SAAFホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SAAFホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SAAFホールディングスは東証グロース市場に上場し、コンサルティング、システム開発、人材、建設土木事業を展開する持株会社です。2025年3月期の連結業績は、売上高が289億円で前期比微減、経常利益は1.4億円で大幅減益となりました。最終損益は赤字に転落しています。


※本記事は、SAAFホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第7期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SAAFホールディングスってどんな会社?


SAAFホールディングスは、地盤調査改良事業を中核に、ITコンサルや人材派遣など多角的に事業を展開する企業グループです。

(1) 会社概要


2018年にITbookとサムシングホールディングスが経営統合し設立され、東証マザーズ(現グロース)に上場しました。その後、M&Aやグループ再編を積極的に進め、2021年には子会社再編を実施しました。2024年9月に現在のSAAFホールディングスへ商号変更し、同年12月には場所打ちコンクリート杭工事を行う株式会社ユーシンを完全子会社化するなど、事業拡大を続けています。

2025年3月31日時点の連結従業員数は2,328名(単体27名)です。大株主構成は、筆頭株主が証券会社の松井証券、第2位が投資組合、第3位が個人(元代表取締役)となっています。

氏名 持株比率
松井証券 9.31%
FP成長支援F号投資事業有限責任組合 7.43%
前 俊守 5.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役 社長執行役員は左奈田 直幸氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
左奈田 直幸 代表取締役 社長執行役員 ソニーケミカル(現デクセリアルズ)等を経て、日本電産エレシス常務執行役員等を歴任。2022年同社入社、経営企画室長等を経て、2025年6月より現職。
松場 清志 取締役会長 大和証券入社後、シンガポール取引所理事、大和証券SMBC常務執行役員などを歴任。キャピタル・パートナーズ証券会長などを経て、2025年6月より現職。
坂口 岳洋 取締役 専務執行役員 ジャフコ・グループ入社後、衆議院議員などを経験。イノベーション・エンジン エグゼクティブ・パートナー等を務め、2025年6月より現職。
和田 洋 取締役 常務執行役員 大和証券入社後、ハーモニー・グリーン(現UNS)設立などを経て、Mt.SQUARE代表取締役などを務める。2025年6月より現職。


社外取締役は、塚本 勲(加賀電子会長)、森本 千賀子(morich代表)、仲岡 一紀(京王百貨店会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング事業」「システム開発事業」「人材事業」「地盤調査改良事業」「保証検査事業」「建設テック事業」「海外事業」および「その他」事業を展開しています。

コンサルティング事業

官公庁や民間企業に対し、業務および情報システムの整理・再構築を提案し、組織的な戦略目標達成を支援しています。マイナンバー関連や自治体DXなどのコンサルティングが主力です。
運営は主にITbookやみらいが行っています。

システム開発事業

Webシステム、組込システム、金融・保険関連システム等の開発および保守運用、ハードウェア販売を行っています。ニアショア開発にも注力しています。
運営は主にNXTechや東京アプリケーションシステムが行っています。

人材事業

技術者派遣、製造・流通業向け人材派遣、教員派遣、および人材紹介事業を展開しています。専門性の高い人材の提供に強みを持ちます。
運営は主にNXTech、アイニード、イストが行っています。

地盤調査改良事業

ハウスメーカーなどのビルダーに対し、戸建て・マンション・ビル等の地盤調査、測量、地盤改良工事を提供しています。不動産事業も含まれます。
運営は主にサムシング、アースプライム、東名が行っています。

保証検査事業

ビルダーに対して、地盤保証、住宅完成保証、住宅検査関連業務を提供しています。地盤調査データの解析に基づいた保証サービスです。
運営は主にGIRが行っています。

建設テック事業

GPS付き地盤調査機器「GeoWebシステム」のレンタル・販売や、地盤データの電子認証サービスを提供しています。不正・改ざん防止ニーズに対応しています。
運営は主にジオサインが行っています。

海外事業

東南アジア(主にベトナム)において、地盤調査、地盤改良、土木工事、住宅建設請負などを展開しています。インフラ整備や再生エネルギー関連工事も手掛けます。
運営は主にSOMETHING VIETNAMなどが行っています。

