※本記事は、Delta-Fly Pharma株式会社 の有価証券報告書(第15期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Delta-Fly Pharmaってどんな会社?
Delta-Fly Pharmaは、独自の「モジュール創薬」の手法を用いて、副作用が少なく効果的な抗がん剤の開発を行う創薬ベンチャーです。
■(1) 会社概要
同社は、「安心して家族のがん患者に勧められる治療法の提供」を目的として2010年に徳島県で設立されました。2012年より抗がん剤候補化合物の臨床試験を開始し、2017年には日本新薬とライセンス契約を締結しました。2018年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)市場へ上場を果たし、現在は複数のパイプラインの開発を進めています。
2025年3月31日現在の従業員数は単体で13名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の江島淸氏で、第2位は医薬品製造販売を行う提携先の日本ケミファです。また、大手証券会社や事業会社である三洋化成工業も大株主として名を連ねており、業界内外からの資本参加が見られます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 江島 淸 | 8.55% |
| 日本ケミファ | 4.42% |
| モルガン・スタンレーMUFG証券 | 3.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は江島淸氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江島 淸 | 代表取締役社長 | 大鵬薬品工業にて取締役開発センター長、取締役徳島研究センター長などを歴任。2010年12月より現職。 |
| 飯塚 健蔵 | 取締役研究開発部門担当 | 大鵬薬品工業を経て、2012年に同社入社。臨床開発部長、東京事務所長、常務管理本部長などを歴任し、2020年6月より現職。 |
| 黒滝 健一 | 取締役管理部門担当 | 日本勧業角丸証券(現みずほ証券)にて引受部副部長や企業推進第二部ディレクターなどを歴任。2019年に同社入社し、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、岸井幸生(公認会計士事務所代表)、小南欽一郎(テック&フィンストラテジー代表)、谷口明史(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 医薬品研究開発事業(モジュール創薬)
同社は、既存の抗がん活性物質等を「モジュール(構成単位)」として利用し、用法用量や結合様式などに工夫を加えて「アセンブリ(組み立て)」することで、有効性と安全性のバランスを向上させた新規抗がん剤を創製する「モジュール創薬」を行っています。主な対象はがん患者であり、副作用の低減や治療効果の改善を目指しています。
収益は、製薬会社等とのライセンス契約に基づく「契約一時金」、開発の進捗に応じた「マイルストーン」、および製品上市後の売上高に応じた「ロイヤリティ」収入から構成されています。研究開発のマネジメントに特化し、製造や臨床試験などの実務は外部機関に委託しています。主な提携先には日本新薬や日本ケミファなどがあります。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の推移を見ると、開発段階にあるため売上高は計上されていないか、限定的な水準にとどまっています。一方で、臨床試験の進展に伴い研究開発費が増加しており、経常損失および当期純損失が継続しています。これは創薬ベンチャー特有の先行投資フェーズにあることを示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3.0億円 | 3.0億円 | - | - | - |
| 経常利益 | -8.6億円 | -9.6億円 | -13.3億円 | -14.3億円 | -17.2億円 |
| 利益率(%) | -286.5% | -321.4% | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8.6億円 | -9.7億円 | -13.3億円 | -14.3億円 | -17.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を見ると、事業収益(売上高)は計上されていません。一方、事業費用(営業費用)は増加傾向にあり、営業損失および経常損失が拡大しています。これは開発パイプラインの臨床試験が進み、研究開発費が増加していることが主な要因です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | -14.0億円 | -17.1億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費(事業費用)のうち、研究開発費が14.4億円(構成比84.2%)を占めており、コストの大半が研究開発に投じられています。
■(3) セグメント収益
同社は医薬品事業の単一セグメントですが、直近において製品販売やマイルストーン収入が発生していないため、売上高は計上されていません。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 医薬品事業 | - | - |
| 連結(合計) | - | - |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、医薬品の研究開発に多額の先行投資を継続しており、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。研究開発費の負担により、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。投資活動によるキャッシュ・フローについては、研究開発活動への投資が継続しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達等により財務基盤の強化を図る方針です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -12.8億円 | -18.3億円 |
| 投資CF | 0.0億円 | -0.0億円 |
| 財務CF | 18.5億円 | 7.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「『がん』だけを見ることなく、『がん患者』の全体を診ることにより、安心して家族のがん患者に勧められる治療法を提供すること」を企業理念として掲げています。独自の「モジュール創薬」に基づき、有効性と安全性のバランスを向上させた新規抗がん剤を創製することで、がん患者のQOL(生活の質)向上に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、既存の抗がん剤等を「モジュール」として利用し、工夫を加えて「アセンブリ」する「モジュール創薬」という独自の手法を重視しています。また、研究開発のマネジメント業務に特化し、実務は外部の受託会社等に委託するファブレス経営を徹底しており、少人数の専門家集団による効率的な運営を行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、開発パイプラインの計画通りの推進、新規開発化合物の探索、および提携パートナーの開拓とライセンス契約の締結を当面の経営課題としています。現段階では利益を安定的に計上するステージにないため、ROE等の経営指標を目標とはせず、開発パイプラインの進捗に応じた収入(契約一時金やマイルストーン等)を目標として事業を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、新規抗がん剤の研究開発を着実に推進し、提携パートナーとのライセンス契約締結や承認取得を通じて安定的な収益源を確保することを目指しています。具体的には、臨床試験段階にあるDFP-10917やDFP-14323などの開発を進めるとともに、新たな提携先の開拓を行います。また、株式市場等からの資金調達を活用し、研究開発体制の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、研究開発のマネジメント業務に特化しているため、製薬企業での経験や薬剤師等の資格を持つ即戦力人材を中途採用中心に確保する方針です。国籍、年齢、性別に関係なく多様な人材を採用し、少数精鋭の組織運営を行っています。また、テレワーク環境の提供など、従業員が能力を発揮しやすい職場環境の整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 52.0歳 | 8.1年 | 5,757,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新薬開発の不確実性
医薬品開発には多額の投資と長期間を要し、臨床試験で期待される結果が得られない場合、開発の中止や延期を余儀なくされる可能性があります。また、各国の規制当局による承認が得られない場合、投資回収が困難となり、同社の業績や財政状態に重大な影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 副作用発現、製造物責任
臨床試験や上市後において予期せぬ副作用が発現した場合、賠償責任の発生や製品への信頼低下を招く可能性があります。同社は保険に加入していますが、賠償額の全額がカバーされる保証はなく、同社の業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 競合との競争
国内外の製薬企業との競争において、競合他社がより優れた医薬品を早期に市場投入した場合、同社の事業優位性が低下する可能性があります。また、競合品の登場により臨床試験の被験者確保が困難になったり、提携先との契約が解消されたりするリスクも存在します。
■(4) 特定の提携契約への依存
同社の収益は、日本新薬や日本ケミファなど特定の提携先とのライセンス契約に基づくマイルストーン等に大きく依存しています。開発の遅延や提携先の方針変更等により契約が解除または変更された場合、同社の業績及び財政状態に重大な影響が及ぶ可能性があります。



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