※本記事は、SBIインシュアランスグループ株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SBIインシュアランスグループってどんな会社?
SBIグループの保険事業を統括する持株会社で、損害保険、生命保険、少額短期保険の3事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2016年に設立され、翌2017年に保険持株会社として認可を取得、SBI損害保険やSBI生命保険などを子会社化して営業を開始しました。2018年に東証マザーズへ上場し、その後も日本アニマル倶楽部(現SBIプリズム少額短期保険)や住生活少額短期保険(現SBIペット少額短期保険)を子会社化するなど、事業規模を拡大しています。
2025年3月31日時点の従業員数は連結で955名、単体で15名です。筆頭株主は親会社のSBIホールディングスで、第2位は通信サービスや電力販売等を行う事業会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SBIホールディングス | 59.67% |
| 光通信 | 9.49% |
| 西薗 仁 | 1.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役執行役員会長兼社長は乙部辰良氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 乙部 辰良 | 代表取締役執行役員会長兼社長 | 1981年大蔵省入省。財務省関東財務局長等を歴任後、2017年より同社取締役会長。2018年より現職。 |
| 朝倉 智也 | 取締役 | 1989年北海道拓殖銀行入行。モーニングスター(現SBIグローバルアセットマネジメント)代表取締役社長等を経て、2017年より現職。 |
| 大和田 徹 | 取締役執行役員 | 1989年エクイタブル生命保険入社。SBI生命保険取締役等を歴任し、2019年より現職。 |
| 長澤 信之 | 取締役執行役員 | 2003年ソフトバンク・ファイナンス入社。SBI少短保険ホールディングス社長等を兼務し、2023年より現職。 |
| 小野 尚 | 取締役 | 1983年大蔵省入省。SBI生命保険社長等を経て2019年より現職。SBI損害保険社長を兼務。 |
| 篠原 秀典 | 取締役 | 1981年住友生命保険入社。同社取締役代表執行役副社長等を経て、2024年より現職。SBI生命保険社長を兼務。 |
社外取締役は、永末裕明(元あいおいニッセイ同和損害保険副社長)、渡邊啓司(元青山監査法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「損害保険事業」「生命保険事業」「少額短期保険事業」を展開しています。
■(1) 損害保険事業
インターネットや代理店を通じて、自動車保険、がん保険、火災保険などを提供しています。特に自動車保険分野では、ダイレクト型損保としての価格競争力を強みとしています。
主な収益は契約者からの保険料収入です。運営はSBI損害保険が行っています。
■(2) 生命保険事業
インターネットや代理店を通じて、定期保険、就業不能保険、医療保険などを提供しています。また、金融機関向けに住宅ローン利用者を対象とした団体信用生命保険も展開しています。
主な収益は契約者からの保険料収入です。運営はSBI生命保険が行っています。
■(3) 少額短期保険事業
地震補償保険、賃貸住宅向け保険、ペット保険など、多様なニーズに対応した少額短期保険商品を提供しています。インターネットや通信販売、代理店など多様なチャネルを活用しています。
主な収益は契約者からの保険料収入です。運営はSBIいきいき少額短期保険、SBI日本少額短期保険、SBIプリズム少額短期保険など複数社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、経常収益、経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。保有契約件数の増加に伴い、収益基盤が順調に拡大しており、当期純利益も増加傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 867億円 | 884億円 | 961億円 | 1,093億円 | 1,185億円 |
| 経常利益 | 39億円 | 59億円 | 63億円 | 82億円 | 95億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | 6.7% | 6.6% | 7.5% | 8.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 9億円 | 12億円 | 15億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を見ると、経常収益の増加に伴い経常利益も伸長しています。増収効果が、保険金支払いや責任準備金繰入額等の費用増加を吸収し、利益率の向上に寄与しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 1,093億円 | 1,185億円 |
| 経常利益 | 82億円 | 95億円 |
| 経常利益率(%) | 7.5% | 8.0% |
※保険業のため、売上高を経常収益、営業利益を経常利益として表示しています。売上総利益は該当しません。
