エヌ・シー・エヌ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エヌ・シー・エヌ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の建設関連企業です。独自開発の建築システム「SE構法」を用いた木造耐震設計事業を主軸とし、全国の工務店ネットワークを通じて構造計算や資材供給を行っています。直近の業績は、大規模木造建築(非住宅)分野の伸長や子会社の大型案件寄与により増収増益となりました。


※本記事は、株式会社エヌ・シー・エヌ の有価証券報告書(第30期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エヌ・シー・エヌってどんな会社?


同社は、木造建築の耐震性を確保する構造計算と、独自の建築システム「SE構法」の提供を主力としています。

(1) 会社概要


1996年に設立され、翌年にはSE構法の販売を開始しました。2019年にJASDAQ(現・東証スタンダード)へ上場し、事業基盤を強化しています。2020年には非住宅分野の強化を目的に木構造デザインを設立し、2022年には翠豊を子会社化するなど、M&Aや提携を通じて事業領域を拡大しています。

従業員数は連結145名、単体102名です。大株主構成は、筆頭株主が資産管理会社の有限会社田杉総行で、第2位は創業者の田鎖郁夫氏、第3位は創業メンバーの杉山恒夫氏となっており、創業家および関係者が主要な持分を保有しています。

氏名 持株比率
有限会社田杉総行 22.15%
田鎖 郁夫 19.53%
杉山 恒夫 7.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名、計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は田鎖郁夫氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
田鎖 郁夫 代表取締役社長執行役員 1989年日商岩井入社。1996年同社設立に参画し出向。2000年代表取締役常務を経て、2006年より現職。MUJI HOUSE専務取締役等を兼任。
藤井 義久 取締役専務執行役員 1992年藤木海運入社。1999年同社入社。2006年常務取締役、2017年専務執行役員耐震構法部門長を経て、2024年より現職。
福田 浩史 取締役常務執行役員特建事業部長 1999年熊谷組入社。2002年同社入社。木構造デザイン社長などを兼務し、2024年より現職。
藤 幸平 取締役執行役員管理本部長 2005年ソフトバンク・ブロードメディア入社。2020年同社入社。MAKE HOUSE取締役などを兼務し、2024年より現職。


社外取締役は、松井忠三(元良品計画社長)、内山博文(リノベーション協議会会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「木造耐震設計事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 木造耐震設計事業(住宅分野)


工務店を中心とした「登録施工店」ネットワークを通じ、独自の建築システム「SE構法」による木造住宅を提供しています。また、ハウスメーカー等のパートナー企業に対してもSE構法をOEM提供しており、持分法適用関連会社が展開する「無印良品の家」にも標準採用されています。

収益は、登録施工店やパートナー企業に対し、設計段階での構造計算書の出荷、および建設段階での構造加工品等の販売から得ています。また、登録施工店からは登録料や月会費も受領しています。運営は主に同社が行っています。

(2) 木造耐震設計事業(大規模木造建築分野)


延床面積500㎡以上の木造建築や非住宅(店舗、施設等)を対象に、SE構法やそれ以外の工法による構造設計、部材供給を行っています。脱炭素社会の実現に向けた木材利用促進の流れを受け、ゼネコンや設計事務所からの受注に対応しています。

収益は、構造設計料や構造加工品の販売、施工請負などから得ています。運営は同社のほか、SE構法以外の構造計算を行う株式会社木構造デザインや、大断面集成材の加工・施工を行う株式会社翠豊が担っています。

(3) その他


住宅の資産価値向上に向けた周辺サービスを展開しています。具体的には、省エネルギー計算サービス、長期優良住宅認定代行、BIM(Building Information Modeling)ソリューションの提供などを行っています。

