※本記事は、SAAFホールディングス株式会社の有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SAAFホールディングスってどんな会社?
同社はITコンサルティングから建設土木まで幅広い事業を展開し、社会課題の解決を目指す企業です。
■(1) 会社概要
同社は2018年10月に、ITbookとサムシングホールディングスの共同株式移転により設立され、上場しました。2021年にサムシングホールディングスを吸収合併し、2024年に現在のSAAFホールディングスへ商号変更しています。直近では2027年3月期からの事業持株会社体制への移行に向け、グループ再編を推進しています。
同社グループの従業員数は連結で1,315名、単体で24名です。筆頭株主は投資ファンドのFP成長支援F号投資事業有限責任組合で、第2位は元役員の前俊守氏、第3位は合同会社YN企画です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| FP成長支援F号投資事業有限責任組合 | 7.47% |
| 前俊守 | 5.82% |
| 合同会社YN企画 | 4.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は左奈田直幸氏が務めており、取締役7名中4名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 左奈田直幸 | 代表取締役 | 1984年ソニーケミカル入社。同社上席執行役員CFO等を経て2021年日本電産入社。2022年同社入社。2025年より現職。サムシングやITbook等の取締役を兼任。 |
| 坂口岳洋 | 取締役 | 1996年ジャフコ・グループ入社。2009年衆議院議員。イノベーション・エンジン エグゼクティブ・パートナー等を経て2023年同社社外取締役。2026年より現職。 |
| 和田洋 | 取締役 | 1987年大和証券入社。クラフト等を経て、UNホールディングス設立・代表取締役。2025年同社取締役。2026年より現職。みらい、イスト等の取締役を兼任。 |
社外取締役は、塚本勲(加賀電子代表取締役会長執行役員)、森本千賀子(morich代表取締役)、仲岡一紀(京王百貨店相談役)、馬場乃里子(KODAMA法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンサルティング事業」「システム開発事業」「人材事業」「建設土木事業」および「その他事業」を展開しています。
■コンサルティング事業
官公庁や民間企業等に対し、業務および情報システムの総合的な整理や再構築を提案しています。防災や教育DX等の重点領域での受注拡大に加え、人材紹介やシステムインテグレーション分野でもエンタープライズ顧客を中心とした支援を行っています。
収益源は、システム標準化支援やDX戦略立案に対するコンサルティング報酬等です。運営は主にITbookが担当しており、自治体および地域企業のDX推進体制を強化しています。
■システム開発事業
新規システム開発、ニアショア開発、ハードウェアの販売、Webシステム開発等を行っています。ガバメントクラウドへの対応需要や、IoT機器分野での製品開発、Windows11移行に伴う機器販売の需要獲得に注力しています。
収益源は、システム開発の受託費用やIoT機器等の販売代金です。運営は主にNXTechおよび東京アプリケーションシステムが行っており、ソフトウェア開発から運用支援までを一貫して提供しています。
■人材事業
主に教育分野等の専門人材における人材派遣および人材紹介事業を展開しています。製造業や流通業を中心とした人手不足を背景に人員供給体制を強化しているほか、教員向け派遣・紹介サービスの提供も行っています。
収益源は、顧客企業からの派遣料金および人材紹介手数料です。運営は主にイストが行っており、グループ横断での人材プラットフォームの拡充により収益性の改善を進めています。
■建設土木事業
戸建て、マンション、ビル等の地盤調査、地盤改良工事、場所杭打ち工事、鉄道土木工事等の建設インフラ関連事業を展開しています。首都圏での中高層マンション建設需要を捉え、大型重機による「NEW-EAGLE杭工法」の受注拡大等に取り組んでいます。
収益源は、建設企業や施主等からの工事受託費用、土質調査費用、地盤保証費用などです。運営は主にサムシングやアースプライム等が行っており、地盤総合保証「THE LAND」の販売促進も推進しています。
■その他事業
金融事業、M&Aアドバイザリー事業およびドローンを活用したデータ解析事業等を行っています。なお、同セグメントについては、各会社の清算等の手続きを進めており、完了後に廃止する予定です。
収益源は、金融サービスの手数料やM&Aのアドバイザリー報酬等です。運営は信栄保険サービスやM&Aマックス等の子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の売上高は安定して280億円台から300億円規模で推移しており、直近の2026年3月期には増収増益を達成しました。経常利益と当期純利益は一時的に落ち込んだ期もあったものの、高付加価値案件の獲得や業務効率化の効果により、利益水準が大幅に改善し黒字を回復しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 263億円 | 305億円 | 293億円 | 289億円 | 296億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 7億円 | 8億円 | 1億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 0.6% | 2.3% | 2.6% | 0.5% | 3.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -18億円 | -6億円 | 1億円 | -1億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
直近の業績では、売上高の増加に加えて売上総利益率が向上しており、収益力の改善が見られます。さらに、不採算事業の縮小や社内DX推進による管理部門のコスト最適化が進んだ結果、営業利益は前期の3億円から11億円へと大きく飛躍しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 289億円 | 296億円 |
