TDSE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TDSE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のTDSEは、ビッグデータ解析やAI技術を活用したコンサルティングおよび製品提供を行う企業です。直近の業績は、コンサルティングやプロダクトの受注が堅調に推移し増収となりましたが、将来の成長に向けた採用・営業強化への投資がかさみ、経常利益は減益となっています。


※本記事は、TDSE株式会社 の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。


1. TDSEってどんな会社?

AIとビッグデータ活用を核に、企業の経営課題解決を支援するコンサルティングと製品提供を行う会社です。

(1) 会社概要

2013年にビッグデータ事業を目的に設立され、2018年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。その後、対話型AI「Cognigy」や機械学習プラットフォーム「DataRobot」などの取り扱いを開始し、2021年に現在のTDSEへ商号変更しています。近年は生成AI関連のサービス開発にも注力しています。

同社は単体で159名の従業員を抱える企業です。筆頭株主は同社の親会社的存在であったテクノスジャパンで、第2位は個人株主、第3位は資本業務提携関係にあるあいおいニッセイ同和損害保険です。テクノスジャパンやNTTデータなどの事業会社が大株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
テクノスジャパン 18.22%
城谷 直彦 7.97%
あいおいニッセイ同和損害保険 7.67%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は東垣 直樹氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。

氏名 役職 主な経歴
東垣 直樹 代表取締役社長 テクノスジャパンを経て2017年に同社執行役員に就任。技術・営業統括などを歴任し、2020年6月より現職。
浦川 健 取締役執行役員専務 太陽神戸銀行(現三井住友銀行)出身。2017年に同社へ出向し管理部門を統括。2022年6月より管理本部長として現職。
池野 成一 取締役執行役員常務 アリスエフ等を経て2014年に同社執行役員に就任。技術統括などを経て、2025年4月よりプロダクト本部長兼AIエージェント本部副本部長として現職。
結束 晃平 取締役執行役員常務 ブレインチャイルドを経て2014年に同社入社。データサイエンス部門を統括し、2025年4月よりコンサルティング本部長兼AIエージェント本部長として現職。


社外取締役は、宮本 竜哉(イエルバ・ブエナ代表取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「ビッグデータ・AIソリューション事業」の単一セグメントで事業を展開していますが、提供サービスにより「コンサルティング事業」と「プロダクト事業」に分類されます。

(1) コンサルティング事業
データ経営を目指す企業向けに、AIを中心とした統合型ソリューションを提供しています。顧客の事業戦略に沿って、DX/AIアセスメントからデータ分析、AIモデル構築、システム実装、運用、さらにはデータ活用人材の教育までを一気通貫で支援します。

収益は、顧客企業からのコンサルティングフィーやシステム開発・実装に伴う対価として受け取ります。案件によっては準委任契約や請負契約に基づき売上が計上されます。運営は主にTDSEが行っています。

(2) プロダクト事業
自社開発のAI製品「TDSEシリーズ」や、提携する海外のAI製品を販売・提供しています。主な製品には、ソーシャルメディア分析ツール「Quid Monitor」や対話型AIプラットフォーム「Cognigy」、生成AIプラットフォーム「Dify」などがあります。

収益は、製品のライセンス利用料やサブスクリプション料金、導入支援費用などを顧客企業から受け取ります。自社製品だけでなく他社製品の販売代理店としても機能しており、運営は主にTDSEが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

過去5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりで推移しており、直近の2025年3月期には27.0億円に達しています。一方、利益面では2023年3月期をピークに減少傾向にあります。これは将来の成長を見据えた人材採用や営業体制強化への先行投資を行っている影響が見受けられます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 13.2億円 17.2億円 24.2億円 25.2億円 27.0億円
経常利益 0.7億円 2.2億円 2.7億円 2.7億円 2.0億円
利益率(%) 5.2% 12.7% 11.1% 10.9% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.9億円 1.5億円 1.7億円 2.0億円 1.4億円

