インバウンドテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インバウンドテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インバウンドテックは東京証券取引所グロース市場に上場し、マルチリンガルCRM事業とセールスアウトソーシング事業を展開しています。24時間365日対応の多言語コンタクトセンター運営を強みとしますが、当期は公共案件の期ずれや主力業務の停止等により、売上高21.3億円、営業損失1.5億円と減収減益になりました。


※本記事は、株式会社インバウンドテックの有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. インバウンドテックってどんな会社?


多言語対応のコンタクトセンター運営と営業代行を軸に、企業の顧客接点強化を支援しています。

(1) 会社概要


2015年4月に多言語コンタクトセンター運営とセールスアウトソーシング事業を目的として設立され、同月より通訳サービスを開始しました。2017年にインバウンドテックへ社名変更し、2020年に株式上場を果たしました。2021年にはオムニグリッドやシー・ワイ・サポートを子会社化し、対応体制を強化しています。

従業員数は連結79名、単体79名です。筆頭株主はShelterで、第2位は創業者の下大薗豊氏、第3位はグローバルキャストとなっています。

氏名 持株比率
Shelter 13.67%
下大薗豊 12.41%
グローバルキャスト 11.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役は下大薗豊氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
下大薗豊 代表取締役社長 2013年ブリックス代表取締役社長を経て、2015年同社代表取締役社長に就任。オムニグリッド代表取締役等を経て、2026年6月より現職。
金子将之 取締役CFO専務執行役員管理本部長 2010年ブリックス管理部長を経て、2015年同社取締役管理本部長に就任。オムニグリッド監査役等を経て、2022年より現職。
藤島義琢 取締役 ウェブクルーエージェンシー代表取締役、ウェブクルー代表取締役等を経て、2026年6月より現職。


社外取締役は、砂川伸幸(船井総研ホールディングス社外取締役等)、箱守豪(NTTドコモビジネス副部長)、馬渡龍治(ヤマニ物産取締役会長)、田中大貴(HBD入社)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マルチリンガルCRM事業」および「セールスアウトソーシング事業」を展開しています。

(1) マルチリンガルCRM事業


24時間365日、日本語を含む13カ国語に対応するコンタクトセンターの運営を受託しています。電話だけでなく、映像通信、電子メール、SNSなど多様な通信手段に対応し、国内企業や自治体の外国人向けカスタマーサポートやマーケティング支援などを提供しています。

クライアント企業や自治体から業務受託料やサービス利用料を受け取る収益モデルです。運営は主に同社と、子会社のオムニグリッドが行っており、通訳サービスやAI関連業務の開発受託なども手がけています。

(2) セールスアウトソーシング事業


クライアント企業に代わって見込み顧客に対する営業活動(電話や訪問)を行うサービスを提供しています。一般的な成果報酬型だけでなく、稼動人数あたりの固定売上も併せて支払われる契約方針を採ることで、安定した収益構造とコンプライアンスの徹底を図っています。

クライアント企業から営業代行の固定費および成果に応じた報酬を受け取るモデルです。同社および子会社のシー・ワイ・サポートが運営し、商品紹介やアンケート調査に加え、クライアントの営業スタッフに対する研修など、営業関連業務を一括して請け負っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は2024年3月期まで30億円台で推移していましたが、その後は減少傾向にあります。利益面でも、かつては10%前後の経常利益率を確保していたものの、直近では案件の期ずれや外部環境の変化、一時費用の計上などが影響し、赤字転換する結果となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 27.7億円 32.9億円 33.2億円 25.4億円 21.3億円
経常利益 2.9億円 3.9億円 3.2億円 0.2億円 -1.9億円
利益率(%) 10.4% 11.8% 9.8% 0.6% -9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.8億円 2.5億円 2.1億円 -4.1億円 -2.4億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益も減少しています。利益率も低下傾向にあり、営業利益はマイナスに転じています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 25.4億円 21.3億円
売上総利益 5.7億円 3.4億円
売上総利益率(%) 22.5% 16.1%
営業利益 0.2億円 -1.5億円
営業利益率(%) 0.8% -7.2%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が1.0億円(構成比20%)、支払手数料が0.9億円(同19%)、給料及び手当が0.6億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるマルチリンガルCRM事業は、インバウンド需要による入電数は増加したものの、公共案件の期ずれなどの影響で減収となりました。セールスアウトソーシング事業についても、主力案件の一部停止により売上が減少しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
マルチリンガルCRM事業 17.8億円 16.1億円
セールスアウトソーシング事業 7.6億円 5.3億円
連結(合計) 25.4億円 21.3億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業活動で得た資金を投資や借入金の返済に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.8%で、グロース市場の平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちが関わる全ての人に最上級の感動を提供し続けること」をミッションとして掲げています。また、「常にお客様の要望に応えるため、一人一人がより良き選択肢を『思考』し『行動』すること」「全てのステークホルダーに貢献するため、常に良きサービスを探求し、提供し続けること」を経営理念としています。

(2) 企業文化


同社は、企業やエンドユーザーの枠を超えたすべての利用者が豊かになるサービスの提供を目指しています。時間や言語の枠にとらわれないグローバルなコンタクトセンターを中心に、カスタマー向けサービス提供企業として、社会の変化に柔軟に対応しながら進化し続ける文化を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長と企業価値の向上のため、収益力を高めるとともに、経営の効率化を図ることを目標としています。特に、売上高営業利益率を重要な経営指標として位置づけ、各経営課題に積極的に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の注力領域として、コンサルティング営業を強化し、多言語化ニーズを取り込んで新規顧客の獲得を推進します。また、サービス品質の向上やコンシューマー向けサービス展開、インフラ関連商材の取り扱い拡大を進めます。さらに、海外企業との提携を通じたグローバル展開や、ビッグデータを活用した付加価値の創造にも取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は持続的な企業価値向上のため、優秀な人材の確保と育成を重要な経営基盤と位置付けています。従業員一人ひとりが能力を発揮し、自律的に挑戦できるフラットな組織づくりを推進しています。役割や成果に応じた公正な評価を実現するため、職務に基づく新人事制度の導入を検討しており、多様な経験機会を提供して幅広い人材を育成する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.7歳 2.9年 5,427,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 45.5%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 63.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 71.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インバウンド需要の変動リスク


同社の多言語CRMサービスは、訪日外国人旅行者の増加によるインバウンド需要の拡大を見込んでいます。しかし、法律や規制の変更、社会情勢の変化等により需要が伸び悩んだ場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定取引先への依存リスク


セールスアウトソーシング事業において、東京電力グループなど特定の取引先に売上が集中する傾向があります。同グループとの取引方針の変更や、取扱商材の入れ替えが計画通りに進まない場合、経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。

(3) システムトラブルリスク


同社はインターネット回線やクラウド型のCTIシステムを利用しています。障害に備えバックアップ策を講じていますが、万一、通信インフラの障害やシステムのトラブルが発生した場合、信用の失墜や損害賠償により業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。