収益は、計算サービス料、申請代行手数料、BIMソリューションの販売やクラウドサービス利用料から得ています。運営は同社のほか、BIM事業を株式会社MAKE HOUSEが展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は80億〜90億円規模で推移しています。2024年3月期に利益率が大きく低下しましたが、2025年3月期には経常利益、当期純利益ともに回復傾向にあります。全体として、売上高は安定的ながらも、利益面では年度による変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 64億円 86億円 92億円 80億円 81億円
経常利益 3.2億円 4.2億円 4.6億円 0.5億円 2.9億円
利益率(%) 5.0% 4.9% 4.9% 0.6% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.0億円 3.1億円 3.0億円 0.0億円 1.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となり、81億円となりました。売上総利益率は約27%を維持していますが、営業利益率は前期の1.0%から2.2%へと改善しています。営業利益額も倍増しており、収益性が回復基調にあることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 80億円 81億円
売上総利益 22億円 22億円
売上総利益率(%) 27.6% 26.6%
営業利益 0.8億円 1.8億円
営業利益率(%) 1.0% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.8億円(構成比24%)、販売促進費及び広告宣伝費が2.8億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


住宅分野は木材相場の落ち着きにより単価が下落し減収となりましたが、大規模木造建築(非住宅)分野は大型案件の売上計上等により増収となりました。環境設計分野およびDX・その他の分野も、省エネ計算ニーズの高まりやBIMサービスの好調により大幅な増収となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
住宅分野 49億円 47億円
大規模木造建築(非住宅)分野 28億円 29億円
環境設計分野 2.5億円 2.9億円
DX・その他の分野 1.0億円 1.6億円
連結(合計) 80億円 81億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上原価や販売費及び一般管理費等の営業費用を賄う運転資金需要に対応しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けたシェア拡大、人員体制整備、新技術開発、社内業務システムや設計ソフトウェア開発、建築物木造化に向けた研究開発投資に充当されています。財務活動によるキャッシュ・フローについては、記載がありません。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「日本に安心・安全な木構造を普及させる。」「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる。」ことを目標としています。木造耐震設計事業を通じて、構造計算された耐震性の高い木造建築を実現する「SE構法」を提供し、日本の木造住宅の資産価値維持向上に取り組んでいます。

(2) 企業文化


住宅の安全性、耐久性、利用価値、品質証明、デザイン品質の5つのテーマを課題として掲げています。これらは単独での解決が困難であるため、全国の工務店を中心とした建設会社とのネットワークを形成し、社会的な仕組みとして問題解決を図る姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、事業活動の成果として営業利益を重視し、収益性の指標に営業利益率、資本効率の指標にROE(自己資本利益率)、財務安定性の指標にネットキャッシュおよび流動資産構成比率を掲げています。具体的な数値目標は明示されていませんが、これらを定期的にモニタリングし達成を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


住宅分野では登録施工店の新規開拓とSE構法採用率向上を図ります。大規模木造建築(非住宅)分野では、法改正による民間建築物への木材利用拡大を追い風に、構造計算から施工までのワンストップサービス体制を強化します。また、新分野への投資として、セカンドハウス事業等を行う企業との連携を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


労働力不足が予想される中、優秀な人材の確保や働きやすい環境整備、生産性向上を目指し、人事制度の改正に取り組んでいます。幅広い価値観や視野を持った人材の活躍が企業価値向上につながると認識し、時短勤務や選択式時差出勤など、柔軟な働き方ができる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.5歳 8.4年 6,394,946円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(33.3%)、女性管理職登用比率(15.2%)、男性労働者の育児休業取得率(40%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国や地方自治体の施策による影響


住宅の耐震化や脱炭素社会実現に向けた木材利用促進など、国の施策は同社事業の追い風となっています。しかし、今後これらの施策方針が変更された場合、市場成長が鈍化し、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 物件着工時期の遅れによる影響


同社グループの事業では、売上の大半が構造加工品の納品時に計上されます。そのため、天災地変や事故、その他予期せぬ要因によって物件の着工遅延等の不測の事態が発生した場合、売上計上時期がずれ込み、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定人物への依存


同社では、代表取締役社長である田鎖郁夫氏の業界における長年の経験と豊富な知見に依存している面があります。組織的な体制強化を図っていますが、同氏が何らかの理由で退任し、後任者の確保が困難になった場合、事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。