| 売上総利益 | 72億円 | 76億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.9% | 25.6% |
| 営業利益 | 3億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 1.2% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が22億円(構成比33.9%)、地代家賃が6億円(同9.8%)を占めています。売上原価は220億円(構成比100.0%)となっています。
■(3) セグメント収益
コンサルティング事業は防災や教育DXの需要を取り込み、大きく利益率を伸ばしました。システム開発事業や人材事業も増収増益を確保しています。主力である建設土木事業は、単価向上や顧客層の拡大、拠点再編によるコスト改善が奏功し、前期の赤字から2億円の黒字へと大きく転換しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンサルティング事業 | 20億円 | 23億円 | 2億円 | 3億円 | 11.2% |
| システム開発事業 | 54億円 | 57億円 | 2億円 | 2億円 | 3.4% |
| 人材事業 | 42億円 | 44億円 | 1億円 | 2億円 | 3.4% |
| 建設土木事業 | 170億円 | 172億円 | -1億円 | 2億円 | 1.4% |
| その他事業 | 2億円 | 0.2億円 | -1億円 | -0.1億円 | -40.5% |
| 連結(合計) | 289億円 | 296億円 | 3億円 | 11億円 | 3.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 21億円 |
| 投資CF | -16億円 | -19億円 |
| 財務CF | -4億円 | 0.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は14.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「ICT技術・DXにより社会インフラの効率的、効果的付加価値の向上及び社会貢献を目指す」ことを経営理念に掲げています。また、パーパスとして「持続可能な社会の実現とグループの持続的企業価値成長を目指す ― 様々な社会課題に対してソリューションを提供する企業 ―」を定め、社会課題の解決を事業の成長機会と位置付けています。
■(2) 企業文化
経営基本方針において「成長基盤は社員自身であること」を掲げ、役職員の自己研鑽や見聞、タフアサインメント、感動体験を重視しています。また、公器としての「ガバナンス経営の実践」や「社員とその家族の安心と希望の実現」を大切にし、社員が自身の成長に自信を持ち、働きがいを実感できる組織文化を形成しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「MTG2028」では、持続的な企業価値向上のため、売上高および営業利益を重要な経営指標と位置付けています。中長期的には安定した収益基盤を確立することを目指しています。
- 売上高営業利益率5%以上の安定的達成
- 2027年3月期予想:売上高283億円、営業利益12億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「現場デジタルプロバイダー」への進化を基本方針とし、コンサルティング、システム開発、人材、建設土木の各事業を連携させてDX戦略立案から運用までを一貫提供する体制を構築しています。人材プラットフォームを強化してデジタル人材を育成するとともに、建設現場でのICTやIoTを活用した建設DXを推進し、高付加価値サービスの創出を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「現場デジタルプロバイダー」への進化に向け、成長の源泉であるデジタル人材の確保と育成を最重要課題としています。Schooとの資本業務提携等を通じて既存人材のリスキリングによる高付加価値化やAI・DX人材の育成を推進し、グループ横断での採用・配置を強化する人材プラットフォームの構築に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 52.0歳 | 2.0年 | 7,904,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.8% |
| 男性育児休業取得率 | 22.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 55.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、コンプライアンス研修受講率(98.0%)、ハラスメント研修受講率(97.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 検収時期の遅延等による影響
システム開発事業において、検収時期の遅延等によって売上の計上時期が当初の計画より遅れるケースが発生することがあります。このような遅延が生じた場合には、想定していた利益計画を達成できず、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 事故・災害等による影響
同社グループが事業展開を行う各地域において、地震や津波、洪水といった大規模な自然災害、あるいは感染症の世界的な大流行が発生した場合、電力やガスなどのインフラ被害、または原材料の調達や物流などのサプライチェーンに広範な被害が及び、事業活動が中断するリスクがあります。
■(3) 高度デジタル人材等の確保
事業の持続的な成長には、ITコンサルタントやシステムエンジニア等の高度デジタル人材、および建設土木事業における専門技術を有する現場技術者の確保が不可欠です。人材獲得競争が激化する中で、必要な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 情報のセキュリティ管理
事業を通じて顧客の機密情報や個人情報を取り扱っており、情報管理の徹底やサイバー攻撃への対策強化に取り組んでいます。しかしながら、不正アクセスやサイバー攻撃、情報漏洩等が発生した場合には、損害賠償の請求や社会的信用の低下につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。