販売費及び一般管理費等の経常費用のうち、損害保険事業における保険引受費用が277億円(構成比約25%)、生命保険事業における保険金等支払金が280億円(同約26%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収増益となりました。損害保険事業は保険料収入が増加し、生命保険事業も保有契約件数の増加により収益が拡大しました。少額短期保険事業は増収に加え、責任準備金積立額の減少等が利益に寄与しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 損害保険事業 | 369億円 | 404億円 | 13億円 | 16億円 | 3.8% |
| 生命保険事業 | 403億円 | 444億円 | 8億円 | 8億円 | 1.8% |
| 少額短期保険事業 | 323億円 | 338億円 | -0億円 | 2億円 | 0.7% |
| 連結(合計) | 1,093億円 | 1,185億円 | 15億円 | 20億円 | 1.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 73億円 | 73億円 |
| 投資CF | -94億円 | -54億円 |
| 財務CF | -3億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「顧客中心主義」の徹底を基本とし、保険分野において様々な付加価値を創造し、顧客基盤の更なる拡大を続けることで持続的な企業価値の向上を目指しています。「全てにおいてお客様を中心に考える」「保険業界におけるイノベーターたれ」「正しい倫理的価値観をもつ」「社会的責任を全うする」の4項目をグループ経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
常に既成概念に囚われないチャレンジ精神を持ち、Fintechなどの技術革新を敏感に捉え、これらを活用した付加価値の高い商品やサービスの開発を追求する文化があります。また、高齢化やシェアリングエコノミーの進展など、人々の生活様式や社会の変化に迅速かつ柔軟に対応する企業文化を持ち続けることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年3月期から2028年3月期までの中期経営計画を策定し、保険事業におけるイノベーターとして顧客の便益を高める商品・サービスを提供する保険グループを目指しています。2028年3月期の数値目標として以下を掲げています。
* 経常収益:1,600億円
* 経常利益:170億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:40億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「シナジー」「テクノロジー」「ニッチ」を基本戦略としています。グループの顧客基盤やネットワークを活用した販路拡大、AI・ビッグデータなどの最先端技術による業務効率化と顧客利便性の追求、独自性のあるニッチ戦略による市場開拓を推進しています。また、M&Aによる非連続的な成長も検討しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材こそが創造性の源泉であり、競争力の源泉となる差別化をもたらす主因であると捉えています。人材価値向上に向けて充実した人材育成の体制整備のほか、働きやすい職場環境づくりや開かれた雇用機会の提供と多様な人材の活用に取り組んでいます。上級管理職研修やSBI大学院大学への派遣制度なども設けています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 48.4歳 | 5.3年 | 9,627,416円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.4% |
| 男性育児休業取得率 | 61.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 60.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 73.1% |
※女性管理職比率はグループ全体の数値、その他はSBI損害保険株式会社の数値です。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均残業時間(12.1時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 保険引受に関するリスク
自然災害リスクや保険事故発生率の変動リスクがあります。地震、噴火、台風などの大規模災害が発生した場合、異常危険準備金等で備えていても、予測を超える規模であれば経営成績に影響が生じる可能性があります。また、生命保険事業における死亡率等の乖離や、責任準備金の積増しが必要となる場合も業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 保険業界を取り巻く環境に関するリスク
国内景気や個人消費の動向、人口減少などの影響を受けやすい事業環境にあります。また、競合他社との競争激化や、ダイレクト型損保に対するサービス品質へのイメージ等がシェア拡大の足枷となる可能性もあります。さらに、自動運転技術の普及など技術革新により保険ニーズが変化し、対応できない場合は競争力を失う恐れがあります。
■(3) 資産運用に関するリスク
金利、株価、為替の変動や信用リスクにより、資産運用収益が悪化する可能性があります。金利低下による逆ざやの発生、金利上昇による債券価格の下落、株価下落による評価損、為替変動による損失などが想定されます。これらは同グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。



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