※本記事は、株式会社エーアイ の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エーアイってどんな会社?
高品質な音声合成技術を核に、法人・個人向け製品やサービスを展開する研究開発型企業です。
■(1) 会社概要
2003年に設立され、2007年に音声合成エンジン「AITalk」シリーズの提供を開始しました。2018年に東証マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証グロース市場へ移行しています。2024年10月には株式会社フュートレックを吸収合併し、事業領域を拡大しました。
連結従業員数は110名(単体102名)です。筆頭株主は代表取締役社長の廣飯伸一氏で、第2位・第3位は創業者およびその資産管理会社が保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 廣飯 伸一 | 13.25% |
| 合同会社吉田事務所 | 6.92% |
| 吉田 大介 | 6.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表取締役社長は廣飯伸一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 廣飯 伸一 | 代表取締役社長 | リクルート、ベスコムシステムズ社長を経て2004年同社取締役。2022年より現職。 |
| 小川 遼 | 取締役 | コムチュアを経て2019年同社入社。執行役員総務G統括等を経て2024年より現職。 |
| 井上 将志 | 取締役 | 三菱電機、フュートレック取締役CRM事業部長等を経て2024年より現職。 |
| 深田 俊明 | 取締役 | キヤノン、ATR-Trek社長、フュートレック取締役等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、長尾章(ソルクシーズ取締役会長)、栗原学(公認会計士)、杉山浩(公認会計士)、金丸祐子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「音声事業」「CRM事業」「その他事業」の3つのセグメントを展開しています。
■(1) 音声事業
音声合成エンジン「AITalk」や音声認識「vGate」シリーズ等を開発・提供しています。通信、防災、鉄道、ゲームなど幅広い業界の法人顧客に対し、ライセンスやクラウドサービスを提供するとともに、個人向けには「A.I.VOICE」シリーズを販売しています。
収益は、製品のライセンス料(月額・ロイヤリティ)、クラウドサービスの利用料、パッケージソフトの販売代金、受託開発費等から構成されます。運営は主に同社および子会社のATR-Trekが行っています。
■(2) CRM事業
統合マーケティングプラットフォーム「Visionary」シリーズを提供しています。小売・サービス業などの顧客データを管理し、メール配信やポイント管理などのマーケティング活動を支援するシステムです。
収益は、システムの導入費用、月額利用料、および顧客ごとのカスタマイズ開発費用等から構成されます。運営は同社が行っています。
■(3) その他事業
デジタル教科書や教材に関連するアプリケーション等の受託開発を行っています。教育分野におけるICT化のニーズに対応した開発サービスを提供しています。
収益は、顧客からの受託開発費用等から得ています。運営は子会社のスーパーワンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。なお、第22期より連結財務諸表を作成しているため、過去との比較は行いません。
■(1) 業績推移
第22期よりフュートレックとの合併に伴い連結決算を開始しました。売上高は約15億円、経常利益は約1.3億円となりましたが、合併時の段階取得に係る差損等の計上により、最終損益は赤字となっています。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 15億円 |
| 経常利益 | 1.3億円 |
| 利益率(%) | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.2億円 |
■(2) 損益計算書
連結初年度の損益状況です。売上総利益率は約50%を確保し、営業利益も黒字を計上しましたが、特別損失の影響により税引前損益はマイナスとなりました。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 15億円 |
| 売上総利益 | 7億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.4% |
| 営業利益 | 1億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.5億円(構成比24%)、研究開発費が1.0億円(同15%)、支払手数料が0.7億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
音声事業が売上の約8割、利益の大部分を稼ぎ出しています。CRM事業は赤字となりました。その他事業は小規模ながら黒字を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 音声事業 | 12億円 | 1.1億円 | 9.2% |
| CRM事業 | 3億円 | -0.0億円 | -1.0% |
| その他事業 | 0.4億円 | 0.1億円 | 14.2% |
| 調整額 | -0.0億円 | - | - |
| 連結(合計) | 15億円 | 1億円 | 7.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 営業CF | 1億円 |
| 投資CF | -2億円 |
| 財務CF | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はマイナスのため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「テクノロジーで皆が幸せな社会を創り出す」を企業理念として掲げています。先進的で高品質な技術を安定的に提供することを経営の基本方針とし、独自の技術を駆使して様々な分野に新たな価値を提案し、挑戦することを重視しています。
■(2) 企業文化
同社は「先進技術で社会の役に立つサービスを追求し続けること」をビジョンとし、音声技術による社会価値の創造や、人権の尊重、働きやすい職場環境の実現に取り組んでいます。また、コンプライアンス行動指針に基づき、地球環境の保全にも配慮した企業活動を行うことを指針としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年3月期の経営目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:1,800百万円
* 営業利益:48百万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:15百万円
■(4) 成長戦略と重点施策
音声事業ではオーディオブックや音のAI検査などの新規分野での案件増大を目指し、研究開発を加速させています。CRM事業では新サービス「Visionary Cloud」の正式リリースによる売上拡大を図ります。また、合併効果によるコスト見直しとリソースの適正配分により、効率的な組織運営を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ソフトウェア業界における技術者不足を背景に、専門知識を有する人材の確保と育成を重視しています。組織および個人の目標設定とともに、フレックスタイム制度や在宅勤務制度など、一人ひとりのライフスタイルに合った勤務形態を選択できる環境を整え、モチベーション向上と優秀な人材の獲得に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.8歳 | 8.8年 | 5,377,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男女賃金差異については、HTML原文に数値の記載がなく、明確な省略理由も見当たらないため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の女性比率(32.0%)、過去1年間の月平均残業時間(9.50時間)、過去1年間の平均有給消化率(75.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新と競争激化
音声AI分野では深層学習(DNN)などの技術開発が世界的に加速しており、大手グローバル企業を含めた競争が激化しています。技術革新のスピードや方向性によっては、同社製品の競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報セキュリティとシステム障害
2024年3月に外部からの不正アクセスによるシステム障害が発生しており、今後もサイバー攻撃等によるサービス停止や情報漏洩のリスクがあります。これらが発生した場合、損害賠償や社会的信用の低下により、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) のれんの減損リスク
企業買収に伴い多額の「のれん」を計上しており、これを期間償却しています。事業環境の変化等により買収した事業の収益性が低下した場合、減損処理が必要となり、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。



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