TDSE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TDSE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TDSEは東京証券取引所グロース市場に上場し、ビッグデータやAIを活用した課題解決と意思決定支援サービスを主軸に事業を展開しています。最新の業績では、AIエージェントサービスやプロダクト事業の順調な拡大を背景に、売上高と各段階利益がともに前年を上回る増収増益を達成し、堅調な成長を続けています。


※本記事は、TDSE株式会社の有価証券報告書(第13期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TDSEってどんな会社?


TDSEは、データサイエンスを核とした高度なAIソリューションで企業の意思決定を支援する企業です。

(1) 会社概要


同社は2013年に設立され、2014年には海外企業との提携によりソーシャルデータ分析サービスを開始しました。2016年にテクノスデータサイエンス・エンジニアリングへ社名を変更し、2018年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしました。その後、2021年に現在のTDSEへと商号を変更し、2022年には市場区分の見直しに伴いグロース市場へ移行して事業の拡大を続けています。

従業員数は単体で170名です。筆頭株主は事業提携等の背景を持つ事業会社のテクノスジャパンで、第2位は創業時からの関係者である個人の城谷直彦氏、第3位は資本業務提携を行うあいおいニッセイ同和損害保険となっています。

氏名 持株比率
テクノスジャパン 18.15%
城谷 直彦 7.94%
あいおいニッセイ同和損害保険 7.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は東垣直樹氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
東垣 直樹 代表取締役社長 2003年テクノスジャパン入社。2017年TDSE入社後、執行役員等を経て2020年より現職。
池野 成一 取締役執行役員常務 1997年アリスエフ入社。複数社を経て2014年TDSE入社。2020年取締役執行役員常務に就任し2026年より現職。
結束 晃平 取締役執行役員常務 2013年ブレインチャイルド入社。2014年TDSE入社後、データサイエンス領域を統括し2026年より現職。


社外取締役は、宮本竜哉氏(イエルバ・ブエナ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビッグデータ・AIソリューション事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) コンサルティングサービス


データ経営を目指す企業に対し、データ活用のテーマ抽出から分析、AIモデル構築、システム実装、教育までを一気通貫で支援するサービスを提供しています。従来型のAI構築に加え、生成AIを活用したAIエージェントの設計や業務組み込み等へと対応範囲を広げています。

顧客企業との中長期的な契約によるプロジェクトベースでの報酬やコンサルティング料を収益源としています。従来型AIで培った高度な専門性を生かし、分析から実行・運用まで高度な意思決定支援をTDSEが直接運営し、サービスを提供しています。

(2) プロダクトサービス


自社AI製品「TDSEシリーズ」や、QUID製品、Cognigy、Dify等の他社生成AIエージェント関連製品、業務特有のAIモジュールを販売するサービスです。コールセンター業務の自動化やSNS分析、対話型プラットフォームなど、ストック型収益となる多様な製品群を展開しています。

