SAAFホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SAAFホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SAAFホールディングスは東京証券取引所グロース市場に上場し、コンサルティング、システム開発、人材、建設土木の4事業を展開する企業グループです。直近の業績では、主軸事業の堅調な推移や高付加価値案件の獲得により、全セグメントで増収を達成し、各利益項目も大幅な増益となる好調なトレンドを示しています。


※本記事は、SAAFホールディングス株式会社の有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SAAFホールディングスってどんな会社?

(1) 会社概要


2018年にITbookとサムシングホールディングスの共同株式移転によりSAAFホールディングス(旧ITbookホールディングス)が設立され、東京証券取引所に上場しました。その後、積極的なM&Aや組織再編を実施し、事業を拡大。2024年に現在の社名へ変更し、コンサルティング、システム開発、人材、建設土木の4事業を中核とする体制へと移行しています。

同社グループの従業員数は連結で1,315名、単体で24名です。筆頭株主は投資事業組合のFP成長支援F号投資事業有限責任組合で、第2位および第3位には個人の前俊守氏や合同会社YN企画が名を連ねています。

氏名 持株比率
FP成長支援F号投資事業有限責任組合 7.47%
前俊守 5.82%
合同会社YN企画 4.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役 社長執行役員を左奈田直幸氏が務めています。また、社外取締役の比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
左奈田直幸 代表取締役 ソニーケミカル等を経て日本電産に入社。2022年にSAAFホールディングスに入社し、経営企画室長等を歴任。2025年より現職。
坂口岳洋 取締役 衆議院議員等を経てイノベーション・エンジンエグゼクティブ・パートナーに就任。2023年よりSAAFホールディングスの社外取締役を務め、2026年より現職。
和田洋 取締役 大和証券等を経て複数企業の代表取締役を歴任。Mt.SQUARE設立代表取締役等を務め、2025年よりSAAFホールディングスの取締役に就任し、2026年より現職。


社外取締役は、塚本勲(加賀電子代表取締役会長)、森本千賀子(morich代表取締役)、仲岡一紀(京王百貨店相談役)、馬場乃里子(KODAMA法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング事業」「システム開発事業」「人材事業」「建設土木事業」および「その他」事業を展開しています。

コンサルティング事業


官公庁や民間企業等に対して、業務および情報システムの総合的な整理・再構築を提案し、組織的な戦略目標の達成を支援しています。防災・教育DX分野をはじめとするデジタル化需要を取り込み、標準化支援や人材育成、システムインテグレーション分野でサービスを展開しています。

収益源は、コンサルティングフィーやシステム導入支援に伴う役務提供の対価となります。主にITbookやみらいなどの子会社が事業を運営しており、地方公共団体や地域企業向けにサービスを提供することで安定的な収益基盤を構築しています。

システム開発事業


新規システム開発、ニアショア開発、ハードウェアの販売、Webシステム開発から、マーケットデータや外国為替、生命保険関連のシステム開発ならびに保守、運用および組込開発を行っています。ガバメントクラウド対応やIoT機器分野での製品開発にも取り組んでいます。

収益モデルは、ソフトウェア受託開発に伴うシステム開発費や運用保守料、システム関連機器の販売代金となります。主に東京アプリケーションシステムやNXTechなどの子会社が開発・販売を担い、多様な顧客ニーズに対応しています。

人材事業


主に教育分野等をはじめとする専門人材の人材派遣および人材紹介事業を行っています。製造業や流通業を中心とした人手不足を背景に、社員を中心とした人員供給体制を強化するとともに、教員向けの派遣・紹介サービスの提供も行っています。

収益源は、顧客企業からの派遣料金や人材紹介手数料となります。主にイストなどの子会社が本事業を運営しており、デジタル人材のプラットフォームを構築することで、人材の育成と供給を通じた収益拡大を図っています。

建設土木事業


戸建て・マンション・ビル等の地盤調査・地盤改良工事・沈下修正工事、場所杭打ち工事、鉄道土木工事、測量・土質調査、地盤保証、住宅検査関連業務などを展開しています。大型重機を用いた特殊工法や、狭小地での基礎専門工事など高度な技術を提供しています。

収益モデルは、ゼネコンや住宅メーカー等からの地盤調査費、改良工事費、および地盤保証や住宅検査に伴う手数料となります。主にサムシング、アースプライム、東名、GIRなどの子会社が事業を運営しています。