その他事業

金融事業、M&Aアドバイザリー事業、ドローンを活用したデータ解析事業などを行っています。
運営は主に信栄保険サービスやM&Aマックスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は226億円から305億円まで拡大しましたが、直近2期は290億円前後で推移しています。経常利益は一時7億円台まで伸長しましたが、直近では1億円台に縮小しました。利益率は0.5%から2.6%の範囲で推移しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 226億円 263億円 305億円 293億円 289億円
経常利益 -2.1億円 1.6億円 7.1億円 7.7億円 1.4億円
利益率(%) -0.9% 0.6% 2.3% 2.6% 0.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.7億円 -18.1億円 -6.1億円 1.0億円 7.1億円

(2) 損益計算書


売上高は289億円となり、前期から若干減少しました。売上総利益は72億円を確保していますが、営業利益は3.3億円と前期の半分以下に留まっています。営業利益率は1.2%と低い水準にあり、コストコントロールや収益構造の見直しが必要な状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 293億円 289億円
売上総利益 76億円 72億円
売上総利益率(%) 25.9% 24.8%
営業利益 7.1億円 3.3億円
営業利益率(%) 2.4% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が25億円(構成比36%)、地代家賃が6億円(同9%)を占めています。売上原価は217億円で、構成比は75%です。

(3) セグメント収益


地盤調査改良事業が売上の過半を占める主力事業であり、前年比で増収となりました。システム開発事業も増収基調です。一方で、海外事業は大幅な減収となっており、コンサルティング事業や建設テック事業は横ばいから微増で推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
コンサルティング事業 19億円 20億円
システム開発事業 32億円 33億円
人材事業 59億円 59億円
地盤調査改良事業 161億円 164億円
保証検査事業 3.0億円 2.6億円
建設テック事業 4.5億円 4.5億円
海外事業 9.3億円 2.9億円
その他事業 5.1億円 2.3億円
連結(合計) 293億円 289億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5.7億円 3.1億円
投資CF -0.1億円 -16.5億円
財務CF 9.3億円 -4.1億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は15.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ICT技術・DXにより社会インフラの効率的、効果的付加価値の向上及び、社会貢献を目指す。」を経営理念としています。新技術を活用した高付加価値サービスの提供を通じて、豊かな社会の創造に貢献することを方針として掲げています。

(2) 企業文化


「社会課題に挑戦する企業集団を目指す(社会問題解決型企業)」をビジョンとし、「全員が夢を持って、目を輝かせながら仕事に邁進する、会社・組織の形成」を目標としています。「明るく、元気に、楽しく、素直に」仕事ができる組織を理想像としています。

(3) 経営計画・目標


2025年3月期は「グループガバナンスの定着と資本市場からの信用回復」を方針とし、「見直し事業計画」を策定しました。売上高と営業利益を同等の重要指標と位置づけ、資本効率の改善も重視しています。

* 売上高営業利益率:5%の達成

(4) 成長戦略と重点施策


「社会問題解決型企業」を目標に、コア事業(コンサルティング、システム開発、人材、建設土木)への集中投資とシナジー創出を図ります。また、不適切な会計処理を踏まえたガバナンス体制の強化、執行役員制度の見直しによる監督と執行の分離を進め、信頼回復と企業価値向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人の成長なくして事業の持続的成長はないと考え、グループ全体でベクトルを合わせ、生産性の高い仕事ができるよう、経営理念やコンプライアンス、働く環境の整備について共通認識を持つことを重視しています。多様な人材が個性を活かせる環境整備にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 49.0歳 1.7年 7,702,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 12.5%
男女賃金差異(全労働者) 69.3%
男女賃金差異(正規) 69.6%
男女賃金差異(非正規) 57.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経営理念研修の受講率(98.0%)、女性従業員比率(25.8%)、コンプライアンス研修の受講率(96.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 検収時期の遅延等による業績への影響

システム開発事業において、検収時期の遅延等によって売上計上時期が計画より遅れる可能性があります。その場合、利益計画を達成できず、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 事故・災害等による影響

事業展開地域における地震、津波、洪水等の大規模自然災害や感染症の流行が発生した場合、インフラ被害やサプライチェーンの寸断により事業が中断する可能性があります。また、現場作業を伴う事業における事故等の発生もリスクとなります。

(3) グループ企業に対する管理強化

事業拡大に伴うグループ企業間の連携や管理体制の強化が重要です。管理部門の集約やガバナンス強化等の施策が計画通りに進まない場合、またはコストが増加した場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 人材の確保について

コンサルティングやシステム開発における専門人材、および建設土木事業における現場作業人員の確保が重要課題です。採用難や人材流出が発生した場合、事業計画の遂行に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。