製品のライセンス販売や継続利用に基づくサブスクリプション型の利用料、運用支援による継続課金などを主要な収益源としています。自社開発製品に加え、海外の先端ベンチャー企業等から有力な技術を発掘し、日本市場向けにTDSEがソリューションとして展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して右肩上がりで推移しており、直近では30億円を突破するなど順調な事業拡大が続いています。経常利益は一時的な足踏みが見られたものの、直近では増益に転じており、利益率も7%台から12%台の範囲で安定して推移しています。当期純利益も増益となり、成長と収益確保を両立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 17.2億円 24.2億円 25.2億円 27.0億円 30.1億円
経常利益 2.2億円 2.7億円 2.7億円 2.0億円 2.3億円
利益率(%) 12.7% 11.1% 10.9% 7.5% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.5億円 1.7億円 2.0億円 1.4億円 1.7億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しており、売上総利益率は30%台半ばで安定的に推移しています。AIエージェント部門の新設や人材投資による販売費及び一般管理費の増加を吸収し、営業利益ベースでも増益を達成しており、堅実な本業の成長力が窺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 27.0億円 30.1億円
売上総利益 9.3億円 11.0億円
売上総利益率(%) 34.3% 36.7%
営業利益 2.0億円 2.1億円
営業利益率(%) 7.4% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.8億円(構成比32%)、支払手数料が1.0億円(同11%)を占めています。売上原価では、労務費が10.3億円(構成比54%)、外注費が4.2億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はビッグデータ・AIソリューション事業の単一セグメントです。当期は、AIエージェントサービスの好調な立ち上がりや、プロダクトサービスにおける主力製品の販売強化などが奏功し、売上高は前期比で10%を超える増収を記録しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ビッグデータ・AIソリューション事業 27.0億円 30.1億円
連結(合計) 27.0億円 30.1億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラスを確保し、事業活動による資金創出が安定しています。当期は保険積立金の解約等による投資CFのプラスと配当支払い等による財務CFのマイナスがあり、営業利益と資産売却等による資金で財務基盤を強化する改善型の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.0億円 1.9億円
投資CF -0.1億円 0.1億円
財務CF -0.2億円 -0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「データを活用した可能性に溢れた豊かな社会」をビジョンとして掲げ、「データに基づいて意思決定を高度化する」ことをミッションおよび社会的役割と位置付けています。データサイエンスの専門性とAI実装力を組み合わせることで、顧客企業の意思決定をより一層高度化・加速化させる支援を提供することを存在意義としています。

(2) 企業文化


同社は国内最高峰のデータサイエンティスト集団を有し、「ビジネス課題ファーストな技術力と実績」を重視しています。また、互いの考え方や働き方を尊重し、チーム全体で成長を目指す「チームワークと成長」という価値観を大切にしており、自律的人材を促すフラットな風土や、絶えず技術向上に取り組む文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2026年4月より新中期経営計画「SHIFT 2028」を始動し、AIエージェントの活用による次世代の意思決定支援企業への進化を目指しています。2029年3月期(2028年度)の最重要経営管理指標(KGI)として以下の目標を掲げています。

* 売上高:38〜43億円
* 生成AIエージェント売上比率:60%
* ストック売上比率:30%

(4) 成長戦略と重点施策


生成AI・エージェント市場の進展を契機に、事業構造の本質的な転換を図るための3つの戦略を推進しています。成長軸の転換として従来型AIから生成AIへ重心を移し、判断から実行までを含む意思決定支援を強化します。さらに、プラットフォーム等のストック型収益の比重を段階的に拡大する収益構造の転換と、営業の全社集約による実行体制の転換を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ミッション実現のため、顧客課題を深く理解し先端AI技術で解決に導く人材の確保・育成を不可欠としています。人事ポリシーや求める人物像を明文化し、生成AI領域における人材ポートフォリオの最適化を推進するとともに、人財強化専門組織の設置や多様な働き方を支援する各種制度の充実により、従業員エンゲージメントの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.4歳 4.5年 6,771,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全従業員) 85.3%
男女賃金差異(正規雇用) 86.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 91.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術社員増加率の目標(12.2%)、技術社員増加率の実績(1.4%)、技術者数(150名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新・競合サービスの登場


ビッグデータ活用やAI分野は技術革新が早く変化が激しいため、同社のサービスに代わる代替サービスが登場した場合、競争力の低下を招き業績に影響を与える可能性があります。

(2) 情報収集とソーシャルメディア規制


業務上、SNS等のソーシャルメディアから大量のデータを取得していますが、運営者の方針転換や個人情報保護法等の関連法令・規制の変更により、情報収集やサービス提供に制約を受ける可能性があります。

(3) システム障害とセキュリティ


サービスの基盤をインターネット網や大規模サーバー群に依存しているため、監視や冗長化、セキュリティ対策等を行っていますが、サイバー攻撃や大規模なシステム障害が発生した場合、事業に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

(4) プロジェクトの工数変動


プロジェクト受注時の工数算定は慎重に行われますが、顧客から受領するデータの品質等に左右されるため正確な見積もりが困難な場合があり、不測の事態による追加工数の発生が業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。