エーアイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エーアイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エーアイはスタンダード市場に上場し、音声合成・音声認識技術を用いた音声事業とCRM事業を主力に展開しています。ライバーマネジメント事業等も手掛けます。直近の業績は増収を達成し、親会社株主に帰属する当期純利益は黒字転換を果たしました。多様なニーズに応えるクラウドサービスの拡充で成長を続けています。


※本記事は、株式会社エーアイの有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エーアイってどんな会社?


音声合成・音声認識エンジンの開発と、マーケティング支援プラットフォームを提供するテクノロジー企業です。

(1) 会社概要


同社は2003年に設立され、2007年に自由文音声合成エンジン「AITalk」の提供を開始しました。2018年にマザーズ市場(当時)へ上場し、2024年にフュートレックを吸収合併して現在の事業基盤を確立しました。2025年には、Lapis Liveを完全子会社化するとともに、スタンダード市場へ市場区分を変更しています。

現在の同社グループは、連結従業員数114名、単体従業員数110名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は代表取締役社長の廣飯伸一氏で、第2位は事業会社のソルクシーズ、第3位は創業者の吉田大介氏となっています。

氏名 持株比率
廣飯 伸一 14.42%
ソルクシーズ 4.10%
吉田 大介 3.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は廣飯伸一氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
廣飯 伸一 代表取締役社長 1989年リクルート入社。複数社の代表等を歴任し、2004年同社取締役に就任。2019年副社長を経て、2022年より現職。
小川 遼 取締役 2007年国会議員秘書。コムチュアを経て2019年同社入社。執行役員総務グループ統括などを経て、2024年より現職。
井上 将志 取締役 1996年三菱電機入社。2008年フュートレック入社後、同社取締役CRM事業部長などを経て、2025年より現職。
深田 俊明 取締役 1990年キヤノン入社。ATR-Trek代表取締役やフュートレック取締役などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、栗原学(栗原公認会計士事務所所長)、長尾章(ソルクシーズ取締役会長)、金丸祐子(外苑法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、音声事業、CRM事業、ライバーマネジメント事業、その他事業を展開しています。

音声事業


従来の波形接続合成方式や深層学習技術を活用した高品質な音声合成・音声認識エンジンを提供しています。防災無線やカーナビなどのインフラ用途から、ゲーム・アニメ向けのコンテンツ用途まで、幅広い法人・個人顧客のニーズに対応しています。

収益源は、音声合成・音声認識エンジンを利用する顧客からの月額使用料やロイヤリティなどの許諾料、およびパッケージソフトの販売代金です。運営は同社が行っています。

CRM事業


顧客中心ビジネスを推進するための統合マーケティングプラットフォーム「Visionary」を提供しています。顧客データの統合・活用機能に加え、ポイント付与やクーポン配布などのマーケティング機能を備え、多様な業種で採用されています。

システムの導入企業からのライセンス料や、顧客の要望に応じたオーダーメイドのカスタマイズ開発費が主な収益源です。運営は同社が行っています。

ライバーマネジメント事業


バーチャルキャラクターを利用してライブ配信を行う配信者(Vライバー)やタレントの育成、マネジメント、関連イベントの企画・運営を行っています。

ライブ配信プラットフォーム運営会社から支払われる配信報酬が主な収益源です。運営は子会社のLapis Liveが行っています。

その他事業


デジタル教科書や教材に関連するアプリケーションなどの開発を行っています。

顧客からのシステムやソフトウエアの受託開発費が主な収益源です。運営は子会社のスーパーワンが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にある一方、経常利益は減益となっており、利益率も低下しています。当期利益は黒字転換を果たしました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 14.9億円 18.5億円
経常利益 1.3億円 0.8億円
利益率(%) 8.8% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.2億円 1.1億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も増加していますが、コスト負担の増加により営業利益は微減となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 14.9億円 18.5億円
売上総利益 7.5億円 9.8億円
売上総利益率(%) 50.4% 52.7%
営業利益 1.1億円 1.0億円
営業利益率(%) 7.3% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.0億円(構成比23%)、研究開発費が1.2億円(同14%)、支払手数料が1.0億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の音声事業が底堅く推移する中、合併等によりCRM事業の規模が大きく拡大しました。また、当期からライバーマネジメント事業が新たに寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
音声事業 11.6億円 11.3億円
CRM事業 2.9億円 5.7億円
ライバーマネジメント事業 - 0.7億円
その他事業 0.4億円 0.8億円
連結(合計) 14.9億円 18.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1.0億円 0.8億円
投資CF -2.5億円 -4.2億円
財務CF -3.8億円 -2.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社の経営の基本方針は、先進的で高品質な音声技術を安定的に提供することです。企業理念として「テクノロジーで皆が幸せな社会を創り出す」を掲げており、独自のAI技術を駆使して様々な分野に新たな価値を提案し、社会課題の解決に向けて挑戦し続けることを自社の重要な存在意義として位置づけています。

(2) 企業文化


同社は、社会から信頼され社会的責任を果たす継続企業であるためには、コンプライアンスの徹底が重要であると認識しています。具体的な行動指針として「コンプライアンス規程」を定め、全役職員が高い倫理観に基づいて行動し、公正かつ透明性の高い経営体制を確立することを重視する企業文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な企業価値の向上及び株主価値の最大化を重要な経営課題と認識し、資本効率を意識した経営を推進しています。持続的な成長に向けて収益性の向上による利益成長を図るとともに、資本コストを意識した経営を強化し、以下の目標の達成を目指しています。

・2027年3月期:売上高16億円、営業利益0.4億円、当期純利益0.6億円
・2029年3月期:ROE8%以上、営業利益率10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


音声事業では、深層学習などの最新技術への対応や継続的な機能強化を図り、「音声対話」や「音のAI検査」などの新領域へと利用範囲を拡大します。CRM事業では、CDP(顧客情報基盤)領域へと進化した統合サービスの機能拡充と販売体制強化に取り組み、競合優位性を高めて収益拡大を図る戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


AI音声技術やデジタルマーケティングなどに関する専門的な知識と開発力を有する人材の確保・育成を重要課題としています。採用活動の強化に加え、社員一人ひとりの能力向上を支援する教育体制を充実させるとともに、多様な働き方に対応した就業環境の整備を通じて、人材の定着と組織力の強化に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.8歳 9.1年 5,290,000円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.2%
男女賃金差異(正規雇用) 69.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 35.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の女性比率(38.3%)、月平均残業時間(11.72時間)、平均有給消化率(83.0%)、在宅勤務実施者割合(82.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と市場動向への対応リスク


音声合成や音声認識分野では、深層学習などの技術革新が急速に進んでおり、大手グローバル企業を含む競合他社との競争が一層激化しています。技術動向への対応や製品の機能強化が遅れた場合、同社グループの競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 企業買収や業務提携に関するリスク


将来の企業成長において必要と考える技術開発や市場の獲得のために、企業買収や新会社の設立、業務提携等を推進しています。事前の調査や検討を十分に行いますが、買収先等の事業が計画通りに進捗しない場合には、同社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


事業運営において、顧客や関係者の機密データを電子データとして保有しています。サイバー攻撃の高度化やインフラ障害などによってシステムの停止や個人情報の漏洩が発生した場合、損害賠償責任の発生や社会的信用の低下を招き、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 多額なのれんの発生と減損リスク


過去の企業結合により生じたのれんを貸借対照表に計上しており、一定期間で償却を行っています。今後の事業環境の変化等により期待される超過収益力が見込めなくなり、減損処理が必要となった場合、同社グループの財政状態および経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。