※本記事は、Delta-Fly Pharma株式会社の有価証券報告書(第16期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Delta-Fly Pharmaってどんな会社?
モジュール創薬の手法を用いて、患者の副作用を低減した新規抗がん剤の研究開発を行う創薬ベンチャーです。
■(1) 会社概要
同社は2010年12月に安心して家族のがん患者に勧められる治療法の提供を目的として徳島県に設立されました。2012年に抗がん剤候補化合物の米国での臨床試験を開始し、2018年10月に東京証券取引所マザーズ市場へ株式を上場しました。その後、2022年4月の市場区分見直しによりグロース市場へ移行しています。複数企業と独占的ライセンス契約を結び開発を推進しています。
従業員数は単体12名です。筆頭株主は同社創業者の江島淸氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には、同社と抗がん剤の日本国内における独占的ライセンス契約等を締結している提携先の日本ケミファが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 江島 淸 | 6.32% |
| BNYM SA/NV FOR BNYM FOR BNY GCM CLIENT ACCOUNTS M LSCB RD | 3.46% |
| 日本ケミファ | 3.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は江島淸氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江島 淸 | 代表取締役社長 | 大鵬薬品工業入社、同社取締役開発センター長等を経て、2010年12月より現職。 |
| 飯塚 健蔵 | 取締役研究開発部門担当 | 大鵬薬品工業入社、同社開発三部部長等を経て、2020年6月より現職。 |
| 黒滝 健一 | 取締役管理部門担当 | 日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社、同社引受部副部長等を経て、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、岸井 幸生(岸井幸生公認会計士事務所代表)、小南 欽一郎(テック&フィンストラテジー代表取締役)、谷口 明史(弁護士法人北浜法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社は医薬品の研究開発における単一セグメント事業を展開しています。
同社は「モジュール創薬」という独自の手法を用いて、新規抗がん剤の研究開発を行っています。これは既存の抗がん活性物質等を構成単位(モジュール)として利用し、用法用量や結合様式などに創意工夫を加えて組み立てることで、臨床上の有効性と安全性のバランスを大幅に向上させたがん患者にやさしい治療薬を創製するビジネスです。
収益源は、製薬会社へのライセンス供与による契約一時金や、開発の進捗に応じたマイルストーン収入、上市後の売上高に応じたロイヤリティ収入です。事業の運営は同社がマネジメントに特化し、実際の研究開発や治験薬の製造は外部の受託会社と連携して行っています。日本新薬や日本ケミファなどの製薬企業と提携して開発を進めています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、創薬ベンチャー特有の先行投資フェーズにあるため、継続して経常赤字と純損失を計上しています。研究開発の進捗に伴うマイルストーン収入等がない期間は売上高が発生せず、国内外での臨床試験の拡大や治験薬の製造などに伴う多額の研究開発費が利益を圧迫する構造となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | -9.6億円 | -13.3億円 | -14.3億円 | -17.2億円 | -16.2億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9.7億円 | -13.3億円 | -14.3億円 | -17.2億円 | -16.3億円 |
■(2) 損益計算書
同社は製品上市前の研究開発段階にあるため、売上高や売上総利益は発生していません。各パイプラインの臨床試験や外部委託に伴う研究開発費が先行して発生していることから、営業利益は両期間ともに16億円から17億円規模の赤字となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | -17.1億円 | -16.1億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が0.7億円(構成比27%)、租税公課が0.7億円(同24%)、特許管理費が0.4億円(同13%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがゼロ、財務CFがプラスとなる「勝負型」の傾向を示しています。将来の製品化と収益化に向け、新株予約権の行使などにより調達した資金を研究開発に積極投資している状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -18.3億円 | -15.6億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | - |
| 財務CF | 7.6億円 | 13.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されておらず市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は12.6%でこちらも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「がん」だけを見ることなく、「がん患者」の全体を診ることにより、安心して家族のがん患者に勧められる治療法を提供することを企業理念として掲げています。独自のモジュール創薬に基づき、患者の生活の質(QOL)向上に寄与する新規抗がん剤を開発・提供し、持続可能で豊かな社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
全ての従業員が持てる力を発揮し、多様な人材が活躍してやりがいを持てる組織を構築する文化を重視しています。国籍や年齢、性別に関係なく能力を発揮できる環境整備に努め、従業員の健康を重要な経営資源と捉えています。外部機関と積極的な連携を図ることで、小規模な組織集団ながら効率的な運営を行う風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は新規抗がん剤の上市を目指して研究開発を先行する創薬ベンチャーであり、現時点で製品売上による安定的な利益計上ステージにはありません。そのため、ROAやROEといった数値指標は目標とせず、開発パイプラインの計画通りの推進と、提携パートナーとのライセンス契約締結によるマイルストーン等の収入獲得を目標として事業活動を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
新規抗がん剤の研究開発を着実に進め、国内外のパートナー企業とライセンス契約を締結して安定的な収益源を確保することを最重要課題としています。世界的な情勢不安などによる臨床試験への影響に備え、実行可能性の高い地域での試験を検討するほか、増資等で調達した資金を計画的に投入し、開発体制と財務体質の強化を図る戦略です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営戦略を実現するため、国内外を問わず研究開発のマネジメントなど多様な経験と専門スキルを有する即戦力人材の中途採用を中心に行っています。働きやすい環境づくりのため、勤務時間の選択制度やインセンティブ制度を導入し、テレワーク環境の提供など、従業員の健康管理とワークライフバランスの実現に向けた環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 51.9歳 | 9.6年 | 5,948,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 新薬開発の不確実性と開発遅延
医薬品の開発には多額の投資と長期間を要し、臨床試験で有用な効果が確認できないリスクがあります。各国の厳格な審査により追加試験が必要となる場合や、計画通りの上市が困難になる可能性があり、これらは追加資金の発生やライセンス収入の遅延を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 新規競合品の登場による優位性低下
抗がん剤領域は国内外の製薬会社や創薬ベンチャーとの開発競争が激しい環境にあります。競合他社が優れた医薬品を早期に市場導入した場合、同社の開発品の優位性が低下したり、臨床試験における被験者確保が遅延したりするリスクがあり、計画以上の開発資金の負担や開発中止に追い込まれる恐れがあります。
(3) 特定のライセンス契約への依存
同社は国内の製薬会社と独占的ライセンス契約を締結しており、開発進捗に伴うマイルストーン等の収入に大きく依存しています。提携先の経営判断による開発の中断・中止、あるいは新たな提携パートナーとの契約が想定したタイミングで結べない場合、資金繰りや収益基盤に深刻な影響を及ぼす可能性があります。



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