(2) 損益計算書

直近2期間の損益構成を見ると、売上高は前期比で増加し増収を達成しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費が増加したことで、各利益は減少しました。特に販管費の増加率が高く、利益率を圧迫する要因となっていますが、これは事業拡大に向けた体制強化の一環と考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 25.2億円 27.0億円
売上総利益 9.0億円 9.3億円
売上総利益率(%) 35.5% 34.3%
営業利益 2.7億円 2.0億円
営業利益率(%) 10.8% 7.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.2億円(構成比31%)、役員報酬が0.9億円(同12%)を占めています。売上原価においては、労務費が10億円(構成比55%)、外注費が4.1億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益

同社は単一セグメントですが、サービス別の売上状況を見ると、主力の「アナリティクス」が売上の大半を占めており、前期比で増加しています。「AI製品及び関連サービス」も増加傾向にあり、プロダクト事業の成長がうかがえます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ビッグデータ・AIソリューション事業 25.2億円 27.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、本業の儲けを示す営業CFがプラスで、投資CFと財務CFがマイナスであることから「健全型」に分類されます。本業で稼いだ現金を元手に、将来への投資や株主還元、借入返済などをバランスよく行っている状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.1億円 2.0億円
投資CF -0.7億円 -0.1億円
財務CF -0.2億円 -0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均(2.9%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.8%で市場平均(43.3%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「データを活用した可能性に溢れた豊かな社会」をビジョンとして掲げ、社会や顧客企業に対して「データに基づいて意思決定を高度化する」ことをミッションとしています。これを社会的役割と位置づけ、コンサルティングとプロダクトの両軸で事業を展開しています。

(2) 企業文化

同社は、技術習得に関する教育カリキュラムを充実させ、社外メンバーとも渡り合える自律的な人材を育成する風土作りを進めています。また、社員のモチベーション向上に役立てるため、定期的に社員満足度を確認し、会社と社員間においてフラットな風土作りを目指しています。

(3) 経営計画・目標

同社は「MISSION 2025」という中期経営計画を推進しており、コンサルティング事業の持続的な成長と、プロダクト事業のラインナップ強化をテーマとしています。中長期的にはプロダクト事業を第二の柱として確立することを目指しています。

* 2028年度:プロダクト事業売上高10億円以上

(4) 成長戦略と重点施策

コンサルティング事業では、営業人員の増強やプロセス改善による新規案件獲得力の強化、およびリーディング人材の育成に取り組みます。プロダクト事業では、自社製品「KAIZODE」や海外製品「Quid Monitor」「Cognigy」等の販売拡大に加え、新たにAIエージェント事業を開始し成長加速を図ります。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は国内最高峰のデータサイエンティスト集団を維持・強化するため、コンサルティング事業本部直下に「人財強化組織」を設置し、採用と教育の質を高めています。また、スキルと成果に応じた解像度の高い人事評価・報酬制度を運用し、優秀なDX人材の獲得と育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.1歳 4.2年 6,499,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術社員増加率の目標(11.9%)、技術社員増加率の実績(10.4%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存
同社は、特定の主要顧客(株式会社リクルート等)への売上比率が高くなっています(直近で23.1%)。同社との関係は良好ですが、相手先の経営方針の変更や取引縮小があった場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) ビッグデータ・AI技術の革新
AI・ビッグデータ分野は技術革新が急速に進んでおり、競争が激しい業界です。同社は人材育成や技術習得に注力していますが、競合他社により優れた代替サービスが登場し競争力が低下した場合、事業に悪影響を与える可能性があります。

(3) プロジェクトの採算性
受託プロジェクトにおいて、事前の見積もりと実際の作業工数に乖離が生じるリスクがあります。顧客データの状況等により工数が想定を超えた場合や、不測の事態が発生した場合、プロジェクトが赤字化し業績に影響を与える可能性があります。

(4) 人材の確保と流出
事業拡大には専門的な知識を持つ優秀な人材が不可欠です。しかし、人材獲得競争が激化する中で計画通りに採用が進まない場合や、既存の優秀な人材が社外に流出した場合、競争力の低下や事業成長の制約要因となる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。