 18.3百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。
個人別報酬が開示されている役員は、時田隆仁氏(8.68億円)、磯部武司氏(3.57億円)、平松浩樹氏(2.22億円)、古田英範氏(1.32億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。