その他事業


金融事業、M&Aアドバイザリー事業、およびドローンを活用したデータ解析事業などを展開しています。

収益は、コンサルティング手数料やデータ解析に関するサービス提供対価から得ています。ただし、本事業セグメントについては、関連する各会社の清算等手続きを進めており、将来的にはセグメントの廃止が予定されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間の業績は、売上高が増加傾向にあり、利益面でも大幅な成長を遂げています。特に当期は、コア事業の堅調な推移やコンサルティング事業でのデジタル化需要の取り込みが奏功し、経常利益が前期から大きく拡大、当期利益も黒字転換を果たしています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 289億円 296億円
経常利益 1.4億円 10.0億円
利益率(%) 0.5% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.3億円 4.6億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益も増加しています。一方で、社内DXの推進による業務プロセスの効率化や不採算事業の縮小を進めた結果、販売費および一般管理費が減少し、営業利益および営業利益率が大幅に改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 289億円 296億円
売上総利益 72億円 76億円
売上総利益率(%) 24.8% 25.6%
営業利益 3.3億円 10.9億円
営業利益率(%) 1.2% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が22億円(構成比34%)、地代家賃が6.3億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


コンサルティング事業は防災・教育分野の需要を取り込み大幅な増収増益となりました。システム開発事業および人材事業も堅調な需要に支えられ増収を達成しています。主力である建設土木事業は、価格転嫁や地域密着型営業が奏功し、増収とともに黒字転換を果たしました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
コンサルティング事業 20億円 23億円 2.5億円 2.5億円 11.2%
システム開発事業 54億円 57億円 2.0億円 2.0億円 3.4%
人材事業 42億円 44億円 1.4億円 1.5億円 3.4%
建設土木事業 170億円 172億円 -0.5億円 2.4億円 1.4%
その他 2.3億円 0.2億円 -1.0億円 -0.1億円 -40.5%
連結(合計) 289億円 296億円 3.3億円 10.9億円 3.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た資金と借入による資金調達を組み合わせ、将来の成長に向けた積極的な投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3.1億円 20.7億円
投資CF -16.5億円 -18.8億円
財務CF -4.1億円 0.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は14.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「持続可能な社会の実現とグループの持続的企業価値成長を目指す ― 様々な社会課題に対してソリューションを提供する企業 ―」をパーパスとして掲げています。また、「ICT技術・DXにより社会インフラの効率的、効果的付加価値の向上及び社会貢献を目指す」ことを経営理念として事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、経営基本方針として「成長基盤は社員自身であること」を掲げています。社員や役員自身の自己研鑽、タフアサインメント、見聞、感動体験にこそ成長の基盤があると考えています。また、ガバナンス経営の実践や、社員とその家族の安心と希望の実現を重視し、働きがいと成果を共有できる組織文化を構築しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な企業価値向上を実現するため、売上高および営業利益を重要な経営指標と位置付けています。中長期的には売上高営業利益率の安定的な達成を目標として掲げており、資本効率の向上を重要な経営課題と認識しながら、既存事業の収益力向上や新規事業の創出に取り組んでいます。

* 売上高営業利益率:5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「現場デジタルプロバイダー」への進化を基本方針とし、各事業の連携を通じて社会課題の解決を目指しています。DX戦略の立案から運用支援までを一貫して提供する体制の構築や、既存SES人材のリスキリングによる高度デジタル人材の育成、さらにはICTやAIを活用した建設DXの推進を重点的な施策として展開しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の成長基盤は社員であるとの考えのもと、「現場デジタルプロバイダー」を実現するため、グループ内のデジタル人材の増加に注力しています。人材プラットフォーム機能の強化を通じ、既存社員のリスキリングによる高付加価値化や、教育制度およびキャリアパスの整備を進め、グループ横断での採用・育成・配置を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 52.0歳 2.0年 7,904,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 22.2%
男女賃金差異(全労働者) 73.2%
男女賃金差異(正規雇用) 72.5%
男女賃金差異(パート・有期) 55.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の従業員比率(23.9%)、コンプライアンス研修受講率(98.0%)、ハラスメント研修受講率(97.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) グループ企業に対する管理強化


事業規模および領域の拡大に伴い、グループ会社への経営管理体制の強化が重要な課題となっています。グループ各社との連携や内部統制が十分に機能しない場合、経営効率の低下や管理コストの増加が生じ、グループ全体の業績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 検収時期の遅延等による業績への影響


システム開発事業において、検収時期の遅延等によって売上計上時期が当初の計画よりも遅れるリスクがあります。開発の遅延や顧客側の要因で検収がずれ込んだ場合、想定していた利益計画を達成できず、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 事故・災害等による影響


同社グループが事業を展開する地域において、地震、津波、洪水などの大規模な自然災害や感染症の世界的な流行が発生した場合、インフラ被害やサプライチェーンの混乱による事業の中断リスクがあります。これにより、工事や業務の進行が妨げられ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。